ヒートアイランド対策銘柄特集

進む都市化と地球温暖化で対策の動き強まる

CO2削減、経費コスト削減にも繋がる重要なテーマ
経済発展に伴うヒートアイランド現象の深刻化

様々なヒートアイランド対策

ヒートアイランド対策手段 今さら言うまでもないが、世界規模での地球温暖化や、都市化に伴うヒートアイランド現象の増加が深刻化している。先進国においても軽視出来ない問題であるが、とりわけ新興国を中心に発展途上国の場合、大都市への人口集中が無計画な乱開発に繋がっているケースが多く、CO2排出量が増加する一方で都市部の緑地面積は急速に減少し、ヒートアイランド現象の深刻化に繋がっている。

 その結果、熱中症や睡眠障害など人々への健康に影響をあたえ、局所的な豪雨や夏場の水不足などの気候変動をも引き起こしていると見られている。

 特に緑化率の低下が大きな原因と考えられているため、国や大都市の自治体ではビルの屋上や壁面を緑化することを義務づけたり、校庭を芝生化したり、ドライミストを設置するなどの対策を始めている。世界規模での地球温暖化を少しでも阻止するため、都市部の環境改善、特に温暖化に影響を与える温室効果ガス削減対策を早急に進めていく必要性に迫られていると言える。

 ヒートアイランド対策として有効な手段として考えられるものは幾つかあるが、そのうち、特に大都市部において最も有効な手段と考えられているのが「屋上緑化」である。日本国内においては、屋上緑化を義務付ける自治体は年々増加しており、例えば、このヒートアイランド現象・地球温暖化防止策の一環として、東京都では屋上緑化や高反射率塗装により、建築物の屋根などの表面を涼しくする事業に対して、対象経費の2分の1を補助する「クールルーフ推進事業」の公募を始めている。実際、この5年間で屋上や側壁の緑化面積は3倍強にまで増加した。今後も景観緑三法の制定と工場立地法の改正で、より一層、屋上・壁面緑化の需要が広がるものと予想される。

日本の技術が地球環境改善と国内の景気浮揚双方に貢献

■ 主なヒートアイランド対策銘柄  
屋上緑化
施工銘柄
ハザマ<1719>、大林組<1802>、安藤建設<1816>、西松建設<1820>、前田建設工業<1824>、淺沼組<1852>、協和エクシオ<1951>、三晃金属工業<1972>
緑化製品銘柄 ロンシール工業<4224>、積水樹脂<4212>、三井金属<5706>、カネソウ<5979>、理研グリーン<9992>、カネコ種苗<1376>、サカタのタネ<1377>、日本農薬<4997>、日産化学工業<4021>、三井化学<4183>
舗装銘柄 大成ロテック<1895>、NIPPOコーポレーション<1881>、日本道路<1884>
水利用銘柄 古河総合設備<1778>、能美防災<6744>
 屋上や壁面を緑化することによるメリットとして、建物所有者の省エネ効果や建物利用者の周辺住民に対する癒し効果、都市中心部の大気浄化などの効果が挙げられる。また、緑化政策は建物だけではなく、駐車場や公園等にも普及し始めており、ゼネコンを始め、樹木や植栽品種を扱う企業も体制強化に動き始めている。

 それ以外にも、ヒートアイランド現象を促進していると考えられるアスファルト舗装から、熱発生を抑制する保水性舗装への転換も一つの対策として挙げられる。また高い反射効果作用を利用し、建物の太陽熱吸収を抑えることで、建物内温度の上昇を抑制し、空調ランニングコストの削減、しいてはCO2削減にも繋がる熱反射製品導入も、有効な対策手段と考えられている。

 こうしたヒートアイランド対策手段は、日本国内に止まらず、都市化の急速な進展に伴う緑化率減少と、温暖化ガス排出が急増する新興国でのビジネスチャンスも広がっていくものと見込まれ、日本の技術が地球環境改善と、国内の景気浮揚双方に貢献することが期待出来る。地球規模での都市化が進み、都市圏人口のウエイトが上昇する中、そうした増加する多くの都市住民が、より快適な生活を送っていくためにも、今後、よりニ−ズの高まっていく事業領域であり、各企業群に注目していきたい。

ゼネコン主導で屋上緑化事業を積極化

屋上緑化・ヒートアイランド対策 日本国内においても、また新興国をはじめ、発展途上国においても人口の都市集中が進んでいる。当然のことながら、増加する人口と業務活動の活発化で、都市開発が進展している。また、欧米先進諸国においては、大都市への人口集中は一段落しているものの、高度経済成長期に建設された建物の老朽化に伴い、再開発需要が増加している。そこでそれを契機に、屋上緑化・壁面緑化事業を進めていく動きがゼネコン主体に活発化している。

 例えば、ハザマ<1719>は、エルデと呼ばれる人工軽量土壌と、ヤシ殻マットの組み合わせを特徴とした、屋上緑化事業を積極的に進めている。本来の目的である断熱・冷熱効果を発揮するために保水性がポイントとなるが、一方では屋上という場所柄、排水性が非常に重要となってくる。また、屋上という立地上、如何に軽量であるかも重要なポイントである。エルデはその全てのバランス維持に優れているほか、ヤシ殻マットを施したことにより、屋上で最大約12℃、壁面で最大約5℃の表面温度低減効果を出すことに成功している。これにより屋上直下の執務室が、盛夏事最大5.6度下がったという結果も出ており、エアコンの温度設定を上げることで、CO2削減にも繋がる効果が期待出来る。

