2009年06月09日
「巣篭もり消費生活」銘柄特集
自宅に居ながら楽しめる生活・娯楽システムが充実化

自宅に居ながら楽しめる生活・娯楽システムが充実化

不況・インフルエンザ・安全への不安からニーズ拡大

「巣篭もり」を高める不況・インフルエンザ・安全への不安

主な「巣篭もり消費生活」関連銘柄
食品宅配サービス銘柄 ぐるなび<2440>、夢の街創造委員会<2484>、ヤフー<4689>、楽天<4755>、日本電気(NEC)<6701>、日本電信電話(NTT)<9432>
ショッピングサイト銘柄 ヤフー<4689>、楽天<4755>、日本電気(NEC)<6701>、日本電信電話(NTT)<9432>
小売業サイト銘柄 イオン<8267>、セブン&アイ・ホールディングス<3382>、高島屋<8233>、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、丸井グループ<8252>、カルチュア・コンビニエンス・クラブ<4756>、新星堂<7415>
娯楽サイト銘柄 ヤフー<4689>、日本電気(NEC)<6701>、ソネットエンタテイメント<3789>、日本電信電話(NTT)<9432>、楽天<4755>
運動機器・ゲーム銘柄 任天堂<7974>、アルインコ<5933>、パナソニック<6752>
 昨年秋に起きた金融危機以降、日本人の外出頻度・回数が急速に減少していると言う。
 例えば東京・上野動物園では2008年度入場者数が289万8191人と、60年ぶりに300万人の大台を割り、昨年度に比べ60万人以上も減少した。人気動物の「パンダ」が昨年4月に死んだことも一因ではあるが、主因は不況による外出手控えの影響と見られる。躍進目覚しい北海道旭川市の旭川動物園でさえ、08年度の入場者数が前年度より30万人程度減少しており、外出手控えが顕著となっている様子が窺われる。
 一方、繁華街においても、「顔」と言える存在の百貨店の月次売上高が、前年同月比1割を超えるペースで減少を続けていると同時に、来店客数自体も既存店で減少傾向に入っている。例えば大阪の代表的繁華街である梅田では、不況と家庭内ゲーム市場の拡大で、管轄である曽根崎警察署管内のゲームセンターが、前年より500店舗ペースで減り続けていると言われ、当然訪問者数も減少も続く。個人所得の低迷と、「食の安全」への不安増加による「内食回帰」で、多くの外食店舗も来店客数を減らしている。
 そうした「不況」に伴う外出回数・頻度の減少傾向が続く中、関西を中心に広がった「新型インフルエンザ」の発生が追い討ちをかけた。前述した業界に留まらず、ありとあらゆるスポットで訪問者数の減少が顕著となり、国内感染第一号の発症地となった神戸市では、中心街である三宮の地下街が来訪者の急速な減少とそれに伴う売上の急減で、一時「臨時休業」するなどの深刻な事態に陥った。こうした事態の影響により、神戸市民に限らず、日本国民全体に「衛生面」から不要不急の外出は避けるという意識が強まり、「不況」を理由とした外出手控えとの相乗効果となって、減少傾向が続くことが懸念される。
 それ以外でも、景気後退に伴う失業者の増加で通勤者数が減少しているほか、凶悪犯罪の増加など、治安悪化に伴う「安全」への不安を理由に、不必要な外出を控える人も増加している。さらに足腰が弱まった高齢者比率の上昇など、外出者数の減少材料に事欠かない時世となっており、結果として、全体の外出者数が長期において継続的に減少していく可能性も指摘されている。
 ただし、いくら外出を手控えるとは言っても、「衣食住」を確保する生活活動は避けて通れない。そこで注目されるのが、自宅に居ながらにして生活行動を満たせる、いわゆる「巣篭もり消費生活」を可能にするサービスである。幼児・要介護者を抱えた家族、身体障害者や、高齢者にとっては特に重宝されるサービス形態でもあり、特に最近では、様々なサービスメニューの拡大・充も進んでいる。中にはわざわざ交通費を払って外出するよりも、割安な買い物・サービスが受けられるようなケースもあり、個々の家庭での消費行動におけるウェイトが、今後高まっていく可能性は十分高い。
 勿論、人間の健康的な生活を目指していく中で、それに逆行するような「引き篭もり」を勧めているわけではない。ここでは良い意味での「巣篭もり消費生活」に貢献する企業に着目してみたい。

