「水」関連銘柄特集 水需要の増加と水資源の不足で水ビジネス市場が拡大

水需要の増加と水資源の不足で水ビジネス市場が拡大

2025年の世界の取水量は2000年に比べて約3割増加
■世界的に水資源の不足や水質の汚染が深刻化

水事業関連銘柄 アジアや中南米など、新興国における人口の増加、工業化の進展、生活水準の向上などによって、世界的に水需要が増加している。水は農業や畜産業にも大量に使用される。その一方では、世界的に水資源の不足や水質の汚染が深刻化しているため、世界の水ビジネス市場の拡大が予測されている。

 経済産業省の水ビジネス国際展開研究会が2010年4月にまとめた報告書「水ビジネスの国際展開に向けた課題と具体的方策」によると、世界の水ビジネス市場の規模(1ドル=100円換算)は、2007年の合計36.2兆円から2025年には合計86.5兆円(業務分野別の内訳は、素材・部材・コンサル・建設・設計が16.9兆円から48.5兆円、管理・運営サービスが19.3兆円から38.0兆円)に拡大すると予測している。

 さらに、この内訳を事業分野別に見ると、上水が17.2兆円から38.8兆円(素材・部材・コンサル・建設・設計が6.6兆円から19.0兆円、管理・運営サービスが10.6兆円から19.8兆円)、海水淡水化が1.2兆円から4.4兆円、工業用水・工業下水が2.4兆円から5.7兆円、再利用水が0.1兆円から2.1兆円、下水が15.3兆円から35.5兆円(素材・部材・コンサル・建設・設計が7.5兆円から21.1兆円、管理・運営サービスが7.8兆円から14.4兆円)に拡大すると予測している。

 同報告書によると、地球表面には約13.9億キロ立方メートルの水が存在する。しかし、その大部分は海水や氷河などであり、人類が利用可能な淡水源(浅地下水や河川水など)は、このうち0.001億キロ立方メートルと全体の約0.01%に過ぎない(出所:国土交通省水資源部平成21年度版日本の水資源)という。また、一人当たりの水使用量は、生活水準の向上に伴って増加するため、世界の水使用量は、世界の人口増加率を遥かに上回るペースで増加しているという。そして今後も、人口の増加、生活様式の変化、産業の発展に伴って、生活用や工業用の水需要が著しく増加するため、2025年の世界の取水量は2000年に比べて約3割増加すると見込まれている。

>>水処理関連銘柄一覧

水処理ニーズに対応した水ビジネスが急速に拡大

 日本は水資源が豊富な国とされ、これまでのところは深刻な水不足が顕在化しているとは言えず、国民の水不足に対する意識も決して高いとは言えないだろう。しかし、世界各地から農産物を輸入することにより、その農産物の生産に使用した灌漑用水を仮想水(バーチャル・ウォーター)として輸入しているとの指摘がある。その仮想水の量は年間800億立方メートル(2005年環境省推定)に達し、日本全体の年間水使用量834億立方メートル(2005年国土交通省水資源部推計)に匹敵しているという。この点で見れば、日本も世界の水不足と無縁ではないと、同報告書は指摘している。

 世界的に水需要が増加する一方では、水質汚染も顕在化・深刻化しており、清浄な水資源は減少している。特に新興国では、産業の発展に伴って工業用水の使用・排出が増加し、都市化の進展や生活水準の向上に伴って生活用水の使用・排出が増加しているが、工業排水や下水の処理への対応が遅れている。さらに、農業の近代化や生産量の増加に伴って、水系に流出する肥料由来の栄養塩(硝酸性窒素)が増加し、水域の富栄養化も進んでいる。つまり、資源として利用可能な水量が限られているだけでなく、水質の悪化によっても水資源は減少していることになる。

 また同報告書では、水資源の不足と水質の悪化という、量と質の両面で世界が直面している水問題を解決するためには、水へのアクセス改善、水資源の有効利用、下水の再生(再利用)、海水の淡水化などに加えて、これらのプロセスを省エネルギー化する水循環システムの構築が求められるとしている。そして上水、造水、工業用水・工業下水、再利用水、下水、農業用水の各事業分野において、地域における水処理ニーズに対応した水ビジネスが、急速に拡大すると予測している。