 大林組<1802>が注力する人工地盤緑化工法は、雨水を利用するという、自然の摂理に素直に従い、また省力にも繋がる環境に優しい技術を採用。軽量で耐踏圧性に優れ、植物の生育に配慮したコンテナを用いることで、多様な緑地を短期間で提供出来ることを可能にした。移動、撤去、変更も容易で芝生のみならず、樹木の植栽も可能と、単なる低温効果だけでなく、デザイン性の幅を広げることを可能にした技術と言える。

 さらに安藤建設<1816>は、薄層緑化工法と低中木緑化工法という何れも超軽量タイプで、廃プラスチックや食品残さを再利用した人工軽量土壌を使うことで、施工コストの低減に成功している。その他管理の簡単なベンケイソウ科のセダムを利用した、緑化システムに特徴のある西松建設<1820>、土壌改良や水質浄化に繋がる人工ゼオライトを利用する前田建設工業<1824>、軽減化を目的として土の代わりに不織布を使用することや、緑化防音壁に強みのある淺沼組<1852>、通信工事大手の協和エクシオ<1951>、芝を中心とした、緑化屋根事業を進める三晃金属工業<1972>も屋上緑化に積極的な企業であり、要注目である。

緑化事業進展に伴い関連業界も活発化

屋上緑化施工・園芸 屋上緑化事業を施工するのはゼネコンが主体となるが、施工にあたって必要な土壌製品・防水シート・各種園芸製品やその他関連製品も当然のことながら必要になってくる。

 屋上緑化に特化した防水シートを製造・販売するロンシール工業<4224>、園芸用の支柱や竹を生産する積水樹脂<4212>、屋上緑化向け軽量土壌を手掛ける三井金属<5706>、独自の緑化工法やガーデニングセットを手掛けるカネソウ<5979>、緑化資材の理研グリーン<9992>といった企業は、今後の屋上緑化ニーズに合わせて、製品需要の増加が期待される。

 また造園に必要な種苗を取り扱うカネコ種苗<1376>サカタのタネ<1377>、緑化維持に必要な化学肥料・農薬を手掛ける日本農薬<4997>日産化学工業<4021>三井化学<4183>も、それぞれ緑化事業の進展に比例して、製品需要の増加が見込まれ、要注目である。

熱反射技術も対策の有効な手段

 都市住民にとって、低温効果やCO2の吸収効果だけでなく、「癒し」効果にも繋がる屋上・壁面緑化は、ヒートアイランド対策として、有効な手段であるが、ヒートアイランド対策に絞った観点で考えれば、方法は緑化一つにとどまらない。

 熱反射製品の利用も有効な手段である。日立プラントサービス<1751>が手掛ける「セラミックカバーCC100」は、施工対象物の殆どの材質・形状・場所を選ばず、塗装するだけで熱反射効果を発揮する熱反射塗料であり、ISO14000にも対応している。太陽熱による建物の温度上昇を抑制し、空調のランニングコスト削減に結びつけることで、CO2削減にも繋げられる。「生き物」を扱う緑化事業と違い、完成後の維持・管理も簡単・安価で、導入メリットは大きい。

保水性舗装への転換でヒートアイランド防止

保水性舗装への転換でヒートアイランドを防止 大都市中心部を覆うアスファルト。真夏の陽炎が立つような炎天下において、視覚的にもさることながら、盛夏時には表面温度が60度近くまで達するなど、ヒートアイランド現象を引き起こす大きな要因となっている。そこで最近、保水性舗装という、アスファルト舗装よりも、上昇温度低減効果のある舗装技術の導入が活発化している。

 大成ロテック<1895>が手掛ける保水性舗装は、舗装内部に保水された水分が、少しずつ路面より蒸発する時に発生する冷却作用(打ち水効果)により、路面温度の上昇を抑えることができ、さらにアスファルト舗装と異なり、舗装中に貯水状態を作ることが出来ることから効果の持続性にも繋がっている。実際にアスファルト舗装の表面温度より、盛夏時で20度程度下げる効果があり、このことによって周辺市街地の気温も1度から2度下げることに成功している。

 また、NIPPOコーポレーション<1881>は、遮熱コートをコーティングした舗装や温度低減効果のあるガラスの廃材を利用したブロックに特徴を持つ。さらに日本道路<1884>も同様の保水性舗装やCO2排出を従来工法の三分の一程度に抑える舗装修繕技術に強みを持っており、要注目である。

ヒートアイランド対策に水も貢献

水もヒートアイランド対策に貢献 昔、日本のあらゆる街角で見られた「打ち水」の光景。昔から水を巻くことで温度を下げることはよく理解されてきた。現代においてもその伝統を受け継ぐ、或いは、ヒントにした技術がヒートアイランド対策への有効な手段として注目されている。

 一つはスプリンクラー。古河総合設備<1778>はその代表的メーカーである。ゴルフ場をメインに導入実績を残しているが、今後は、芝生化を進める動きが強まっている学校の校庭や、公園向けの需要も高まってくることは確実で業績への貢献が期待される。

 能美防災<6744>は「ドライミスト」という極めて微細な水の粒子を大気中に噴霧することで、2度から3度ほど気温を低下させる機能を開発、蒸散作用に優れ、殆ど濡れるという感触もないことから、今後都市中心部の導入が増加することが期待され、要注目である。

 今回は屋上緑化や保水性アスファルト、水の利用という観点からヒートアイランド対策銘柄をピックアップした。対策手段としては他にも様々な方法があるが、短期的な導入が可能で、費用も比較的負担の少ない対策として緑化などの対策価値が高まっているものと判断される。そうした事業領域に属する銘柄への注目度は高まっていくであろう。
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.07 |特集