2009年5月18日
ハイブリッドカー関連の徹底株価検証

■ハイブリット車を武器に日本経済は回復へ

■「日本型の複合・組み合わせ産業」が花開く時代

ハイブリッド車関連銘柄特集 日本の働く人は約6400万人。このうち、つい最近までは自動車産業では12人に1人が自動車に関連していた。今は、自動車不振で失業も増えているが、ハイブリット車を武器に回復し、世界市場で力を発揮するようになれば日本の経済にとっても大いに期待が持てる。まずは、ガソリン・電気併用のハイブリット車から、さらに、先行きは高性能電池による電気自動車やタンクに水を積んで、電気分解による水素燃料などの走行も期待される。ガソリンスタンドに代わって、充電スタンドなど関連需要は非常に大きい。自動車を核として、いろいろな産業と技術が組み合わさった「日本型の複合・組み合わせ産業」が花開く時代を迎えようとしている。

 

日清紡HD:代替エネルギー関連のテーマ性豊富、上値期待

 日清紡ホールディングス<3105>は、自動車関連では、主力のブレーキ事業に加えて、ハイブリッド自動車用電気二重層キャパシタ、燃料電池用セパレータを強化している。
 株価の動きを見ると、26週移動平均線を突破して上昇トレンドに転換した後は、上げ足を加速した。太陽電池モジュール製造装置事業の拡大や、燃料電池用カーボンアロイ触媒の開発なども材料視されたようだ。そして4月後半には1000円台を回復している、足元の業績は厳しいが、代替エネルギー関連のテーマ性は豊富である。
 10年3月期の最終損益が黒字転換の見通しであることも支援材料だろう。短期的な調整を挟みながら上値追いの展開も期待できそうだ。

旭化成:10年3月期増益見通しも支援材料、上値期待

 旭化成<3407>は、ハイブリッド自動車関連では、リチウムイオン電池の電極材料を手掛けている。
 株価の動きを見ると、300円近辺で下値を固めて反発し、上値抵抗線となっていた13週移動平均線、26週移動平均線を突破した。その後は出直り感を強める展開で、上昇トレンドへ転換した可能性も高いだろう。
 中国の景気対策効果で石油化学製品の需給改善が期待されたようだ。またリチウムイオン電池関連のテーマ性に加えて、10年3月期業績の増益見通し、三菱化学(三菱ケミカルホールディングス<4188>)とのエチレン事業統合なども支援材料だろう。指標面に割安感はないが、上値を試す展開も期待できそうだ。

日本バイリーン:新型インフルエンザ関連の材料一巡感

 日本バイリーン<3514>は、不織布の大手メーカーである。自動車関連分野では、自動車用フロアマットに加えて、ハイブリッド自動車用電池セパレータを戦略事業として強化している。
 株価の動きを見ると、400円台前半でのボックス展開が続いていたが、4月末には新型インフルエンザの発生、感染拡大を材料視して動意づき、一時は500円手前まで急騰した。しかし短期資金の逃げ足は速く、元のボックス圏まで急落し、早くも材料一巡感を強めている。
 出来高を伴って急騰、急落しただけに、上値にシコリを残した感も強い。PBR1倍割れが下値支えだが、ボックス圏からの上放れは材料次第だろう。

昭和電工:09年12月期業績予想の下方修正を嫌気

 昭和電工<4004>は、電気自動車向けにリチウムイオン電池の黒鉛負極材の採用が決定したため、生産能力を現在の3倍に拡大する。
 株価の動きを見ると、26週移動平均線を回復して、出直りを期待させる展開だった。黒鉛負極材の生産能力増強も好感する形で、4月23日には一時169円の年初来高値をつけた。しかし、その後は反落して、弱含む展開となっている。材料一巡感に加えて、4月30日に09年12月期業績予想を下方修正し、最終黒字見通しから一転して最終赤字見通しとなったことも嫌気されている。電炉用電極などの需要には不透明感が強いだけに、当面は100円台前半でのモミ合い展開を想定する。