水ビジネス関連領域は、装置・処理設備・プラント、部材、運営サービスなど

 水ビジネスの関連領域としては、上下水道のインフラ・高度処理設備(上下水道菅、浄水場、下水処理場)、海水淡水化プラント、産業排水の処理・再利用設備、工業用純水製造装置、下水汚泥の再資源化設備、河川・湖沼などの水質浄化設備、農業用水・灌漑設備、および水中ポンプ・水処理膜(逆浸透膜、精密ろ過膜など)・薬品・吸着剤・微生物などの部材、上下水道の運営管理・料金徴収サービスなどがある。さらに、家庭用浄水器やミネラルウォーターなども関連領域と言えるだろう。

 上下水道事業は、国民生活に不可欠なライフラインであるため、国や地方自治体が行なうケースが多い。しかし、自治体の財政面での制約などで、民間活力導入への期待も大きく、世界的に見れば欧州を中心に民営化が進んできた。そして世界の民営化された水道事業市場は、給水人口ベースで見ると1999年の3.5億人から2009年には8億人に拡大している。

 世界の水ビジネス市場の主要企業を見ると、水メジャーと呼ばれるスエズ社(仏)、ヴェオリア社(仏)をはじめ、SAUR社(仏)、Agbar社(スペイン)、RWE社(独)、テムズ社(英)など、欧州系の総合水道事業会社が上位を占めている。特に、早くから水道事業が民営化した仏では、水メジャーが自国における水道事業の運営・管理を通じて、設備設計・調達・建設から事業運営・管理まで、一貫して受託するノウハウを蓄積したことが強みとされている。

 ただし最近では、GE社(米)やシーメンス(独)などが事業を強化していることに加えて、ハイフラックス社(シンガポール)や斗山社(韓国)なども政府の支援を得て、中国、中東、北アフリカなどで受注攻勢を強めている。そして市場拡大とともに、技術面での差別化が困難になってきたことや、新興国の現地企業の台頭などもあり、欧州系水メジャーの世界シェアは2001年の73%をピークとして、2009年には34%に低下しているという。

放射性物質などに対する吸着材や水処理膜などの浄化技術が注目

 日本の企業は、水処理関連の装置メーカー、部品メーカー、素材メーカー、プラント・エンジニアリング企業、総合商社などが、それぞれ得意とする分野で、概ね個別に事業展開している。そして超純水製造装置、水処理膜、水中ポンプ、漏水防止関連技術、下水再利用技術、下水汚泥再資源化技術など、個別分野では競争力の高い技術を有する企業が多く、世界的に高シェアを誇っている製品も多い。ただし、日本の水処理関連技術は世界トップクラスを誇るとされているが、日本の場合は事業運営を自治体がほぼ独占しているため、民間企業には水道事業の運営・管理に関する経験やノウハウが乏しく、欧州系の水メジャーとの比較で見れば、総合的に水ビジネスを展開している企業は少ない。

 日本でも2002年の改正水道法施行により、浄水場管理などの民間委託が可能になった。現在の民間委託率は1%程度にとどまっており、依然として上水道インフラ・施設の大部分は自治体が担っているが、厚生労働省が自治体と水処理関連企業を仲介する会議を開催するなど、浄水場管理・運営などの民間委託の拡大へ向けて、徐々に動き出している。

 国内の上水道インフラ・施設の多くは、その整備から30年以上を経過して腐食、破損、悪臭などの問題が目立ち始めている。これらの老朽化した上水道インフラ・施設が相次いで更新時期を迎えることは、巨大な水処理関連需要が発生するだけでなく、自治体の財政悪化なども考慮すれば、浄水場管理などの民間委託を後押しする要因になるとの見方がある。

 さらに、2011年3月に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故では、大量の高濃度汚染水が警戒されたうえに、東京都の浄水場などで基準値を超える放射性物質が検出されたこともあり、国民の間では水の重要性に対する認識が高まった。福島第一原子力発電所の高濃度汚染水については、仏アレバ社の浄化技術を活用する模様だが、今後も放射性物質などに対する吸着材や水処理膜などの浄化技術が注目されるだろう。また、家庭用浄水器やミネラルウォーター関連の需要も拡大するだろう。

