2009年02月06日
厳しさ増す!自動車セクター銘柄を徹底検証
厳しさ増す!自動車セクター銘柄を徹底検証
自動車セクター銘柄の徹底株価診断
日本の新車販売台数は6ヶ月連続の前年割れ

 自動車の販売不振が世界的に深刻である。リーマン・ショックが起きた2008年9月以降の、日米欧における新車販売台数の動向を見てみよう。

 日本の新車販売台数(軽自動車を除く登録車)は、08年9月が前年同月比5%減の約31万台、10月が同13%減の約23万台、11月が同27%減の約22万台、12月が同22%減の約18万台だった。そして09年1月は同28%減の約17万台で、6ヶ月連続の前年割れだった。1月単月としては72年以来、37年ぶりの低水準に落ち込んだ。また09年1月は、軽自動車の販売台数も同6%減の約13万台となり、3ヶ月連続の前年割れだった。

 米国の新車販売台数は、08年9月が同27%減の約96万台、10月が同32%減の約84万台、11月が同37%減の約75万台、12月が同36%減の約90万台だった。そして09年1月は同37%減の約66万台で、15ヶ月連続の前年割れだった。81年12月以来、約27年ぶりの低水準に落ち込み、年率換算で1000万台の大台を割り込んだ。

 欧州の主要18ヶ国の新車販売台数は、08年9月が同9%減の約121万台、10月が同16%減の約104万台、11月が同26%減の約85万台、12月が同19%減の約84万台(8ヶ月連続の減少)である。また、新興国市場でも販売台数が減速傾向を強め、中国での販売台数も伸び率を縮小させている。

トヨタ自動車は業績悪化警戒感が上値圧迫

トヨタ エスティマ そして世界的な自動車の販売不振は、日本の自動車・自動車部品メーカーの業績を大幅に悪化させている。各社とも09年1〜3月期に、国内でも4割前後の減産を実施する見込みで、稼働率の低下が深刻になっている。09年3月期の業績は、二輪車や軽自動車が比較的堅調なホンダ<7267>スズキ<7269>など、一部のメーカーを除いて軒並み最終赤字に転落する見込みだ。人員削減や設備投資抑制などの対策を実施するが、稼働率低下や為替の円高進行などのマイナス要因をカバーできず、10年3月期の業績も最終赤字となる可能性が高い。

 株価の動きを見ると、自動車セクター全体としては、こうした悪材料に対する反応が、かなり限定的になってきている。ただし個別に見ると、方向感の異なる動きとなっているようだ。トヨタ自動車<7203>ダイハツ工業<7262>は、業績予想の下方修正など悪材料が続出しているにも関わらず、昨年10月の安値を割り込むことなく、比較的堅調な動きとなっている。また、ホンダ<7267>スズキ<7269>富士重工業<7270>も、昨年12月に安値を更新したが、その後の動きは比較的堅調と考えられる。一方で、日産自動車<7201>日野自動車<7205>は、今年2月に安値を更新するなど下値を切り下げる動きとなっており、いすゞ自動車<7202>三菱自動車<7211>マツダ<7261>の株価は100円台前半で低迷している。

自動車セクターの投資スタンスを考えるポイント

 こうした株価の動きも参考にして、自動車セクターに対する投資スタンスを考えるうえでのポイントは、

 @販売不振の底入れ時期をどのように考えるか
 A株価は10年3月期の業績悪化まで織り込んだか
 B中期的に淘汰・再編・グループ化が進む可能性


 以上の3点考えた場合、勝ち組(生き残り組)はどこかとなる。@については、09年後半からの緩やかな回復を期待する見方もあるが、大勢としては販売低迷が続き、09年通年では08年よりも減少するという見方が多い。こうした見方が広がっていることを前提にすれば、Aについては、10年3月期の業績悪化懸念が、株価にある程度織り込まれていると考えることも可能だろう。Bについては、すでに現在の株価水準が示唆しているとも考えられる。

