2010年08月04日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

さくらインターネットは今11年3月期第1四半期の決算説明会を開催


■今後の展望、新データセンター建設計画の順で現況を説明

さくらインターネットホームページ データセンター事業ののさくらインターネット<3778>(東マ)は、29日に兜町平和ビルで今11年3月期第1四半期の決算説明会を開催した。
 同社代表取締役社長田中邦裕氏は、さくらインターネットの特長、第1四半期の業績報告、今後の展望、新データセンター建設計画の順で同社の現況を説明した。
 データセンター事業には、顧客が所有するサーバなどの機器類を、回線設備の整った施設に、設置・管理するスペースを貸与するコロケーションと、データセンターが所有するサーバなどの機器類を顧客に貸与するホスティングの2つに分けられている。
 コロケーションは貸与するスペースの広さにより、オープンスペース単位、個室(ケージ)、ラック単位(ハウジングサービス)の3つに分けられる。同社が提供するコロケーションサービスはラック単位(ハウジングサービス)のみである。
 ホスティングは専有ホスティング(専用サーバサービス)と共有ホスティング(レンタルサーバサービス)に分けられる。同社では、両者とも提供している。

■ハウジングサービスより利益率の高い専用サーバサービスの売上比率が高まる

 主要サービス別売上構成比の推移を見ると、08年3月期ハウジングサービス48.1%、専用サーバサービス37.3%、レンタルサーバサービス14.6%、09年3月期ハウジングサービス47.6%、専用サーバサービス36.7%、レンタルサーバサービス15.7%、10年3月期ハウジングサービス43.7%、専用サーバサービス38.9%、レンタルサーバサービス17.4%と、ホスティング分野の売上比率が年々高まっており、今第1四半期ではついに、ハウジングサービス40.2%、専用サーバサービス41.4%、レンタルサーバサービス18.4%と、ハウジングサービスよりも利益率の高い専用サーバサービスの売上比率が最も高くなった。
 その要因として、田中邦裕社長は「アウトソーシングの需要の高まりにより、企業がサーバを自社で所有するよりも、レンタルする傾向が強まりつつある」と語っている。

■インターネット回線総量は国内トップの回線容量を232Gbpsを確保

 同社は、自社運営の都市型データセンターが東京に4カ所、大阪に1カ所あり、6月30日時点のサーバラック総数は2179ラックとなっている。インターネット回線総量は213Gbps(6月30日現在)と、国内トップの回線容量を確保している。なお、説明会終了後、インターネット回線総量を19Gbpsアップし、232Gbpsとなったことを発表している。
 さらに同社は、サービスの開発からサーバの構築、運用・保守、顧客サポートといった、データセンター事業に関する全てのバリューチェーンを自社で対応しており、例えば自社ホスティングサービスに最適化した自社開発サーバを活用することにより、コストの削減につなげてもいる。また、自社データセンターで、自社ホスティングサービスを運用することにより、安定した高いラックの稼働率を維持している。

■今第1四半期の売上原価率は66.2%と8ポイントも改善

 同社ビジネスの特長として、スケールメリットを活かせるビジネスであることも挙げられる。データセンターを新設または増床した場合、賃借料の増加や新たに設置した通信機器類の減価償却費が膨らむため、一時的に売上原価率が上昇するが、データセンターの運営コストの多くが固定費であるため、売上高が伸びれば利益率は大きくなる。しかも同社では、ホスティングシステムの自社開発や運用保守の内製化により、システムライセンス料等の変動が費不要である。前期の第1四半期の売上原価率は、74.2%であったが、今第1四半期の売上原価率は66.2%と8ポイントも改善しており、営業利益の大幅増益に結び付いている。

■今第1四半期の経常利益は3億900万円対前年同期比206.0%増

 これらの特長が説明なされた後で、今第1四半期の主な事業トピックと業績についての説明があった。
 同社は、5月に堂島データセンターにあるホスティングサービス専用フロアのサーバラックを72基増設した。更にサービス品質を向上させるために、コールセンターのスタッフを増員し、顧客サポート体制の充実を図った。6月には、国内最大級の郊外型大規模データセンター(北海道石狩市)の建設計画を発表した。また、資本提携先の双日<2768>(東1)から営業部員の管掌役員として新たに取締役を1名招聘した。そのほか専門知識が不要なホスティングサービスとして、「さくらのマネージドサーバ」Core2Duoプランの提供開始や、昨年8月に取得した自己株式1610株の消却も行なった。
 今11年3月期第1四半期連結業績は、売上高20億9400万円(前年同期比11.8%増)、営業利益3億1400万円(同184.7%増)、経常利益3億900万円(同206.0%増)、純利益1億800万円(同19.4%増)と2ケタの増収増益。
 純利益については、「資産除去債務に関する会計基準」及び同適用指針の適用に伴い、特別損失として6900万円を計上したため、営業利益、経常利益の伸び率より低くなったが、2ケタの増益を確保した。

