食品安全検査分析銘柄特集
食品安全検査分析銘柄特集

続発する「食の安全」にまつわる事件多発で注目高まる


食のグローバル化進展により、世界的なニーズ増加も期待される
生命をも脅かす『食』に関わる事件が相次ぐ

 産地・製造年月日偽装、使いまわし、さらには基準値を超える不純物や残留農薬、毒性物質の混合など、「食」に対する信用・安全を脅かす事件が相次ぐ昨今。警察庁のまとめによれば「食品の安全」に関わる事件は過去最悪だった昨年を既に上回るペースで増加しているとのこと。

 このような状況の中、政府は消費者行政を一元的に推進し、消費者目線の新しい行政を実現するため消費者庁の設置を目指しているが、混迷する政局の下、どこまで対策が具現化出来るか、実際のところ流動的と言わざるを得ない。一方で消費者の不信感はもはや頂点に達しており、「次なる事件」を一刻でも早く防止するためにも民間レベルでの早急な対策が望まれるところである。

●主な食品安全検査銘柄 
検査・分析サービス銘柄 三菱ケミカルホールディングス<4188>、みらかホールディングス<4544>、ファルコバイオシステムズ<4671>、ビー・エム・エル<4694>、メデカジャパン<9707>
検査・分析装置銘柄 堀場製作所<6856>、島津製作所<7701>、栄研化学<4549>、みらかホールディングス<4544>、アテクト<4241>
 これは何も国内に限ったことではない。お隣の国中国でも、毒入り冷凍餃子、毒性ミルクなど、もはや生命を脅かす「食品テロ」と呼んでもおかしくない深刻且つ悪質な事件が相次いでいる。「食のグローバル化」により、他国の悪質な食品を知らずに、或いは精度の低い検査をパスして輸入してしまい、その結果自国の国民が深刻な被害を被るといった、「被害のグローバル化」が拡大する危険性も増大していくであろう。

 こうした「食の安全危機」は食品産業を中心に深刻な業績不振、信用の失墜、しいては企業の存亡に関わる事象であることから、大手食品メーカーを中心に、製品の安全性確保をより厳格にするため、品質管理の設備更新や検査体制を強化する動きを強めている。そのため農産物や加工食品の検査や分析を行っている民間企業の受託依頼も増加しており、ここではそうした食品検査・分析を事業としている企業に注目してみたい。茶漬けなど「コメまわり」商品の需要も伸びるものと見込まれ、ここではその関連銘柄に着目してみたい。


精度の高い食品検査・分析が求められる

食品検査 三菱ケミカルホールディングス<4188>は傘下の三菱化学グループが各種食品、そしてその食品の材料となる農業・牧畜業向けに分析・安全性試験を幅広く手掛けている。食品分野においては食品、食品添加物及び健康補助食品、特定保健用食品、特別用途食品等の製品の成分分析、安全性試験等の各種試験を受託している。具体的には食品の衛生検査、残留農薬検査・分析や食品添加物の毒性試験など、幅の広さでは業界随一である。また農業分野では米の品種識別、農薬の毒性試験、牧畜業分野では乳製品の成分分析などを行っており、「食」に携わる多様多種な業種からの検査・分析依頼が今後増加することが見込まれる。

 みらかホールディングス<4544>は傘下のエスアールエルが食品取扱者の腸内細菌検査の受託を行っている。既に2004年1月より、東京都食品衛生自主管理認証制度における東京都指定審査事業者として認証業務を開始しているのが強み。また食品微生物検査や残留農薬分析も手掛ける。

 ファルコバイオシステムズ<4671>も子会社が食品環境微生物検査、異物鑑別検査や成分分析検査を手掛けている。現在大きな社会問題となっている残留農薬メタミドホス及びアセタミプリドを含む「事故米」に関する検査の問い合わせ、依頼が急増している。

 またビー・エム・エル<4694>は、三菱ケミカルホールディングス<4188>傘下の三菱化学メディエンス、みらかホールディングス<4544>傘下のエスアールエルと並ぶ日本三大検査機関として知られ、中国産の毒入り餃子問題で話題になったメタミドホスをはじめとした残留農薬一斉分析に強みを発揮している。

 さらに介護サービス施設を運営するメデカジャパン<9707>も子会社が残留農薬検査や食品細菌検査を受託している。今年に入り、台湾産にんじん及びその加工物からメタミドホスが検出されたことを発表している。

高性能な検査・分析機器がバックアップ

高性能な検査・分析機器 迅速且つ正確な検査・分析サービスの提供がいっそう求められる中、そのサービスをバックアップする高性能な検査・分析機器のニーズも当然のことながら高まってくる。

 そうしたニーズに応えるため、堀場製作所<6856>は残留農薬測定キット「スマートアッセイシリーズ」を開発。イムノアッセイ(ELISA)による簡便な測定試薬であり、高感度・迅速・低コストで農産物の出荷前検査に強みを発揮している。また農薬測定装置やシリンダー・薬さじなどスターターキットの品揃えも充実、高まるニーズにより売上の増加が見込まれる。

 一方、島津製作所<7701>は食品中残留農薬分析において、前処理の自動化と分析の迅速化が求められていることを受け、GPCクリーンアップシステムとGCMSをオンラインで接続したスクリーニング装置「オンラインGPC−GCMS(Prep−Q)」を開発。その関連機器の「ガスクロマトグラフ質量分析計」は負化学イオン化法(NCI法)を適用することで、品中に残留する有機塩素系や有機リン系の農薬を超高感度で検出することが可能な装置である。

 また栄研化学<4549>は産業関連製品として「食品微生物検査用試薬」、「環境微生物検査用試薬」、「検査用器具・器材」の開発・製造を手掛けている。「食品微生物検査用試薬」の代表的なものとして、食品衛生検査指針に収載されている「ES培地」や衛生指標検査用培地、食中毒原因微生物用培地など、多くの培地を必要とする食品関連産業からのニーズは高い。そして環境微生物検査用試薬においては、作業環境の汚染実態を簡易的に把握できる多くの製品を取り揃えている。

 みらかホールディングス<4544>もグループ企業のエスアールエルが調理設備や調理器具、手指の衛生状態を把握できる、自主検査用簡易細菌検出キット「チェックスリー」を市場に提供している。

 さらにアテクト<4241>も培地製品やディスポシャーレなど、衛生検査器材の開発を手掛けている。因みに 同社は細菌検査の指導や指導者派遣サービスも行っており、今後ニーズの高まりが見込まれる。

 中国産の冷凍加工食品の中毒事件をはじめ、最近は日本国内の「汚染米」の相次ぐ発覚など、単なる偽装に留まらない、生命を脅かす「食」の流通を受け、消費者の不安を取り除くため、また各食品産業も危険な取引先の摘発、自社製品の信用力維持確保、世間に対するアピールを含めて食品の安全検査強化の動きが活発化していくものと思われる。より迅速で精度の高い検査や分析サービスを行っている企業や装置を製造・開発している企業の伸長が期待される。

提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.09 |特集