2009年5月
特集:日本で起きることは中国でも起きる
いよいよ動き始めた中国版列島改造
中国関連株買い第2・3段階を探る

第1ラウンドでは素材と建設機械関連銘柄の上昇が目立った

 かつて、日本で新しい産業を発掘し、また有望株を見つけるのに、『アメリカで起きていることは10〜20年後に日本で起きる』という仮説が有効であった。実際、ショッピングセンターやITを使ったネットショッピングなど、特に、流通面においてアメリカの動向をヒントに流通関連銘柄が大きく活躍した。中でも、家電メーカーの系列販売店から、メーカーに属さない独自の流通チェーンが台頭した。株式マーケットでは、PER(株価収益率)という成長性の考えが導入された。
 特に、マーケットだけでなく、日本の企業風土さえ変えたのがコーポレートガバナンス(企業統治)の思想導入である。それまでの日本の企業は、会社は従業員を中心に、取引先、銀行等も含めた「運命共同体」的な結びつきによる所有物であった。そうした中では株主の地位は非常に低いものだった。
 コーポレートガバナンス思想の導入により、経営のキーワードとして次のような言葉がクローズアップした。「効率経営」、「ROA・ROE重視経営」、「安定配当から配当性向」、「安定株主から物言う株主、ファンド株主」、「M&A」、「ビジネスモデル」、「終身雇用制度の廃止」、「工場の海外移転」など。ひとことで言えば、「安定」を善としてきた日本式経営が、ことごとく「変化」の世界へ投げ出された。

日本では「安定」から「変化」の時代

 今後、こうした日本で起きた動きが、中国でも起きることが予想される。違うとすれば、中国が社会主義国であり資本の論理が通用するかどうか。しかし、産業面および人々の生活スタイルということでは日本の歩んで来た道を同じようにたどるものとみられる。
 中国の発展は3段階に分けることができるだろう。第1段階が2006〜2007年までの段階。安い賃金と安い地価を活用した「世界の工場」としての成長段階。そして、2008年の北京オリンピックに続いて、2010年5月開催の上海万博という一大イベントを背景とした「社会資本整備」による成長第2段階。そして、第3段階は「中国版列島改造」ともいえる中国全土の開発と、「消費拡大」による成長である。
 実はこの消費拡大こそ関連銘柄が多く登場してくる。GDPに占める個人消費のウエイトが高まることは、消費に関連した銘柄が数多く登場する。
 第1段階では建設、工作機械、そして、製造を中国に移して成功した企業の株価が買われた。東証1部の業種別指数で見てみよう。(単位ポイント)

 ・鉄鋼:2004年 500→07年7月 1878 =3.7倍
 ・機械:2003年 500→07年7月 1783 =3.6倍
 ・海運:2003年 380→07年10月 2003 =5.2倍
 ・電機:2005年 650→07年6月 2509 =3.8倍

 など、鉄鋼などの素材型と建設機械などの上昇が目立っていた。
 

ビッグイベント国威発揚のチャンス

■北京オリンピック、上海万博で中国が先進国の仲間入り

 国が発展し力をつけてくると、必ず、大きなイベントが開催される。言うまでもなく、それは、経済力がついてきた証拠である。大きいイベントを行うことで、対外的に、その経済の総合力と信用力を印象つけることになり、他国との商売、ビジネスの発展拡大につながる。また、外国投資家からの株式投資が活発化し、さらに、そのことが経済力の底上げにつながる。また、国内的にも国民の自信につながる。まさに、ビッグイベントは国威発揚のチャンスである。
 日本は敗戦の焼け野原から立ち上がり、昭和39年(1964年)に東京オリンピックを開催。国民は日本が立ち直り、ここまで大きいイベントをやれるように見事に復興した姿を確信。「戦後は終わった」と感じた。その同じ年に東海道新幹線が営業運転を開始した。さらに、昭和45年(1970年)の大阪千里丘陵での日本万国博覧会と続く。万博ではスポーツだけでなく産業及び技術の分野においても先進国に追いついた実感を持った。

■環境整備関連需要が発生、建設機械や旅行関連銘柄に注目

 日本の動きに照らし合わせてみると、中国もほとんど同じ歩みを辿っている。ほぼ日本の40年遅れといえる。昨年2008年には北京オリンピックが開催された。超ど級の開会式では中国の大きさをまざまざと世界に見せつけた。これに合わせて、時速350キロメートルの高速鉄道が北京―天津間で開通した。日本の東京オリンピック、万博と瓜二つの歩みだ。日本万博では入場者数が予想の3000万人をはるかに上回り6421万人に達した。期間中の電力消費量は約1億3000万キロワット、水使用量約760万トン、ガス使用量約1700万立方メートルと桁外れの規模。
 こうした、人や物の受け入れのための、パビリオン建設、ホテル建設、道路整備、駅舎、ガス・電力・上下水道の整備などに関連した環境整備関連需要が発生する。
 予想される関連産業では、建設機械、建築・土木、電力設備、鉄道、道路舗装、橋梁、電力・ガス、ホテル・サービス、観光、旅行などが潤うものとみて間違いない。中国のこうした産業に関連した銘柄が買われると同時に、日本企業の建設機械や旅行関連銘柄が注目される。

