2008年2月16日

MBO&TOB関連銘柄の待ち伏せ狙い

長島和弘の大株主ウォッチャー
長島和弘の大株主ウォッチャー■歴史的な底値圏にある株価は、MBOやTOBの好機

 市場からMBO(経営陣が参加する買収)やTOB(株式公開買い付け)などで市場から退出する企業が相次いでいる。サブプライムローン問題に端を発した金融危機から相場環境は激変、ジャスダックや東証マザーズでは一日の売買代金が100億円に満たない日も目立つが、昨年10月に上場来安値をつけ歴史的な底値圏に株価は放置され、MBOやTOB実施の好機と捉える親会社、経営陣がますます増えることが予想される。

 直近で主なところでは、電通<4324>が、成長が見込めるネット分野を強化する目的で、47.49%保有するネット広告のサイバー・コミュニケーションズ<4788>をTOBによる完全子会社化で上場廃止する。また、ファーストリテイリング<9983>は、32.32%を保有する婦人、紳士服の『セオリー』を日米欧で展開するリンク・セオリー・ホールディングス<3373>をお互いの強みをいかし、相乗効果が期待できるとして、TOBで普通株式や新株予約権付社債などを取得し完全子会社化で上場廃止となる。

 また、イタリア料理店を展開するパワーアップ<3044>は、新たな業態開発が必要で、軌道にのるまでには費用と時間がかかり、株価低迷は避けられないとして、同社の大淵雅次社長によるMBOで、普通株式と新株予約権を取得し上場を廃止する。

上場廃止基準緩和がMBOやTOBの増加を促す

 東京証券取引所は1月13日、上場廃止基準を1月末から12月末まで緩和すると発表。世界的な金融危機を受け、時価総額が急激に減少する企業が増えているためで、1部・2部銘柄の時価総額について、従来の10億円未満の基準を6億円未満に引き下げる。また、マザーズ銘柄についても5億円未満としていた上場廃止の基準を3億円未満に引き下げる。時価総額の基準が9カ月の猶予期間内に回復しない銘柄は上場廃止となる。

 このことから、比較的キャッシュが豊富で市場から資金調達を必要としない企業、あるいは、業績が低迷し内部統制報告制度で監査法人へ支払う報酬や専任社員の採用などで利益規模の小さい上場企業には負担となり、上場していることにメリットがないと判断する企業は、MBOやTOBが選択肢として浮上するだろう。

先取り!MBO&TOB関連銘柄一覧

 MBO&TOB関連銘柄として、再生ファンドが入りこんでいない企業で、経営者によるスピード判断が可能な高配当のキャッシュリッチ企業などが注目されてこよう。2009年3月期末を控え、配当利回りや好財務内容の銘柄を絞り込んでみた。

【時価総額5億円以下、配当利回り5%以上、自己資本比率50%以上(2/2現在)】
■東証1部
 インターニックス<2657> 決算3月
 秀英予備校<4678> 決算3月
 ウェアハウス<4724> 決算12月
 日本エアーテック<6291> 決算12月
 ワイエイシイ<6298> 決算3月
 葵プロモーション<9607> 決算3月

■東証2部
 ・E・Jホールディング<2153> 決算5月
 ・川崎化成工業<4117> 決算3月
 ・ミヤノ<6162> 決算12月
 ・野田スクリーン<6790> 決算4月
 ・ASTI<6899> 決算2月
 ・盟和産業<7284> 決算3月
 ・オーバル<7727> 決算3月
 ・ナガホリ<8139> 決算3月
 ・ラピーヌ<8143> 決算3月
 ・ソマール<8152> 決算3月
 ・高木証券<8625> 決算3月
 ・FJネクスト<8935> 決算3月
 ・ニッコウトラベル<9373> 決算3月
 ・アイ・エス・ビー<9702> 決算12月
 ・東海リース<9761> 決算3月
 ・日建工学<9767> 決算3月
 ・ケーユーホールディングス<9856> 決算3月
 ・蔵王産業<9986> 決算3月

【2億円以下、配当利回り5%以上、自己資本比率50%以上(2/2現在)】
■東証マザーズ
 ・エルミック・ウェスコム<4770> 決算3月

(銘柄ピックアップ)
 独立系の半導体商社のインターニックス<2657>は、今3月期最終赤字予想だが、20円の配当は堅持したいと会社側は考えている。藤澤義晴会長が101万株(10.2%)保有で、特定株比率は40.2%と高く、08年9月末現在で有利子負債は17億円、現金等は26億800万円で実質無借金、株主資本比率が68.8%、PBR0.2倍と財務内容は良好なうえ、割安感がある。日本のウォーレン・バフェットいわれる竹田和平氏が25万株(2.5%)保有していることも買い安心感を与えよう。配当利回りは7%を超えており、昨年12月2日につけた上場来安値近辺まで下押す場面があれば、待ち伏せ買いも一法かと。