デジタルハーツ<3620>(東証マザーズ)は、デバッグ(Debug=ソフトの不具合を検出)サービスを展開する企業。2003年10月に株式会社に組織変更、その4年4ヶ月後の今年2月に株式を東証マザーズにスピード上場した。「社名のハーツは心そのものです」という宮澤栄一社長に『経営への思い』を聞いた。

2008.03.13

ソフトウェア開発で発生する不具合(バグ)を検出する「デバッグ」の先駆者
08年3月期は48.6%増収、営業利益28.8%増へ

――まず、デバッグとはどのようなものか、お願いします。

宮澤社長 ソフトウェアは開発過程においてバグ(不具合)の発生は避けられません。大きいものから小さいものまで予想していなかった不具合が出てきます。とくに、最近のゲームソフトは非常に複雑な動作が組み合わさっていますからなおさらです。当社は開発会社に代わってソフトの完成する前に不具合を見つけて検出し報告するサービスを行っています。このバグを検出することが当社でいう「デバッグ」です。

――具体的なことは後ほどお願いしたいと思いますが、デバッグを始められたきっかけはどのようなことでしたか。

宮澤社長 そのことをご説明するには、私の学生時代の頃からお話するのがご理解いただきやすいと思いますので少しさかのぼってお話します。

――栃木県のご出身で、有名大学にも受かっていらしたのを辞退されたとお聞きしていますが。

宮澤社長 そうですね。勉強は好きでした。高校時代は進学校に進み大学受験では6つの学校に合格しましたが、父から「迷っているなら社会に出ろ」と言われ、勉強はやろうと思えばいつでもできるという気持ちから、社会勉強を優先しようという思いで、父の経営するパチンコ店でアルバイトとして働き始めました。18歳の時です。いろいろな背景を持つ人たちと出会い、「人間としての幅は広がった」と思います。この時の経験が現在に役立っています。

――お父さんと二人三脚で、おやりなったのですね。

宮澤社長 下積みから経験し、約2年間で経営にも関わるようになったのですが、最終的には会社が清算となりました。父と二人三脚でやったのは結局、会社の整理に走り回ったことでした。実は、わたしが小学校2年生の時にも父の経営していたカメラ工場が清算となりましたので2回も清算を経験しました。このため、経営者だけには絶対になるまい、なりたくないと思ったのですが、結局は社長業をやっています。

「バグ」と「良き後輩」との出会いが起業を決意

――そうですか、ご苦労がおありだったのですね。そして、上京されたのですね。

宮澤社長 そうです。小さい頃からやりたかった音楽の道を目指して上京しました。高校卒業から5年後の24歳の時です。音楽事務所に所属して、作詞の傍ら、個人事業主としてデバッグの仕事を始めました。当時、デバッグは価値のないものとして捨てられていましたが、注意深く見ていますと同じようなバグが出ていることが分りまして、捨てるのはもったいない、共有できるはずということが、この仕事を始めたきっかけです。とくに、ゲームソフトは範囲が広いためバグの発生も多く、バグを貯めておけば応用できると思いました。

――会社設立は2001年4月ですが、経営者にはなりたくないとのお話でした。会社をやろうと思われたのは。

宮澤社長 当時のデバッグの地位はまだ低く、評価を高めたいという思いがありました。それと、こちらのほうが大きい理由ですが、長年、慕ってくれた後輩たちを放っておけないという思いと、周囲の人たちの後押しもあり起業を決意しました。私を含め6人で、6畳ひと間のアパートでの船出でしたが、寝る間も惜しんでゲームをしバグを見つけ蓄積する毎日でした。27歳の時でした。

――スタートされて厳しい状態でしたか。

宮澤社長 それが非常にラッキーで、設立後3ヶ月の頃、かつて個人事業主としてやっていた時の人脈から大手ゲームメーカーの担当者を紹介され品質管理業務をまかされました。人員も100名くらい必要となり、なけなしのお金で求人情報誌に求人広告を出し、そのあとの面接も4時間8000円の区民会館を2日間借りてやりました。

――まだデバッグの認知度が低くて、応募は少なかったのではありませんか。

宮澤社長 "ゲーマー募集"というコピーがよかったと思います。100名のところに200名の応募者がありました。日本は人手不足で海外に労働力を求める時代ですが、こうした人材募集で日本にはまだまだ働き手の需要はあることを強く感じ、今後の人材確保はさほど難しくなくビジネス拡大につなげられるとの思いを持ちました。途中、大手ゲームメーカーからの受注が激減し経営的に苦しい時もありましたが、作詞家の時のツテで様々なゲームデバックをやらせてもらい、さらに仕事ぶりが評判となりゲーム業界大手との契約をいただくことができました。

