2012年03月03日
【工作機械関連銘柄特集】工作機械受注は大幅増加
■足元では中国が減速懸念だが、米国は好調維持

日本工作機械工業会の受注統計によると、11年の受注額は、内需が前年比37.1%増の4215億円、外需が同34.8%増の9045億円、そして合計の受注総額が同35.5%増の1兆3261億円(うちNC工作機械は同38.1%増の1兆2906億円)だった。外需は4年ぶりに過去最高を更新した。
内需の主要業種を見ると、主力の一般機械が前年比50.5%増の1889億円、自動車が同36.8%増の1222億円と好調だった。電気・精密は同14.2%増の464億円だった。
外需を主要地域別で見ると、中国が前年比29.6%増の3278億円、米国が同50.9%増の1942億円、EUが同47.7%増の1308億円だった。最大市場である中国は年後半に減速感を強め、伸び率が鈍化した。洪水被害を受けたタイは、復旧関連需要で同83.5%増の558億円と大幅に増加した。
11年夏以降には、中国の金融引き締めやユーロ圏の債務危機問題の影響を受けて、中国やEUでの需要が減速傾向となり、足元では不透明感を強めている。ただし一方では、米国の需要が好調を維持しており、タイ洪水復旧関連の需要も本格化している。
日本工作機械工業会の受注統計によると、12年1月の確報値は、内需が前年同月比11.8%減の278億円、外需が同4.7%減の695億円、合計の受注総額が同6.9%減の974億円(うちNC工作機械は同7.1%減の949億円)だった。受注総額は11年8月以来5カ月ぶりの1000億円割れ水準だった。
内需を見ると、一般機械が前年同月比8.5%減の122億円、自動車が同17.0%減の83億円と低調だった。電気・精密は同7.3%増の35億円と堅調だった。外需を見ると、米国が同21.3%増の155億円、タイが同2.3倍の77億円と好調だったが、中国が同30.2%減の229億円、EUが同23.4%減の75億円と低調だった。中国の春節(旧正月)が今年は1月だったことも影響した模様である。
受注総額の月別推移を見ると、11年1月が前年同月比89.8%増の1045億円、2月が同73.9%増の1126億円、3月が同49.6%増の1134億円、4月が同32.3%増の1069億円、5月が同34.0%増の1080億円、6月が同53.5%増の1285億円、7月が同34.8%増の1133億円、8月が同15.2%増の989億円、9月が同20.1%増の1105億円、10月が同26.0%増の1011億円、11月が同15.8%増の1119億円、12月が同17.4%増の1159億円、そして12年1月が同6.9%減の974億円となった。
足元ではやや減速感を強めた形だが、米国は好調を維持しており、中国の春節の影響なども考慮すれば、現時点では減少傾向に転じたとも言い切れないだろう。
なお、日本ロボット工業会の「マニピュレータ、ロボット統計」によると、11年の受注額は前年比5.4%増の4735億円、生産額は同9.2%増の4892億円、総出荷額は同7.5%増の4813億円だった。受注額の四半期別推移を見ると、10年1月〜3月が前年同期比3.3倍の1033億円、4月〜6月が同3.3倍の1336億円、7月〜9月が同86%増の1058億円、10月〜12月が同47.4%増の1063億円、11年1月〜3月が同21.5%増の1256億円、4月〜6月が同6.1%増の1417億円、7月〜9月が同3.0%減の1026億円、10月〜12月が同2.7%減の1034億円となり、足元ではやや減速傾向となっている。
■タイ洪水復旧需要が本格化、中国とEUは年後半からの回復期待
日本工作機械工業会の受注統計で内需の月別推移を見ると、11年1月が前年同月比100.4%増の316億円、2月が同89.5%増の369億円、3月が同66.1%増の320億円、4月が同50.1%増の333億円、5月が同12.7%増の322億円、6月が同42.5%増の416億円、7月が同22.2%増の357億円、8月が同31.3%増の375億円、9月が同30.9%増の354億円、10月が同25.0%増の317億円、11月が同22.0%増の377億円、12月が同12.2%増の353億円、そして12年1月は同11.8%減の278億円となり前年実績割れに転じた。製造業の業績見通し下方修正に伴い、3月期末にかけて設備投資を抑制する動きが出ている模様だが、一時的な動きだろう。
外需の月別推移を見ると、11年1月が前年同月比85.5%増の729億円、2月が同67.1%増の756億円、3月が同44.0%増の814億円、4月が同25.6%増の736億円、5月が同45.8%増の757億円、6月が同59.4%増の868億円、7月が同41.4%増の776億円、8月が同7.2%増の613億円、9月が同15.6%増の750億円、10月が同26.5%増の694億円、11月が同12.9%増の742億円、12月が同19.9%増の806億円、そして12年1月は同4.7%減の695億円となり前年実績割れに転じた。中国とEUが減速した。
外需の主要地域を見ると、中国は、11年7月が前年同月比36.4%増の287億円、8月が同10.1%減の197億円、9月が同2.6%減の251億円、10月が同14.3%増の210億円、11月が同16.8%減少の230億円、12月が同10.1%増の280億円、そして12年1月が同30.2%減の229億円となった。11年8月以降に減速感を強めている形だが、12年1月は春節の影響もあるだけに、まだら模様の状況だろう。
またEUは、11年7月が前年同月比46.3%増の117億円、8月が同91.6%増加の112億円、9月が同26.1%増の102億円、10月が同13.8%増の109億円、11月が同11.3%増の116億円、12月が同15.6%減の82億円、そして12年1月が同23.4%減の75億円となった。ユーロ安を背景として輸出産業の設備投資が活発だったが、直近の2カ月連続で前年実績割れとなった。ユーロ圏債務危機問題や財政緊縮政策などの影響で、やや減速傾向の模様だ。ただしドイツのIFO企業景況感指数が上向いていることなどを考慮すれば、落ち込みは一時的となる可能性もあるだろう。