 

日常の食生活に重宝される宅配サービス・サイト

 人間が生きていくうえで最も欠かすことの出来ない消費物資である「食」。しかしその「食」の買い出しは主婦にとってかなりの重労働であり、また日常的に発生するため、最も物価に気を配らなければならない分野でもある。そこで、そんな主婦の重労働・物価意識を解決するために登場したのが、宅配サービスや、関連サービスを提供する検索サイトである。

ぐるなび グルメ情報検索サイトで有名なぐるなび<2440>はお取り寄せサービスとして、日常の惣菜から、スイーツ・酒類などの嗜好品まで幅広い「食」メニューをサイト内で提供しているほか、宅配サービスも同時に提供している。大半の商品が送料無料であるうえ、サービスメニューの充実ぶりには目を見張るものがあり、小売店で購入するよりもかなり低価格で購入できる商品も多い点がメリットである。
 夢の街創造委員会<2484>は「出前館」というサイト内に全国8,600店以上の宅配・出前サービス店を出店しており、外食店に足を運べない、或いは運びたくないが、同様のサービスメニューを食したいという顧客ニーズに応えている。洋食、和食、寿司から中華と、ほぼ全ジャンルが取りそろう点が強み。
 その他のサイトとしては、ヤフー<4689>が「Yahoo!グルメ」、楽天<4755>が「楽天市場」、(日本電気(NEC)<6701>の子会社、NECビッグローブ<非上場>が「BIGLOBEショッピング」、日本電信電話(NTT)<9432>の関連会社であるエヌ・ティ・ティ レゾナント<非上場>が「gooショッピング」とそれぞれ運営するサイト内でお取り寄せ・宅配サービスを手掛けている。

様々な生活用品やファッションも自宅内でお買い物

 自宅に居ながらにして買い物出来るモノは何も食品だけではない。ちょっとした日用品からファッション、果ては自動車のような重量物まで、今では検索サイトで購入出来、その商品バリエーションも検索しきれない程、内容の充実が進んでいる。

 ヤフー<4689>は自社の検索サイト「Yahoo!ショッピング」内で大半の商品が購入可能。サイト内のカテゴリも非常に分かりやすいメニュー表示をしているほか、目玉商品・注目商品も適宜入れ替えを図り、目立つバナー表示を行うことで、商品情報の鮮度・購入意欲の促進を積極的に図っている。また「ショッピング」とは別に「服・ビューティー」専用のサービスメニューを加え、リピート率の高い女性客の取り込みを狙う。
 楽天<4755>は運営サイトの「楽天市場」を仮想商店街と明確に位置付け、契約企業(商店)数は7万強、商品数は3400万を超える日本最大級のショッピングサイトを展開している。自動車関連においては最も充実した製品数を提供しているほか、単なる物販に留まらず、不動産物件まで網羅。また全国のご当地グルメなども提供し、非日常的なワクワクする情報・空間作りの工夫も窺える。
 その他、日本電気(NEC)<6701>の子会社、NECビッグローブ<非上場>が運営する「BIGLOBEショッピング」、日本電信電話(NTT)<9432>の関連会社であるエヌ・ティ・ティ レゾナント<非上場>が運営する「gooショッピング」もそれぞれ充実した商品メニューと情報発信を行うことで、消費者の取り込みに努力している。

小売・量販店も検索・購入サイトに注力

  長らく日本人の消費行動の主役であった小売・量販店。特に百貨店や、大型スーパー・量販店などは足を運ぶだけでも楽しいショッピング空間を形成しており、また店側も来店客数の増加に常に心掛けてきた。
 その小売・量販店が一見、本業の逆風、延いては「敵」にもなりかねないショッピングサイトを自ら立ち上げ、その配信に力を入れるようになってきている。こうした小売・量販店の場合、ショッピングサイトを閲覧してもらうことで顧客の興味を掘り起こし、最終的には店に足を運んでもらうような誘導効果も狙っている。また最近は、既存店の来店客数、売上の減少が続く中、ショッピングサイトが収益を補完してくれる、いわば「味方」的存在に変わってきている点も力を入れる理由の一つになっているかもしれない。

