2009年06月12日
重要な食料が『価格』だけの繋がりでよいのか?=菱食の中野勘治社長に聞く
食品卸大手の菱食:中野勘治社長に事業の取り組みを聞く
 もし、新型インフルエンザが猛威をふるって、大変なことになっていたらどうなるのか。『食料』をどうするのか。食料は電気、ガス、水などと同じように重要な命の元。100年に一度といわれる、昨年来の大不況の中、節約「内食」を支えたのが食品を扱う地域スーパー。食品卸大手の菱食<7451>(東証1部)の中野勘治社長は、「大事な食料が値下げ競争の価格だけで地域と繋がっていいのか」と、食品の現状に警鐘を鳴らす。『食品の卸売り会社から、新しいライフラインを守るのにふさわしい会社』として取り組んでいる同社の中野勘治社長に聞いた。

■生活圏のスーパーがライフライン守る重要な役割を果たす

――経済が大きく揺れ動く中で、『食品』を取り巻く環境も厳しいようですが。

 【中野社長】 結論から言えば、食料について冷静にかつ根本から考えるときです。100年に1度といわれる大不況で、今の世の中は物の値段が安くなくてはいけないような風潮です。とくに、食品はPB(プライベートブランド)商品全盛で価格低下競争が非常に激しい状態です。大手自動車メーカーも一転して大きな赤字となっていることは承知しています。しかし、「食品」が過去に自動車メーカーと同じように大きな利益を稼いだことがあるのなら分かります。そうではありません。良いときはなく、悪いときだけお付き合い、ということではおかしいですよ。目覚めなくてはいけないところに来ていると思います。。

――「食料」の持つ重要な役割を見直せということでしょうか。

 【中野社長】 そうです。たとえば、食品を扱う地域スーパーなどは非常に大切な存在です。消費節約ということで昨年から「内食」が注目されました。そのときに頼りになったのは、地域のスーパーです。地域とのコミュニケーションを守る重要な役割が認識されたと思います。今年、新型インフルエンザがまだ大変なことになっていませんが、仮に流行となっていれば、生活圏のスーパーが電気、ガス、水道などと同じように食料のライフラインを守ってくれる重要な役割を果たします。にもかかわらず、地域との関係が価格だけで繋がっていていいのですか。真剣に考えるときです。

――それが、御社の『FCM』の考えでしょうか。

 【中野社長】 そうです。当社が標榜するライフスタイルマーケティングによって、家庭や生活者にとっての新しい食のあり方を創造し提案すること。従来の流通のあり方にとらわれることなく、常に社会にとって最も価値のある仕組みを追求すること。そして、世界的な食糧問題の解決のための新しい循環システムを生み出すこと。これらの活動を『FCM』(Food Cycle Management=フードサイクルマネジメント)と名づけています。

■業績絶好調、「食品卸からライフライン守る会社」として展開

――初めて耳にされる投資家の方も多いと思います。

 【中野社長】 今年設立30年を迎える当社は、新しいビジョン「Innovation by FCM〜食からつながる笑顔の輪を、日本に。そして世界に。」を発表しました。FCMは当社が初めて世の中に発信した言葉です。菱食の成長に合わせてその定義を進化させることができる言葉です。逆に言えばわれわれ自身が言葉の定義を常に考え、成長させていかねばなりません。そのためには、これまでの、川上から川下へ求められるものを供給していくという発想を超え、従来の流通のあり方自体も変革する新しい挑戦が必要であり、実際に取り組んでいます。

――08年12月期の22.3%営業増益に続いて、09年12月期も29.1%増益見通しと絶好調です。さらに、もう少し先の見通しと、個人投資家の皆さんへメッセージをぜひ。

 【中野社長】 今期の数字に対する手ごたえは十分あります。長期経営計画で発表していますが2010年に売上1兆5000億円(08年12月期1兆4023億800万円)は十分達成できます。投資家の皆さんに、当社の可能性を卸売りとしてみていただくか。あるいは、申し上げたような新しいライフラインを守る会社として評価をしていただくか。この点が非常に大切な点です。もちろん、われわれはライフラインを守るのにふさわしい会社として頑張って参ります。

――ありがとうございました。