翻訳サービス業界最大のリーディングカンパニーである(株)翻訳センター(2483・大証ヘラクレス)の東郁男代表取締役社長に同社の現況と第一次中期経営計画について聞いた。

「翻訳プラットフォーム」の構築、新たな成長エンジンに

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前期、医薬・金融分野伸長が顕著

Q: まずは、事業内容と前期業績のポイントについてお話ください。

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東社長: 当社グループは、当社並びに連結子会社(株)国際事務センター、同HC Language Solutions, Inc.(米)からなり、主事業は産業技術翻訳です。事業対象領域を主に特許、医薬、工業、金融・法務分野に特化し、事業展開しています。
 前期業績は、米国子会社が通年稼働したことによる先行投資負担が影響し、営業利益が0.7%増にとどまり、最終利益が前年比微減となりましたが、これは期初予想に織り込み済みです。業務面の特長は、①言語別売上高で英語以外の多言語が17.8%、なかでもBRICs分類が21.4%伸びたこと、②分野別売上高は前年に比べ特許8.4%、医薬15.0%、工業3.6%、金融13.4%いずれも増加し、特に医薬・金融分野の伸長が顕著であったことが挙げられます。なお、2008年3月期末現在の登録翻訳者数は3,219人、前年比347人増加しました。

Q: 期中、得意先の動きと貴社の受注動向は如何でしたか。

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東社長: 分野毎の動きについては、①特許でバイオ、化学、半導体、通信、自動車関連の翻訳需要が増加傾向を維持したこと、②医薬で外資系を中心としたメガファーマからの翻訳受注が高水準なのに加え、新薬申請に関わる案件の獲得やメディカルライティング案件が増加したこと、③工業では上期停滞気味の自動車関連が下期に入り一部企業でプロジェクト開始の動きが見られ、また、通信関連で大きな受注を得たこと、④金融で法務及びディスクロージャー関連の翻訳受注が堅調を維持したことなどが挙げられます。

今期2ケタの増収益、500円の連続増配へ

Q: 今期の営業展開、業績見通しはどうですか。

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東社長: 自動車関連産業などではグローバル展開に伴う設備投資は増加傾向を維持し、産業技術翻訳の需要は底堅く堅調に推移すると期待しています。当社は、高付加価値サービスの提供で、お客様の信頼と満足度の向上を目指し、主要4分野をさらに強化へ積極的な営業展開を行ってまいります。
2009年3月期の連結業績は、売上高4,900百万円(前期比11.8%増)、営業利益480百万円(同19.0%増)、経常利益480百万円(同17.9%増)、当期純利益250百万円(同21.9%増)を予想しています。配当金は500円増配し1株当たり年間4,000円の予定です。

Q: 本論の第一次中期経営計画を説明する前提として、産業翻訳市場についてお聞かせください。

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東社長: 当社の売上高推移は、国際技術交流の推移(資料ご参照)と相関性があると考えておりますが、これには企業のグローバル展開に付随する技術の輸出入が主に関わっていると思われます。技術貿易は、目先の景気動向に関係なく右肩上がりの傾向が続くと予想され、翻訳需要はマクロ的には今後も成長市場と判断できます。
元来、どの国でも翻訳業務は労働集約的傾向の強い事業ですが、私が会長を務める社団法人日本翻訳連盟の推計では産業翻訳の市場規模は約2,000億円程度、翻訳関連企業は約2,000社と見ています。単純に計算しても1社の平均売上高は約1億円に過ぎません。企業内での翻訳などの潜在需要を含めると市場規模はさらに大きいものと考えられます。当社シェアでさえ産業翻訳市場全体の2%強に過ぎません。当社も拡大する需要の受け皿となるよう、さらに組織的に業務を展開することは使命であり、収益基盤強化やひいてはシェア拡大につながると考えます。

中計達成し、世界のトップテン入りを

Q: それでは、第一次中期経営計画についてお話ください。

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東社長: 翻訳サービス業界で初の上場でしたが、この3年間の実績として、①年率13.7%成長、②事業領域の拡大(営業地域・分野・多言語の展開など)、③収益基盤の強化(翻訳者確保・用語集DBの運用開始)など、業界のリーディングカンパニーとして着実な成果をあげることができました。
第一次中期経営計画では「収益基盤の強化」のための4つの重点施策を掲げております。数値目標は別表の通りですが、今後3ヵ年の平均成長率を過去3年間の実績より高く設定し、売上高の平均成長率は年13.7%を14.0%へ、経常利益の平均成長率は年13.4%を19.8%へとそれぞれ成長スピードを加速させます。

