2009年06月03日
3つの特許技術が武器!アルコール0.00%キリンフリー=開発者に聞く

「キリンフリー」新商品開発グループの梶原奈美子さんにインタビュー

キリンフリー  早くも、今年の「ヒット商品ランキング上位」は間違いなしと高評判の「キリンフリー」。泡、のどごし、味などビールとまったく同じでアルコールは0.00%。今年4月8日の発売以来、大変な反響。すぐに大増産に入り、年間販売予定数を当初の2.5倍へ引き上げた。「キリンのプリウス」との賛辞が贈られるほどだ。「キリンフリー」の開発からキャンペーン現場まで先頭に立って商品化に携わってきた新商品開発グループ(キリンHD<2503> キリンビール株式会社・営業本部:マーケティング部商品開発研究所)の梶原奈美子さんに開発の着眼点を中心に聞いた。
■早くも販売予定数量を2.5倍へ、『キリンのプリウス』との評価

「キリンフリー」新商品開発グループの梶原奈美子さんにインタビュー――すごい評判のようですね。たとえば、発売日4月8日の株価は1081円でしたが、6月2日には1238円まで上げています。株式マーケットでは、トヨタ自動車<7203>のハイブリッド車・プリウスが高い人気ですが、御社の今度の新商品は、『キリンのプリウス』という評判です。

  【梶原さん】 そうですか。たいへん光栄で、嬉しいですね。

――発売当時は年間63万ケース(1ケースは大ビン20本)と発表されました。早くも上方修正ですね。

  【梶原さん】 去る5月14日に年間160万ケースへ修正の発表をさせていただきました。

■「飲酒運転撲滅」に貢献、「ドクターストップ」の方からも喜びの声

――好調な理由はどのようなところでしょうか。

  【梶原さん】 やはり、飲酒運転撲滅という社会的な背景があります。このことが、開発の中心でしたが、発売してみますと想定外の反応がありました。ウーロン茶で乾杯だったのが、フリーで乾杯できるといったお話や、病気をきっかけにアルコールを止めていたが、再びビールの味を楽しむことができたという喜びの声が非常に多いですね。居酒屋さんなど、業務用でも高い評価をいただいています。「感激した。よくやった」というお誉めの言葉も寄せていただいています。

■色・香り・泡立ち・のどごし感は、普通のビールと全く同じ

――飲んでみますと泡、色、香り、のどごし感など普通のビールと全く変わりません。開発で一番のポイントはどのような点でしたか。

  【梶原さん】 2007年秋から開発に着手しました。アルコールなしで、ビール味を出すのは無理といわれていました。ビールでは「酵母」を使うためです。酵母を使うとビールができるが、同時にアルコールもできてしまうのです。アルコールなしで、ビール味を出す。そのためには酵母を使わない、この点がいちばん苦労しました。

――バイオ化学の世界ですね。梶原さんは化学関係のご出身ですか。

  【梶原さん】 いいえ、わたしは文化系です。プロジェクトの部署に所属しています。技術系の方とタイアップして開発を進めました。難しい話になりますので、端折って申し上げれば、「ビールの中身チーム」と、「キリンチューハイのチーム」で、酵母の代わりを、人がやるという作業です。また、悩んだときにグループ企業に清涼飲料水を手がけているキリンビバレッジがありますが相談に行ってヒントをいただいたことも大きかったと思います。

■他社の追随を許さない3つの特許技術が武器

――『感激した』という反応があったということですが、消費者の御社に対する意外性もあったのではありませんか。ビール会社がまさかアルコールの入っていないビールを売り出すとは・・・という。

  【梶原さん】 そうですね。『逆転の発想』で取り組みました。売れ方を見ていますと、「キリンビールが出した新商品」という受け取り方です。「アルコールのないビールをキリンが売り出した」という捉え方をしていただいていると思います。

――これだけ高人気ですと他社がマネしてきませんか。

  【梶原さん】 3つの特許があります。「麦芽コントロール」、「香味調合」、「酸味コントロール」の技術です。このところをよけて開発することは大変難しいと思います。

――業績への寄与はいかがでしょうか。

  【梶原さん】 アルコールが入っていないため課税対象とはなりませんのでシェアうんぬんには影響はありません。売上面以上に利益面での寄与が大きいと聞いています。

――ありがとうございました。