2009年10月22日

「過払い金返還」報酬隠し697人!国税が指摘


司法書士の悪行暴かれる

 10月18日読売新聞が、福岡、長崎、佐賀3県の認定司法書士や弁護士の報酬隠しを報道して以来、マスコミ各社が追っかけ報道しているが、本年6月までの1年間に、過払い金に携わった全国の弁護士、認定司法書士697人の司法書士、弁護士が、国税局から申告漏れを指摘され、その総額は79億円に達した。重加算税や過少申告加算税を含む追徴税額は約28億円に上るという。
 そのうち81人は仮装や隠蔽を伴う悪質な行為と認定されて重加算税が課せられたのだという。所得隠しの手口は、消費者金融業者から依頼主への返還金が支払われる際に、依頼主から預かった通帳に返還金を振り込ませ、報酬を現金で引き出した後に通帳を返却、その所得約1億円を簿外で処理していたものも指摘されているという。司法書士等は多重債務者救済を謳いながら、実は多重債務者から着手金、報酬金、減額報集酬金などの名目で暴利を貪っている構図があらわになったかたちだ。
 ある司法書士は「これは氷山の一角」といい、多重債務者を専門に扱うある司法書士は「基本的に過払いは金融業者から支払われた返還金の金額が依頼者にわからない。金額調整は何とでもなる。今回の摘発はレアケース。ボンクラ国税にこの儲かるスキームを暴けっこない」と実情を暴露するほど鼻息が荒い。
 「債務者の中にはATMへ入金に行ったとき、過払いしませんかと肩を叩かれ、解決手付金10万円といわれた。」(銀行系消費者金融支店長)とか、「大手のA法律事務所は、過払いがない債務者は相手にしない。それでも相談を希望するなら、東京まで来させるという。また、別のケースでは、司法書士と債務者の妻が結託し、本人の知らないうちに過払い請求が進み、慌てて本人が取り消した。」(銀行系消費者金融幹部)など最近の司法書士等に関する問題の大きさを指摘するが、現実には、「過払い請求しませんか」という車内広告が一段と目立つ。多重債務者救済は「大きな商機」と位置付けているようだ。生活に窮した多重債務者から貪り取った資金を元手に、さらに暴利を貪り取ろうとする構図はハイエナと呼ぶ以外の何者でもあるまい。
 まともな司法書士業務を営む司法書士など「格差の中で一般税制を引き上げながら、セレブ弁護士等には圧力がかかって何の支障もない」と怒りをあらわにする。

加熱する過払いビジネス

 司法書士は簡易裁判所で訴訟代理権のみ認められ、訴額140万円までという制限がある。しかし、「訴額」は、「過払い金の額」か、「借金残高の帳消し分に過払い金を加算したもの」なのかで見解が分かれ、訴額の定義を巡って大阪高裁で訴訟まで起きている。
 また、弁護士と司法書士の争いも凄まじく、過払い返還金額が折り合わず、裁判に持ち込まれたケースでは、裁判官や消費者金融会社側の弁護士を相手にたじろぐ債務者に、司法書士が傍聴席で罵声を浴びせるといった事例も頻繁に起きているようだ。
 非弁行為を追及するある銀行系消費者金融幹部は「最近広告でよく見かけるいわゆるビジネス系の弁護士、司法書士らのやり口には憤りを感じる。債務者の気持ちなどわかっちゃいない。早急に日弁連、司法書士連合会は処分を下すべき」と抗議する。

追求もこれまでよ。胸を張る司法書士も

 今回摘発されたケースについて、多重債務事案を扱う弁護士、司法書士は全く動じていないようだ。「追徴を受けるのは、脇の甘い奴らだ。基本的に債務者と我々のやり取りなど国税にわかるはずがない。国税もそこまで能力が高いとは思えない。今まで何年にも亘り誤魔化した明細を発行してきたが、当方に限っては未だ摘発はゼロ、そのうち時効になれば丸儲け」とある司法書士は胸を張る。
 国税局が今回メスを入れた背景には、こういった弁護士、司法書士に対する見せしめの意味もあるだろうが懲りている様子が全く覗えない。それどころか、さらに攻勢をかけて過払いの掘り起こしをしようとしている。「追徴を受ける以上に儲ければそれまで、件数を多くこなせばさらに国税が摘発しにくくなる」というのが本心か。

過払い返還に問題の根源あり?

 過払い返還がビジネスとして成立する背景には、平成18年1月の最高裁の判決が判例として流用されている点だ。
判決以前は貸金業規正法第43条のみなし弁済規定により、グレーゾーン金利が認められていた。判決を機会に、貸金業規正法第43条のみなし弁済規定の任意の支払いの部分が否定される捉えかたをされているが、債務者が借金の返済をするにあたって膨大な債務者全部が無理矢理の支払いを強制されていると判断するのはそもそもおかしい。
 ある事案の判決をすべてに当てはめ、それで判決を追認することを認める当局にも問題はありはすまいか。この種の問題を解決するには、「過払い返還」を見直しやめることしか解決の糸口はないように思える。過払い返還をなくし正常な貸し金マーケットを取り戻すしか消費者金融業者等と債務者との間に信頼関係を築き、解決を図る道はないように思えるが如何か。