 イオン<8267>は「ショッピングサイト」で検索をかけた場合、グーグルで上位3番目、ヤフーでは2番目(2009年6月7日時点)に表示されるようにSEO対策をとるほど、自社ショッピングサイトへの顧客誘導に力を入れている。中には店頭で購入するよりも低価格な商品も存在するほか、近年、新聞を購読しない若年層家族が増えており、そうした家庭向けへの一種の「チラシ」効果の役割も果たしている。
 そのライバルであるセブン&アイ・ホールディングス<3382>も傘下のイトーヨーカ堂<非上場>がやはりショッピングサイトに注力しており、特に季節商品・注目商品・目玉商品の表示を強調することで、消費者へ「お得感」、「先取り感」の欲求を満たすコンテンツ作りに工夫が見られる。同じ傘下であり、百貨店部門を担うそごう<非上場>、西武百貨店<非上場>も百貨店ならではとも言える催し物の案内や、季節モノ、コスメ商品の宣伝に力を入れることで、最終的には来店に繋がるようなサイト作りに工夫を凝らしている。
 一方、同じ百貨店である高島屋<8233>は前述そごう・西武百貨店よりもダイレクトに購入を促進するサイト作りを行っている。催し物などの案内は一切排除し、その代わり、一番上部に商品別カテゴリ表示を行うことで、目的商品の情報に迅速に到達出来るよう工夫がなされているほか、価格も明確に表示。イメージ重視の傾向が見られる百貨店系サイトの中では、検索サイトの雰囲気にやや近い。
 三越伊勢丹ホールディングス<3099>も傘下の三越<非上場>が保守的なイメージとは裏腹に、ショッピングサイトに力を入れているほか、丸井グループ<8252>傘下の丸井<非上場>は、比較的WEB環境に精通している若年層の顧客が多いことに着目して、「マルイウェブチャネル」として20代から30代を主力ターゲットとしたファッションサイトを構築している。
 またカルチュア・コンビニエンス・クラブ<4756>は運営する「TSUTAYA」のオンラインサイトで、従来からCD・DVDが購入出来るほか、このほど主力のレンタルサービスにおいても、サイト上からの予約申し込みで宅配レンタルサービスが受けられるメニューを新たに開始した。送料・返却料・延滞料何れも無料で借りることが出来る画期的なサービスであり、他のCD・DVDレンタル店にも同様のサービスが広がる可能性も高い。
 その他、音楽・映像ソフト小売大手の新星堂<7415>もオンラインサイトでの販売にも注力しており、アーチスト別、ジャンル別に簡単に検索出来るほか、商品によってはサイト限定の特別価格も設定しており、やはり購買層の中心が若年層である傾向を生かした販売手法を採用している。専門店は自宅の近場に店舗が所在していないケースも多く、ショッピングサイトの利用価値は非常に高いものと思われる。

娯楽も自宅内で

 人間が生きていくうえで「衣食住」の調達は必須であり、これが満たされないような環境では、当然のことながらお話にならない。しかしこの「衣食住」が満たされると、多くの人間が次に求めるようになる分野が「娯楽」である。
 一口に「娯楽」と言ってもそのジャンルは幅広いが、通常は屋外、つまり外出を伴うケースが一般的であった。しかし今や、こうした分野でも自宅に居ながらにして享受出来るサービスが登場し、内容の充実も進んでいる。