世界の自動車・自動車部品メーカーは二極化、淘汰・再編も

 株価の動向は、短期的には為替の動向に影響を受けやすく、株価が低位な銘柄ほど動意づく可能性も考えられる。また4月下旬から5月前半にかけて、決算発表時期に示される10年3月期の業績見通しを材料視して、株価が乱高下する可能性も考えられる。

 中期スタンスで銘柄選択を考えるなら、やはり財務基盤が強固な優良銘柄を中心に考えたい。もちろん、財務基盤が強固で製品競争力が高い優良企業にとっても、一時的な業績悪化は避けられない。しかし販売不振が長期化すればするほど、資金力、商品力、開発力など経営体力の面で、世界の自動車・自動車部品メーカーの二極化、淘汰・再編が進む可能性も高まる。財務基盤が脆弱な企業にとっては、深刻な事態となる可能性が高い。日本の自動車メーカーも、中期的には3〜4グループに集約する可能性が高いだろう。

【自動車セクター銘柄の徹底株価診断】

■日産自動車は業績悪化懸念で下値警戒

 日産自動車<7201>は、13週移動平均線が上値抵抗線となる形で反落し、300円台を割り込んで昨年来安値も更新した。これは、大幅減産や為替の円高進行で一段の業績悪化懸念が高まっているためと考えられる。減配の公算も嫌気されているだろう。09年3月期の営業利益は赤字に転落する模様であり、10年3月期も生産台数の急回復は期待できず、営業利益は赤字が続く可能性も高い。
 株価は10年3月期の業績まで織り込んだとは考えにくい。為替の動向次第とも考えられるが、300円近辺のモミ合いレンジから下放れれば、下降トレンドの展開が続く可能性が高まり、下値の警戒が必要となる。投資判断は「やや弱気」とする。

■いすゞ自動車は業績悪化懸念で安値圏

 いすゞ自動車<7202>は、年初に一時150円近辺まで上昇して底打ちを期待させた。しかし反落して安値圏に接近したことで、13週移動平均線が上値抵抗線として意識される形になった。09年3月期、10年3月期はともに、景気後退の影響でトラック販売台数が大幅に減少しているため、営業利益は大幅減益となる可能性が高い。
 株価水準が100円近辺と低位であり、実績PBRも1倍を割り込んでいることが下値を支えると期待されるが、業績の大幅な悪化懸念は、やはり株価の下押し材料となる。昨年12月の安値を割り込めばモミ合いから下放れる形となるだけに、100円台を維持できるかがポイントだろう。当面の投資判断は「モミ合い」とする。

■トヨタ自動車は業績悪化警戒感が上値圧迫

 トヨタ自動車<7203>は、13週移動平均線が上値抵抗線として意識される形で反落した。上値が重く安値圏でのモミ合い展開となっている。悪材料に対する抵抗力は増している印象だが、やはり業績悪化に対する警戒感が上値を圧迫しているようだ。世界的な自動車販売の不振で大幅減産を余儀なくされているうえに、為替の円高進行も打撃となる。

 09年3月期は営業赤字に転落する見込みであり、10年3月期も営業赤字が続く可能性が高まっている。長期投資の資金などが下値を支えると期待されるが、現時点では反発に結びつく好材料も見えない状況だろう。10年3月期業績の会社見通し発表や、為替の動向次第とも考えられる。当面の投資判断は「モミ合い」とする。

■日野自動車は業績悪化で安値圏モミ合い

 日野自動車<7205>は、年初に一時200円台を回復したが、13週移動平均線が上値抵抗線となる形で反落し、昨年来安値を更新した。大勢としては上値が重く、安値圏でモミ合う展開が続いている。09年3月期の営業利益、純利益は赤字となる見込みだ。特に日本とインドネシアでの販売状況が急速に悪化している模様であり、為替の円高進行もマイナス要因となる。
 10年3月期も販売台数の急回復は期待薄であり、営業赤字が続く可能性が高い。100円台という低位の株価水準が下値を支えると期待され、業績悪化懸念もある程度織り込まれていると考えられるが、モミ合い下放れの展開にも注意が必要だろう。投資判断は「モミ合い」とする。

