米食関連銘柄特集
米食関連銘柄特集

〜粉食価格の上昇で「ご飯」回帰進む〜


「コメまわり」商品のニーズ高まる
物価高騰による家計への負担増が追い風

〜粉食価格の上昇で「ご飯」回帰進む〜 小麦の高騰でパンや「粉モン」の価格上昇が顕著となり、日本人本来の主食である「コメ」が改めて見直されている。各スーパーではパンの売り上げ落ち込みが今年に入り激しくなる中、物価の安定しているコメの売り上げが増加傾向にあると聞く。例えば総合スーパーのダイエー<8263>は、今年6月のコメの売り上げが前年同月に比べ20%増加した。特に以前は「重たい」との理由で敬遠されがちであった10キロ米の売り上げが好調であり、7月に入っても同様の伸びを続けている模様。

 通常、夏季は季節的にコメの販売が落ち込む時期であることを考慮すれば、昨今の日本人が如何にコメに回帰しているかが窺える。実際に農林水産省が調べた今年3月の月例調査でもコメの1人あたり消費量が前年同月比0.6%増加した。直近での調査数値ではもっと増加率がアップしている可能性が高い。

 また食材だけでなく、その他各消費物資の物価上昇傾向が鮮明化する中、家計全体の見直しを進める家庭が増加、その結果、外食比率の低下傾向が見られるようになり、社団法人日本フードサービス協会が調査した今年4月の外食利用客数が前年同月に比べ1.2%減少。これは3年ぶりの大きな落ち込みであり、一般家庭でのコメの売り上げ増加を後押しする形となっている。

海外では日本食ブーム

●主な米食関連銘柄 
レトルト銘柄 エスビー食品<2805>、ハウス食品<2810>、江崎グリコ<2206>、中村屋<2204>、永谷園<2899>、旭松食品<2911>、協和醗酵工業<4151>、東洋水産<2875>、佐藤食品工業<2814>
ふりかけ・お茶漬け銘柄 永谷園<2899>、大森屋<2917>
調味料銘柄 キッコーマン<2801>、ジャパン・フード&リカー・アライアンス<2538>、ユタカフーズ<2806>、マルサンアイ<2551>、味の素<2802>、焼津水産化学工業<2812>、アリアケジャパン<2815>、宝ホールディングス<2531>
日本茶・和え物銘柄 伊藤園<2593>、ダイドードリンコ<2590>、サッポロホールディングス<2501>、アサヒビール<2502>、キリンホールディングス<2503>、篠崎屋<2926>
 一方、海外に目を向けると、最近たいへんな「日本食ブーム」が起こっている。欧米では、肥満や生活習慣病が社会問題となっている中、ヘルシーな日本食ブームが一段と高まっており、特に米国では日本食レストランの店舗数が、この10年間で約2.5倍に増加した。またアジア諸国では、日本食は一般的な家庭料理として根付いてきている。
 当然のことながら、日本食の主役は「コメ」であり、外国においても日本と同じように小麦の高騰が続いていることもあって、外食産業向けに、コメの販売が伸びている。また日本食ブームに合わせ、日本食材や調味料の専用ブースを設けるなど、充実を図っており、米食文化の普及が進むものと見込まれる。

 このように国内・海外とも「コメ」の需要が近年増加傾向にあり、しばらく「コメ」の販売好調が続くものと見込まれる。また米食比率のアップに伴い、当然のことながら、日本食向け調味料や、レトルトカレー、ふりかけ、お茶漬けなど「コメまわり」商品の需要も伸びるものと見込まれ、ここではその関連銘柄に着目してみたい。

家庭用「コメまわり」食材の販売好調

家庭用「コメまわり」食材の販売好調 日本国内における米食回帰と外食比率の低下から、カレーやお茶漬けなど「コメまわり」食材の売り上げが好調である。レトルト及びルウカレー大手のエスビー食品<2805>は、今年4月及び5月のレトルトカレーの売り上げが、前年同月に比べ2ケタ増となった。ルウカレーも前年比9%増を記録、5月までで年間売り上げ目標の7割を既に達成するなど、米食回帰が追い風となっている。
 またカレー最大手のハウス食品<2810>も同様に、カレー関連が好調で、今年8月18日からレトルトカレー15商品について10グラム減らし、実質の値上げに踏み切るものの、販売価格は据え置いたままであることから、実際の販売数量、売り上げの落ち込みはないものと見ている。

