2009年07月14日
パソコン関連銘柄特集:国内市場低迷で低価格化の流れへ
■新興国で低価格PCの需要が拡大

 国内のパソコン(PC)市場では、出荷台数の低迷が続いている。企業が業績悪化を背景として、IT(情報技術)関連投資を抑制していることが主因である。また「ネットブック」と呼ばれるミニノート型の人気一巡も懸念されている。中期的にも、低価格化の進展、多機能携帯端末との競合など、パソコン市場を取り巻く環境が急速に変化している状況下で、世界市場での存在感が薄れた日本メーカーの戦略が問われている。
 電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、08年度(08年4月〜09年3月)のパソコン(PC)国内出荷台数は前年度比5・5%減の879・2万台だった。このうちデスクトップ型は同13・4%減の282・8万台、ノート型は同1・2%減の596・3万台、ノート型の内訳はモバイルノートが同0・4%減の126・9万台、A4型・その他が同1・4%減の469・4万台だった。また国内出荷金額は同14・0%減の9758億円で、このうちデスクトップ型は同18・0%減の3125億円、ノート型は同11・9%減の6633億円だった。
 また09年4〜5月累計で見ると、国内出荷台数は前年同期比8・9%減の128・0万台と低迷が続いている。このうちデスクトップ型は同19・7%減の36・5万台、ノート型は同3・7%減の91・5万台だった。ノート型の内訳は、モバイルノートが同4・9%増の21・2万台、A4型・その他が同6・1%減の70・3万台だった。また、4〜5月累計の国内出荷金額は同24・5%減の1280億円だった。

 
中国など新興国市場を中心に低価格パソコンの需要は拡大

 世界市場で見ても、新興国市場を中心に低価格パソコンの需要は堅調だが、先進国市場では企業向け需要が低調な模様である。米国の調査会社ガートナーによると、09年1〜3月期の世界パソコン出荷台数は前年同期比6・5%減の6720万台(一部サーバーを含む)だった。米国市場では、低価格パソコンで攻勢をかける米国ヒューレート・パッカードや、台湾エイサーの市場シェアが上昇する一方で、法人向けが主力の米国デルや、高価格機種が主力の米国アップルは市場シェアを落としている模様だ。
 また米国の調査会社ガートナーは、09年の世界パソコン出荷台数が前年比6・0%減の2億7400万台になると予測し、ITバブル崩壊後の01年以来となるマイナス成長を見込んでいる。小型・低価格機種の普及でノート型は同4・1%増加するが、企業向けが中心のデスクトップ型が同15・7%減少する見込みだ。また米国マイクロソフトが、今年10月に新型基本ソフト(OS)の「ウインドウズ7」の発売を予定しているが、需要喚起の効果については慎重に見ている模様だ。
 米国の調査会社ディスプレイサーチは、08〜12年の世界のパソコン市場成長率(出荷台数ベース)を年率13・0%増と予測している。このうち、低価格パソコン(画面サイズが10型以下で、実売価格が4〜6万円の小型パソコン)が年率25・4%増、ノートパソコンが年率10・9%増と予測している。中国など新興国市場を中心に低価格パソコンの需要が拡大し、パソコン市場全体を牽引する見込みだ。しかし日本市場での低価格パソコンの成長率は、年率4・0%増にとどまる見込みだ。2台目需要としての低価格パソコンの人気が一巡するためとしている。

低価格パソコンの主要メーカー検証

■国内主要メーカーも低価格パソコンに本格参入

 低価格パソコンについては国内市場でも、08年から米国ヒューレット・パッカードや台湾エイサーが発売し、個人向けの2台目需要を掘り起こす形で人気化した。そして日本のメーカーも、東芝<6502>NEC<6701>が08年秋から参入し、富士通<6702>は今年4月、ソニー<6758>は6月、国内の低価格パソコン市場への参入を発表した。各社ともに、基本性能を強化した新モデル投入などでシェアアップを狙っている。しかし最近ではブームの一巡が指摘され、09年は伸び率の鈍化が予想されている。今後は学校などの文教市場、企業や官公庁などの法人市場で、特定業務向けの用途拡大が課題とされている。さらに、低価格パソコンは収益面への寄与度が小さいため、コストダウンなどの対策も課題である。

