サブプライム住宅ローン問題、徹底検証
サブプライム住宅ローン問題

|1 | 2 | 3 | 次へ>

〜世界の動乱と日本への影響〜 (序章)


  日本インタビュ新聞社 テクニカルアナリスト 穴沢 英康  

サブプライム住宅ローン問題の拡大

サブプライム住宅ローン問題の拡大 ある晴れた日の夜、ひさしぶりに家近くの川岸を散歩した。そよ風は草花にお辞儀をさせる。雲一つ無い夜空には、丸いお月様がゆったりと浮かんでいる。お月様の光に見守られながら、つかの間の一時を楽しもうと、すると突然、サイレンが鳴り響いた。

 ウワ〜ッ、風陰気ぶち壊しだぁ〜、と辺りを見渡せば、川向こうがぼんやりと明るく見える。どうやら、対岸のアメリカ地区で、サブプライム住宅ローン問題というボヤが起こったらしい。サイレンという冷や水を浴びせられ、すっかり意気消沈したので、対岸のボヤ騒ぎを見物することにした。

 サブプライム住宅ローン問題のボヤは、徐々に周囲の家々へと燃え広がっているようだ。バーナンキやWブッシュという消防隊員がようやく消化活動に取り掛かり始めたようだが、火は勢いを増してきている。炎は徐々に、シティ邸やベア低など、周囲の家々を燃やしていく。消防自動車のサイレンだけが、ただ空しく鳴り響いていた。

 大変だな、対岸のサブプライム住宅ローン火事は、とは思いながらも、だいぶ時間が経った。さて、そろそろ家に帰ろうか、明日も早いし、と振り返る。すると、なんと当り一面、火の海。ご近所のみずほさん宅や野村さん宅にも火がついているではないか。

 サブプライム住宅ローン問題の火は、いつのまにか、アメリカ地区とは川で隔てられているはずの日本地区にまで燃え広がっていた。



そして日本に

 サブプライム住宅ローン問題の当初は、欧米の金融機関が損失計上のニュースが伝わるなか、日本でも、銀行株などを中心に軒並み下落していった。当初は「日本の金融機関にサブプライム問題の損失は無い」としていたが、2007年夏になると、野村證券やみずほ銀行など日本の大手金融機関がサブプライム住宅ローン関連の損失を続々と発表していった。日本に燃え移ったサブプライム住宅ローン問題は、日本の大手金融機関を焦げ付かせ始めた。

 「日本無関係論」を焼き払ったサブプライム住宅ローン問題の炎が、次に標的にしたのは、バブル崩壊を経験した日本がサブプライム住宅ローン問題の解決策を提案出来るという「日本コンサルタント役論」だった。ところが、日本の景気を引っ張る役割をしてきたアメリカ景気の減速が鮮明になったことで、輸出減の不安が出てきた。

 そして今では、サブプライム住宅ローン問題による日本の景気後退の懸念が勢いを増している。勿論、アメリカ政府は日本のバブル崩壊とそれに伴う対応を参考にしようとはしている。しかしこれまでのアメリカ政府の調査から導かれた結論は、当時の日銀が公定歩合を上げたことを例にとり、日本の対策は正しくない意味での参考になるとしている。サブプライム住宅ローン問題が拡大するにつれ、日本はサブプライム住宅ローンの見物人から、サブプライム住宅ローン問題の被害者へとその役割を急激に変化させていった。

サブプライム住宅ローン問題の恐怖

 このように世界各地に拡散するサブプライム住宅ローン問題は見えない恐怖を引き起こしている。その恐怖とは、複雑に組み合わされた証券化により、最終的な損失額を把握出来ていない事が原因と考えられる。2007年初頭、サブプライム住宅ローン問題の損失額は、約1、000億ドル前後(当時日本円換算で約11兆円)と見込まれていた。その後、それを上回る損失が明かになったので、新たに損失額を算出し直す。すると、さらに上回る損失が発生したので、また損失を算出し直す。損失額が上方の一途を辿っていった。

 それでは、サブプライム住宅ローン問題の最終的な損失は幾らになるのだろうか?世界全体の損失は1兆ドル(日本円で約100兆円)に達するという試算もある。日本のGDP(約520兆円)の約5分の1に匹敵する値だ。もしそうなれば、世界各国の経済に莫大な影響を与えることは間違い無い。いずれにしよ、サブプライム住宅ローン問題への恐怖が終結するのは、まだ当分先だということだけは、確かなようだ。

株式市場への影響

 株式市場は、現在得られる情報を最大限に活用していくことで、未来を予測した数値を算出しようとする。サブプライム住宅ローン問題は、株式市場にも影響を及ぼし、2007年春以降の日経平均株価の下げ幅は、ニューヨークよりも拡大している。それでも、今日もサブプライム住宅ローン問題の実態とその影響を見極めていくことで、勝機を見出そうとしている投資家が数多いる。株式市場に勝機は何時でも存在するとされる。例え大不況に陥ったとしても。バブル崩壊後の混乱した市場のなかでも、株式投資に成功することで見事な再復活を遂げた投資家が多数存在する。

 確かに今、サブプライム住宅ローン問題の被害が立て続けに出現し、それに伴い同問題に対する恐怖が広がりつつある。しかし、その恐怖とは、サブプライムを把握した上での恐怖だろうか。サブプライム住宅ローン問題は、小学生の話題にさえ上るとされているが、大人でも、その内容は複雑すぎて、あまり理解されていないのが現状なのかもしれない。無知から引き起こされる恐怖を克服するのは、しっかりとした現状認識に基づいた詳細な分析なのだ。サブプライム住宅ローン問題の本質を見極めることで、株式市場における勝機を見出すことが出来るのではないだろうか。

 同特集は、サブプライム住宅ローン問題の理解を深めることを目的に企画された。先ず、サブプライムが成立した背景や、サブプライムの仕組みを説明する。次に、サブプライム住宅ローン問題の経緯を再確認していきながら、同問題に対する市場や政府の反応や対策を見ていく。そして最後に、サブプライム住宅ローンが日本に与える影響に焦点を当てることで、サブプライム住宅ローン問題関連銘柄を見つけるためのアイデアを提供していく。
 サブプライム住宅ローン問題の火は依然世界のいたるところで燃え続けている。今回の特集により、サブプライム住宅ローン問題を理解して頂ければ幸いである。



|1 | 2 | 3 | 次へ>

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.05 |特集