2009年06月19日
個人投資家にとって高利回り魅力の『優先株式』:伊藤園の水野副本部長に聞く

『日本第一号の無議決権優先株式』を発行した
伊藤園の財務管理本部 水野俊作副本部長に聞く


 日本で第1号の「無議決権優先株式」を発行している伊藤園<2593>(東1)。同社、普通株式の利回り2.9%に対し優先株式は5.8%と高い。個人投資家にとって魅力十分。大いに「無議決権優先株式」に目を向けてみたい。伊藤園の財務管理本部の水野俊作副本部長に聞いた。

――個人投資家の皆さんにとって「優先株式」はどのようなメリットがありますか。

 【水野氏】 配当が高いのが一番の魅力です。正式には「無議決権優先株式」と呼びます。当社の優先株式の配当は、「普通株式配当」×125%です。少数第1位を切り上げ、15円を下限としています。この計算で行きますと、09年4月期の普通株式の予想配当は年38円ですから、無議決権優先株式の配当は48円です。直近、6月16日の株価は普通株式1315円、無議決権優先株式829円で、利回りは普通株式で2.88%、無議決権優先株式で5.79%です。このように、無議決権優先株式の配当利回りは高く、個人投資家の皆さんには非常に魅力のある株式です。

――無議決権の言葉が頻繁に出てきます。個人投資家の皆さんに不利益となることはありませんか。

 【水野氏】 株式には、「配当」、「議決権」、「残余財産の分配」の3つの主だった権利があります。しかし、投資家にとってこれらの権利は一様ではありません。この3つの中で特に議決権が、個人投資家にとって顕著にそれが出ます。株主総会での権利行使といっても、重みが違ってきます。このため、より株主の権利を純化させ、議決権によって経営に参加する方、高配当を対価として資金を提供し経営に参加する方と、その選択肢を投資家の皆さんに提供しています。また、優先株式配当を担保とする仕組みとして、合併や完全子会社、上場廃止になるなどの一定の事象が発生した場合には、1:1の比率で普通株式が交付されます。さらに株式分割や無償割当、株式併合の実施時には、普通株式と同時に同一の割合で行われる建て付けとなっています。2007年9月3日に、無議決権優先株式を東証に現行の上場制度に基づき上場した第一号となりました。これは東証が、上場有価証券規程に合致し、既存株主、普通株主に十分配慮されたスキームと認知していただいた結果と思います。

――メリットがあるのに、個人投資家の皆さんには認知度が低いように思われます。

 【水野氏】 優先株式に対する印象の問題があると思います。日本では優先株式と言えばいわゆる「救済型」と思われていることがあります。個人の資金が企業に対し長期資金を提供していただく仕組みとして、普通株式だけでなく配当面で有利な優先株式の存在意義があると思います。

――馴染みが薄いうえにネット検索も難しいこともあるのでは。

 【水野氏】 そうです。普通株式のコード番号は2593ですが、優先株式は25935と5ケタです。特に、上場当初は検索できませんでした。

――外国ではいかがですか。

 【水野氏】 優先株式など種類株の時価総額はアメリカで12%以上です。また日本では家計資産に占める株式保有率が投信を含めても17%です。アメリカはこの比率が45%程度と日本の約3倍です。こうした差が背景としてあると思います。今後、日本も政府の「貯蓄から投資」の政策もあります。個人投資家の方に高い配当を出す優先株式は、受け入れられる土壌はあると思います。