スーパー繊維銘柄特集
スーパー繊維銘柄特集

日本が世界に誇る次世代技術

軽量且つ強靭さを兼ね備える従来なかった繊維

 自動車、電機・電子機器、原子力など、日本が世界に誇る技術は数多くあるが、実は世界に誇る技術として、最近にわかに注目を集めている分野で、スーパー繊維があげられる。

 スーパー繊維とは、衣料用のポリエステルやナイロン等の合成繊維と同じ高分子繊維の一種で、同じ太さの衣料用合成繊維よりも約4倍以上強靭で、切断するまでの伸びがほぼ1/10以下と伸びにくい上、耐熱性も通常の合成繊維より、高い点を特長としている。因みに、金属繊維も同様の性能を有しているが、比重が大きいため、非常に重くなってしまうのに対し、スーパー繊維の比重は衣料用合成繊維とほぼ同じなため、軽量且つ強靭という点を可能にした繊維である。一例を挙げると、衣料用断面積1平方ミリメートルに対するナイロンの吊り下げ可能重量が、約60キログラムであるのに対し、スーパー繊維はその5倍以上のものを吊り下げることが可能である。

■主なスーパー繊維銘柄
炭素繊維銘柄 東レ<3402>、帝人<3401>、三菱レイヨン<3404>、日本カーボン<5302>、東洋紡<3101>、クレハ<4023>
その他スーパー繊維銘柄 旭化成<3407>、東洋紡<3101>、帝人<3401>
 用途も幅広く、衣服などの日常用品に留まらず、土木建築・農林水産・工業資材にも、高強度・高弾力であるメリットを生かして使われている。例えば、ロープ等の産業用資材、消防服・宇宙服・防弾チョッキ等の特殊衣服、スポーツ用具、通信機器、原子炉などは、スーパー繊維が欠くことの出来ないものとなっている。最近では、高機能性テキスタイルとして、スポーツやレジャー用ウエアーなどへも展開されているほか、次世代航空機や自動車向けへと、さらに用途を拡大している。

 種別としては、次世代航空機や自動車向けに需要が拡大しているアクリル系炭素繊維をはじめ、特殊紡糸の超高分子量ポリエチレン繊維、海洋ロープや通信ケーブルに使われるパラ系・メタ系アラミド繊維、超防弾チョッキや消防服などに使われるポリフェニレンサルファイド繊維などがある。ゴム資材を主力とするポリケトン繊維も、スーパー繊維の一種である。
 このように、スポーツ用具から、果ては航空機、宇宙産業まで汎用性は極めて広く、技術革新も進んでおり、今後の需要拡大が期待される銘柄に注目していきたい。

炭素繊維は応用用途広く需要急拡大

  炭素繊維は、アクリル繊維(PAN)、またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料として、高温で炭化して作った繊維(PITCH)のことを指す繊維である。耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性、耐引張力に優れ、アルミニウムなどの軽い金属に比べても、さらに軽量である強みを生かして、ロケットや航空機、自動車などの大型輸送機器からテニスラケットや釣り竿、白杖など身近な道具にまで応用の幅を広げている。

  東レ<3402>は、世界最大のPAN系炭素繊維メーカーとして、「トレカ」ブランドで、航空機の一次構造部材から自動車用途、各種補強材など一般産業用途、 釣り竿・ゴルフクラブのシャフトなどのスポーツ用途まで様々な分野に製品を提供している。近年では、米国の旅客機製造最大手ボーイング社に、新型旅客機内装向け炭素繊維7000億円分を供給する契約を締結するなど、同分野における攻勢を強めている。今後は、自動車向け炭素繊維にも注力するなど、質感の高い炭素繊維は、エンドユーザーニーズが高く、今後の需要増加が期待される。

 帝人<3401>も、連結子会社が手掛ける炭素繊維「テナックス」が、仏旅客機製造エアバス社の超大型旅客機A380(550人乗り、総2階建て)や風力発電のブレード(羽根)に採用されたほか、自動車用途を含む様々な用途に向けた開発の強化に取り組んでいる。