信越化学工業:半導体用ウェハーの出荷が上向き、業績底入れ期待

 信越化学工業<4063>は、半導体用・太陽電池用のシリコンウェハー事業や、米国における塩ビ事業などを収益の柱とし、自動車関連では車載モーター用の希土類磁石なども手掛けている。
 株価の動きを見ると、足元は5000円近辺でのモミ合い展開だが、13週移動平均線をサポートラインとする形で、出直り感を強めている。これは、収益力の高さが見直されていることや、3〜4月以降、半導体用300ミリウェハーの出荷が上向き、業績面の底入れ感が高まっていることなどが支援材料と考えられる。当面は半導体の稼働率や市況次第だが、好材料を確認しながら上値を試す展開を想定する。

三菱ケミカルHD:リチウムイオン電池の主要部材を手掛け、事業再編も支援材料

 三菱ケミカルホールディングス<4188>は、ハイブリッド自動車用リチウムイオン電池の主要部材を、傘下の三菱ケミカル(正極材、負極材、電解液)と三菱樹脂(セパレータ)が手掛け、戦略分野としている。
 株価の動きを見ると、3月の年初来安値圏から反発して26週移動平均線を回復した。その後は400円近辺でモミ合う展開だが、下値を着実に切り上げている。10年3月期は、最終損益は事業構造改革費用などの計上で赤字見通しだが、営業利益段階では基礎石油化学製品の採算改善などで増益見通しである。地合い次第では営業増益や事業再編が支援材料となりそうだ。1月の年初来高値を視野に入れた展開を想定する。

宇部興産:地合いや材料次第の展開

 宇部興産<4208>は、ハイブリッド自動車向けに、リチウムイオン電池用電解液事業を手掛けている。
 株価の動きを見ると、3月の年初来安値圏から反発して、上値抵抗線となっていた26週移動平均線を回復した。市場全体の地合いが好転した流れに乗ったと考えられる。5月11日に発表した10年3月期業績見通しは、セメント、化成品、樹脂などの需要減少を主因として、営業利益が前期比20%減、経常利益が同29%減、純利益が同40%減の見通しだった。しかし翌12日には、一時228円まで上昇して上値を切り上げた。これは悪材料出尽くし感とも考えられるが、当面は地合いや材料次第の展開だろう。

旭硝子:液晶用ガラス基板の底入れ感強く、上値期待

 旭硝子<5201>は、自動車用・建築用ガラス、液晶用ガラス基板を収益柱として、リチウムイオン電池用の正極材料も手掛けている。
 株価の動きを見ると、26週移動平均線を回復して安値圏モミ合い展開から脱し、その後も徐々に上値下値を切り上げて堅調な展開となっている。自動車用・建築用ガラス需要は低調だが、液晶用ガラス基板の需要が底入れ感を強めていることや、液晶用偏光フィルム事業に参入することなどが材料視されていると考えられる。足元では600円近辺での短期モミ合いから上放れる動きを見せている。調整を挟みながら上値を試す展開を想定する。

東海カーボン:景気底入れ感や地合い次第で上値期待

 東海カーボン<5301>は、鉄鋼用電極やタイヤ用カーボンブラックを収益柱とし、ハイブリッド自動車向けにリチウムイオン電池用カーボン負極材の生産能力も増強する。
 株価の動きを見ると、2月後半の年初来安値圏から反発して、上値抵抗線となっていた13週移動平均線、26週移動平均線を突破し出直り感を強めている。PBRの割安感が見直されたことや、リチウムイオン電池関連が材料視されたこと、景気底入れ期待が高まったことなどが考えられる。4月22日には一時、年初来高値となる511円をつけた。その後はやや調整局面のようだが、地合い次第では上値を試す可能性も考えられる。

