2011年11月09日
決算情報 Media-IR 日本インタビュ新聞社

アルコニックス:第2四半期決算は大幅上方修正を更に上回る大幅増収増益


■通期の過去最高の利益を半期でクリア

アルコニックスのHP  アルコニックス<3036>(東1)は2日、今12年3月期第2四半期連結決算を発表し、同日本社にて決算説明会を開催した。
 同社は8月4日に早くも第2四半期、通期業績予想の大幅な上方修正を発表したように、今期の業績は順調に推移しているが、2日に発表された第2四半期連結業績は、1,104億26百万円(前年同期比46.9%増)、営業利益31億58百万円(同2.10倍)、経常利益34億92百万円(同2.27倍)、純利益19億64百万円(同2.23倍)と大幅上方修正を更に上回る大幅増収増益となった。
 同社代表取締役社長正木英逸氏はこれまでの総括として、以下のように語った。
 「大震災の影響で寸断されたサプライチェーンは、その後急ピッチで復旧が進んで生産活動及び輸出は持ち直しましたけれど、当四半期7月〜9月以降は、欧州経済の混迷とか、それから急激に進む円高の進行によりまして、輸出、鉱工業生産の伸びが鈍化しています。基本的には、最初ほど勢いが無い、緩やかな景気回復で推移しています。非鉄金属業界においても、自動車は後半に入って今のところ回復しておりますけれども、家電、IT産業がらみというのは、色々なエコ減税の打ち切りとか、為替の問題もあります。また、パソコンとか携帯電話の需要が不振、その代わりスマートフォンが伸びているわけですけれども、基本的にはダウントレンドの方にさしかかってきております。
 復興による建設関連の需要が久し振りに回復しています。しかし、基本的には、直近、第3四半期にかけて景気の減速が懸念される状態に至っております。
 当社グループの売上においては、電子材料向けのレアメタル、レアアースの取扱が大幅増になりました。また、化学品用途の金属珪素、需要が低迷しておりました欧州向けのチタン製品の輸出などが復活しました。それから、建設需要も伸びたということで、売上高は約47.0%増になりました。利益面においては、レアメタル、レアアース、とりわけレアアースの出荷が第1、第2四半期に集中したということもありまして、大幅に利益は増加して、半期では過去最高であります。通期の過去最高の利益を半期でクリアしたということになり、非常に好調な業績を出させていただきました。

■下期は環境の悪化のため従来の通期予想を据え置く

 ただし、下期はいささか保守的かもしれませんが、非常に環境が悪化していますので、従来の通期売上予想が2、036億円、経常利益が44億円という見通しを動かしていません。もう少し見極めてから、上方修正が必要なら上方修正を行います。
 自己資本比率は、史上最高の利益を上げたにもかかわらず、前3月期18.4%からわずか0.1ポイント改善したに過ぎません。自己資本は約141億円ということで、大幅に増加したのですが、売上が増えていて総資産が増えたということでほぼ横這いで留まっています。
 下期は先ほども触れましたように、多少固めに見ているかもしれませんが、チョット景気の動向が読みにくく、円高が定着しているし、ヨーロッパの政治経済状態が非常に混乱しているし、アメリカの景気は悪いし、中国も引き締め策を中心として、経済環境は悪くなっています。そのような中で発生したタイの洪水は、日本の経済にもダメージをもたらすのではないかということで、我々は脇を固めながら進んでいきたいと思っています」と第2四半期の概況と下期の見通しについて語った。

