
2014年03月04日
【ロボット関連特集】介護ロボット&災害救助ロボットなど関連銘柄
■米グーグルの買収やロボットベンチャー上場で一気に注目度増す
米グーグルによる日本のロボットベンチャー買収や、ロボットベンチャーのサイバーダイン<CYBERDYNE、7779>の東証マザーズ市場への新規上場承認が刺激材料となり、株式市場でロボット関連銘柄への注目度が増している。
米グーグルは13年12月、ロボット事業に参入する方針を明らかにし、東京大学発のロボットベンチャーであるシャフト(SCHAFT)など、ロボット関連のベンチャー企業7社を買収したことも明らかにした。シャフトは二足歩行のヒト型ロボットの開発に実績があり、13年12月に米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が開催した災害対策ロボット技術競技会の予選を首位で通過した有望ベンチャーだ。
米グーグルはその後も、ロボットアーム開発の米レッドウッド・ロボティクス、軍事用ロボット開発の米ボストン・ダイナミクス、エアコン制御装置開発の米ネスト・ラボ、人工知能(AI)開発の英ディープマインド・テクノロジーズを買収するなど、自動運転走行車分野やロボット分野への進出を加速させている。
また日本では、筑波大学発のロボットベンチャーで、自立歩行支援ロボットスーツ「HAL」を開発したサイバーダインが3月26日、東証マザーズ市場にIPO(株式新規公開)する。
■ロボット関連市場は急拡大
経済成長を維持するためには労働力人口の増加や生産性の上昇が必要とされるが、日本では団塊世代の高齢化や人口の自然減少幅拡大で労働力人口の減少が避けられないうえに、基本的に移民受け入れに対する抵抗感が強く、出生数が増加基調に転じたとしても、当分の間は労働力人口の増加が期待できそうにない。このため革新的な技術イノベーションで生産性を大幅に上昇させることが必要になり、人手不足が深刻な医療・介護・福祉分野、農業分野、物流分野などに限らず、各種ロボット技術の活用に対する期待感が高まっている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が10年4月に、経済産業省と共同で公表した「ロボット/RT(ロボットテクノロジー)市場規模予測」によると、日本のロボット産業の出荷金額は15年に1兆5900億円、20年に2兆8533億円、25年に5兆2580億円、そして35年に9兆7080億円に拡大すると予測している。
このうち医療・介護・警備・清掃・物流・災害救助などのサービス分野のロボット市場金額は15年に3733億円、20年に1兆241億円、25年に2兆6462億円、そして35年に4兆9568億円に拡大すると予測している。サービス分野においては清掃、移動支援(業務用)、次世代物流支援、農業物流、フィットネスなどの分野の規模が大きいようだ。なお経済産業省「ロボット政策研究会」の定義によると「センサー」「知能・制御系」「駆動系」の3要素技術のあるものを「ロボット」と広く定義している。
矢野経済研究所が14年1月に発表した「介護ロボット市場に関する調査結果2013」によると、国内の介護ロボット市場規模(メーカー出荷金額ベース)は11年度が1億24百万円、12年度が1億70百万円、13年度見込みが2億13百万円で、15年度に23億円、16年度に48億90百万円、20年度に349億80百万円に拡大すると予測している。15年度に予定される介護保険制度見直しで介護ロボットの介護保険適用製品が増加すれば市場拡大の追い風としている。
■さまざまな分野に広がるロボット技術
ロボットというと、自分で考えて動く人間型の二足歩行ロボットがイメージされるが、人間の代わりに作業する、あるいは人間の動きを補助・支援するという点で見れば、ロボット技術の活用はさまざまな分野に広がっている。
自動車などの製造ラインでは、自動溶接ロボットや自動搬送ロボットなどの産業用ロボットが大量に使用されている。東京電力福島原子力発電所のような災害現場や深海の海洋資源探査など、人間が近づけない危険な場所ではカメラ撮影やデータ収集にロボットが活躍している。
医療・介護分野では手術支援ロボット、自走式カプセル内視鏡、寝たきり高齢者を対象とした排せつ支援ロボット、運動機能が低下した高齢者の筋力を補助するロボットスーツ、高齢者向け対話型コミュニケーションロボット、外食産業分野では寿司ロボットやご飯盛り付けロボット、土木工事の分野では下水道管内の劣化を検知して自動補修するロボット、さらにオフィスやイベント会場などの受付・案内ロボット、遠隔操作する除雪ロボット、プロペラで自動飛行して不審者や不審車両を撮影・追跡する小型飛行監視ロボットなどの開発・実用化も進んでいる。
我々の日常生活の場を見渡しても、米アイロボット社のAI(人工知能)を搭載した掃除ロボット「ルンバ」は世界的な人気商品となり、累計販売台数は日本で100万台、世界で1000万台を超えている。
日本のロボット技術は産業用ロボットのように、あらかじめ設定された工程を規則正しく動く分野では強みを持っているが、東京電力福島原子力発電所の事故対応で日本製ではなく、米アイロボット社製のAIを搭載した軍用遠隔操作多目的ロボット「パックボット」が採用されたように、現場の過酷な条件や複雑な環境変化に対応できる高度なロボット分野では、軍事技術の応用が進んでいる米国に後れを取っているという見方が有力だ。