 ヤフー<4689>は運営するサイト「Yahoo!動画」にて国内・海外の人気ドラマや、人気アーチストの動画を配信している。メニューの充実ぶりは国内トップクラスであり、ニュースやビジネス、スポーツとジャンルの幅も広く、単なる娯楽を超えた国内最大の映像配信プラットフォームを構築している。また別途「Yahoo!映画」というコンテンツも設定し、こちらでは新作映画を映画館に行かずして閲覧が出来る。
 日本電気(NEC)<6701>の子会社、NECビッグローブ<非上場>が運営する「BIGLOBE」も「エンタメ」と名づけたカテゴリ内に、無料動画・有料動画からアニメ・ドラマ・音楽とカテゴリが充実しており、映像コンテンツに対する様々なニーズに応え得るメニューを取り揃えている。
 またソネットエンタテインメント<3789>が運営する「So−net」はカルチュア・コンビニエンス・クラブ<4756>が運営するCD・DVDレンタルショップ「TSUTAYA」が開始した宅配DVDレンタルのメニューを加え、ポイント制も適用するなど、他社サイトとの差別化も試みている。
 その他日本電信電話(NTT)<9432>のグループ会社、NTTレゾナントが運営する「goo」は大相撲の動画配信、楽天<4755>はインターネットTV事業を営むGyao<非上場>と提携し、「楽天市場」を経由してGyaoが配信する映像コンテンツを閲覧出来る点が特徴。メニューとしては韓国を始めとしたアジアドラマに強みを持つ。また楽天は同社が100%出資する子会社であるショウタイム<非上場>が動画配信サービスを行っており、メニューの差別化を図ることで幅広い顧客ニーズに応えている。
自宅に居るととかく、映像モノを見たくなるという人間は多く、情報入手の意味も含めて、今後も需要拡大が続いていくことは間違いない。

運動も自宅内で

 自宅に居ながらにして食料品を調達出来たり、ショッピングを楽しめたり、映像などの娯楽を楽しめることは、人間の消費生活に新たな形態をもたらしたが、大きなマイナス要素を抱えていることを忘れてはならない。それは体を動かさない、つまりそのことにより、健康面で悪影響を与える弊害である。

 そうした運動不足を少しでも解消する手段として注目されるのが、任天堂<7974>が2006年に発売した「Wii」。発売開始から2年5ヶ月で5000万台の売り上げを達成するなど、爆発的なヒットを飛ばす家庭用ゲーム機であり、実際のプレイに限りなく近い形で体を動かしながら楽しめる点が大きな特徴である。そうしたゲームソフトのうち、「Wii Sports」はテニス、野球、サッカー、ゴルフ及びボクシングの5種類の競技を実際の競技に近い形で体を動かしながら操作・プレイすることで、運動不足の解消を図れるほか、プレイ後の体力測定も出来る。さらに「Wii Fit」は明確に「健康を管理するゲームソフト」として開発されたものであり、付属品の「バランスWiiボード」に乗って、ヨガや、筋トレ、有酸素運動などが行える。
 自宅に居ながらにして一定の運動不足の解消、健康管理を可能にし、ファミリー全員が楽しめるこうしたゲーム機及びソフトの発展は、様々な理由から在宅率が高まるにつれ、大きな需要の伸長が見込まれるであろう。
 また、もう少し本格的な運動を自宅に居ながらにして行いたいという場合にはフィットネス機器ということになるが、アルインコ<5933>は一般家庭向けウォーカーやバイク、各種エクササイズグッズの販売を行っている。パナソニック<6752>も一般家庭向けフィットネス機器として、目玉である乗馬フィットネス機器やウォーカーを手掛け、エンドユーザー向けの販売も行っている。


<最後に>
 人間がより健康的な生活を送っていくにあたり、正直に言えば、「巣篭もり」状態になること自体は、決して奨励されるものとは言い難い。運動不足や社交性の欠如に始まり、延いては「引き篭もり」、「人間不信」などの増加の原因となるリスクも高い。
 しかし一方で、今年5月に社会を揺るがせた新型インフルエンザの脅威や、治安の悪化、また高齢化社会の進展などを考えれば、自宅に居ながらにして各サービスを受けられるシステムの確立は「利便性」、「安全性」の観点から考えて、社会的意義の高いものと評価されよう。しかも、現在の不況に伴う生活防衛意識が高まる消費環境の中では、店頭で購入・サービスを受けるより、例えば検索サイトで注文した方が低価格ということであれば、「経済性」の観点から自宅で購入・サービスを受けることは何も不健康なことではなく、むしろ自然な流れとも言えよう。
 人間がより便利且つ安全で、健康的且つ経済的な生活システムが拡充されていくために、より多くの企業が努力を払っていくことで、高次元社会に移行する経済発展に繋がるのではないか、そう考える次第である。
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2009.06 |特集