「水」事業関連銘柄特集
「水」事業関連銘柄特集

新興国中心に飲料・生活用水確保のためインフラニーズ高まる


新興国の経済発展により深刻化する水不足
経済発展や人口増加で世界規模での水不足が深刻化

水事業関連銘柄 BRICsをはじめとした新興国の経済発展により、石油資源の枯渇が懸念されている今日であるが、もう一つ、しかも石油資源以上に不足の深刻化が懸念されている資源がある。それは「水」である。
 「世界の工場」として急速な経済発展を遂げる中国では、産業用水需要の急増と生活水準向上に伴う飲料用水需要の増加に加え、国土の砂漠化により、水資源の需給バランスが大きく崩れてきている。また、オイルマネーによる急速な経済発展を遂げる中東産油諸国では、元来水資源に恵まれないにも関わらず、需要の急増で飲料用水の安定的な供給確保が急務となっている。

 そうした「水」の安定的供給に貢献する技術として注目されるものの一つに、「海水淡水化技術」が上げられる。海水に含まれる塩分を除去して、飲料などに適した淡水に転換する技術のことであり、離島や慢性的な水不足に悩む地域における渇水対策として期待され、海外においても中国や中東産油国で活用されている。
 既に世界全体では1日に2,000万立方メートル以上の飲料水が海水から製造されているが、世界規模での水不足、特に飲料用水確保の観点から、さらなる製造量の増加が期待される。
●主な水事業関連銘柄
海水淡水化装置銘柄 ササクラ<6303>、神鋼環境ソリューション<6299>、日立造船<7004>、IHI<7013>
ポンプ銘柄 酉島製作所<6363>
淡水化プロジェクト銘柄 三井物産<8031>、三菱商事<8058>
水処理膜銘柄 東洋紡績<3101>、東レ<3402>、日東電工<6988>
 その海水淡水化技術に必要なものとして「水処理膜」も注目される。海水に圧力をかけ、海水をこす逆浸透法などの手法を使う時に使用されるものであり、それ以外にも半導体などの製造用水として、水処理施設でも利用が増加している。
 下廃水処理の分野においても、水処理膜を使った生物処理技術であるMBR(メンブレンバイオリアクター)が注目され、処理水質が良く設備設置面積が小さいという利点から急速に需要が拡大している。水処理膜の市場規模は、2025年には4,400億円に達すると推測されている。

 経済発展に当然不可欠な「水」であるが、それ以前に人類の生命維持という、地球にとっての最重要課題であり、最重要資源である「水」。この「水」事業に関わる企業への期待度は従来以上に高まることは必須であり、そうした銘柄をここで注目してみたい。

ニーズ高まる海水淡水化技術

ササクラの淡水化装置 飲料・生活用水の安定的確保という観点からますます注目の高まる「海水淡水化技術」。この淡水化技術に必要な淡水化装置を手掛ける企業として、ササクラ<6303>が挙げられる。海水淡水化装置の専門メーカーとして設立され1966年に一号機を納入、現在では業界屈指の淡水化技術と実績を有するリーディングメーカーの地位を確立している。多段フラッシュ型海水淡水化装置の技術を基に、大型から小型まで各種装置や省エネルギータイプの装置として注目されている逆浸透式淡水化装置は世界の多くの国々で建設されており、「海水淡水化装置のササクラ」として同社の代名詞とも言える主力ビジネスとなっている。
 神鋼環境ソリューション<6299>は、逆浸透法を用いた浸出水処理システム「DTモジュールシステム」により、海水淡水化や半導体用の超純水製造に用いられる逆浸透膜を利用した水処理技術を特徴としている。
 一方、日立造船<7004>は、装置とブラインポンプを小型化し、高熱回収することでランニングコストの低減に成功したプラント「VTE多重効用造水装置」を開発。海水淡水化プラントとして積極的に活用され、海外や国内電力各社に安定した納入実績を上げている。
 さらにIHI<7013>は、生活産業の一環として、特に海水に限定しているわけではないが、ろ過膜で原水をろ過し、生活用水や飲料水を確保出来る非常用浄水装置を開発・販売している。

海水・塩素に強いポンプ

酉島製作所の海水ポンプ 当然のことながら「水」を扱う以上、各装置やプラントに必要になってくるものがポンプである。特に海水を扱い、淡水化時に使用される塩素に強い耐性を誇るポンプが不可欠となってくる。
 そのポンプメーカーとして酉島製作所<6363>は、海水淡水化装置や発電所の復水器冷却用さらに工業団地の海水取水ポンプなど、大型化する海水ポンプ(=写真)の需要に対応、
 さらに、耐海水材料の研究も意欲的に推進し、耐海水材料のアルミニウム青銅製やニレジスト鋳鉄製の海水ポンプを開発し、サウジアラビアなど中東諸国の海水淡水化プラントに多く活用されている。