■レアメタル、レアアース等利益率の高い取扱が増加して大幅増益となる

 引き続き第2四半期の決算概要の説明が行われた。
 第2四半期は、急ピッチなサプライチェーンの復旧と主要取引先の生産・輸出増加により増収増益となった。具体的には、電子材料向け、及び復興需要による建築資材向けを中心に取扱が拡大し、増収・増益を継続している。特に、価格が高騰したレアアースの既契約分出荷が第1四半期に集中し、震災の影響で落ち込んだ需要が第2四半期に回復に向かい増収・増益に寄与した。
 営業利益においては、増収効果に加え、レアメタル、レアアース等利益率の高い取扱が増加したことで、販管費増をカバーし大幅増益となった。
 更に、経常・純利益については、外貨建取引の増加による為替差益が大きく増加し、営業外収支が改善したことで当初予想を大幅に上回った。
 事業別の売上高、セグメント利益の増減は、軽金属・銅製品345億8百万円(同10.7%増)、5億77百万円(同17.7%減)、電子・機能材582億37百万円(同2.17倍)、28億3百万円(同3.99倍)、非鉄原料126億50百万円(同3.1%減)、63百万円(同62.5%減)、建設・産業資材50億30百万円(同20.1%増)、58百万円(前年同期△31百万円)となっている。

■建設・産業資材は復興需要により黒字転換となる

 軽金属・銅製品は、期末の銅市況下落の影響を受け、在庫評価損を計上したことで、増収ながら減益となった。
 電子・機能材は、レアアースをはじめタングステン、モリブデン等レアメタル、及び電池材料等電子材料の取引が好調で、売上高・利益共に大幅に伸びた。
 一方、非鉄原料は、第1四半期における自動車部品向けアルミニウム再生塊の需要の落ち込みが大きく、減収減益となった。
 建設・産業資材は、復興需要による建築資材用途の取引が増加したことで、増収増益となり、黒字転換となった。

■第2四半期末の現金、現金同等物の残高は前期比18億47百万円増

 連結のバランスシートについては、総資産は715億13百万円(前期比69億51百万円増となっている。
 流動資産は、取引の増加に伴い、営業債権が増加した。一方、前期末の在庫積み上げ分が期を通して剥落したことにより、棚卸資産は減少した。その結果、655億88百万円(同69億58百万円増)となった。
 固定資産は、投資有価証券が18億25百万円と2億40百万円と減少したこともあり、59億24百万円(同6百万円減)と目減りした。
 流動負債は、取扱の増加に伴い営業債務、及び未払い法人税が増加した。一方で一年内償還予定社債を振替えた。その結果、516億69百万円(同55億14百万円増)となった。
 固定負債は、長期借入金が80百万円増加したが、社債が1億円減少したことで、62億51百万円(同10百万円減)。
 純資産は、増収増益により利益余剰金が大幅に増加し、135億92百万円(同14億47百万円増)となった。
 キャッシュ・フローについては、営業キャッシュ・フローは、四半期純利益が運転資本の増加をカバーし、28億円となった。投資キャッシュ・フローは、連結子会社への設備投資、投資有価証券の取得により3億49百万円の支出。財務キャッシュ・フローは、借入金の返済、社債の償還、配当金の支払いにより、6億20百万円の支出となった。その結果、第2四半期末の現金、現金同等物の残高は、100億44百万円(前期比18億47百万円増)と大幅な増加。

■今通期業績予想は、8月4日の数値を据え置くが、大幅増収増益は変わらず

 次に、業績の見通しについての説明が行われた。
 先述しているように8月4日に第2四半期業績と今通期連結業績予想を大幅に上方修正した。11月2日に発表した第2四半期連結業績は大幅修正を更に上回る業績であったが、今通期業績予想については、世界経済の減速懸念や円高をはじめとする不安要素があることから、8月4日に発表した数値を据え置くとしている。
 今12年3月期連結業績予想は、売上高2,036億円(前期比28.9%増)、売上総利益101億80百万円(同23.1%増)、販管費55億60百万円(同7.1%増)、営業利益46億20百万円(同50.1%増)、経常利益44億円(同48.4%増)、純利益23億円(同20.9%増)と大幅増収増益を見込む。
 事業別の売上高、セグメント利益の増減は、軽金属・銅製品750億円(同15.4%増)、12億95百万円(同7.2%減)、電子・機能材889億円(同52.0%増)、29億40百万円(2.04倍)、非鉄原料301億円(同13.5%増)、1億40百万円(同51.1%減)、建設・産業資材96億円(同20.3%増)、25百万円(前期△1億44百万円)を見込んでいる。

