2011年05月25日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

東洋建設の前11年3月期連結業績は減収ながら大幅増益を達成


■自己資本比率は22.2%と、中期経営計画の目標18.0%をクリア

東洋建設のHP 海洋土木の東洋建設<1890>(東1)は、5月24日経団連会館で前11年3月期決算説明会を実施した。
 前11年3月期連結業績は、売上高122,113百万円(前年期比9.8%減)、営業利益4,213百万円(同28.5%増)、経常利益3,369百万円(同39.2%増)、純利益1,217百万円(同40.8%増)と減収ながら大幅増益を達成した。
 連結の貸借対照表の概要は、流動資産が632億円(同30億円減)、固定負債が355億円(同12億円減)となり、総資産は987億円(同43億円減)。流動負債は559億円(同129億円減)、固定負債207億円(同76億円増)、単体の自己資本比率は22.2%と、中期経営計画の目標18.0%をクリアした。
 個別の前期の部門別受注高は、国内海上土木では公共工事の減少と震災の影響もあり306億円(同147億円減)、国内陸上土木は大型案件の期ズレにより99億円(同21億円減)、国内建築は大型案件を獲得したことで424億円(同69億円増)、海外は今期へのずれ込みとなり17億円(同147億円減)となった。
 個別の前期部門別の完成工事高は、国内海上土木については、羽田飛行場の拡張工事等があり525億円(同3億円減)と僅かな減少に留まった。国内陸上土木は手持ち工事の減少と受注減少により146億円(同91億円減)、国内建築は繰越工事の着工遅れと受注、完成工事減により324億円(同55億円減)、海外は100億円(同17億円増)であった。
 個別の前期の完成工事総利益を見ると、国内土木84億円(同18億円増)、完工総利益率12.5%と当初予想利益率8.7%を大幅に上回ったことから大幅増益となった。
 一方、国内建築は、赤字発生案件もあり2億円(同12億円減)、総利益率0.6%と当初予想利益率4.0%を大幅に下回った。
 海外につては、総利益率は当初予定の6.5%を下回る6.3%であったが、6億円(同1億円増)と増益であった。
 個別の営業利益は、完成工事高の減少はあったものの、完工総利益率の向上と販管費の削減により、37億円と前年比8億円の増益となった。

■売上総利益、営業利益、経常利益は、達成率105%、107%、121%と目標達成

 前期は、減収であったものの、工事の利益率を向上し、一方でコスト削減を実施したことで、大幅増益となった。中期経営計画の成果が出たといえる。また、最終年度であったことから、これからの新中期経営計画の課題も出てきている。そのため、計画の達成、未達についての説明も行われた。
 目標としていた営業利益30億円は、11年3月期に達成。自己資本比率18.0%は10年3月期に達成した。
 しかし、受注高については、計画では3年間で3,650億円を見込んでいたが、実績は3,038億円と達成率は83.0%と未達に終わっている。
 売上高については、計画では3年間で4,050億円を見込んだが、実績は3,720億円と達成率92.0%で終わった。
 一方、売上総利益、営業利益、経常利益は、達成率105%、107%、121%と目標達成。純利益は96%と未達に終わったもののほぼ目標を達成したことで復配を実施した。
 数値目標以外の成果としては、(1)営業拠点見直しなどにより組織のスリム化、一般管理費の大幅削減、(2)海外案件の事前協議等によりリスク管理の徹底、(3)リスク管理体制の整備、BCP(事業継続計画)作成等によるコーポレートガバナンスの強化等が挙げられた。
 一方で、利益は計画を達成できたが、国内建設投資の急速な減少により、受注未達となり、「事業量の確保」に対する戦略的な取り組みが課題として出てきた。更に、企画提案力、技術力が新たな成長への条件となるため、海上土木分野での保有技術や設備の見直しを行い、コア事業の強化の必要性も出てきた。

■新中期経営計画を策定、達成目標は営業利益率3.0%、D/Eレシオ1.0以下

 そのような現状の中で、現在の経済的状況、事業環境を総合的に判断したうえで、新中期経営計画を策定している。
 基本方針は、優れた技術と顧客からの信頼で更なる企業価値向上を目指すとしている。
 達成目標は、営業利益率3.0%、D/Eレシオ(有利子負債÷株主資本)1.0以下を掲げている。
 基本戦略として、(1)国内および海外とも得意分野の海上土木に集中し、民間事業へも注力する、(2)東日本大震災による被災地域への早期復旧・復興に向けての全社的な対応を行う、(3)海上土木分野における保有設備・技術のスクラップ&ビルドを行う、(4)建築事業と陸上土木分野については、利益を重視した効率的な事業量を確保する、(5)信頼に足る企業を目指してCSR(社会的責任)の実践とIFRS(国際財務報告基準)への対応を行うとしている。
 個別の受注計画は、12年3月期1,150億円、13年3月期1,070億円、14年3月期1,080億円としている。
 個別の完成工事売上高は、12年3月期1,050億円、13年3月期1,080億円、14年3月期1,070億円。
 個別の完成工事総利益と利益率は、12年3月期70億円、6.7%、13年3月期79億円、7.3%、14年3月期82億円、7.7%。

■土木分野では早期復旧・復興に対し、グループとして最大限の協力を行う

 分野別の事業戦略は、土木分野においては、震災による被災地域の早期復旧・復興に対し、グループとして最大限の協力を行う。総合評価への対応力を強化する。民間営業情報を共有化する。海上土木プロジェクトへの先行的対応を行い、市場ニーズに沿った技術開発を実現する。更に、グループ船舶の活用、保有設備の見直しと作業船の建造を行うとしている。

■建築分野では営業力を強化し、利益を伴った事業量を確保

 建築分野については、利益を重視した効率的な事業量を確保することを目標としている。そのため、営業力を強化し、利益を伴った事業量を確保する。購買・外注・予算管理など業務手順を見直し、コスト競争力を強化する。前田建設工業との連携強化による総合力を発揮する。震災復興への協力と事業企画の提案を行う。特に注力する分野は、医療・福祉分野、教育文化施設、官庁工事と具体的にターゲットをあげている。

■海外分野では拠点国であるフィリピン・ベトナムでのベース事業量を確保

 海外分野については、リスク管理を継続し、穏やかな事業量拡大と安定した収益の確保を目指す方針。そのための具体策としては、拠点国であるフィリピン・ベトナムでのベース事業量を確保する。それ以外の国でもODAへの取組を行い、前田建設との共同取組による事業量の拡大を図る。海外管理・施工要因の計画的育成を行い、ローカル職員を活用する。パッケージ型インフラ輸出等のプロジェクトへ参画するとしている。

■夏から秋にかけて本復旧工事の発注も予想される

 新中期経営計画の初年度となる12年3月期連結業績予想は、売上高115,000百万円(前期比5.8%減)、営業利益2,700百万円(同35.9%減)、経常利益1,950百万円(同42.1%減)、純利益900百万円(同26.1%減)と減収減益を見込んでいる。尚、この数字には、東日本大震災の復旧・復興関連は含まれていない。
 「震災前から国の成長戦略として進められてきた国際コンテナ戦略港湾やバルク港湾などは、震災後の今だからなおさら必要になってきた。震災工事は最優先だが、これらの取組みが減速することもないだろう」と毛利社長は、出席者に説明した。
 同社は、震災直後から港湾の啓開作業にあたっており、被災調査にも協力している。今後夏から秋にかけて本復旧工事の発注も予想されており、得意とする港湾の浚渫、海洋土木工事などの受注が順調に進めば、完成工事高の上乗せにより上方修正も予想される。

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