■低価格パソコン関連の銘柄検証

 東芝<6502>は、主力のノートパソコン「ダイナブック」ブランドで、低価格パソコンの販売も強化し、同分野での市場シェアを徐々に上昇させている模様だ。今年6月には、低価格パソコン「ダイナブックUX」シリーズの追加モデルを投入した。バッテリー駆動時間を10時間に伸ばし、デザイン面でも光沢性を重視して高級感を打ち出した。

 NEC<6701>のパソコン事業は、09年3月期に30億円の営業赤字だった。10年3月期のパソコン販売台数については、前期並みの250万台を見込み、欧州など海外市場からの撤退や、費用構造の見直しなどで10億円の黒字化を目指している。低価格パソコンは「ラヴィ ライト」シリーズを展開し、09年夏モデルでは、記憶装置にHDD(ハードディスク駆動装置)とSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の両方を搭載した新モデルも発売した。

 富士通<6702>は、10年3月期のパソコン販売台数について、前期比12%減の650万台を計画している。09年夏モデルからは、低価格パソコン「FMV−ビブロ LOOX M」シリーズを国内市場に投入した。外装に光沢感のある塗装を施すなど、デザイン性も高めた。さらにモニター解像度やCPU性能など、基本スペックを強化した新モデルも追加投入した。カラーバリエーションも拡充し「FMV」のブランド力を生かして、幅広いユーザーへの訴求力を高めることを狙っている。

 パナソニック<6752>は、小型ノートパソコン「レッツノート」シリーズを展開している。次世代高速無線通信「WiMAX(ワイマックス)」対応の通信モジュールを搭載したノートパソコンも7月から発売する。

 ソニー<6758>は、10年3月期のパソコン販売台数について、前期比7%増の620万台を計画している。7月7日にはノートパソコン「バイオ」に低価格パソコン「Wシリーズ」を追加し、8月8日から順次発売すると発表した。機能面では競合機種と同程度としている。これまで「バイオ」シリーズではデザイン性や機能性を重視し、低価格パソコンとは一線を画してきたが、無視できない市場に成長したことで、本格参入が避けられないと判断した模様だ。

急速に変化するPCを取り巻く環境

■クラウドコンピューティングではスマートフォンと競合

 消費者ニーズの多様化、世界的な低価格化の流れなど、パソコン市場を取り巻く環境は急速に変化している。今年10月に発売予定の新型OS「ウインドウズ7」や、次世代高速無線通信の「WiMAX(ワイマックス)」のサービス開始などが、パソコン需要に対する後押し要因として期待されるが、新型OS「ウインドウズ7」については、パソコン需要喚起の起爆剤としての効果は限定的との見方が多い。また、ネット経由でソフトの機能を提供する「クラウドコンピューティング」の分野では、高機能端末を必要としないため、多機能携帯端末「スマートフォン」との競合も懸念されている。
 次世代高速無線通信「WiMAX」については、KDDI<9433>系のUQコミュニケーションズが7月1日、商用サービスを開始した。13年3月末までに、約500万件の契約獲得を目指している。国内の主要パソコンメーカーでは、東芝<6502>富士通<6702>パナソニック<6752>などが「WiMAX」対応の通信モジュールを搭載したノートパソコンを発売する。他の主要メーカーも順次、対応機種を投入する模様だ。しかし、先行して商用サービスを開始した韓国では加入者数が伸び悩んでいる模様であり、国内市場でもパソコン需要を押し上げる効果については不透明感が強い。

