風力発電関連銘柄特集
風力発電関連銘柄特集

風力発電関連市場の拡大に注目


新エネルギー分野はこれからが本番
 地球温暖化対策や原油価格高騰を背景として、原子力発電や太陽光発電とともに、風力発電関連市場の拡大が注目されています。世界風力エネルギー協会(WWEA)によると、世界全体の風力発電能力は07年末で約9400万キロワットとなり、前年末に比べて約27%拡大したようです。国別に見ると、最大のドイツは2000万キロワットを超え、スペインと米国は1000万キロワットを超えています。さらに世界全体の風力発電能力は12年には、07年に比べて約2・6倍に拡大すると見込まれています。

 新エネルギー導入の優遇策強化も背景として、欧米では市場が急拡大していますが、日本国内では風力発電所の建設が伸び悩んでいます。日本国内の07年3月末時点の風力発電能力は約150万キロワットに過ぎません。前年度末との比較では約37%増加しましたが、建設が遅れていた大型の風力発電所が相次いで稼働したことが主な要因です。07年の伸びも10%程度にとどまった模様で、日本政府が掲げる10年度に300万キロワットという目標の達成は難しい状況です。また、風力や太陽光などの新エネルギーが国内の発電能力に占める割合は、まだ1%にも満たない状況です。
>>風力発電関連銘柄一覧

国内での問題は山積みだが、海外事業は拡大

 日本では、03年施行の新エネルギー等利用特別措置法(RPS法)で、電力会社に対して、風力などで発電した電気を一定量販売するように義務付けました。しかし自然条件に左右される風力発電は、風の吹き方によって発電量が大きく変動するという欠点があります。そして安定供給という点で不安が大きいため、電力会社が風力発電からの購入に事実上の制限を設けていることが、市場拡大の妨げになっていると言われています。

 この他にも、国内の風力発電所の建設に関しては、幾つかの問題点が浮上しています。発電機の倒壊、羽根の破損や落下などの事故が相次いだことや、改正建築基準法の影響で、耐震性や安全対策の項目が増えたため、建設コストが上昇しています。また地域の生態系保全や運転中の騒音問題などの理由から、地域住民からの反対運動も活発になり、既存設備の運転や新規開発計画に影響が出ている模様です。さらに、風力や風向きの面で風力発電に適した地点も減っています。

 国内の大手風力発電事業者は、1位がユーラスエナジーホールディングス(東京電力<9501>が60%、豊田通商<8015>が40%出資)、2位がJ−POWER(電源開発)<9513>、3位が日本風力開発<2766>(東マ)です。国内での新規立地が進まないこともあり、各社とも欧州や米国を中心に海外での事業を拡大する方針を打ち出しています。

 国内最大手のユーラスは、国内で約32万キロワットの風力発電能力を保有していますが、スペインではすでに国内を上回る約52万キロワットの風力発電能力を保有しています。さらに米国テキサス州で出力18万キロワットと、国内最大の風力発電所の約3倍規模となる風力発電所を建設しています。Jパワーもポーランドに5万キロワットの風力発電所を建設中で、中欧・東欧で積極的に風力発電所の建設を進める方針です。

国内メーカーの技術力に注目

 世界の風力発電機の市場は、発電能力ベースで07年に前年比約4割拡大した模様です。11年には07年の約2倍に拡大するとの見方もあります。現在の世界市場シェアで見ると、デンマークのヴェスタスが最大手で約3割のシェアを握り、2位グループには米ゼネラル・エレクトリック(GE)、ドイツのエネルコン、スペインのガメサが1割強のシェアで並んでいるようです。日本のメーカーでは三菱重工業<7011>富士重工業<7270>日本製鋼所<5631>などが大型の風力発電機市場に参入しています。このうち三菱重工業<7011>は、06年から受注開始した新製品の信頼性の高さが評価され、特に米国向けの販売が好調な模様です。そして現在2%程度の世界市場シェアを、今後3〜4年で10%に拡大する計画です。

 国内の風力発電事業者は従来、風力発電機の多くを欧米メーカーから調達してきました。しかし欧米メーカー製発電機の故障、破損、落下、倒壊、火災などの事故が全国各地で相次ぎ、信頼性が揺らいでいるため、国内メーカーからの調達に切り替える動きも広がっています。