 船舶の分野でも、船舶の安定性を保つバラスト水の浄化規制に対応し、国際海事機構(IMO)が2017年をメドとして、バラスト水の浄化装置の搭載を義務付ける方針であり、微生物殺菌装置などを含めて約2兆円の市場が発生すると見込まれている。

国内外で事業拡大を狙う関連企業

 2008年に14社で発足した企業連合「海外水循環システム協議会(GWRA)」は、水処理装置・部品関連メーカーを中心として、ゼネコン、総合商社、金融なども含めて、参加企業が約50社に達している。これまで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託事業として、アラブ首長国連邦(UAE)の再生水処理施設案件を手掛けたが、海外政府からの直接受注の実績はなく、政府との官民連携も強化していくことが今後の課題とされている。

 ただし、企業間の連携などで総合力を強化し、和製メジャーを目指す動きは活発化している。日本ガイシ(5333)富士電機(6504)グループは2008年4月、両社の水処理事業を統合してメタウォーターを設立した。荏原製作所(6361)、日揮(1963)三菱商事(8058)の3社は、水インフラ事業で提携して、水ing(スイング)(旧荏原エンジニアリングサービスが11年4月に社名変更)に共同出資している。三菱ケミカルホールディングス(4188)は、2010年10月に三菱レイヨンを完全子会社化し、傘下の三菱化学と三菱レイヨンの水処理事業を統合した。

 また日立製作所(6501)は、2015年度までにグループの水インフラ事業の売上高を、2009年度に比べて7割増の2000億円とする目標を掲げている。このため、水道メーター検針業務最大手の第一環境にも出資して、水道施設の維持管理から水道料金徴収まで、水道関連の総合サービスを一括提供できる体制を整えた。

 有力自治体も、アジアや中東など水道インフラ整備が遅れている地域で、水道関連事業を展開する動きを強めている。東京都は民間と共同で設立した東京水道サービスを通じて、新興国での水事業へ参入することを表明している。横浜市も民間と連携して水ビジネスを海外展開する。水ビジネスの海外での受注に向けた官民連携が動き始めた形であり、国策として水道インフラ輸出を推進することになる。

注目の水処理関連銘柄

ササクラの淡水化装置 調査会社の富士経済によると、プラント・エンジニアリングを手掛ける国内17社の2011年度の水関連事業の合計売上高は、2009年度比15.2%増の8308億円になると予測している。国内需要は減少傾向だが、中国など新興国で上下水道整備、排水処理設備、水処理装置の受注が拡大する。17社の海外売上高比率は2009年度の5.4%から2011年度には14.5%に上昇するとしている。また水関連施設の建設だけでなく、維持管理や水道料金の徴収などサービス事業も拡大すると予測している。

酉島製作所の海水ポンプ 素材・部材・コンサル・建設・設計分野の関連企業としては、日本工営(1954)日揮(1963)、日立プラントテクノロジー(日立製作所が完全子会社化)、日本上下水道設計(2325)東洋紡績(3101)東レ(3402)旭化成(3407)クラレ(3405)帝人(3401)、三菱レイヨン(三菱ケミカルホールディングスが完全子会社化)、三菱ケミカルホールディングス(4188)、野村総合研究所(4307)日本ガイシ(5333)JFEホールディングス(5411)、JFEエンジニアリング(JFEホールディングスの完全子会社)、野村マイクロ・サイエンス(6254)神鋼環境ソリューション(6299)ササクラ(6303)クボタ(6326)東洋エンジニアリング(6330)三菱化工機(6331)月島機械(6332)鶴見製作所(6351)荏原製作所(6361)酉島製作所(6363)千代田化工建設(6366)オルガノ(6368)栗田工業(6370)水道機工(6403)日立製作所(6501)三菱電機(6503)富士電機(6504)、メタウォーター(富士電機と日本ガイシが両社の水処理事業を統合して08年4月設立)、安川電機(6506)、水ing(荏原製作所、日揮、三菱商事の3社が共同出資している旧荏原エンジニアリングサービス)、日東電工(6988)日立造船(7004)三菱重工業(7011)IHI(7013)ダイセキ(9793)などがあるだろう。