一方で米国は、11年7月が前年同月比80.5%増の173億円、8月が同35.7%増の143億円、9月が同53.7%増の227億円、10月が同27.4%増の156億円、11月が同18.6%増の137億円、12月が同17.4%増の165億円、そして12年1月が同21.3%増の155億円となった。自動車関連、建設機械関連、航空機関連などを中心に、好調を維持している模様だ。
さらにタイは、11年7月が前年同月比56.1%増の36億円、8月が同37.1%減の18億円、9月が同5.7%増の27億円、10月が同2.4倍の60億円、11月が同5.7倍の108億円、12月が同4.1倍の80億円、そして12年1月が同2.3倍の77億円となった。洪水被災からの復旧関連需要が本格化している模様だ。
12年の工作機械の受注総額については、中国やEUの減速懸念などを背景として、11年比10%程度減少との見方が優勢の模様である。しかし、自動車関連やスマートフォン関連の設備投資が国内外で活発であり、タイの復旧関連需要と合わせて下支えとなりそうだ。特に自動車関連では、米ビッグ3の業績回復や、日本の大手自動車メーカーの海外生産能力増強計画などもあり、世界的に環境対応車の開発・量産投資が活発になる可能性もあるだろう。
また世界的な金融緩和の効果も期待されるだろう。最大市場である中国、およびEUでは、年前半はやや調整局面の模様だが、年後半からの回復が期待されるだろう。こうした点も考慮すれば、12年の工作機械受注総額は、11年並み、あるいは11年を上回る可能性もあるだろう。
■堅調な受注や通期業績の上振れ期待などが支援材料で上昇余地
工作機械関連の7社、ツガミ(6101)、オークマ(6103)、東芝機械(6104)、牧野フライス製作所(6135)、森精機製作所(6141)、ソディック(6143)、スター精密(7718)について見ると、受注は中国がやや減速傾向となっているが、米国などの好調が支える形で、全体としては概ね堅調となっている。
ツガミ(6101)は、11年10月〜12月期に、スマートフォン関連やタイ洪水復旧関連で大型案件を受注した。業績への寄与は、12年1月〜3月期に一部計上となり、大部分は13年3月期以降に計上の模様である。牧野フライス製作所(6135)は、米州に展開するマキノ・インク(米国)の11年4月〜12月期累計受注高が過去最高となった。自動車関連や航空機関連が好調だった。
また、通期の連結営業利益予想に対する第3四半期累計実績の進捗率を見ると、オークマ(6103)は12年3月期通期予想に対して11年4月〜12月期累計実績が84%、ソディック(6143)は12年3月期通期予想に対して11年4月〜12月期累計実績が93%、スター精密(7718)は12年2月期通期予想に対して11年3月〜11月期累計実績が86%と高水準である。上振れの可能性が高いだろう。為替が円安方向に傾いていることも業績面の支援材料であり、他の4社についても上振れの可能性があるだろう。
7社の株価動向を見ると、週足ベースでの26週移動平均線突破、ボックスレンジ上放れなどの形となり、トレンド好転、戻り歩調の展開となっている。受注拡大期待や業績改善期待などで、いずれも株価の上昇余地があるだろう。
ツガミ(6101)は、13週移動平均線がサポートラインの形となって戻り歩調の展開である。1月16日に公募増資を発表したことを受けて反落する場面もあったが、調整は一時的にとどまり、足元では600円台を回復して高値水準で推移している。
オークマ(6103)は、450円近辺〜600円近辺で方向感に欠ける展開だったが、1月下旬以降は26週移動平均線を突破して、トレンド好転の形となった。足元では600円台半ばまで上昇して、戻り歩調の展開となっている。
東芝機械(6104)は、400円を挟むレンジでモミ合う展開だが、26週移動平均線がサポートラインの形となり徐々に下値を切り上げている。11年12月の戻り高値435円を突破すれば、上昇トレンドの形が期待されるだろう。
牧野フライス製作所(6135)は、450円近辺〜600円近辺でのボックス展開の形となっているが、2月以降は26週移動平均線を突破して、トレンド好転の可能性が高まっている。600円台を回復すれば、戻り歩調の展開が期待されるだろう。
森精機製作所(6141、株価は大証1部)は、650円近辺〜800円近辺でのボックス展開の形だったが、1月下旬以降は26週移動平均線を突破した。足元では800円台を回復し、ボックスレンジから上放れて、トレンド好転の可能性が高まっている。
ソディック(6143)は、350円近辺〜450円近辺でのボックス展開の形だったが、2月以降は26週移動平均線を突破し、足元では400円台後半に上昇している。ボックスレンジから上放れの兆しを見せており、トレンド好転の可能性が高まっている。
スター精密(7718)は、700円台割れ水準での下値固めが完了して、1月下旬以降には13週移動平均線、26週移動平均線を一気に突破した。足元では800円台を回復して、戻り歩調の展開となっている。トレンドが好転した形だろう。
【関連銘柄診断】
・オークマは1月下旬以降に26週線を突破してトレンドが好転
・スター精密は足元で800円台回復しトレンド好転、戻り歩調に
・ソディックはボックスレンジから上放れの兆しでトレンド好転の可能性
・ツガミは13週線がサポートラインの形となって戻り歩調の展開
・森精機製作所は業績改善期待を考慮すれば割高感はなく上昇余地
・東芝機械は11年12月の戻り高値突破で上昇トレンドの形に
・牧野フライス製作所は600円台回復すれば戻り歩調の展開へ