■2ケタの増収増益で、財務内容の健全化も進む

 負債は、資産除却債務が加わったこと等により34億300万円(同8100万円増)となったが、純資産は18億1900万円(同6400万円増)となり、自己資本比率は0.3ポイントアップし33.7%となった。
 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フロー4億9300万円、投資キャッシュ・フロー△2億7100万円、財務キャッシュ・フロー△1億6500万円となり、現金及び現金同等物の第1四半期末残高は前期末比5600万円増の12億2800万円となっている。
 第1四半期業績は2ケタの増収増益で、財務内容の健全化も進んでおり、順調といえる。

■国内サーバ市場は縮小、データセンターサービス市場は順調に成長すると予測

 次に、今後の展望としてIT市場の動向予測が説明された。
 サーバに対する企業のマインドは、所有から利用へと進んでいることから、同社では、国内サーバ市場は縮小すると予測している。一方国内データセンターサービス市場については、順調に成長していくものと見ている。
 ソフトウェアについては、システムの自社構築からパッケージサービスの利用へシフトすると予測している。国内ソフトウェア市場についてはほぼ横ばいに推移すると予測している。一方、成長著しいクラウドサービス市場においては、大きく飛躍するものと見ている。
 このような状況を踏まえ、同社では、ホスティングサービスの新サービスとして、サーバの仮想化技術を活用した「さくらのVPS」を7月からテスト導入した。同サービスの運用ノウハウを積み、今期中に提供を予定しているクラウドサービス(IaaS)に展開したいとのこと。また、既存サービスは継続的に機能を強化していく方針だ。
 クラウドサービスではIaaSサービスと共に、キーバリュー型ストア(KVS)の実用化に向けた研究開発を進め、PaaSサービスの提供実現を目指している。

■ホスティングやクラウドサービスの場合は賃貸料の安い、郊外型が有利

 続いてITインフラ戦略についての説明があった。ハウジングの場合、利用者が、通信機器やシステム管理を自ら現地で行わなければならないため、データセンターへのアクセスの利便性が求められており、都市型であることが必要条件であった。そのため、同社も東京、大阪に都市型データセンターを運営している。
 一方、ホスティングやクラウドサービスの場合は、インターネット経由で通信機器類やシステムの管理が可能となるため、データセンターへのアクセスの利便性は必要としない。そのため、ホスティングやクラウドに特化したデータセンターを設立する場合、賃貸料の安い、郊外型が有利となる。同社は今後、ホスティングやクラウドサービスの提供を強化するため、国内最大級の郊外型大規模データセンターを北海道の石狩市に新設することを発表した。

■石狩データセンターの1期棟の竣工は2011年秋を予定

 石狩データセンターの敷地面積は、最大8棟まで増築が可能な5万1448平方メートル。1期棟の建築面積は3850平方メートル(延床面積6325平方メートル)で地上2階建ての予定。同建物のラック数は500ラック(1期棟)だが、最大8棟まで増設すると4000ラックになる見通し。供給電力は、標準8kVA/ラックで、最大15kVA/ラックまで対応可能。1期棟の竣工は2011年秋を予定している。
 「都市型のデータセンターを新設する場合、十数階建てのビルを建設する必要があり、初期投資額がかなり大きくなります。また、建物全ての階のラックが埋まるまでにはかなりの時間がかかり、その間ラックの稼働率は低いままで推移してしまいます。ところが、今回の石狩のデータセンターは分棟式となりますので、当社サービスの需要動向に応じた建設計画が可能となります。また、消費電力は、寒冷地である北海道の外気を活用することで、空調コストの大幅な削減が可能となります。」(田中邦裕社長)と石狩データセンターの優位性を語った。

■データセンターサービス料金を、世界標準に押し下げることが可能となる

 更に、「東京23区内のデータセンター対応ビルを賃貸した場合と比較して、石狩モデルのITコストは半分以下になると想定しています。その結果、国内のデータセンターサービス料金を、世界標準に押し下げることが可能となり、当社のサービスの競争力は海外のデータセンターにも負けないようになります」(田中邦裕社長)と同社の市場競争力が業界随一となることを説明した。
 今通期連結業績予想は、売上高87億円(同11.4%増)、営業利益9億円(同20.2%増)、経常利益8億8000万円(同21.6%増)、純利益5億2000万円(同8.3%減)を見込む。

>>さくらインターネットのMedia−IR企業情報

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2010.08 |特集