商社「水」ビジネスを後押し

 メーカーのように装置やプラントを製造しているわけではないが、プロジェクトとして商社も「水」ビジネスの促進に一役買っている。
 三井物産<8031>は、食糧ビジネスに続き、プロジェクト本部の1分野として海水淡水化事業に関わっている。各関連メーカーにとって需要の旺盛な中東諸国向けとの取引には商社の存在が不可欠であり、同社の「水」ビジネスプロジェクトも今後拡大していく可能性が高い。
 また、三菱商事<8058>も、イノベーション事業の一つとして「水」関連ビジネスに今後注力していく方針である。

淡水化技術向上に不可欠な水処理膜

 海水淡水化技術の向上に不可欠な「水処理膜」。この水処理膜を製造販売する企業も今後ニーズの増加で業績拡大への期待が持たれる。
 水処理膜には現在大きく分けて3種類あり、そのうちの一つであるRO膜(逆浸透膜)は、イオンレベルの物質を除去でき、海水を淡水化するために最も多く利用されている膜である。低コストということもあり、海水をこすことで淡水を取得する逆浸透法が普及する昨今において、最もニーズの高い製品とも言える。二つ目はUF膜(限外ろ過膜)・MF膜(精密ろ過膜)であり、共に圧力を駆動力とする分離法に利用されている。
 UF膜は飲料水や産業用水製造用途のみならず、海水淡水化や下水再利用の前処理に利用され、MF膜は地下水など濁質や有機物をほとんど含まない原水に対して利用されるものである。さらにもう一つは膜を使った生物処理技術であるMBR(メンブレンバイオリアクター)であり、下排水処理施設に多く利用されている。

東洋紡のホロセップ 海水淡水化技術に最も有効といえるRO膜を手掛ける企業の一つに、東洋紡績<3101>が挙げられる。同社の「ホロセップ」はイオンを通さず、水だけを透過させる中空糸型膜であり、中空糸膜のため膜自身による自己汚染がない点を強みとしている。また単位体積当たりの膜面積を大きくとることで膜への負担を抑え、コンパクトな形状ながら稼働率の向上にもつながっている。さらに淡水化時に使用される塩素に対しても優れた耐性を誇っており、交換サイクルの長期化でランニングコストの削減も可能である。
 国内では福岡の国内最大規模の海水淡水化施設(日量5万立方メートル)に採用されており、回収率は世界最高レベルの60%と、高効率の海水淡水化施設となっているほか、海外においてもサウジアラビアのジェッダ市およびヤンブ市ではRO膜にとって過酷な条件となる高温・高塩濃度海水でそれぞれ日量11万4千立方メートル、12万8千立方メートルの高品質の飲料水の製造に成功している。今後も、同国のラービグ市において中東湾岸諸国最大の逆浸透膜法海水淡水化プラント(日量20万5千立方メートル)にも採用されることが決まり、業績へのさらなる貢献が期待される。

東レの淡水化プラント 一方、東レ<3402>は、海水淡水化用の逆浸透(RO)膜事業で、アラビア湾(ペルシア湾)沿岸の4箇所の海水淡水化プラント向けに相次いでRO膜の受注に成功した。合計造水量は33.2万m3/日で、いずれも本年度以降に稼働開始する予定。特にフジャイラU海水淡水化プラントやシュウェーク海水淡水化プラントは、ハンマ海水淡水化プラント(アルジェリア、造水量20万m3/日)やシュアイバ海水淡水化プラント(サウジアラビア、造水量15万m3/日)などに続く大型案件の受注であり、来期以降の業績に大きく寄与するものと見込まれる。同社の海水淡水化分野における造水量換算の累積受注実績は280万m3/日を超え、この分野ではトップシェアを達成、今後も中東諸国のみならず、飲料・生活用水需要の旺盛な中国、インド、オーストラリアなどでの受注に力を入れていく予定である。

日東電工のエレメント また、日東電工<6988>が開発した海水淡水化用RO膜エレメントである「NTR−70SWC」は、脱塩率の飛躍的な向上を達成しているほか、各種無機イオン成分のみならず、農薬、有機ハロゲン化合物などの有機物にもすぐれた阻止性能を発揮することに成功、無尽蔵の海水を高効率で飲料水やプロセス用水に変え、切迫する水需要に応えている。
 海水淡水化用のUF膜についても、東レ<3402>が従来比約2分の1のろ過圧力で運転可能なPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製中空糸UF(限外ろ過)膜モジュールを開発し、海水淡水化の前処理段階で効果を発揮している。

 前述の如く、産業の発展、生活水準の向上に伴い、年々「水」の需要は世界規模で増加している。また発展途上国においても医療水準の向上などの面において、如何に新鮮な「水」を提供出きるかが鍵を握っているとも言える。命の源泉とも言える「水」、究極の資源とも言える「水」。この「水」に関わる企業は地球規模でのニーズ増加を受けて今後、大きく飛躍する可能性を秘めていると言えよう。

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.09 |特集