■正木英逸社長 中期経営計画について語る

 引き続き、正木英逸社長による中期経営計画の説明が行われた。
 「中期経営計画のアクションプランとして、5つの施策を挙げています。特にその中でも皆さんが関心のある、営業収益力の強化、投資案件の推進について説明させていただきたいと思います。
 中期経営計画は、当社の場合3カ年計画でありまして、毎年見直すことになっています。今年の5月に、経常利益の計画として12年3月に33億円、13年3月に37億円、14年3月に40億円を発表しましたけれど、早くもこの数字が陳腐化しまして、今期33億円の見通しが、44億円に上方修正されました。知らん顔して来年は37億円としたいのですが、これでは成長性のない企業と言われますので、44億円をベースに右肩上がりの数字を作らざるを得ないということで、非常に苦しいことですね。2年目は色々長期契約とかありまして、達成できると思いますが、最終年度を50億円にすると相当の努力が必要かなと思っています。今から色々と考えているところです。
 具体策としては3つありまして、ひとつは、営業収益力の強化、二つ目はM&Aによる連結利益の獲得、3つ目は投資案件の推進により合弁事業を行うことです。一番目の営業収益力の強化というのは、一応3つ挙げています。ひとつは電子材料分野の強化、二つ目は、環境対応関連分野の強化、三つ目は海外事業の展開の活発化です。

■原料のレアメタル、レアアースの取扱をますます増やす

 電子材料分野の強化に関しては、原料のレアメタル、レアアースの取扱をますます増やす。それから、原料を使い色々な材料関係の取扱も増やす。用途は日本の産業の生命線であるIT、自動車、家電向けでありますので、ここでの商売を更に増します。今年は、幸運もありまして、成果が出ています。去年の売上高が584億円、経常利益が14億5000万円。今年の見通しは保守的に見まして、売上が889億円、経常利益が29億4000万円です。この数字に更にプラスアルファされたらいいなと思っています。とりわけこの中で、レアアースの取扱が、大幅に増えています。利益も増えています。これは色々な意味において幸運に恵まれたということもありますけれども、そのようなものを差し引いても堅実な発展をこの分野で狙っていきたいと思っています。この分野は子会社であるアドバンスドマテリアルも含めて、当社が非常に強い分野であります。比較的に利益率も高く、顧客も非常に成長性の高い分野で事業を営んでおられます。日本の産業の生命線である、原料、材料、部品関係と非常に強い分野です。強いというより、唯一残った分野、国際競争力のある分野と言えるかもしれません。そういうところにコミットしている我々としては、安定供給を図っていくという意味では、社会的な使命は大きく、誇りを持って仕事をしていきたいと思います。ただこの分野でネガティブなことを言うと、かなり円高、法人税が下がらないとか、日本の国のポリシーもあって、仕事をしにくい環境になっています。それから、レアアースはほとんど中国から供給を受けていますが、その中国がなかなか、我々から見たら、タフであるということで、もう工場を海外移転しようか、そういう動きが結構出てきているということで、将来そのような動きにどのように取組んでいこうかということで、悩んでいるところでございます。

■金属用チタンのスポンジの輸入は50%のシェア

 次に、環境対応関連分野ですが、これも時代の流れに沿っています。ひとつはチタン、これは、原料、展伸材共に我々は非常に強い。金属用チタンのスポンジの輸入は、50%のシェアがございます。チタンの展伸材は15%くらいのシェアですね。この分野は飛行機、海水の淡水化プラント、熱交換器、原子力発電所の非常に重要な素材になります。次は、太陽光発電に使われる金属珪素です。当社は12%程のシェアを持っていると思います。今後ますます合弁を作るとか、取組みを強化していこうと思っています。それとかLED関係のガリウムとかサファイヤ、それからガリウムのメタルとかサファイヤのウエハーとか我々は非常に大きなシェアを持っています。規模は小さいですが将来性のある分野だととらえています。今後力を入れていこうと思います。最後になりましたが、レアアースです。磁石とか電池とか光学用のレンズとか、蛍光塗料とか、それから触媒とか、非常に大きな役割を果たしているアースです。特に、磁石、ハイブリッドカーに使われる強力な磁石、今のところ日本が非常に強い分野ですね。シェアは20%程あります。こういう環境関連分野も結局、電子材料関連分野ということになりますけれども強化していこうということです。

