2011年04月14日

資生堂は新3カ年計画(2011年度〜2013年度)について発表


■第1フェーズとなる前3ヵ年は、「全ての活動の質を高める」ことをテーマに

 資生堂<4911>(東1)は、08年、10年後に目指す姿を「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー」と定め、10年間を3つのフェーズに分けた経営改革を策定した。
 第1フェーズとなる前3ヵ年(2008年から2010年度)は、「全ての活動の質を高める」ことをテーマに、「世界中のお客様に愛されるブランドづくり」、「世界に通用する質の高い経営基盤の確立」に取組むと共に、「成長性の拡大」と「収益性の向上」を目指した。
 国内事業においては、チャネル別に「峻別と集中」を図り、一定の成果をあげたものの、事業全体を底上げするまでには至っていない。一方、海外事業については、中国事業の成長やベアエッセンシャルの買収などが実現し、海外売上比率は40%を超えるまでに成長した。国内事業の建て直しとグローバル事業の更なる強化を軸に、今年度よりスタートする新3カ年計画を展開する。

■新3カ年計画では、4つの成長戦略と、成長戦略を支える経営基盤の強化に取組む

 新3カ年(2011年度〜2013年度)は、「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー」に向けた第2フェーズとして、「成長軌道に乗る」をテーマにしている。2005年に掲げた「100%お客さま志向の会社に生まれ変わる」、「大切な経営資源であるブランドを磨きなおす」、「”魅力ある人”で組織を埋め尽くす」という3つのビジョンを継承し、苦戦が続く国内化粧品事業の活性化と、ここまで順調に進んだグローバル化の加速を最優先に、4つの成長戦略と、成長戦略を支える経営基盤の強化に取組んでいく。



■「グローバルメガブランド戦略」

 4つの成長戦略は、「グローバルメガブランド戦略」、「アジアブレイクスルー戦略」、「ニューフロンティア戦略」、「カスタマーファースト戦略」である。
 「グローバルメガブランド戦略」では、日本発のグローバルブランド「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ポーテ」、欧州発の「BPI」、「デクレオール」、「カリタ」、米州発の「ベアエッセンシャル」、「NARS」など、グローバル展開するブランドは、それぞれが独自のブランド価値を磨き、存在感を高めてきた。
 エリアごとのブランド価値の最大化に引き続き取組むとともに新3カ年では、エリアを越えて市場を捉え、峻別と集中の観点からマーケティングパワーを最大化することにより、競合と伍して戦える500〜1000億円規模のブランドを複数有する「グローバルマルチブランドカンパニー」を目指す。
 「プレステージ」「マステージ(マスとプレステージの造語)」それぞれの領域から3ブランドを選定し、「グローバルメガブランド」として重点的に育成することで、アジアではプレステージ・マステージ双方の領域でのプレゼンスを高める。
 現在80以上の国と地域で展開するグローバルブランド「SHISEIDO」を世界の競合に匹敵するブランドへ育て上げるとともに、アジア・北米の富裕層を魅了するブランドとして「クレ・ド・ポー ポーテ」のブランド認知・鮮度を高める計画。また、昨年買収が完了した「ベアエッセンシャル」は、米国での更なる成長性の拡大と欧州および日本・中国を中心とするアジアへの事業展開を推進する。
 アジアでは、今後大幅に増加することが見込まれる中間所得者層との更なる顧客接点の拡大を目指す。中国を中心にアジア市場で成長性を拡大しているスキンケア・メーキャップの総合ブランド「Za(ジーエー)」、スキンケアの「専科」に、カテゴリーの拡大を目指すブランドを加えた3つのブランドをグローバルメガブランドとして積極投資していく。また、これまでの取り組みで確実にプレゼンスを高めてきた「マジョリカ・マジョルカ」、「アクアレーベル」も継続育成し、未導入国への拡大も含めてマステージビジネスの展開スピードを加速する。