――取引先は現在どのていどですか。

宮澤社長 昨年3月の段階で240社、そのうち約140社はゲーム開発会社です。お陰様でご好評を頂き着実に増えています。

――代表的なところではどのようなところがありますか。

宮澤社長 大手ハードメーカー様は全てお取引があります。

――捨てようと思われたバグを貯めておいて活用されたということですが、どのくらいの数になるのですか。

宮澤社長 そうですね、昨年3月期末では約18万件でしたが、今年3月期では20万件以上に達すると思います。

――すごいですね。それがあるとコンピューターで機械的にデバッグできるのでしょうか。

宮澤社長 それは違います。過去に類似したバグはなかったかといった活用はできますが、最終的には人の手で検出します。最終的な使用者はコンピューターではない「人」ですから、実際に使う人と同じような気持ちになってやらないと精度の高い検出はできないのです。

――今年2月、株式上場されましたが、上場の目的は。

宮澤社長 2つあります。一番大きい理由は正しい会社でありたいということです。不具合とか不正を見つけるビジネスですから、まず自分たちが正しくないといけない。上場することで情報をしっかり開示し株主さんに見てもらい外の意見も取り入れ、正しい組織、正しいシステムで会社を運営していくことがわれわれのビジネスの発展につながっていきます。もうひとつは、人材募集の面です。規模が大きくなってきますと人材募集には知名度のあることは有利です。とくに、われわれの会社ではビジネスの意味、価値をしっかりと理解してもらうことを第一としています。「やってやろうという心の持ち方」に尽きると思います。すべては、"心"です、ここがわが社の原点です。従業員101名中で70名が技術者、即ちデバッグを担当しています。そのすべてが、元フリーターの方ですが、みなさん実に「素直で真面目」です。従業員というより仲間同士という雰囲気ですね。このため会社設立以来、情報漏えい問題などは一度も起きていません。

「チェクド・バイ・ジャパン」で、デジタル分野から車、食品分野にも展開

――まだ、開発会社内部でデバッグを手がけているところは多いと思いますが、御社としてはどの程度携わっていますか。

宮澤社長 タイトル数ベースでは07年度上期に発売されました全タイトルの16%程度のデバッグに携わっています。06年度(通期)では6.9%でしたから比率は大きくアップしています。

――どのような形で受けられるのですか。

宮澤社長 約2400名のテスターと契約し、顧客企業に対して業務請負、ないしは人材派遣の形でサービスを提供しています。デバッグ作業は約6割がクライアントの内部、4割が当社の営業拠点で行います。

――単価はどのくらいですか。

宮澤社長 内容によって異なりますが、時間当たり2000〜5000円です。

――売上の構成はどのようになっていますか。

宮澤社長 家庭用ゲーム機器などの「コンシューマーゲームリレーション事業」が約60%、携帯電話の「モバイルリレーション事業」が20%、パチンコ・パチスロの「アミューズメント機器リレーション事業」が20%です。家電関係で3〜5%です。

――日本独特のビジネスでしょうか。

宮澤社長 そうです、日本にぴったりのビジネスです。2年前に外国を8カ国回り印象を強くしたことですが、ITに強いインドでも作るのは速いがバグがとれないということでした。反面、日本人は「気になってしまう」という特異な国民性があると感じました。書店で平積みの本を買う時、日本人は必ず上から2冊目、3冊目から手にします。BSE(狂牛病)のときにも、日本は全ての牛の検査をしないと承知しなかったですね。よく言われる「重箱の隅をつつく」という、いろいろなことが"気になる"国民です。デバッグは日本の国民性を背景としたビジネスです。今後はデジタル機器に限らず、車関係、食品関係など、ありとあらゆる物もやりたいと思っています。メイドインジャパンといわれますが、われわれの仕事は、「チェックド・バイ・ジャパン」と自負しています。

――業績についてお願いします。

宮澤社長 08年3月期は売上48.6%増の22億2800万円、営業利益28.8%増の2億9600万円、当期純利21.6%増の1億6600万円の見通しです。

――作詞はどのような作品でしょうか。

宮澤社長 天謀参の主題歌などのゲーム関係の作詞は多かったですね。また、研ナオコさんの35周年の記念曲の詞をやりました。今は仕事が忙しくて詞を書くのは無理ですね。休日はギターを弾いたり、小・中学校からの友人と語り合うことが多いですね。もちろん、4歳の長女、2ヶ月の長男とも体力の続く限りたくさん遊んであげます。

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