■需要が拡大する多機能携帯端末「スマートフォン」

 多機能携帯端末「スマートフォン」については、音楽や映像のプレーヤーとして人気を得て需要が拡大している。さらに「クラウドコンピューティング」の普及による需要拡大も注目されている。クラウド(雲)に例えた巨大なサーバー群から、さまざまなソフトやサービスを利用する受け皿として、パソコンに代わる需要が見込まれているためだ。
 米国ガートナーによると、09年1〜3月期のスマートフォンの世界販売台数は前年同期比12・7%増の3640万台となり2ケタ成長を回復した。この市場では、フィンランドのノキア、カナダのリサーチ・インモーション(RIM)、米国のアップルの上位3社に加えて、米国のマイクロソフト、米国のグーグル、米国のアマゾン・ドット・コムなども参入している。また、米国のインテルとノキアが提携するなど、競争も激化している。米国アップルについても、ここ数年の業績を牽引しているのは、ネット経由で様々なアプリケーションソフトを買うことができる多機能携帯端末「iPhone(アイフォーン)」である。日本のメーカーではシャープ<6753>が、欧米市場でのスマートフォンの拡販を成長戦略と位置付ける方針だ。
 高機能・高価格機種で収益を維持する戦略だった日本の大手メーカーにとって、低価格パソコンへ市場の本格参入は、収益力の一段の低下を招くことが懸念される。しかし、パソコン市場での低価格化の流れは避けられないだろう。そして日本の大手メーカーが、高価格機種のニッチ市場で生き残りを目指す戦略を選択することも考えにくい。パソコン市場では機能面での差異化が難しいだけに、次世代高速無線通信によるネット接続など、単なる新機能の搭載だけでは、高価格機種の販売台数増加は期待できない。低価格パソコン市場での収益力を高めるためには、コスト競争力の強化はもちろん、消費者ニーズを的確にとらえた製品開発など、独自の戦略が求められる。

【参考:主なデジタル家電関連銘柄一覧】
 富士フイルムHD<4901>(東1・化学)=フィルム、電子映像、ペーパー・薬品等
 東芝<6502>(東1・電気機器)=テレビ、HDD・DVDレコーダー、パソコン等を販売
 三菱電機<6503>(東1・電気機器)=重電、メカトロ機器、情報通信システム・家電等
 日立製作所<6501>(東1・電気機器)=情報エレクトロニクス、電力S、家電等の製造販売
 マブチモーター<6592>(東1・電気機器)=ヘアドライヤー、シェーバー、歯ブラシ等のモータ
 日本電産<6594>(東1・電気機器)=パソコンのHDD用スピンドルモータ、ファン
 NEC<6701>(東1・電気機器)=PC・周辺機器、ソフト、携帯電話、ネット総合サービス
 富士通<6702>(東1・電気機器)=情報処理機器、ソフトウエアS、通信機器、電子デバイス等
 パナソニック<6752>(東1・電気機器)=TV・ビデオ・カメラ・オーディア等の家電製造販売
 シャープ<6753>(東1・電気機器)=AV・情報通信機器、冷蔵庫、エアコン等の家電製造販売
 ソニー<6758>(東1・電気機器)=PC・周辺機器、映像、カメラ、オーディオ、AV関連
 ミツミ電機<6767>(東1・電気機器)=IC、コンポーネント、センサ、電源、高周波等
 ヒロセ電機<6806>(東1・電気機器)=コネクタの専業メーカー
 船井電機<6839>(東1・電気機器)=映像機器、プリンター、情報通信機器等製造販売
 カシオ計算機<6952>(東1・電気機器)=情報、映像機器、電子時計、通信、デバイス等製造
 浜松ホトニクス<6965>(東1・電気機器)=光電子増倍管、映像、画像処理、計測装置等製造
 ニコン<7731>(東1・精密機器)=カメラ、めがね、画像機器、半導体製造装置等製造販売
 オリンパス<7733>(東1・精密機器)=映像・情報関連事業、医療・バイオ関連事業、半導体等
 タムロン<7740>(東1・精密機器)=カメラ用レンズ、各種光学機器、超精密光学部品等
 HOYA<7741>(東1・精密機器)=レンズ、液晶パネル等の光学ガラス専門メーカー
 キヤノン<7751>(東1・電気機器)=カメラ、複写機、PC周辺機器、情報・通信・光学機器
 リコー<7752>(東1・電気機器)=複写機器、情報機器、光学機器等のOA機器メーカー