■アジアブレイクスルー戦略

 近い将来世界最大市場となるアジアを最重点エリアと位置付け、アジア全体でのシェア拡大を目指す。最大の成長市場である中国の伸長とシェア拡大に継続的に取組むとともに、東アジア各国やASEAN諸国における取り組みも強化する。また、アジアブレイクスルー戦略の要となる連結売上の6割を占める国内事業は、市場を上回る成長を確保することを最優先課題に、マーケティング・営業戦略を立て直す。
 次に述べる通り、国別課題に対応した事業基盤の強化を実施し、グローバルコンペティターを上回るアジア市場全体での圧倒的存在感を確立し、名実ともにアジアを代表する企業を目指す。
 まず、ホームマーケットの国内市場では、これまでの「制度品ビジネスモデル」を今日的に再生させるため、マーケティングや事業運営スタイルを抜本的に見直す。更に新製品数を大幅に削減することで、商品のロングセラー化に向けた活動に注力し、圧倒的に強いブランド、商品を育成する。加えて、お客に最も近い販売会社にコストや販売機各機能の一部を本社から移管し、今まで以上に地域やチャネルに合わせたマーケティングを強化する。
 次に、成長エンジンである中国市場には、市場参入30周年を契機に、3ヵ年の間に、最優先で経営資源を投入し、グローバルメガブランドや、「オプレ」、「ウララ」を中心とする中国専用ブランドの育成に加え、現地開発体制の整備、Webを活用した愛用者サービスなど新たな仕組みづくりを進めることで、事業基盤をより強化する。
 アジア各国ではプレゼンス強化を目的に、プレステージビジネスの強化とマステージブランドの本格展開を推進する。中でも圧倒的なシェアで優位性を堅持している台湾、市場規模が大きく同社の成長が見込める韓国、ASEANの拠点となるタイを重点市場として強化し、売上拡大を目指す。

■ニューフロンティア戦略

 同社を取り巻く流通や客の変化のスピードはすさまじく、成長市場を見定め切り拓いていくため、客との接点を創り出す新たなマーケティングの開発・導入を進める。また、新興国を中心とした成長著しいエリアへの展開強化を通じ成長スピードを加速させる。
 客の購買動向が変化し、IT環境が著しく進化しているなか、長い間本格展開が進まなかったWebを中心としたマーケティングに国内外で取組み、新たな客との出会いを創り出す。グローバル市場ではアメリカ、中国においてe―コマースビジネスを順次スタートし、国内においては店舗・Webそれぞれの特性を活かした新たなビジネスモデルを確立し、導入する予定。
 新3カ年でも、これまでと同様に進出国の拡大に取組んでいるが、同社の事業規模がまだ小さく、成長余地の大きい新興国での取り組みを一層強化し、中国に続く次の成長エンジン作りをすすめていく。とりわけロシアは、新規店の開拓を積極的に進めてきた基盤を活かし、スキンケアを中心とした店頭活動を充実させ、プレステージ市場におけるトップ5入りを目指す。

■カスタマーファースト戦略

 「カスタマーファースト」に2つの意味を持たせており、「全ての活動のなかで何よりも先にお客様のことを考える」活動を実践し、「全世界のお客様からNO.1の支持率をいただく」ことを目指す。4つの成長戦略のなかでは、全ての企業活動に関わり、新3カ年計画全体の根幹を成す戦略。メーカーとしての原点回帰である「モノづくり」と「販売・対応活動」を磨き直し、研究開発、生産、マーケティング、宣伝、営業、対応に至るまですべてのバリューチェーンで抜本的な改革に取組む。

■経営基盤の強化

 4つの成長戦略を支えるため、グローバル最適を機軸として様々な面からの経営基盤の強化を行う。 
 生産・調達体制については、アジア地域における生産・物流の更なる効率化を含めたサプライチェーンの最適化・強化に取組む。また全世界での情報化基盤の確立、国内外でのグローバル人材の早期育成に加え、CSR活動においても、これまで進めてきた国内での「ライフクオリティビューティセミナー」の活動をさらにグローバル化させる。同時に、従来の社会貢献視点の活動のみならず経営貢献という視点を取り入れたCSR活動にも注力していく。環境については、2009年から取組んできた「資生堂アースケアプロジェクト」を踏襲し、ライフサイクルを含む商品の環境対応や全世界でCO2を削減する活動を一層強化していくとしている。

>>資生堂のMedia−IR企業情報