高度な人間型ロボットの開発に向けて、アーム・ハンド・関節などが効率良く滑らかに動き、環境変化にも対応して複雑で繊細な動きを可能とする技術を高めるためには、センサーなどの部品技術に加えてAI技術などの向上も必要となる。最近は自動車メーカー各社が自動運転走行車の開発を進めているが、こうした分野にもセンサーやAIなどのロボット技術が活用される。さらに農業の分野では植物工場、自走型農機ロボット、農作業補助ロボット「パワーアシストスーツ」や自動収穫ロボットなどの開発も進むだろう。
■サイバーダインのIPOで介護ロボット関連に注目
高齢者の増加や介護現場の人手不足を背景として、政府が13年6月に閣議決定した日本再興戦略に「ロボット介護機器5カ年計画」が盛り込まれ、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」が13年度から始まった。介護ロボットの本格的な普及に向けて機器開発に補助金を交付するとともに、介護施設での機器の使用実験も促進する方針だ。
経済産業省と厚生労働省が12年11月に公表したロボット介護機器開発の重点分野は、介助者のパワーアシストを行う機器の装着型移乗介助機器および非装着型移乗介助機器、高齢者の外週などを支援する移動支援機器、排せつ支援機器、認知症の人の見守り支援機器という4分野5項目で、13年5月に第1次採択事業として24件、13年7月に第2次採択事業早期採択分として9件、13年8月に第2次採択事業通常採択分として15件が採択事業者に採択された。
なお重点分野については14年2月の改訂で、歩行支援機器、在宅介護における転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット機器、入浴支援機器の1分野3項目を追加して5分野8項目となった。この5分野8項目の重点分野について、開発補助事業および介護施設での大規模実証支援事業を公募する。
こうした政府の介護ロボット開発・導入促進政策も追い風として、寝たきり高齢者を対象とした排せつ支援ロボット、ベッドと車いすを一体化させた機能を持つ移乗介助ロボット、運動機能が低下した高齢者の筋力を補助するロボットスーツなど、介護が必要な高齢者の生活を補助・支援するためのさまざまな介護ロボットの開発・実用化が進んでいる。さらに介護職員の負担を軽減するための介護用パワーアシストスーツや、普及に向けての比較的安価な介護ロボットの開発・実用化も進んでいる。今後の普及に向けての課題は医療保険や介護保険の適用となるが、15年度の介護保険法見直しで本格適用される可能性が高まっているようだ。
サイバーダイン<7779>が開発した自立歩行支援ロボットスーツ「HAL」は身体に装着して利用し、脊髄損傷や脳卒中などで障害を持つ患者が回復を目指す際の自立歩行訓練などを支援する。人が体を動かそうとすると、脳から筋肉を動かそうという指令が微弱な電気信号となって皮膚表面に流れるのをセンサーで検知し、腰に装着したコンピュータで解析して、足に取り付けた装置を駆動させて足が動くのを支援する仕組みだ。
ユニークなロボット技術は大企業だけでなく、中小企業や大学発ベンチャー企業からも続々と誕生している。また介護用ロボットのパワーアシストスーツの筋力補助技術は、建設作業や農作業などの分野で作業負担を軽減する装置としても応用が可能だ。ロボット関連で特徴を持った各種技術開発やベンチャー企業のIPOも期待されるだろう。
■菊池製作所、大和ハウスなど関連銘柄多数
【ロボット関連銘柄(産業用除く)】
ロボット関連銘柄はメカトロ機器・部品、電子部品、ソフト開発なども含めて多岐にわたるが、ここでは製造ラインの省人化・自動化投資に導入される工作機械、食品機械、溶接ロボットなどの産業用ロボットを対象外として、医療・介護・福祉関連、生活支援関連、災害救助関連、自立歩行・自動走行関連など非産業用(サービス用)ロボット機器を中心に、主要関連銘柄をピックアップした。
大和ハウス工業<1925>、積水ハウス<1928>、菊池製作所<3444>、セック<3741>、東海ゴム工業<5191>、TOTO<5332>、富士機械製造<6134>、クボタ<6326>、ダイフク<6383>、ヒーハイスト精工<6433>、日本精工<6471>、日立製作所<6501>、東芝<6502>、富士電機<6504>、安川電機<6506>、オリジン電気<6513>、JVCケンウッド<6632>、NEC<6701>、富士通<6702>、アルプス電気<6770>、パナソニック<6752>、シャープ<6753>、ソニー<6758>、クラリオン<6796>、船井電機<6839>、シスメックス<6869>、デンソー<6902>、TDK<6762>、村田製作所<6981>、三井造船<7003>、三菱重工業<7011>、川崎重工業<7012>、日産自動車<7201>、トヨタ自動車<7203>、ホンダ<7267>、富士重工業<7270>、HOYA<7741>,東リ<7971>、サイバーダイン<CYBERDYNE、7779、3月26日新規上場予定>、セコム<9735>、富士ソフト<9749>など。