2012年05月29日
決算情報メディアアイアール 日本インタビュ新聞社

東洋建設:昨年は、一つのターニングポイントの年


■代表取締役社長毛利茂樹氏 前期を振り返る


東洋建設のHP 海洋土木の東洋建設<1890>(東1)は24日、前期12年3月期決算説明会を開催した。

 代表取締役社長毛利茂樹氏は、以下のように前期を振り返った。

 「当社にとって昨年は、一つのターニングポイントの年であったと捉えています。東日本大震災が発生した直後に、中期経営計画のスタートを切りまして、国内では震災対応に追われている中で、第1四半期にはケニアで大型のODAの港湾工事の受注を獲得しました。これは今後当社の海外事業を拡大していく中で、大きな成果ではなかったかと思っています。一方国内では、国の補正予算の成立が遅れまして、本格的な復旧工事の出件が第4四半期までずれ込む中で、結果的には多くの海洋土木工事を受注することが出来ました。一昨年度に比べた繰越高は、全体で1.8倍増の1,168億円となっております。また、今年の1月には優先株式の普通株式への転換が全て完了しまして、資本の面からも大きな転換点であったと考えています」と語った。

■今年度のポイントは3つ

 「この様な状況で、今年度のポイントは3つあると思います。まず一つ目は、昨年度に国内外で獲得しました大型土木工事でどれだけ効率良く施工を行い、また利益を上げられるかということです。震災復旧工事の中に今までに経験したことのない施工法も含まれています。当社グループの作業船等を活用し、安全で、工程を短縮できる工法を採用し、全社を挙げて対応してまいります。次に二つ目は、建築事業における改善ということでございます。当社の建築事業は、2010年度に受注しました分譲住宅工事業での採算が悪化しました。このため11年度には、分譲住宅の受注をより選別し、結果的に受注高は伸びませんでしたが、収益率を改善することが出来ました。他社に比較するとまだまだ低採算ではございますが、得意である物流倉庫、或いは福祉関連施設を中心に収益拡大、或いは改善を図ってまいろうと思っています。三つ目は、ポスト震災を考えた取組みを行っていくということでございます。震災による特需は2年、3年継続すると思っていますが、過去マリコンは、通常の港湾整備以外に関西空港や羽田の再拡張工事等、代表プロジェクトを受注することで、色々と収益を確保してまいりました。数年後には、沖縄の那覇空港の拡張工事が見えてきておりますが、それ以外にマリコンとして、技術や特色が活かせる工事への転換が必要でございます。東南海地震を想定した沿岸部の防災施設整備事業、或いは再生可能エネルギーへの取組みが想定されます。それらの事業へ取り組むための情報収集、技術開発、また設備投資も含めて考えていきたいと思っています」と3つのポイントを詳しく紹介した。

■時価総額に比較して、発行済み株式数が多いという問題が解消

 「それから先日5月21日に発表しました株式併合について、6月28日開催予定の株主総会に提案することを決議しました。総会で認められますと、現在発行済み株式数約4億株が8千万株となります。これにより、時価総額に比較して、発行済み株式数が多いという問題が解消されまして、引いては適正な株価形成に寄与するものと思っています。また、今後の事業内容の拡大と多様化を見据えて、定款の目的事項の追加も行う予定です。事業内容の目的の中身は、自然エネルギー開発、港湾等の公共施設の保有や運営等を追加しております。今後の事業領域の取組み拡大やエネルギー施策の変化に柔軟に対応していくための定款変更でございます」と現況を見据え、将来を見通した取組みを示した。

 前期12年3月期連結業績は、売上高1,079億57百万円(前年同期比11.6%減)、営業利益18億88百万円(同55.2%減)、経常利益12億4百万円(同64.3%減)、純利益9億18百万円(同24.6%減)と減収減益であった。

■今期は前期の業績不振から一転し、大幅増収増益を見込む

 一方で、復旧・復興工事の受注により、受注残高は1,168億円と一昨年度の1.8倍となっている。

 そのため、今期13年3月期連結業績予想は、売上高1,330億円(前期比23.2%増)、営業利益34億円(同80.0%増)、経常利益25億円(同107.8%増)、純利益13億円(同41.5%増)と前期の業績不振から一転し、大幅増収増益を見込む。

 国内土木工事業では、前期第4四半期に釜石港湾口地区防波堤(災害復旧)ケーソン撤去工事をはじめとして、震災からの復旧・復興工事では、総額140億円強の工事を受注していることから、今後の売上拡大のけん引役となる。

 また、セシウムが堆積した湖沼河川の底泥回収と、回収した汚染土からのセシウム除去までを一体とした除染システムの開発を行い、環境省の「平成23年度除染技術実証事業」に応募し、採択を受けた。全体で22件が採択されたが、採択されたテーマの中で水域を対象とした事業は同社のみであることから、今後の海域汚染では同社が注目されることになる。また、既に、東京湾のセシウム汚染が話題となっていることから、除染が開始されると同社の除染技術が採用される可能性が高いといえる。

■国際コンテナ戦略港湾のため、12年度予算として事業費586億円を計上

 更に、国土交通省プロジェクトでは、国際コンテナ戦略港湾のために、12年度予算として事業費586億円を計上している。また、国際バルク戦略港湾として、2015年度までに現有主力船対応の港湾整備が予定されている。この様に、船舶の大型化に伴う港湾整備の需要が高まっている中で、11年度に同社では東京港中央防波堤外側地区岸壁築造工事を受注し、今期中の竣工が予定されている。この他にも電力関連として、大飯原子力発電所防波堤かさ上げ工事、下小鳥ダム取水路改修工事を受注している。

 国内建築事業では、震災を受け「建物耐震化の必要性」「社会資本の重要性」が再認識されており、官庁工事の受注に向けて取組みを更に強化している。過去3年間の官庁工事の受注高は、10年3月期69億円、11年3月期100億円、12年3月期136億円と順調に増加している。今期中に竣工が予定されているものには、新宿労働総合庁舎、大分大学(医療)救命救急センター等がある。

■東京都では、4月から緊急輸送道路に隣接した古い建物に耐震診断を義務化

 また、今年度から注力している技術営業では、顧客の悩みを解消する企画提案が不可欠であることから、技術営業部隊を新設している。その様な状況下、東京都では、4月から緊急輸送道路に隣接した古い建物に耐震診断を義務化している。そのため、耐震改修、建て替え工事の需要が高まってきている。新設した技術営業部隊はそのような流れの中で耐震補強工法であるMaSTER FRAME構法を軸に企画提案を行っている。MaSTER FRAME構法は今年2月には、バルコニーや廊下等にも適用できるように工法を改良していることから、官公庁工事はもとより、マンションや社宅への適用が可能となったため、専任チームを設置して営業展開を一段と強化し、ストック市場での受注拡大に結び付けている。

 海外事業では、ベトナムのカイメップコンテナターミナル開発工事、インドネシアのタンジュンプリオク港緊急改修工事、フィリピンのバッシングマリキナ河川改修工事、ピナツボ川浚渫工事、ピサヤ地方緊急橋梁工事、ケニアのモンバサ港建設工事等が施工中である。フィリピンでは、この他日系企業の工場等も施工中である。

 冒頭に毛利茂樹社長が語っているように、早くもポスト震災に向けて、マリコンとしての技術力を背景に受注獲得に動く一方で、1株当たりの株価向上に努める等、上場企業としての責任を全うするために、積極的な事業活動を行っている。

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