日本インタビュ新聞社 テクニカルアナリスト 穴沢 英康
負の連鎖
今や、サブプライム住宅ローン問題という大火は、世界各国に燃え広がった。出火国であるアメリカでは、住宅の差し押さえ数が拡大中。サブプライム関連に投資した金融機関各社は、損失を次々と計上し続ける。街角では景気後退懸念が加速し、失業率もじわりじわりと増加する。景気後退懸念に伴い、資金は商品先物市場に向かい、原油などの商品価格の高騰を引き起こし、それが消費意欲の減退、ひいては景気後退懸念に拍車をかけている。負の連鎖が続く。
アメリカだけに止まらず、海を渡ったヨーロッパや日本でも、金融機関のサブプライム関連損失計上、物価高騰に伴う景気後退懸念、そして最大輸出対象国であるアメリカ向け輸出が減退し、景気の先行きに懸念材料となっている。
サブプライム住宅ローン問題を、あたかも詐欺の同義語のように批評する評論家もいるが、サブプライム住宅ローン自体は詐欺では無い。サブプライム住宅ローンとは、アメリカ金融市場の変革が生み出した資金調達のメカニズムと、未開拓の市場にビジネスチャンスを見出した挑戦者が創り上げた新型ビジネスにより創造されたものだ。これまでに数多くの信用力の無い借り手に住宅を所有する機会を提供してきた。詐欺のように、善人の面をしながら、穴だらけの法律と手緩い罰則や取締りを巧みに利用することで、不当な利益を得よう、または、欲を出すからいけないと嘘ぶるものではない。
本章は「サブプライム住宅ローンの誕生とその仕組み」と題し、先ずサブプライムが誕生した背景を、そしてサブプライムの仕組みを解明していきたい。
| サブプライム以前のアメリカ住宅ローン |
一般の消費者にとって、住宅の取得とは、人生で最も高額な買い物とみなされている。そのため住宅購入にあたっては、事前に立てた生涯の人生設計に基づき、安心して返済する住宅ローンを組むことが重要視される。これは日本でも、そしてサブプライムで混乱するアメリカでもたいして違いはない。
貸し手である住宅ローン会社は、安定した資金調達と顧客獲得の推進するため、資金調達の方法、貸し出し金利、そして返済不履行の回避に関し工夫を兼ねてきた。
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| 図1 |
アメリカ映画「素晴らしき哉、人生」(1946年公開)で、ジェームズ・スチュワート演じる若きS&L頭取は、住宅ローンの貸し出しを非難する同映画の悪役に向かって「あなたが見下している下っ端たちは、この町で生活し、そして死んでいく。家を持つには分に過ぎるというのですか」と論破し、S&Lの存在意義を説く。S&Lは、堅実な経営を胸に、住宅保有の機会を一般庶民に提供してきた。その資金源は、顧客からの積立預金と銀行からの借り入れを資金源する、間接金融だった。
ところが、1960年代になるとS&Lの経営が難しくなる。商業銀行やS&Lの預金金利の上限が定められる(1966年預金金利規正法)と、インフレの進展に伴い、預金がS&Lから流出し、多くのS&Lが資金調達に喘いだ。さらに1980年代には、インフレの進展に伴い逆ザヤ現象が拡大し、S&Lの多くが経営危機に陥った。
そこでS&Lに、株や先物取引などの資産運用による資金調達を解禁したが、市場取引に不慣れなS&Lは、商品相場の激しい値動きに翻弄され、結局多くのS&Lは多額の不良債権を残し破綻していった。これにより、銀行からの借り入れをもとに、住宅ローンを貸し出す間接金融は終わりを遂げた。
| 証券化の誕生と仕組み |
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| 図2 |
OTDでは、OTHのように資金調達方法を預金や積み立てに依存しない。その代わり、住宅ローンを取り扱う住宅ローン銀行(Mortgaged Bank)は、住宅ローンを投資銀行などに売却して、資金を調達する。住宅ローン銀行は、その売却して得た資金を基に、住宅ローンを貸し出す。
売却された住宅ローンは、投資銀行により、証券化される。証券化には様々な定義があるが、「将来見込まれる利益(キャッシュフロー)をベースに、一つの資産や債券などを、有価証券として多数の投資家に販売すること」としても、大きな間違いにはならないだろう。この有価証券は、市場で取引されるため、もし地価の上昇など好条件があれば、有価証券は高く売買される。
証券化で行われるのが組み替えだ。例えば、A、B、Cの3件の住宅を想定してみる。住宅価格はそれぞれ1、000円とすると、3件で3、000円だ。3件全てを購入するには3000円の資金力が必要だが、1件だけだと破産した時のリスクが恐い。そこで、それぞれの住宅価格を5分割することで200円の有価証券を作製する。そして、他の2つの有価証券と組み合わせる。そうすれば、AとBとCの3つ全ての特性を含む600円の有価証券が出来上がる。
このようにすれば、3000円の出資は難しいとしても、600円なら可能とする人も多く出てくる。組み合わせることで、損失というリスクが抑えられ、さらに、3物件を全て購入する際(3、000円)に比べ、600円という5分の1の価格で投資家に売却出来る。このように、複数の物件を組み合わせることでリスクの軽減を図ろうとするポートフォリオの理論を応用している、と考えれば分かりやすいかもしれない。
さて、住宅ローンを購入した投資銀行は、先ず不動産ローン担保証券(MBS:Mortgaged Backed Security)として投資家に売却する。(MBSには、住宅を対象とするRMBSと、商業ビルを対象とするCMBSの大きく2つに分類される。狭義ではRMBSだが、ここでは、便宜上、MBSに統一する)。
そして、売却されたMBSは、さらに投資銀行などにより、債務担保証券(CDO:Collateralized Debt Obligation)のように再証券化される。再証券化の意義を乱暴に説明すると、「もし証券化されることで損失の可能性というリスクが軽減されるのならば、さらに証券化されれば、よりリスクが軽減されるだろう」、ということになるだろうか。
これらのMBSやCDOといった証券の売却先としては、前述の投資銀行に加え、ヘッジファンド、さらに特別目的ヴィークル(SPV:Special Purpose Vehicle)やSIVなどが存在する。SPVは特別目的会社(SPI)と特別目的信託(SPT)が含まれる。SIVは,商業銀行や投資銀行などが様々な種類の資産担保証券の運用をファイナンスするために作られたもので、SIV。連結対象外とされているため、銀行は負債の圧縮と自己資本比率の増加を見込める。
証券化は、1989年、S&Lの大量破綻に伴い排出された多量の不良債権を処理する原動力として、力を発揮したとされた。その功績により、証券化の有効性を高く認識されるようになった。
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提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.05 |特集





