2011年08月16日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

さくらインターネットは第1四半期決算説明会を開催


■増収にもかかわらず、営業・経常利益共に減益、最終利益は倍増

さくらインターネットホームページ 大手データセンター事業者のさくらさくらインターネット<3778>(東マ)は、7月26日に兜町平和ビルで今12年3月期第1四半期決算説明会を開催した。
 代表取締役社長田中邦裕氏は、さくらインターネットについて、第1四半期の業績概要、今後の展望について説明を行った。
 「当社は、データセンター事業を展開しています。現在東京と大阪にデータセンターを運営しています。お客さまのサーバを預かるか、又は当社のサーバをお客様にお貸しするというビジネスを展開しています。当社のお客様は、ネット系のソーシャルゲームの事業者や、システムと併せてサーバをエンドユーザーに提案されているシステムインテグレーター、ITリテラシーが高く個人でブログやホームページを作られている方々になります」と事業内容を説明した後、第1四半期の業績概要について説明が行われた。
 今12年3月期第1四半期業績は、売上高2,272百万円(前年同期比8.5%増)、営業利益310百万円(同1.3%減)、経常利益299百万円(同3.2%減)、純利益229百万円(同111.5%増)と増収にもかかわらず、営業・経常利益共に減益であったが、最終利益は倍増と大幅な増益となった。
 売上高は増収であったが、営業利益は減益となった要因は、堂島データセンターのフロア拡張やラック増設に伴い売上は伸びたものの、一方で、賃借料と減価償却費の大幅な増加が利益を圧迫したことによる。
 また、経常利益については、営業利益の減少や、石狩データセンターの建設資金として調達した借入金増加に伴う支払利息の増加により減益となった。
 ところが、最終利益については、新株予約権戻入益の計上や、前期に計上した資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額がなくなったことにより、大幅増益となった。

■サーバの技術革新が早く陳腐化のリスクが高いため、早め、早めの減価償却を行う

 第1四半期業績の概要を説明した後、「今回は、投資家の皆様から減価償却費についての問合せが多かったので、減価償却の説明を行います。まず、当社の減価償却は定率法で行っています。データセンターを増設・増床すると、その分売上高が増えてくるので、利益率は下がることは無いのではないかという質問をいただきます。しかしながら当社の場合、データセンター事業に関する有形固定資産については、技術革新が早く陳腐化のリスクが高いため、安全策を採り、定額法より償却の早い定率法を採用しています。サーバの場合、最初の年に50%の減価償却を行います。そのため、設備投資した初年度の減価償却費は高くなってしまいます。今期は積極的にデータセンターへの設備投資をする予定です。売上高は積みあがってきますが、減価償却費もその分増える見込です」と利益率が下がる理由を語った。

■VPSの売上高は、四半期毎に非常に高い伸びを示す

 サービス別の売上高については、これまで、その他のサービスとして扱われていたVPS(バーチャル・プライベート・サービス)の売上高が伸びてきているため、新に独立し、ハウジング、専用サーバ、レンタルサーバ、VPS、その他のサービスに区分している。
 第1四半期のサービス別売上高は、ハウジング757百万円(同0.9%増)、専用サーバ821百万円(同6.4%増)、レンタルサーバ404百万円(同17.4%増)、VPS67百万円(同―)、その他221百万円(同2.5%減)であった。
 「ハウジングの売上は若干ですが伸びています。専用サーバは、これまで四半期毎に売上が伸びていましたが、今第1四半期は、前第4四半期の売上を下回りました。この理由は、従来専用サーバの潜在顧客であった層がVPSサービスにシフトしたことが考えられます。専用サーバはVPSサービスや他社クラウドサービスとの競合で厳しくなると予想していましたが、その通りとなりました。レンタルサービスは個人向けのサービスなので、震災の影響も少なく、順調に伸びています。VPSの売上高は前第3四半期で10百万円、第4四半期で25百万円、今第1四半期で67百万円となり非常に高い伸びを示しています。専用サーバで減り始めている売上高をVPSでカバーしているといえます」とサービス別の売上状況を紹介された。
 貸借対照表については、流動資産3,149百万円(前期比1,565百万円減)、固定資産6,318百万円(同1,224百万円増)、資産合計9,467百万円(同341百万円減)。
 流動負債3,390百万円(同293百万円減)、固定負債3,666百万円(同174百万円減)、純資産2,411百万円(同127百万円増)となり、自己資本比率は25.5%と前期末より2.8ポイント改善している。

■ホスティング利用中件数は今年6月にはVPSの増加が貢献し30万ユーザーを超える

 サーバラックの稼動率は、10年9月76.3%、10年12月75.6%、11年3月75.6%、11年6月77.8%となっている。ホスティングの利用中件数は、10年9月で25万件を突破し、12月、11年3月と順調に増え6月には30万件を突破した。
 「サーバラックは7割を超えた稼働率で推移しています。なお、来年3月までに池袋データセンターを閉鎖しますので、同データセンターのサーバを堂島データセンターに移す作業を行っています。そのため、稼働率は減少する見込みですが、堂島データセンターの新規顧客が増えているため、池袋データセンターでの減少分はカバーできるものと見ています。」