 その他江崎グリコ<2206>もルウカレーの「熟カレー」が好調なほか、中村屋<2204>も今月16日、従来のレトルトカレーの半分以下の少量タイプ「ちょっと食べたいミニカリー」の発売を予定しており、追い風に乗って、さらなる売り上げアップを目指す。

 またふりかけ、お茶漬けもご飯とセットで食される商品であるうえ、近年の物価高騰に伴う食費切り詰め傾向から、販売が好調である。最大手の永谷園<2899>は、主力であるお茶漬け商品の売り上げが、今年2月から4月までの間で、前年比30%増と大幅に売り上げが増加、同様にデビューから今年で20年になる「おとなのふりかけ」は、もはやブランドを確立しており、安定した売り上げを誇る商品となっている。大森屋<2917>も味付けのりや焼きのりが回復傾向にあり、お茶漬けやふりかけ商品の販売回復が期待される。

 その他米食に関わるレトルト食品を手掛ける企業として、カップ味噌汁を手掛ける前述の永谷園<2899>、米食に欠かせない納豆を手掛ける旭松食品<2911>や、子会社が手掛ける協和醗酵工業<4151>も需要の伸びが期待出来る。またレトルト米飯を手掛ける東洋水産<2875>佐藤食品工業<2814>にも注目したい。

米食のおかず用調味料も伸びる

 米食は、ただご飯だけ出せばよいというものではなく、基本的にご飯に見合った「おかず」が必要となる。家庭での米食のウエイトが高くなればなるほど、そのおかずの調理回数も増加し、結果として調味料の使用頻度が上がると考えられる。

 米食のおかずにとって欠かせないものが、醤油・味噌・みりん等である。醤油生産のキッコーマン<2801>ジャパン・フード&リカー・アライアンス<2538>ユタカフーズ<2806>、味噌ではマルサンアイ<2551>が代表的企業である。また、だしやみりんも、おかずを作るにあたって重要な調味料である。「ほんだし」ブランドで有名な味の素<2802>は、同ブランドがデビューして37年目の今年の秋、大幅なリニューアルをし、さらなるシェアアップを目指しているほか、やはり、だしやつゆを手掛けるユタカフーズ<2806>焼津水産化学工業<2812>アリアケジャパン<2815>も需要の伸びが期待される。また、みりんでは「タカラ本みりん」ブランドで有名な宝ホールディングス<2531>が要注目である。

米食に欠かせない飲料や和え物

 もう一つ米食に欠かせないもの、それは「お茶」である。代表的企業として伊藤園<2593>が挙げられるほか、ダイドードリンコ<2590>、子会社が日本茶飲料を手掛けるサッポロホールディングス<2501>アサヒビール<2502>キリンホールディングス<2503>も日本茶飲料の伸びが期待される。また、米食の和え物として、代表的な豆腐を手掛ける数少ない上場企業である篠崎屋<2926>も、大豆の高騰が気がかりではあるが、海外での豆腐ニーズが増加しているほか、味噌汁の代表的な具であることもあり、業績への貢献が期待される。

 西洋文化の流入で、戦後需要は漸減傾向が続いたが、小麦の高騰という事態に直面し、国内で自給可能で、価格の安定している「コメ」が改めて見直され始めている。元来日本人は米食文化の民族であり、今後も大崩することはまず考えられない。それどころか、海外では日本食ブームが起こっており、先に述べた小麦の高騰も手伝って「コメ」の需要が増加しているほどである。

 国内での復活、海外でのニーズ増加という流れの中、「コメ」及び「コメまわり」商品の需要は堅調な伸びを示すことが考えられ、しばらく注目していきたい。
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.07 |特集