いよいよ動き始めた中国版列島改造

■ビッグイベントの後に来る中国・個人消費の盛り上がり

 中国は日本のほぼ40年遅れで、同じような動きを辿っていると紹介した。1964年の東京オリンピック、1970年の日本万博と同じように、2008年に北京オリンピックが開催され、2010年5月から6ヶ月間、上海万博が開かれる。東京オリンピックの年に開業した東海道新幹線と同じように、北京オリンピックの年に中国では時速350キロメートルの高速鉄道が北京―天津間で開通。目下、来年の上海万博に合わせて北京―上海間の建設が急ピッチで進んでいる。
 さらに、日本では万博の後に、昭和47年(1972年)に田中角栄内閣が発足し「日本列島改造」が打ち出された。中国でも、同じように「中国版列島改造」が展開されつつある。日本でもそうであったが、万博によって国民は消費に目覚めた。そこへ、日本列島改造で国内消費が一気に盛り上がった。
 中国では、既に、この列島改造が始まっているともいえる。先の中国政府が打ち出した4兆元(約57兆円)の景気・消費刺激策。特に、内陸部の人々の消費を刺激するため電化製品購入に補助金を出す。高速鉄道網も当初の1万キロメートルから2万キロメートルへ計画が拡大された。

■上海万博を経て「中国版列島改造」が動き始めた

 中国は第1ステップで、安い賃金と広い国土を武器に世界の工場として発展、先進国の仲間入りをした。しかし、真の豊かさを伴った経済発展のためには「消費」が欠かせない。GDPに占める中国の消費の割合は約2割。アメリカの約6割、日本の約5割に比べ著しく低い。今度の世界景気後退にみられるように、外需に頼りすぎた経済では、世界景気が後退すると失業者の増大を招き、社会問題化する。中国はGDP成長率8%を維持しないと失業が社会不安に発展しかねない。そのためにも消費の比率を高める必要に迫られている。
 そして、今、北京オリンピック、上海万博を経て「中国版列島改造」が動き始めている。中国の人口は13億人。日本の10倍。消費に火がつけば一大消費大国になるはずだ。日本では列島改造で住宅ブームやカー・カラーテレビ・クーラーの「3Cブーム」が起きた。住宅関連株、家電株が大きく値上がりした。中国でも今後、個人消費に関連した住宅、車、インテリア、ファッション、化粧品、旅行、コンビニなどに投資チャンスが生まれる。

 【中国社会インフラ関連日本株】東レ<3402>旭化成<3407>住友化学<4005>東ソー<4042>トクヤマ<4043>信越化学工業<4063>三井化学<4183>三菱ケミカルホールディングス<4188>積水化学工業<4204>住友大阪セメント<5232>太平洋セメント<5233>三菱マテリアル<5711>コマツ<6301>日立建機<6305>井関農機<6310>クボタ<6326>日立製作所<6501>東洋電機製造<6505>三菱重工業<7011>川崎重工業<7012>伊藤忠商事<8001>丸紅<8002>三井物産<8031>住友商事<8053>三菱商事<8058>などがあげられるだろう。

 【中国液晶素材関連日本株】クラレ<3405>住友化学<4005>三井化学<4183>JSR<4185>三菱ケミカルホールディングス<4188>ダイセル化学工業<4202>日本ゼオン<4205>宇部興産<4208>日立化成工業<4217>東洋インキ製造<4634>富士フイルムホールディングス<4901>旭硝子<5201>日本電気硝子<5214>日東電工<6988>凸版印刷<7911>大日本印刷<7912>リンテック<7966>などがあげられるだろう。

 【その他中国関連銘柄】 中国調査会社=インテージ<4326>。「銀聯」の決済開始=SBIベリトランス<3749>。中国検索大手「百度」と提携=アクロディア<3823>。空調・自動車塗装設備工事=大気社<1979>。中国向け事業拡大=日清オイリオグループ<2602>、セブン&アイ・ホールディングス<3382>、王子製紙<3861>、旭有機材工業<4216>、関西ペイント<4613>、イーピーエス<4282>、ツムラ<4540>、日本ペイント<4612>、関西ペイント<4613>、資生堂<4911>、星光PMC<4963>、ナブテスコ<6268>、SMC<6273>、ダイキン工業<6367>、日新電機<6641>、ファナック<6954>、日立造船<7004>、三菱重工業<7011>、IHI<7013>、ピジョン<7956>、阪和興業<8078>、ユニ・チャーム<8113>、日本通運<9062>、日立物流<9086>、ヤマダ電機<9831>、ファーストリテイリング<9983>。設備保守事業=弘電社<1948>。携帯内臓データ保持機器=サン電子<6736>。NTTグループと合弁会社設立=NTTデータイントラマート<3850>。中国向け事業拡大=グローリー<6457>、寺崎電気産業<6637>、カーメイト<7297>、リックス<7525>、島津製作所<7701>、日本興亜損害保険<8754>、蝶理<8014>、家族亭<9931>。

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