家電量販店銘柄特集
家電量販店関連銘柄特集

特需反動減で厳しい状況、収益改善期待

■12年4月〜6月期をボトムとして収益改善期待

 家電量販店業界では、10年から11年にかけて、家電エコポイント制度に伴う特需や、地上デジタル放送への完全移行(11年7月24日、東北3県を除く)に伴う特需の恩恵を受けた。

 しかし11年8月以降には、こうした特需の反動減に加えて、デジタル家電の販売価格下落の影響などで厳しい状況が続いている。東日本大震災で延期されていた宮城、岩手、福島の東北3県についても、12年3月末で地上デジタル放送への完全移行を完了した。

 家電量販店主要5社の月次売上動向(POSデータに基づく速報値ベース)を見ると、11年5月〜7月は、地デジ化特需が追い風となり、全店売上は概ね前年同月比2ケタ増収になった。しかし11年8月〜11月は、地デジ化特需の反動減で、全店売上は概ね前年同月比3割〜6割減収という厳しい状況になった。

 特に11年11月は、前年(10年11月)に家電エコポイント制度変更に伴う駆け込み需要が発生していたため、前年同月比で過去最大の落ち込み幅となった。ただし11年12月は、前年(10年12月)がエコポイント制度変更に伴う駆け込み需要の反動で大幅に落ち込んでいたため、全店売上が前年同月比で増収となる企業もあった。

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依然として競争は激しい

 足元の12年1月〜2月も、薄型テレビやブルーレイ・DVD関連の販売不振が続き、全店売上は概ね前年同月比1割〜2割減収となっている。ただし、スマートフォン、省エネエアコン、白物家電などが堅調で、減少率は11年8月〜11月に比べて縮小している。

 主要5社の足元の全店売上(前年比)を見ると、エディオン<2730>(東1)は1月が87.6%、2月が82.4%、ビックカメラ<3048>(東1)は1月が87.6%、2月が87.3%、コジマ<7513>(東1)は1月が85.3%、2月が77.4%、ケーズホールディングス<8282>(東1)は1月が100.4%、2月が96.6%、ヤマダ電機<9831>(東1)は1月が88.4%、2月が81.4%となっている。

 11年度通期の主要各社の連結業績は、純利益については特別損失一巡などで増益見通しの企業もあるが、概ね減収、営業減益の見通しであり、従来の会社見通しに対して下振れの可能性も高まっている。コジマ<7513>(東1)は3月30日に、12年3月期通期の連結業績見通しの下方修正を発表した。

 地デジ化特需の反動による薄型テレビの売上減少は、前年同月比で見れば少なくとも12年7月まで続くことになる。さらに通年で見ても12年は、11年に比べて1割程度減少するという見方が優勢になっている。

 しかし前年同月比で見れば、12年8月以降には、地デジ化特需の反動減の影響がほぼ一巡する可能性もあるだろう。そして一方では、スマートフォンやタブレット端末の人気持続が期待されるだろう。

 さらに、電力不足や電気料金値上げに対する企業や消費者の自己防衛策として、省エネ家電製品や太陽光発電システム関連製品の需要拡大が期待されるだろう。したがって家電量販店主要各社の業績は、四半期ベースで見れば12年4月〜6月期をボトムとして、改善に向かうことが期待されるだろう。

 家電量販店業界は商品面での差別化が難しいため、バイイングパワーや効率的オペレーションなどによる価格競争力の強化が、企業間競争の優劣を決するという特徴がある。そして大量出店・多店舗展開の加速、店舗の大型化、店舗運営の効率化、中小チェーンに対するM&Aなどによって、大手による寡占化が進んできた。しかし依然として競争は激しく、残存者利益が得られる段階に至っていない。

 今後は高齢者の増加などで、家電製品に対するニーズや購入行動の変化が予想されるため、さまざまな商圏に適した店舗づくり・出店戦略、地域密着型販売戦略なども課題となりそうだ。

家電量販店主要5社の事業戦略

■スマートフォンやタブレット端末の販売を強化

 家電量販店主要5社は、薄型テレビの買い替え需要が本格化するには時間を要する可能性が高いため、当面の重点戦略として、人気持続が期待されるスマートフォンやタブレット端末の販売を強化している。

 さらに、電力不足や電気料金値上げに対する企業や消費者の自己防衛策として、省エネ家電製品や太陽光発電システム関連製品の需要拡大が期待されるため、LED照明器具、省エネエアコン、太陽光発電システム、蓄電池などの販売を強化している。

 そして、省エネ家電製品や太陽光発電システムにとどまらず、次世代型省エネ住宅や住宅リフォームなどの分野にも、積極的に事業展開している企業もある。

 バイイングパワーの強化や店舗オペレーションの効率化はもちろんだが、高齢者の増加に伴うニーズや購入行動の変化に対応した事業戦略も必要だろう。このため、取扱商品分野の拡大、さまざまな商圏に適した店舗づくりと出店戦略、地域密着型の販売手法など、事業戦略の違いが中期的な成長力の差につながる可能性もあるだろう。

 エディオン<2730>(東1)は、薄型テレビの需要減少に対して、太陽光発電システム、オール電化、リフォームなどを扱う「エコ・リビングソーラー」ビジネスを成長分野と位置付けて、事業展開を加速させる模様だ。

 ビックカメラ<3048>(東1)は、薄型テレビの需要減少に対する12年8月期の取り組みとしては、LED照明などの省エネ家電製品、スマートフォンやタブレット端末などに重点を置いて、販売を強化するとしている。また中期的には「都市型」×「駅前」×「大型」店舗を中心とした出店戦略で、連結売上高8000億円、連結経常利益400億円を目標としている。