 総合商社の双日(2768)伊藤忠商事(8001)丸紅(8002)豊田通商(8015)三井物産(8031)住友商事(8053)三菱商事(8058)は、中国、インド、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、メキシコ、チリ、ペルーなど、アジア、中東、アフリカ、中南米の新興国市場で、水道事業会社などへの出資を活発化させている。総合商社にとって水ビジネスというのは、海外電力関連ビジネスと同様に、単なる装置やプラントなどの販売にとどまらず、国際市況に収益が左右されることが少ないうえに、料金の徴収などを通じて長期安定的な収益源となることが特徴である。



●水処理関連銘柄一覧
コード 銘柄名 市場 業種 項目
1751 日立プラントサービス JQS 建設業 水処理機
1775 富士電機E&C 東2 建設業 水処理機
1954 日本工営 東1 建設業 水処理装置
1963 日揮 東1 建設業 プラント
1978 アタカ大機 東1 機械 水処理機
2325 日本上下水道設計 東2 サービス業 水処理装置
2768 双日 東1 卸売業 プラント
3024 クリエイト JQS 卸売業 水処理機
3101 東洋紡 東1 繊維製品 水処理膜
3106 クラボウ 東1 繊維製品 水処理機
3361 トーエル JQS 小売業 飲料水
3401 帝人 東1 繊維製品 水処理膜
3402 東レ 東1 繊維製品 水処理膜
3405 クラレ 東1 繊維製品 水処理膜
3407 旭化成 東1 化学 水処理膜
3880 大王製紙 東1 パルプ・紙 水処理機
4007 日本化成 東1 化学 水処理機
4100 戸田工業 東1 化学 水処理機
4188 三菱ケミカルホールディングス 東1 化学 水処理装置
4202 ダイセル化学工業 東1 化学 水処理膜
4307 野村総合研究所 東1 情報・通信 水処理装置
4653 ダイオーズ 東1 サービス業 飲料水
5333 日本ガイシ 東1 ガラス・土石製品 プラント、水処理機
5401 新日本製鐵 東1 鉄鋼 水処理装置
5411 ジェイ エフ イー ホールディングス 東1 鉄鋼 水処理装置
5713 住友金属鉱山 東1 非鉄金属 水処理装置
5715 古河機械金属 東1 非鉄金属 水処理装置
6254 野村マイクロ・サイエンス JQS 機械 水処理装置
6299 神鋼環境ソリューション 東1 機械 水処理装置
6302 住友重機械工業 東1 機械 水処理装置
6303 ササクラ 大2 機械 海水淡水化
6326 クボタ 東1 機械 水処理膜
6330 東洋エンジニアリング 東1 機械 水処理装置
6331 三菱化工機 東1 機械 水処理装置
6332 月島機械 東1 機械 水処理装置
6351 鶴見製作所 東1 機械 水処理装置
6361 荏原 東1 機械 プラント
6363 酉島製作所 東1 機械 プラント
6366 千代田化工建設 東1 建設業 プラント
6368 オルガノ 東1 機械 プラント
6370 栗田工業 東1 機械 プラント
6403 水道機工 JQS 機械 水処理装置
6489 前澤工業 東1 機械 水処理装置
6501 日立製作所 東1 電気機器 水処理装置
6503 三菱電機 東1 電気機器 水処理装置
6504 富士電機ホールディングス 東1 電気機器 海水淡水化、水処理装置
6506 安川電機 東1 電気機器 水処理装置
6757 OSGコーポレーション JQS 電気機器 整水機器
6788 日本トリム 東1 電気機器 整水機器
6988 日東電工 東1 電気機器 水処理膜
7003 三井造船 東1 機械 プラント
7004 日立造船 東1 機械 プラント
7011 三菱重工業 東1 機械 プラント
7013 IHI 東1 機械 プラント
8001 伊藤忠商事 東1 卸売業 海水淡水化、プラント運営
8002 丸紅 東1 卸売業 海水淡水化、プラント運営
8015 豊田通商 東1 卸売業 プラント
8031 三井物産 東1 卸売業 海水淡水化、プラント運営
8053 住友商事 東1 卸売業 海水淡水化、プラント運営
8058 三菱商事 東1 卸売業 海水淡水化、プラント運営
9793 ダイセキ 東1 卸売業 プラント

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2011.05 |特集