Q: 重点施策の「翻訳プラットフォーム」の構築についてご説明ください。

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東社長: 収益基盤強化には、作業効率並びに品質を向上させ、お客様からの信頼をより一層強固なものにすることが大切です。そのためには、大量に保有する翻訳ノウハウや情報資産をデータベースとして構成し有効活用することがキーとなります。それが当社の考える「翻訳プラットフォーム」です。
この「翻訳プラットフォーム」の構築で、お客様に対しては品質基準を満たした翻訳の安定供給や言語情報の効果的管理、翻訳者に対しては効率アップ、品質維持・向上が図れる仕組みです。このシステムが当社の新しい成長エンジンなると確信しています。

Q: どの分野中心に人材増強をされるのですか。

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東社長: 人材の増強では、制作・校正中心に品質管理能力を増強するため、従業員数を現在193人から2011年3月期末には約100人増の296人までの増員を図ります。また、生産性を一段と向上させることを目標に、評価制度を中心にした人事制度改革に着手し、効率的な組織運営を進めます。

サービス領域を拡大し需要を創造

Q: 次に、高付加価値サービスと集中購買化提案の促進についてお聞かせください。

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東社長: まず高付加価値サービスですが、厚労省・FDA(米国食品医薬品局)などへの新薬申請関連の資料を作成するのが「メディカルライティング」です。翻訳に先立つ工程、新薬の申請時に必要な文書作成を従来の翻訳サービスに加えるものです。新薬申請書類作成の初期段階から参加し、申請対象国の諸規則に沿った添付資料の作成を担当します。新薬申請過程の一工程を請け負ったと自負できる仕事で、翻訳案件の獲得にも繋がり、営業的にもブランド増強効果があります。なお、この「メディカルライティング」業務の実績は前年度に比べて73%増加しました。
次に、集中購買化提案の促進ですが、「集中購買化」とはお客様も当社も担当窓口を極力一本化することです。先に述べましたが、この業界は小規模事業者が多いこともあり、お客様は、担当者毎、部署毎に異なる翻訳会社に発注しており、その結果、十数社の翻訳会社に案件を委託しているという現状があります。これでは、翻訳会社の規模・レベルにより品質水準・作業速度・価格等の面でばらつきが起こりがちです。お客様の窓口を極力一本化し集中購買化すれば、案件の質・量に応じた翻訳者選定ができ、効率的に翻訳成果につなぐことが可能です。双方にメリットあるこの提案は特に医薬分野のメガファーマといわれるお客様に歓迎され、医薬分野の中で集中購買化を採用しているお客様の売上高は前期実績で医薬の売上高の約30%を占めています。これら2つのサービスの提供・促進により、医薬分野の3年間の売上成長年率は16.0%と全体の成長率を上回りました。第一次中期経営計画の営業戦略として他分野にも拡げてまいります。

Q: 米子会社黒字化の時期はいつですか。

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東社長: 米国子会社は、MANGA、ゲームなどのメディア・コンテンツ分野で成果を見ましたが、前期に通年稼働し軌道に乗り始めたところです。当初ターゲットとしていた在米日系企業に加え、米国現地企業の開拓強化とコスト管理を徹底し、2009年12月期の黒字化を目指しています。

Q: 最後に、第一次中期計画達成後の貴社ポジションのイメージをお話ください。

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東社長: 語学ビジネスサービスにおける世界ランクのトップテン入りを目指しています。
ある米国の調査会社が発表した2007年の調査によれば、当社は語学ビジネスサービスの世界ランキング13位に位置しております。世界ランキング2位のLionbridge technologies社(米)は、マニュアル分野において翻訳メモリの効果を既に証明した実績を持ち、世界25カ国で多言語翻訳を展開しています。当社も主力4分野において効果的な翻訳メモリの開発を実現し、第一次中期経営計画を達成して、ぜひ世界トップテン入りを果たしたいと考えております。
なお、第一次中期経営計画の最終年度である2011年3月期の連結数値目標は、売上高6,500百万円、営業利益700百万円、経常利益700百万円、当期純利益400百万円を目標としています。(詳細資料ご参照)

どうもありがとうございました。

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