政府・日銀の対策に失望感が膨らむ |
■政府・日銀の対策に失望感が膨らむ
円高・ドル安の進行を受けて8月30日には、政府が追加経済対策の基本方針を発表し、日銀も臨時金融政策決定会合を開いて新型資金供給オペを30兆円に増額する追加金融緩和策を決定した。しかし、いずれも事前に想定された内容にとどまったため、外国為替市場での反応は限定的だった。そして翌8月31日、東京外国為替市場の円・ドル相場は、米国の長期金利が低下したことも背景として1ドル=84円近辺まで円高・ドル安が進行した。株式市場では日経平均株価(225種)の終値が前日終値比325円20銭(3.55%)安の8824円06銭、TOPIX(東証株価指数)の終値が同24.54ポイント(2.96%)安の804.67と、いずれも大幅に下落した。政府・日銀の対策に失望感が膨らんだ形で、東証1部市場では134銘柄が年初来安値を更新した。
9月1日以降の外国為替市場では、円・ドル相場が概ね1ドル=84円台で推移し、株式市場もやや持ち直す展開となった。しかし米国の景気減速懸念や欧州の金融システム不安が再燃したことで、9月7日のニューヨーク外国為替市場で円・ドル相場が1ドル=83円50銭台まで上昇した。この流れを受けて9月8日の東京外国為替市場では円・ドル相場が1ドル=83円30銭台まで上昇した。投資家のリスク回避姿勢が一段と強まった形である。中国による日本国債の購入拡大が円高・ドル安を加速させるとの見方も広がった。そして9月8日の株式市場では、急速な円高進行による企業業績悪化懸念が強く意識され、輸出関連株を中心に売りが膨らんだ。日経平均株価(225種)の終値は前日終値比201円40銭(2.18%)安の9024円60銭、TOPIXの終値は同13.93ポイント(1.67%)安の820.99と大幅に下落した。
その後、米国の雇用統計や貿易収支などの経済指標を手掛かりに、米国の株式市場が上昇に転じたこともあり、外国為替市場での円・ドル相場も1ドル=84円近辺で高止まりの状況となった。民主党代表選挙で小沢一郎前幹事長が当選した場合、日本の単独介入など強力な円高阻止策を打ち出すとの警戒感も働いたようだ。そして日本の株式市場もこの間、比較的堅調な展開となった。米国の株式市場が上昇したことや、円高・ドル安の進行が一服したことを好感したようだ。
しかし9月14日、民主党代表選挙で菅直人首相の再選が決定すると、直後に東京外国為替市場で、円・ドル相場が1ドル=83円10銭近辺まで急伸した。さらに同日のニューヨーク外国為替市場では、1ドル=82円90銭台まで円高・ドル安が進行した。菅直人首相が市場介入には消極的とみられていたことが影響したようだ。そして翌9月15日、東京外国為替市場で円・ドル相場が1ドル=82円80銭台まで上昇したが、ここで政府・日銀が6年半ぶりとなる円売り・ドル買いの市場介入を実施し、円・ドル相場は8月3日以来となる1ドル=85円台まで、一気に円安・ドル高方向に反落した。
9月15日の株式市場は、前日比マイナス圏でスタートしたが、政府・日銀による市場介入で円・ドル相場が反落したことを好感し、自動車など輸出関連株を中心に買い戻しの動きが活発になった。結局、日経平均株価(225種)の終値は前日終値比217円25銭(2.34%)高の9516円56銭、TOPIXの終値は同13.77ポイント(1.65%)高の848.64と大幅に反発した。政府・日銀が断固たる決意を示したことを好感した形だが、今後は市場介入効果の持続性が注目点となるだろう。
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