2010年11月24日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

東洋建設の第2四半期連結業績は増収大幅増益で黒字転換


■自己資本比率は23.0%と3.2ポイント改善

東洋建設のHP 海上土木の東洋建設<1890>(東1)は、今11年3月期第2四半期連結業績を11月12日に発表した。
 11月2日に今第2四半期、通期業績の上方修正を発表しているように、当初計画を上回るペースで推移している。
 売上高557億8700万円(前年同期比1.2%増)、営業利益30億7600万円(同10.18倍)、経常利益26億7700万円(前年同期△1億1800万円)、純利益14億2800万円(同△5億8500万円)と増収大幅増益で黒字転換。

 単体の第2四半期部門別売上高は、国内海上土木259億円(前年同期210億円)、国内陸上土木60億円(同96億円)、国内建築123億円(同186億円)、海外58億円(同20億円)となり、単体の売上高は500億円(同512億円)と減収であった。
 連結貸借対照表における流動負債は590億7600万円(前期末比97億6200万円減)、固定負債は120億8400万円(同10億4800万円減)、自己資本は214億8200万円(同10億9900万円増)となり、自己資本比率は23.0%と3.2ポイント改善し、財務体質の健全化が進んでいる。

■今期の港湾予算は1834億円(前期47億円)と高い伸びの要求額

 今通期連結業績予想は、1250億円(前期比7.7%減)、営業利益36億5000万円(同11.3%増)、経常利益27億円(同11.5%増)、純利益10億円(同15.6%増)と減収ながら2ケタ増益を見込んでいる。
 単体の通期部門別売上見込は、国内土木670億円(前期765億円)、国内建築350億円(同379億円)、海外120億円(同83億円)となり、全体では1140億円(同1227億円)と87億円の減収を見込んでいる。
 18日に本社で決算説明会が行われた。今通期連結業績予想数値の説明の後、今後の取組について代表取締役社長毛利茂樹氏が現況と今後について語った。
 現在の建設業界を取り巻く環境は、公共部門では、国土交通行政の成長戦略として海洋分野、航空分野、住宅都市分野、観光分野、国際展開官民連携分野を取り上げている。中でも同社が最も関係の深い海洋分野では、港湾力の発揮、海運力の発揮、造船力の強化による海洋分野への展開と3項目に分けられている。
 3項目の中で、同社に関係の最も深い港湾力について取り上げる。港湾力の発揮については、産業の競争力に向けた港湾の選択と集中を行い、港湾への貨物集約のための総合対策を実施するとしている。
 民間部門では、非住宅投資、住宅投資に分ける。非住宅投資については、10年度の回復基調が継続し、民間建築・土木共全体的に回復している。
 一方の住宅投資に関しては、10年度の回復基調が継続するものの景気動向から大幅な回復は期待できないとしている。
 その様な環境の中で、国内土木事業については、国土交通省全体の11年度の予算要求額は5兆7079億円(10年度5兆5847億円)で、その内の港湾予算は1834億円(同47億円)と高い伸びの要求額となっている。同社にとっては追い風といえる。

■青森県の東通原子力発電所の水域施設と山口県の上関原子力発電所の水域施設を施工中

 現在の港湾整備の方向性は、国際コンテナ戦略港湾、国際バルク戦略港湾の整備に向けて進んでいる。国際的に競争力のあるコンテナターミナル整備としては、現在、京浜港、阪神港の2港が選ばれている。今後、船舶の大型化に伴い港湾の増深、岸壁築増、航路の浚渫といった工事が行なわれることになる。
 国際バルク戦略港湾としての選定はまだ決まっていないが、今年中には選定される予定。資源、エネルギー、食糧等の国際バルク貨物の安定供給を支えるために必要な港湾であるため、早急な整備が必要となっている。
 また、重要港湾103港のうちから重点港湾として43港を選定し、国際競争力確保のために集中して港湾の整備を行う計画。そのため、同社では、集中投資される港湾に注力して受注への取組を行っている。
 この他、発電施設のリプレースが全国5カ所で計画されている。特に火力、原子力発電所は水域施設を伴っており、同社の技術を生かせることから積極的に受注確保に動いている。現在、青森県の東通原子力発電所の水域施設と山口県の上関原子力発電所の水域施設を施工中である。
 更に、2020年を見据えた海洋国家成長戦略として、10年6月より海洋資源の開発・利用、海洋調査の安全・安定化を目的とした法律が施行され、これに基づき離島活動拠点の港湾施設整備が推進される。対象となるのが沖ノ鳥島、南鳥島等である。
 漁場整備事業も行われている。水産庁の特定漁港漁場整備事業で、日本海の沖合50〜70kmの水域、海底250m〜300mの深さに漁業資源保護育成の漁礁ブロックを設置する事業が推進中である。また、人工海底マウンドを築増し、豊かな漁場づくりを長崎県で行っている。

■ベトナムでカイメップ港整備関連を施行中

 国内の建築事業では、住宅分野、医療・福祉分野、官庁工事をターゲットとして、事業量と収益の確保を目指している。既に受注している大型工事として、紀の川市新庁舎建設工事、(仮称)堺市菱木複合施設新築工事を挙げた。
 また、前田建設工業と共同開発した耐震補強技術MaSTER FRAME工法を差別化技術として展開中。10年上期には国立大学法人豊橋技術科学大学の高師住宅1号棟耐震改修工事を受注している。
 海外事業では、現在、フィリピン、ベトナムをベースに事業量を確保しつつ新規国の開拓を行っている。現在ベトナムでカイメップ港整備関連を施行中。「アジアは今後5年間がピークで、次はアフリカ市場が予想される」(毛利茂樹社長)と今後の市場としてアフリカを挙げている。来期から始まる次期中期経営計画の方向性に関しては、「国土交通省の成長戦略として港湾力の発揮と国際展開の施策が織り込まれていることから、当社が得意とする海上土木事業への追い風といえる」(毛利茂樹社長)と明るい展望を示し、民間部門については、「民間投資の回復を期待する予測はあるが、景気の先行きには不透明感があり、過度な期待を前提としない計画で臨む」(毛利茂樹社長)と慎重な姿勢を示した。
 最後に、会場からのポスト羽田といえる工事について問われると、「羽田の再拡張工事の後は普天間と見ていたが、状況が変わってきた。ポスト羽田といえるのは、那覇空港の沖合に造られる2700mの新滑走路工事で、近く調査が始まる予定」(毛利茂樹社長)と答えた。
 海上土木の東洋建設。海に囲まれた日本にとっては同社の技術力は、今後の日本の成長戦略実行するために不可欠といえる。

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