■三菱自動車は業績面への懸念強く上値切り下げ

 三菱自動車<7211>は、年初に150円近辺まで上昇したが、26週移動平均線が上値抵抗線として意識される形で反落した。再び13週移動平均線を割り込んで、上値を切り下げる展開となっている。株価水準が100円台の低位であり、電気自動車関連などを材料視して動意づいたようだが、業績悪化に対する警戒感が強いため反落したと考えられる。
 販売の減速や為替の円高進行が想定以上であり、09年3月期の営業利益は赤字となる可能性が高い。10年3月期も厳しい事業環境が予想され、営業赤字が続く可能性が高い。販売不振が長期化すれば、経営状況が深刻化する可能性にも注意が必要であろう。投資判断は「やや弱気」とする。

■マツダは業績悪化懸念で下値警戒

 マツダ<7261>は、年初に一時200円近辺まで上昇したものの、13週移動平均線が上値抵抗線として意識される形で反落した。大勢としては安値圏でのモミ合い展開が続いている。急速な販売台数の減少で大幅減産となり、為替の円高進行も打撃となる。
 09年3月期、10年3月期ともに営業利益は赤字となる可能性が高い。特に欧州市場の構成比が高いだけに、対ユーロの円高影響に注意が必要だろう。100円台という低位の株価水準が下値を支える可能性も期待されるが、業績面の警戒感が増している。為替の動向次第とも考えられるが、昨年12月の安値を割り込めば下値模索の展開に注意が必要となる。投資判断は「やや弱気」とする。

■ホンダは業績への警戒感強く為替動向に注意

 ホンダ<7267>は、昨年12月8日の安値からは反発した水準である。ただし13週移動平均線を意識する形で上値が重くなり、2000円近辺でのモミ合い展開となっている。昨年12月17日に09年3月期業績の下方修正を発表した時点では株価への影響が限定的だったことを考えると、悪材料に対する抵抗力は増していると考えられるが、悪材料出尽くしで上値を追うような状況ではないだろう。
 需要減速や為替の円高進行などで、引き続き業績悪化が警戒されていると考えられる。二輪車の需要も減速傾向を強めており、10年3月期の営業利益は赤字となる可能性にも注意が必要だろう。為替の動向次第とも考えられるが、当面の投資判断は「モミ合い」とする。

■スズキは需要減速で業績悪化を警戒

 スズキ<7269>は、昨年12月の安値からは反発した水準だが、上値の重い展開だ。13週移動平均線が上値抵抗線として意識される形であり、大勢としてはモミ合い展開となっている。北米市場への依存度が小さいため、他の自動車メーカーに比べれば現時点での減産幅は小さい。しかし、新興国市場でも四輪車、二輪車の需要減速感が強まっているため、その影響が懸念されていると考えられる。
 09年3月期は大幅営業減益の見込みであり、10年3月期の営業利益も弱含みとなる可能性が高い。予想PERや実績PBRなどの指標面で見れば割安な水準とは言えないだろう。10年3月期の業績まで織り込んだ水準とは考えにくく、投資判断は「やや弱気」とする。

■富士重工業は業績悪化懸念で下値注意

 富士重工業<7270>は、年初には一時300円近辺まで上昇したが、その後反落して13週移動平均線が上値抵抗線として意識される形となった。1月16日に09年3月期業績の下方修正を発表した時点では、為替の円高一服感を好感する形で株価への影響は限定的だったが、その後の円高進行であらためて業績悪化が警戒されたと考えられる。
 国内や北米に加えて、新興国市場でも販売が減速しているため、09年3月期は営業赤字に転落する見込みであり、10年3月期も営業赤字が続く可能性が高い。為替が円安方向に振れれば動意づく可能性も考えられるが、現時点では業績面の不透明感が強く、下値に注意が必要だろう。投資判断は「やや弱気」とする。