2008年7月
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

JTの決算とセグメント拝見


JTのホームページJT<2914>(東1)
食品事業は毒入り冷凍餃子問題が尾を引く
医薬事業は開発製品が目白押し


【2008年3月期について】
国内1677億本、海外はギャラハー効果で3856億本と
販売本数は海外が国内の2倍規模


 国内たばこ=タバコ販売本数は1677億本で07年3月期に比べて71億本減少、率にして4.1%減少した。このため、売上高では1.6%の減収となった。数量4.1%減に対し金額では1.6%減と小幅だったのは、06年7月の定価改定がフルに寄与したため。
 海外たばこ=販売本数は3856億本と1455億本増加、率にして60.6%の大幅増加となった。これは、2007年春、シガレット販売数量において世界5位の英国ギャラハ−(Gallaher)社を買収した効果による。振り返って、1999年には、RJRナビスコ社より米国以外の全海外たばこ事業を取得している。現在、世界約120カ国においてJTの海外たばこ事業を展開。
 医薬=前年度に比べ売上は36億円の増収、率では7.9%増だったビラセフトロイヤリティのが減少したが、2004年10月にロッシュ社へ導出した脂質代謝異常治療薬「JTT−705」の開発進展に伴うマイルストーン(開発プロジェクトの中で工程遅延等は許されない節目)収入や、鳥居薬品における増収などが寄与した。同事業の営業損益はケリックス・バイオファーマジューティカルズ社からの高リン血症治療薬の導入に伴う契約一時金を含めた研究開発費の増加等があったが、マイルストーン収入により赤字幅が縮小した。
 食品=加ト吉グループの連結化等により前年比498億円増収、率で17.4%増加した。しかし、営業利益は原材料費の増加、加ト吉グループ買収に伴うノレン代償却で90.1%の減少。

JT(2914・東証1部)
【売上セグメント】億円  06.3期  07.3期 08.3期 09.3期予
国内たばこ 34,052 34,162 33,623 本数減少
海外たばこ 8,811 9,996 26,399 本数増加
医薬 492 454 490
食品 2,783 2,865 3,364
(合計) 46,376 47,693 64,097 66,100
【営業利益セグメント】億円 06.3期  07.3期 08.3期 09.3期予
国内たばこ 2,200 2,453 2,223
海外たばこ 710 810 253 ノレン償却
医薬 ▼50 ▼112 ▼96
食品 63 67 6 ノレン償却
(合計) 3,069 3,319 4,305 3,110
06.3期  07.3期 08.3期 09.3期予
営業利益率 6.6 7.0 6.7 4.7
配当 16,000 4,000 4,800 5,200
1株利益 105,084 22,001 24,916 15,448
株価 414,000 579,000 499,000 443,000
(2009年の株価は6月27日) %、円  ※06年3月に5分割
合計はその他も含む
【2009年3月期について】
 売上及び営業利益ともセグメント予想数値は公表されていない。文字情報では次の通りだ。これによると、「国内たばこ事業は総需要の減少拡大により販売数量の減少を見込む。海外たばこ事業においては、日本円に換算する際の不利な為替影響はあるものの、2007年4月より連結したギャラハーの通期寄与及びGFB(グローバル・フラッグシップ・ブランド)の伸長を見込んでいる。営業利益においては、会計基準の変更に伴う海外たばこ事業のノレン償却開始、及び加ト吉のノレン償却が発生する。原材料費の増加もあって営業利益は27.8%の減益見通し。経常利益については為替差損の減少を見込むものの、営業利益の減少とギャラハー社の買収に伴い増加した借り入れ金や社債に関連した支払い利息がフルにかかってくるため23.3%減益の2780億円の見通し」。特に、営業利益率は4.7%へ大きく低下する。


【投資判断について】
相次ぐ買収で海外たばこノレン金額が総資産の40.2%に達する
減損損失発生も


@ノレン償却の増加は気になる。1999年、RJRナビスコの米国以外のタバコ事業買収と、2007年4月のギャラハーの買収で、海外のたばこ事業におけるノレン金額は総資産の40.2%を占める。
→→仮に、先行き、期待する成果が得られない場合は減損損失が発生する。有利子負債も1兆3892億円と多い。
A2008年3月にカナダで、ニューブランズウイッグ州が同社グループの現地法人を含む、たばこ会社に対して「医療費返還訴訟」を提起した。
→→健康に関する同様な動きが各国で起きる可能性が無しとは言い切れない。
B国内で、たばこ値上げ論が台頭。
1箱1000円説まで飛び出し、値上げを巡って議員連盟までできた
→→仮に値上げなら需要減少が懸念される。1箱500円でも影響は大きいが、1箱1000円なら打撃は相当大きいことが予想される。日本男性の喫煙率が英米に比べて高いのは、たばこ料金の開きが大きいともいわれる。また、7月から東京で、パスコの導入が行われるため需要の足を引っ張る可能性がある。
Cタバコ以外の事業が寄与していない
→→特に、医薬事業はまだ赤字である。ただ、研究開発の進展には注目できる。肥満症治療薬「JTT553」、糖尿病治療薬「JTT651」、「JTT654」C型肝炎治療薬「JTK652」、鎮痛剤・過活動膀胱治療薬「JTS」などの臨床試験段階への移行により、自社開発品11品目が臨床試験の段階にある。また、07年9月にケリックス・バイオファーマシューティカルズ社と米国で第U相臨床試験を実施中の高リン血症治療薬について、日本における独占的開発、商業化権を取得するライセンス契約を子会社鳥居薬品と共に締結した。
D毒入り餃子の影響
→→農薬混入冷凍餃子問題で2月以降の冷凍食品は低調。今期もこの影響がフルにかかってくる見通しだ。加工食品(冷凍食品など)のほかに飲料事業、調味料事業を手がける。2008年1月8日に子会社とした加ト吉グループと事業統合には期待がもてる。

【株価・投資指標】
PER28.7倍は割高
2006年6月の安値36万2000円を見に行く可能性も


 2008年の高値68万1000円(1月)、安値41万2000円(6月)。中間値54万6500円、6月27日終値44万3000円。PER28.7倍、利回り1.17%、PBR2.0倍。
 株価は安値圏にあり、かつ、強弱のバランスである中間値を10万円も下回っている。これは、冷凍餃子が社会的な問題となっただけに、機関投資家等は手を出し難い面もある。また、今期が営業減益見通しにあり、特に営業利益率のダウンが響いている。7月からのパスコ導入による需要減少懸念に加え、タバコの大幅な値上げ問題が浮上していることがある。健康にとって、「百害あって一利なし」、とドクターが口をそろえるだけに、タバコを取り巻く環境は厳しい。少しでも早く、医療、食品が親孝行することだ。指標面での割安感がないだけに2006年6月の安値36万2000円を見に行く可能性はある。

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.07 |特集