 コジマ<7513>(東1)は、収益改善に向けた店舗のS&P(スクラップ・アンド・ビルド)による大型化や統廃合がほぼ完了し、既存店の活性化、販売チャネル・販売促進手法の再構築にも取り組んでいる。さらに、薄型テレビの需要減少に対しては、省エネ家電製品、住宅リフォーム、太陽光発電システム、オール電化、ネット通販、法人営業などに積極的に取り組むとしている。

 ケーズホールディングス<8282>(東1)は、「がんばらない経営(=無理をしない堅実な経営)」を掲げて、企業規模の拡大と収益性の安定とのバランスの良い成長を基本戦略としている。さらに「ポイント制度」を導入せずに、その場での「現金値引き」を実施していることも特徴である。店舗戦略としては、ドミナント出店戦略と、S&P(スクラップ・アンド・ビルド)による店舗の大型化を進めている。

 ヤマダ電機<9831>(東1)は、スマートハウス関連や環境関連のソリューションビジネスを重点分野と位置付けて、太陽光発電システム、家庭用蓄電池、オール電化商品、EV(電気自動車)、LED照明、エアコン省エネ促進設備、住宅リフォームなどの分野を強化している。さらに、連結子会社化したエス・バイ・エルとの連携で、次世代省エネ住宅の販売も強化している。店舗展開では、都市型店LABI、郊外型店テックランド(大型)に加えて、未展開エリアである商圏人口15万人以下で、地域密着サービスを強化した新しいコンセプトのテックランド(小商圏型)の出店も進めるとしている。

 さらに、中国市場へ本格進出する動きも始まった。

 ヤマダ電機は、10年12月に中国・瀋陽市に海外1号店、11年6月に中国・天津市に海外2号店、12年3月に中国・南京市に中国3号店を開業した。さらに13年3月期には、中国・上海市に中国4号店を開業する計画である。日本で蓄積した大型店運営ノウハウを中国でも強みにして、早期に中国での売上高1000億円を目指すとしている。

家電量販店主要5社の株価動向

■決算発表で悪材料出尽くしとなる可能性

 家電量販店主要5社の株価は概ね、当面の業績悪化に対する警戒感や、薄型テレビ販売不振の長期化懸念などで、戻りの鈍い展開が続いている。また足元では、ビックカメラ<3048>(東1)が業績下振れ観測報道、コジマ<7513>(東1)が業績見通しの下方修正発表で売られ、他の3社の株価にも影響した。

 しかし、今期の業績悪化懸念については、ある程度は織り込まれたと考えられるだけに、決算発表で悪材料出尽くしとなる可能性があり、出遅れ感に対する見直し買いが期待されるだろう。

 四半期ベースで見れば、12年4月〜6月期が業績のボトムとなる可能性も考えられるだけに、12年後半以降の業績改善に対する期待感が強まる可能性があるだろう。

 さらに、ロンドン五輪に向けて、大型テレビや高画質テレビへの買い替え需要、DVDレコーダーの販売増などが話題となる可能性もあるだろう。

 エディオン<2730>(東1)の株価は、550円近辺〜650円近辺の安値圏でのボックス展開が続き、足元では26週移動平均線が戻りを圧迫する形で底練り展開となっている。12年3月期通期の業績悪化懸念については、ある程度は織り込み済みと考えられるだけに、12年3月期の決算発表で悪材料出尽くしとなり、13年3月期後半の業績改善に向けた期待感が強まる可能性があるだろう。

 ビックカメラ<3048>(東1)の株価は、足元では12年8月期通期見通しの下振れ懸念で売られる場面もあり、4万円台前半でモミ合う展開となっている。しかし下振れ懸念をある程度は織り込んだと考えられるだけに、11年9月〜12年2月累計決算発表で通期見通しが下方修正されれば、悪材料出尽くし感につながり、13年9月期の収益改善に向けた期待感が優勢になる可能性があるだろう。

 コジマ<7513>(東1)の株価は、12年3月期通期連結業績見通しの下方修正発表を受けて急落した。足元では450円台まで下落し、ボックスレンジ切り下げや下放れが警戒される形となった。指標面では割安感も台頭しているが、当面は下値固めが必要だろう。また、従来のボックスレンジへの回帰や、26週移動平均線の突破もポイントになるが、13年3月期の業績見通しにポジティブな材料があれば、出直りも期待されるだろう。

 ケーズホールディングス<8282>(東1)の株価は、13週移動平均線が戻りを圧迫する形となって、足元では2600円〜2800円近辺でモミ合う展開である。当面は13週移動平均線、26週移動平均線の突破がポイントになるだろう。12年3月期通期の業績悪化懸念については、ある程度は織り込み済みと考えられるだけに、決算発表で悪材料出尽くし感につながり、13年3月期後半の業績改善に向けた期待感で反発の可能性があるだろう。

 ヤマダ電機<9831>(東1)の株価は、足元では26週移動平均線が戻りを圧迫する形となり、5000円台前半でモミ合う展開となっている。当面は26週移動平均線の突破がポイントになるが、12年3月期通期の業績悪化懸念については、ある程度は織り込み済みと考えられるだけに、決算発表で悪材料出尽くし感につながり、13年3月期後半の業績改善に向けた期待感が優勢になる可能性があるだろう。



【家電量販店銘柄診断】
・コジマは省エネ家電製品、住宅リフォーム、太陽光発電システムなど積極推進へ
・ヤマダ電機は13年3月期後半の業績改善に向けた期待感が優勢になる可能性
・ビックカメラは結売上高8000億円、連結経常利益400億円を目標
・ケーズホールディングスはドミナント出店戦略とS&Pによる店舗の大型化を推進
・エディオンは「エコ・リビングソーラー」ビジネスを成長分野と位置付け事業展開加速