■海外事業展開を強化し、三国間取引や地場取引を拡大

 3番目に海外事業展開を強化します。当社グループの2011年3月期における売上高の形態別のシェアを見ますと、輸入取引が全体の33%、輸出が23%、三国間取引が3%、残りが純国内取引で41%となっています。この純国内取引の比率が年々落ちつつあります。誠に残念なことですが、国内の経済が沈滞化しているため、そのようなことが起こっていると思いますが、我々としてはそれを嘆いていても仕方が無いので、貿易に関しては取引を増やしていくためには、海外店のネットワークを更に充実させる以外にはないと考えています。現在海外に8現地法人、12カ所に店を持っていますけれども、近い将来中国の華南地区、ベトナム、インド、インドネシアを視野に入れて、短期間に店を作って商売を増やすということを考えています。そういうことを行うことで、三国間取引や、地場取引を拡大していきます。今年の海外法人の稼いだ利益が予想されるのは2億5000万円ぐらいです。これを早い時期に5億円位に持っていきたい。海外で稼ぐ商社になりたいなあと思っています。

■投資案件の推進は、金の続く限り続ける

 次は投資案件の推進ということで、過去M&Aの実績は7件あります。いずれも成功しています。今後もこのM&Aは続けていきたいと思っています。現在も交渉中の案件が数件あります。金の続く限り続けていきます。目的としては、一つには連結決算益に加えていく。例えば3カ年計画の50億円はこのようなものを加えることで実現したいと思っています。日本国内の企業数は、私個人としては多過ぎると思っています。その中には、後継者がいなくて、ただし技術的にも継承されていくべき会社というのは非常に多くあります。それは流通業、製造業を問わず、場合によっては非鉄金属分野のみならずキラッと光る会社がありますので、そういう会社と一緒にやっていこうと思っています。
 事業投資については、現在29件実施していますが、これも新たな流通を生む、原料の納入、製品の販売により、営業総利益を増やす。それからキャピタルゲインも狙っておるのですが、合弁の場合はどちらかというと海外展開で製造業をやる、その場合は合弁する相手は、現地企業です。また、日系の確かな技術を持っているが海外展開するには資金の面とか、外国ということで知識が足らないということで、悩んでおられる企業は非常に多いわけで、そういうところと組んでやっていくことも考えています。

■具体的な投資分野は、金属加工分野、資源確保分野

 具体的には分野としてはどのようなところかと言いますと、一つには金属加工分野、もう一つには資源確保分野であります。
 金属加工分野は、当社の伝統的な取引でありますアルミ、銅分野を中心に色々な展開をしていこうと思っています。金属加工は、どんなものかというと切ったり、はつったり、曲げたりだけではなく、冷間鍛造、黄銅管製造の合弁等を既に立ち上げています。新たに、ダイカスト、切断、切削、それから焼結、この様な分野に出ていこうとしています。特に中国で展開して中国で稼ぐことを考えています。
 それから資源加工分野、既存のものとしては中国でアドバンスド・マテリアル・ジャパンが行っている磁石の合金、アルコニックスが行っているマグネシウム地金のプロジェクトがありますが、更に中国以外でのレアアース関連の合弁、それからタングステン、モリブデンの鉱山開発に投融資を行う。アルミの二次合金の事業について中国で投資を行っていく。金属珪素の合弁事業も中国で行っていく。投資の総額としては、15億から25億円を考えています。この範囲の中で、小刻みにやっていって連結決算益を稼ぐということを考えています。
 M&Aについては、これまで7件の実績がありまして、いずれも成功しています。当社の十八番だと考えています。川上、川下を問わず事業領域を拡大して行おうと思っています。物を右から左の商社にとどまらず、提案型、オルガナイザーの役割を果たせるような企業になって生き残っていくことを考えています」と今後の事業展開について詳しく紹介した。

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