 三菱レイヨン<3404>は、アクリル長繊維を原料としたPAN(ポリアクリロニトリル)系の炭素繊維「パイロフィル」と、それを基材とした中間材料や、成型加工品に至る一貫したプロダクツチェーンを確立、近時では、炭素繊維を利用したロール状の燃料電池用ガス拡散層の開発にも成功するなど、用途幅を広げることで、販売拡大を図っている。

 一方、日本カーボン<5302>は、炭素繊維を利用した高温炉内用の断熱材や、パッキン材を強みとしており、炭素繊維製品の生産能力を増強するため、今年白河工場(福島県白河市)に、成形断熱材の一貫製造ラインを着工する。設備投資額は約30億円で、新ラインは、来年4月に完成・稼働を予定しており、既存の滋賀工場と合わせて、年率30%の販売増を続ける炭素繊維製品の需要増加に対応する。また、同時に製品の高付加価値化も進める。

 また、東洋紡<3101>は、活性炭素繊維「KF」というセルロース繊維を原料として製造される、繊維状の活性炭を開発。布の性質と活性炭の性質を持つことで、広い範囲の各種ガスを有効且つ迅速に吸着除去することが可能となり、そのメリットを生かして、各種フィルターやマスク、電極材料などへの活用が増加していくものと見込まれる。

 さらに、クレハ<4023>が、ディスクブレーキパッドやガスケット・フェルトやパッキンに炭素繊維を応用した製品を開発・販売しており、アスベストの代替材料にもなっていることから、転換需要の増加も大いに期待される。

その他スーパー繊維―――各メリットを生かし強みを発揮

「サイバロン」加工例 ポリケトン繊維とは、エチレンと一酸化炭素を原料とし、独自の湿式紡糸技術により、技術化した新しいタイプの繊維である。特に接着性、耐疲労性、耐薬品性、加工性に優れており、その接着性・耐疲労性を生かして、タイヤなどのゴム資材や電子材料に汎用が拡大している繊維である。旭化成<3407>は、「サイバロン」というブランド名で、独自の重合技術と紡糸技術により開発された世界初のポリケトン繊維を開発。他のスーパー繊維を凌駕するゴム接着性、耐疲労性を実現することで販売拡大を目指している。

プロコン 一方、東洋紡<3101>は、高温時の断熱性、耐薬品性に優れたスーパー繊維としてポリフェニレンサルファイド繊維「プロコン」を開発。150度から最大190度までの高温に耐えることを可能とし、優れた原型保持率を実現している。また、異形断面の細デニール品をラインナップに加えたことで、集塵効率の向上にも成功した。こうしたメリットを生かし、耐熱フィルターや断熱材、消防服などに活用されている。

 また、「ザイロン」は、世界一の高強度を誇るスーパー繊維で、防護服やゴルフパッド、コンクリート補強材、果ては人工衛星と、その用途幅も非常に広く、今後も需要の増加、収益への貢献が期待される製品である。さらに同社は超高分子量ポリエチレン繊維の開発も積極化しており、そのうち「ダイニーマ」は、強さとしなやかさを兼ね備えている素材と吸水による劣化のない素材であるメリットを生かして、水回りに利用されるロープやコード及びネットなどに利用が広がっている。

 帝人<3401>が得意とするアラミド繊維は、パラ系とメタ系に大別されるが、そのうちパラ系は、高強力、高弾性率を有し、耐熱性、寸法安定性などに優れている利点を生かして、自動車のブレーキパッドなどの摩擦材( アスベスト代替)、タイヤや防護衣料などに使われている。日本で生産する「テクノーラ」、オランダで生産する「トワロン」の2つを主力ブランドとし、世界市場の約半分のシェアを誇っている。またメタ系の「コーネックス」は、長期耐熱性や難燃性に優れ、耐熱フィルターをはじめとする、産業資材や消防服などのユニフォームに使われている。

 身の回りの家庭向け製品から、輸送用機器、果ては宇宙産業分野まで、その用途は非常に幅広く、また、従来使われてきたアスベストなどと違い、人体にも優しい繊維であることから、今後も様々な分野において、ニーズが増加していくことは確実で、炭素繊維をはじめ、スーパー繊維への注目度は、ますます高まっていくであろう。

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.08 |特集