日本カーボン:太陽電池関連、リチウム電池関連が材料

 日本カーボン<5302>は、電炉向け黒鉛電極を収益柱とし、太陽電池向けファインカーボンや、ハイブリッド自動車用向けリチウムイオン電池用の負極材を戦略分野としている。
 株価の動きを見ると、3月上旬の年初来安値圏150円台から反発し、26週移動平均線も突破して、一気に250円近辺まで大幅に上昇した。これは、太陽電池関連やリチウムイオン電池関連が材料視されたこと、市場全体の地合いが好転した流れに乗ったことなどが考えられる。足元は250円近辺でのモミ合い展開だが、指標面に割高感はなく、地合い次第では1月の年初来高値を目指す展開も期待される。

日立金属:日立グループでリチウムイオン電池事業を拡大方針

 日立金属<5486>は、高級特殊鋼や磁性材料を収益柱とし、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動モーターに欠かせないネオジム磁石のトップメーカーである。
 株価の動きを見ると、底練り展開から脱して26週移動平均線を回復した。その後はトレンド転換を確認して、戻り歩調の展開となっている。10年3月期はリストラ費用の一巡などで、最終損益は黒字転換の見通しである。また日立製作所<6501>が、グループ全体で電気自動車向けのリチウムイオン電池事業を、15年度に1000億円規模に拡大させる計画を打ち出した。こうした計画も支援材料のようだ。短期調整を挟みながら上値追いも期待される。

日本電工:悪材料出尽くし感、電池材料関連も材料視

 日本電工<5563>は、合金鉄事業を収益柱としている。ハイブリッド自動車や電気自動車向けに需要拡大が予想されるため、リチウムイオン電池用の正極材料となるマンガン酸リチウムの新工場も建設する計画だ。
 株価の動きを見ると、2月下旬に09年12月期の大幅減益見通しを嫌気し、モミ合いから下放れる形で急落した。しかし3月中旬以降は上昇に転じて、26週移動平均線を回復した。市場全体の地合い好転に加えて、リチウムイオン電池材料の新工場建設も刺激材料となったようだ。足元は400円台でモミ合い展開だが、PBRは1倍近辺であり、悪材料出尽くし感も強く、地合い次第では上値も期待できそうだ。

日立製作所:一段の業績悪化で急落、ネガティブ要因意識の可能性

 日立製作所<6501>は、グループ企業の連携を強化し、電気自動車用リチウムイオン電池の事業規模を、15年度に1000億円に拡大する計画を打ち出した。すでに米GMからリチウムイオン電池を大量受注し、世界最高性能のリチウムイオン電池の開発も発表している。
 株価の動きを見ると、26週移動平均線を突破して出直り感を強め、一時は400円台を回復した。しかし足元は、10年3月期の赤字拡大見通しを嫌気して急落している。グループ全体の構造改革という課題が、あらためてネガティブ要因として意識される可能性も考えられ、当面はモミ合い展開を想定する。

東芝:半導体事業は懸念だが、テーマ性は豊富

 東芝<6502>は、ハイブリッド自動車用の高機能リチウムイオン電池の量産体制を整えた。また独フォルクスワーゲンと、ハイブリッド自動車の駆動システム、電池システムなどを共同開発する。
 株価の動きを見ると、26週移動平均線を回復して出直り感を強めている。原子力発電や太陽光発電など、環境・新エネルギー関連をテーマとする流れに乗ったようだ。足元では、10年3月期の営業利益黒字転換の見通しに加えて、増資を正式に発表したことで、悪材料出尽くし感も強まっている。業績面では半導体事業の不振が懸念されるが、テーマ性は豊富であり、400円台を回復すれば上値追いも期待できそうだ。

ジーエス・ユアサ コーポレーション:リチウムイオン電池関連の本命銘柄、上値期待

 ジーエス・ユアサ コーポレーション<6674>は、自動車用バッテリーの世界的メーカーであり、次世代のリチウムイオン電池についても、ホンダ<7267>のハイブリッド自動車向け、三菱自動車<7211>の電気自動車向けに、いずれも合弁会社方式で供給する。
 株価の動きを見ると、08年春以降、リチウムイオン電池を材料視して、乱高下を繰り返しながら大幅に上昇した。4月後半には08年の高値も更新して、上げ足を加速する展開となった。足元の業績の厳しさや指標面で見れば割高な水準と考えられ、設備投資負担も懸念されるが、リチウムイオン電池関連の本命銘柄で、息の長いテーマであることも考慮すると、調整を挟みながら上値を追う展開が期待されるだろう。

