福田貴子の「そこが聞きたい」
鈴茂器工の小根田育冶社長に聞く
寿司ロボット開発から26年
――よろしくお願いします。御社は世界で最初に寿司ロボットを開発された会社とお聞きしています。
小根田社長 そうです。今から26年前になりますが、1981年10月に世界で最初の寿司ロボットの開発に成功しました。非常に反響が大きくて、83年に日本経済新聞社から「日経・年間優秀製品賞」、84年に日本発明振興協会・日刊工業新聞社から「第10回発明大賞」、さらに85年に機械振興会から「第15回中小企業向け自動化機械開発賞」をいただきました。
――それだけ、すばらしい発明だったのですね。開発なさろうと思われた理由はどのようなところにありましたか。
小根田社長 少し、わが社の歴史をご説明しますと、当社は1955年に創業して以来、独自の食品機械の研究開発を進め、その技術を使った“最中あん充填機”の製造を開始したことに始まります。1970年代頃から、日本では米からパンに変わり始め、福田さんは実感としてご存知ないでしょうが、コメの減反政策が採られるようになりましてね。
――話としては知っていますが、わたしの世代はパン育ちですから、おっしゃるように実感はなかったですね。でも、炊き立てのご飯は、おいしいですね。
小根田社長 あの味は、日本人でよかったという幸せ感です。わたしどもの会社は、食品機械を作っていた関係で米との関係も深かったため、なんとかして米の需要を増やすことはできないかと考えていました。
そこで思い当たったのが米を多く消費する寿司です。しかし、あの頃は、寿司は高嶺の花で、今のように大衆化して手軽に食べられるというものではありませんでした。材料となる米は減反するほど沢山あるし、海に囲まれた日本では魚も豊富です。だけど、寿司が高いのは、職人の腕前の部分が、かなりあるのではないか、ということで、そこを機械にやらせようと考えたのです。
寿司の大衆化を実現
――機械には、職人のマネは無理だと、反対も強かったのでは。
小根田社長 強かったですよ。握り方が強すぎるとか、柔らかすぎるとか、形が悪いとか、大変な不評でした。当時、わたしは工場にいましたが、先代の社長が、「なんとしてもやるのだ」と、強い意志で取り組んだため今日がありますが、普通の経営者なら諦めていたと思います。わたしも持ち前の情熱でいっしょに取り組みました。
――やはり、寿司を握る人間の肌の感触との違いが難しいところだったのでしょうね。どのように解決されましたか。
小根田社長 ひとつは、寿司は指で握るのではなく、手のひらで握るもの、ということを機械に取り入れたことです。もうひとつは、材質に弾力性のあるウレタンゴムを使ったことです。試行錯誤の結果、開発から完成までに5年かかりました。また、思い切って2億円の投資を行ったことも、当時の当社にとっては大きな決断でした。
――反響は大きかったということですが、機械の専門家だけでなく大衆などにも反応はありましたか。
小根田社長 当時、テレビのアフタヌーンショーで取り上げられたことで話題になりましたね。お陰で、注文が殺到しました。嬉しかったですね。
――ロボットは1時間にどのくらい握ることができるのですか。
小根田社長 大体2000ケくらいです。
――そんなにですか、すごいですね。
小根田社長 人間なら腱鞘炎になってしまいます(笑)。この寿司ロボットの開発によって、寿司の大衆化を実現することができたのですから、この分野でのリーディングカンパニーであると自負しています。
米飯主食文化を世界へ
――スーパー、デパートで、1ケずつ、チョイスできる包装された寿司がありますが、あれも御社の機械ですか。
小根田社長 そうです。当社はお菓子を1ケずつ包装する機械を手がけていましたので、寿司もやってみようということで開発しました。18年前に始めましたが、当時は、出直して来い、といわれまして、さんざんでした。いまではフリーチョイス販売、回転寿司でのテイクアウトコーナー、ホテル、式場のイベント、催事、パーティ、冠婚葬祭、企業給食などに包装寿司は広く需要が拡大しています。
――ほかには、どのようなものがありますか。
小根田社長 のり巻ロボット、炊きたてのご飯をほぐして、ふっくらと盛り付ける計量機能を備えたシャリ弁ロボ、寿司・おむすび兼用のお櫃型ロボットなどがあります。お櫃型ロボットは、どこから見てもシャリの入っているお櫃そのものですから、機械のイメージがなく演出効果も抜群です。
――今後の展開はどのようにお考えですか。
小根田社長 町の寿司屋さんは、それはそれで続くでしょうが、最近は年商が600~650億円規模の回転寿司も登場しているように、今後、ますます集約化され、企業化されると思いますので、わが社の出番は十分あるとみています。今後も、回転寿司業界、フードサービス業界、惣菜業界などの機械化、省力化の要望に応えることができる企業でありたいと思っています。
また、海外諸国におきましても、健康志向の高まりにより米飯が見直されており、需要はますます高まってきていることを確信しています。昨年はアメリカに現地法人を作りましたが、米国市場に対しては、UL基準・NSF基準をクリアーした製品のラインアップの強化・充実を図っていきます。ヨーロッパにおいてはCE宣言をした製品の販売を推進するなど、市場開拓に向けた販売活動を積極的に展開しています。中国での需要も増えることは間違いありません。このように当社は、今後も「米飯主食文化を世界へ」をモットーに世界に向けてグローバル企業として展開していきます。
――お米のほかにもお考えですか。
小根田社長 パン、ピザ、サンドイッチなど、これらをライスへ置き換える努力をしていきます。すでに、ライスバーガーは商品化されていますが、ライスサンド、ライスピザなどについても展開したいと思っています。
大幅増収増益を目指す
――ロボット材料の鉄は値上がりが大きいのではありませんか。
小根田社長 7年前くらいからほとんど樹脂に置き換えています。
――製品を展示されるスズモフェアが強さのひとつとなっているそうですが。
小根田社長 毎年、全国7カ所で開催しています。今年で20年続けています。食べ物ですから、地域によって微妙に好みが異なります。それを汲み上げて製品に反映させていますが、目に見えるところ、あるいは見えない部分で大きな力となっています。ご指摘のとおり、当社の強みのひとつとなっています。
――業績についてお願いします。
小根田社長 当社は、「価値創造型企業」となることを目指し、顧客満足度が得られる販売活動、品質保証体制の整備などに積極的に取り組んでいます。先ほども申し上げましたが、昨年6月には米国現地法人の営業を開始しグローバルな販売活動の推進に向けて第一歩を踏み出しました。
また、期待の新製品である超小型包装寿司ロボットも着実に伸長しています。このような努力で07年3月期は売上高4・1%増の50億2400万円、営業利益で16・5%増の3億1100万円、経常利益19・3%増の3億20000万円の成績を上げることができました。08年3月期についても、企業努力と景気回復による効果もあり売上高は3・5%増の52億円、営業利益25・5%増の3億9000万円、経常利益22・0%増の3億9000万円の見通しです。配当は年15円を継続します。
――すばらしい2ケタの利益伸長です。株価は700円前後で推移していますが、予想1株利益44円でPER15倍台、利回り2・1%、1株純資産1053円でPBRはわずか0・66倍、しかも無借金の内容ですから割安ですね。
小根田社長 株価はマーケットで決めることですから、とやかく言えませんが、マーケットの平均に比べると割安と思われます。われわれとしては、業績をあげることと、会社を知ってもらう努力を心がけていきます。
――ありがとうございました。
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