■申し込みから数十分で使えるVPSの売上が好調

 引き続き今第1四半期中のトピックスについての説明が行われた。「まず、サービスについては、サポートの対応時間を伸ばしました。競合各社共にサポートに力を入れています。そのため、当社でもサポート時間を延長し、お問合せメールを丁寧に返信しています。ITインフラについては、石狩データセンターで電力効率の高い給電システムの採用を決定しました。震災前からの取組でして、電力供給問題などにより、高電圧直流に注目が集まっています。高電圧直流の本格導入については、日経新聞でも紹介されました。財務資本の面については、10月1日より株式を200分割します。震災関連については、電力使用制限令ということで、15%の削減を義務付けされるということがありました。しかしながら、データセンターについては、一定の条件のもとで制限が緩和されることが決定されまして、現時点では当社事業に支障はございません。大震災が受注に与えた影響は特にありません。なお、石狩のデータセンターはクラウド専用ということで進めてきたわけですが、今回の震災の影響で、東京、大阪以外にデータセンターを置きたいというニーズが出てきました。成約にまで至っていませんが、これから石狩データセンターが竣工する11月までに何らかの成果が出てくるものと思っています」と語った。

■11年には、専用サーバがハウジングを逆転

 今後の事業展望については、「国内のデータセンター事業の規模では、コロケーションというポジションが一番大きいですけれども、専有サーバも非常に高い成長性がある状況です。また、共有ホスティング、当社のレンタルサーバやVPSになりますが、こちらも非常に高い成長性が期待できます。需要動向については、所有から利用という方向にすすんでいます。供給動向については、海外企業の日本進出がありますが、3月のアマゾンの進出をもって、それ以後は大きな動きはありません」と近況の説明が行われた。
 同社の受注動向については、主要サービス別の売上高構成比率を見ると、07年3月期ハウジング50.9%、専用サーバ33.7%、レンタルサーバ15.4%となっている。ところが、11年3月期になると、ハウジング39.2%、専用サーバ41.3%、レンタルサーバ19.1%、VPS0.5%となっていて、専用サーバがハウジングを逆転している。また、レンタルサーバの比率も高くなっている。

■石狩データセンターでは、ハウジングサービスの提供も行う

 これからの成長の核となる石狩データセンターについては、土地面積51,446uに11,417uの建物を建設。ラック数は1000ラック(1棟500ラック)、供給電力は8KVA/ラック、竣工時期は11月を予定。投資額は、土地が3億7500万円、建物が約33〜34億円超となっている。
 当初はクラウドサービスの提供に特化する方針であったが、あわせてハウジングサービスの提供も行い、震災以降に急増したBCP(事業継続計画)、DR(ディザスタリカバリ)需要などへの対応を図ることになった。
 専用サーバの売上が低迷していることへの対策としては、「サービスのリニューアル直後に専用サーバの売上が非常に伸びた実績があります。そのため、専用サーバを石狩データセンター稼働後に大改定する予定です。そもそも97年に専用サーバの提供を開始して以来、2003年のリニューアル後は、ほとんど大きな改定はありませんでした。もちろんサーバの機能強化や、オプションの強化、サービスラインナップの拡充などは行ってきましたが、根本的なリニューアルはこの8年間手つかずの状態でありました。今回の大改定する専用サーバのターゲットとしては、VPSサービスのパーフォーマンスに物足りなさを感じてきた事業者の方々を視野に入れています。また、他社クラウドサービスのユーザーで、割安な専用サーバにスイッチしたい企業を考えています」と語った。

■石狩データセンターの稼動と合わせて、「さくらのクラウド」を提供する予定

 クラウドについては、石狩データセンターの稼動と合わせて、IaaS型クラウドサービスとして「さくらのクラウド」を提供する予定。必要な時に必要な分だけ利用でき、料金は利用する分だけ支払う仕組みを予定している。Web経由でサービスを利用できて、初期投資が小額で済む。
 特長としては、シンプルな料金体系となっているので予算化しやすく、柔軟で自在性の高いサービスプランとなっていることから、事業ステージに応じた組み合わせが可能となっている。また、優れたユーザビリティにより、ITエンジニアの作業効率が向上することなどが挙げられる。
 クラウドサービスの提供が同社にとってどのような影響を与えるかということについては、「キャッシュフローに与える影響は少なからずありまして、当社がサーバを大量に構築して、お客様が自由に使えるようにする。お客さまの中には、1日しか使わない、1時間しか使わないということもあり、3ヶ月使ってすぐに止めるというお客様も出てきます。すると初期費用が取れないということがネックでございます。初期費用が安く、お客様が流動的であるということが今までのサービスとの違いでございます。料金についても、専用サーバの場合は、初期費用として、10万円、20万円いただき、後は月々1万円、2万円とかですが、クラウドの場合は、従量制であり、1ヶ月3万円、5万円とか、1日1000円、2000円とか大きく変わってきます。クラウドの場合、最初に投資する機材のコストを如何にして回収するかということが大きな課題となってきます。しかしながら、クラウドサービスに一番マッチしたお客様が流失している状況が続いていることから、流失してしまったお客様をいかに引き戻してくることが非常に重要なテーマであると思います。現状多くありますのは、当社のVPSなどのサービスを引き続き使ってはいるけれども、ボリュームゾーンはアマゾンに移しているとか、他のクラウド事業者に移っているというケースがあります。今後、石狩データセンターの稼動と共に、流出してしまった部分については、さくらのクラウドで回収していこうと考えています」と同社のクラウドサービスに対する考えを説明した。
 今12年3月期業績予想は、売上高9,400百万円(前期比9.5%増)、営業利益740百万円(同39.6%減)、経常利益700百万円(同41.4%減)、純利益400百万円(同30.2%減)と増収減益を見込んでいる。

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