NEC:業績改善見通しで上値期待

 NEC<6701>は、日産自動車<7201>との合弁会社で、日産自動車や仏ルノーの電気自動車向けにリチウムイオン電池の量産を開始し、11年以降には1000億円超を投じて国内生産体制を強化する。欧米や中国での現地生産も計画している。
 株価の動きを見ると、26週移動平均線を突破した後は上げ足を加速し、戻り歩調の展開である。市場全体の地合い好転に加えて、NECエレクトロニクス<6723>とルネサステクノロジの経営統合、10年3月期最終損益の黒字転換見通しなども刺激材料となったようだ。半導体事業の先行きには不透明感も強いが、当面は業績改善への期待が高く、上値も期待できそうだ。

パナソニック:業績改善、電池事業拡大で上値期待

 パナソニック<6752>は、トヨタ自動車<7203>と共同出資のパナソニックEVエナジーが、ハイブリッド自動車用ニッケル水素電池を生産している。三洋電機<6764>へのTOBが決着すれば、相乗効果でリチウムイオン電池事業や太陽電池事業の拡大も期待される。
 株価の動きを見ると、安値圏モミ合い展開から脱して26週移動平均線を回復した後は、上げ足を加速し、トレンド転換を確認して戻り歩調の展開である。10年3月期も構造改革費用などで最終赤字の見通しだが、10〜12月期からの黒字転換の見通しを示し、悪材料出尽くし感も強い。TOBは今夏には決着する模様であり、上値追いの展開も期待される。

三洋電機:テーマ性豊富、構造改革も期待

 三洋電機<6764>は、ホンダ<7267>や独フォルクスワーゲンのハイブリッド自動車向けに、ニッケル水素電池を供給している。次世代のハイブリッド自動車用リチウムイオン電池についても、新工場を兵庫県加西市に建設することを発表した。
 株価の動きを見ると、140円近辺のモミ合いから脱して26週移動平均線を回復した後は、上げ足を加速し、5月15日には一時200円台を回復した。リチウムイオン電池関連や太陽電池関連に加えてし、構造改革効果に対する期待も材料視されたと考えられる。パナソニック<6752>によるTOBが決着すれば相乗効果も期待される。短期的な調整を挟みながら上値も期待されるだろう。

デンソー:10年3月期の営業赤字見通しの影響は限定的

 デンソー<6902>は、国内最大の自動車部品メーカーで、トヨタ自動車<7203>グループの中核企業である。ハイブリッド自動車でも最重要視される電子制御技術に強みを持つ。
 株価の動きを見ると、昨年末の安値圏から反発した後は、下値を切り上げる展開となり、26週移動平均線を突破した。トレンド転換を確認した形で戻り歩調の展開である。10年3月期は営業利益が400億円の赤字の見通しだが、市場予想を上回ったとして影響は限定的だった。足元は調整局面で、トヨタ自動車<7203>の生産動向次第とも考えられるが、13週移動平均線がサポートラインになれば上値が期待されるだろう。

三井ハイテック:業績悪化を織り込み、ハイブリッド自動車関連を材料視

 三井ハイテック<6966>は、ICリードフレームの大手メーカーで、ハイブリッド自動車関連ではトヨタ自動車<7203>ホンダ<7267>向けに、モーターコアを供給している。
 株価の動きを見ると、安値圏モミ合いから上放れて26週移動平均線を回復した後は、上げ足を加速して、4月22日にはストップ高となり865円まで上昇した。10年1月期の最終損益は49億円の赤字見通しだが、業績悪化を織り込んだうえで、ハイブリッド自動車関連が材料視された可能性が考えられる。足元は反落して調整局面だが、13週移動平均線がサポートラインとなれば、上値を試す展開も期待される。