 一方、電力の安定供給という課題に対しては、蓄電池を併設する動きが始まっています。日本風力開発<2766>(東マ)は青森県六ヶ所村の風力発電所に、日本ガイシ<5333>社製のNAS(ナトリウム硫黄)電池を3万キロワット分設置します。蓄電池を利用した風力発電所は国内初となります。J−POWER(電源開発)<9513>も今後、蓄電池を併設した風力発電所を国内に建設する予定で、電気二重層キャパシターなどの需要も注目されます。この他では、日本精工<6471>NTN<6472>ジェイテクト<6473>などの軸受けメーカーが、風力発電機向け大型軸受けの需要拡大を見込み、工場用荷揚げ機のキトー<6409>は風車点検用電動荷揚げ機の需要拡大を期待しています。

 また、世界の風力発電機市場では、12年以降には海上風力発電用の超大型機の時代が始まると言われていますが、耐久性の確保など技術力が一段と問われることが予想されます。

●風力発電関連銘柄一覧
コード 銘柄名 市場 業種 内容
1721 コムシスホールディングス 東1 建設業 発電システム
1734 北弘電社 札幌 建設業 電気工事・施工
1813 不動テトラ 東1 建設業 電気工事・施工
1821 三井住友建設 東1 建設業 電気工事・施工
1832 北海電気工事 札幌 建設業 電気工事・施工
1893 五洋建設 東1 建設業 電気工事・施工
1942 関電工 東1 建設業 電気工事・施工
1944 きんでん 東1 建設業 発電システム
1949 住友電設 東1 建設業 電気工事・施工
1959 九電工 東1 建設業 発電所
2766 日本風力開発 東マ 卸売業 発電所
3401 帝人 東1 繊維製品 発電機器
3402 東レ 東1 繊維製品 ブレード
4063 信越化学工業 東1 化学 部品他
4217 日立化成工業 東1 化学 部品他
4675 エヌエス環境 JQ サービス業 調査他
4739 伊藤忠テクノソリューションズ 東1 情報・通信業 調査他
5001 新日本石油 東1 石油・石炭製品 発電所
5007 コスモ石油 東1 石油・石炭製品 発電所
5310 東洋炭素 東1 ガラス・土石製品 部品他
5333 日本ガイシ 東1 ガラス・土石製品 蓄電池
5343 ニッコー 名証 ガラス・土石製品 発電機器
5401 新日本製鐵 東1 鉄鋼 電気工事・施工
5411 ジェイ エフ イー HD 東1 鉄鋼 電気工事・施工
5631 日本製鋼所 東1 機械 ブレード
5913 松尾橋梁 東1 金属製品 電気工事・施工
5915 駒井鉄工 東1 金属製品 発電システム
5922 那須電機鉄工 東2 金属製品 発電機器
6147 ヤマザキ JQ 機械 発電システム
6268 ナブテスコ 東1 機械 部品他
6361 荏原 東1 機械 発電所
6363 酉島製作所 東1 機械 発電機器
6471 日本精工 東1 機械 ベアリング
6472 NTN 東1 機械 ベアリング
6473 ジェイテクト 東1 機械 ベアリング
6507 神鋼電機 東1 電気機器 発電システム
6508 明電舎 東1 電気機器 発電所
7004 日立造船 東1 機械 電気工事・施工
7011 三菱重工業 東1 機械 発電機器
7012 川崎重工業 東1 輸送用機器 発電システム
7013 IHI 東1 機械 電気工事・施工
7270 富士重工業 東1 輸送用機器 発電システム、発電機器
8015 豊田通商 東1 卸売業 発電所
8088 岩谷産業 東1 卸売業 電気工事・施工
8131 ミツウロコ 東1 卸売業 発電所
8894 原弘産 大証 不動産業 発電機器
9501 東京電力 東1 電気・ガス業 発電所
9504 中国電力 東1 電気・ガス業 発電所
9511 沖縄電力 東1 電気・ガス業 発電所
9513 J−POWER 東1 電気・ガス業 発電所
9532 大阪ガス 東1 電気・ガス業 発電所

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.06 |特集