2009年5月18日
自動車産業は株式市場の勢力図を塗り替えるか!

■自動車セクターとハイブリッド関連銘柄の今後の行方

■ガソリン車からハイブリッド車へ、自動車の歴史に新たな1ページ

 1896年にヘンリーフォードがガソリン自動車を発明して113年。自動車の歴史に新たな1ページが書き加えられようとしている。自動車の歴史は燃料の歩みでもある。長く主役の座を占めてきた原油によるガソリン、経由などに代わって、「電気」(電池)が主役に代わろうとしている。化石燃料はいずれ枯渇する運命にあり、しかも環境問題からの縛りが加わってきたことがある。まずは、ガソリンと電気を動力として併用する「ハイブリットカー」がクローズアップしてきた。言うまでもなく、「エレクトロニクス」(電気)は日本の得意とする分野である。現在のガソリン車でさえ2〜3万点の部品からなっている。これが、電気を採用したハイブリット車に変わることで、さらに部品点数は増える。世界の自動車業界における日本の自動車産業の優位性が今後、大いに発揮されるものと期待できる。

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「日本型の複合・組み合わせ産業」が花開く時代へ

 世界の大手自動車メーカーの会社設立は1900年代の初めに集中。フォード社が1903年、GMは1907年、さらにクライスラーの1925年、ダイムラー・ベンツの1926と続く。これに対し、わが日本勢は日産自動車<7201>1933年、トヨタ自動車<7203>1937年、ホンダ<7267>1948年と、アメリカにほぼ30年遅れての発足だった。
 しかし、ここに来て、社歴100年を超えたGMなどが経営不安に見舞われ、会社存続の危機に直面している。「会社の寿命30年説」があるが、GMなどアメリカの大手自動車メーカーは、この寿命サイクルを3回くぐり抜けてきた。それだけ、アメリカの自動車産業の存在感は大きく、世界で君臨し続けてきた。しかし、企業も人も、社会・環境の中で生きさせてもらっている。その変化への対応を怠ってきた時に衰退が始まる。「ガソリンは無尽蔵」、「大きいことは良いこと」を信じて疑わなかったアメリカ自動車に環境の変化が忍び寄っていた。
 言うまでもなく、環境の変化とは、地球環境という、とてつもない大きい問題である。放置すれば人類全体が生存の危機に見舞われる。決して、アメリカ一国だけが生き残れるという話ではない。そこへ、アメリカには「金融大国」崩壊のダブルパンチ。一気に構造変化が求められている。
 もちろん、今の日本の自動車産業も厳しい経営環境に置かれていることには違いない。しかし、車とエレクトロニクスが合体した新しい展開を迎え、明らかに日本の自動車産業にはフォローの風である。日本の政策も時の流れに沿ったものであり、ハイブリット車の購入に支援を行うことはまさにマトを得たものである。ホンダのインサイト、トヨタ自動車のプリウスには早くも高い人気となっている。

 日本の働く人は約6400万人。このうち、つい最近までは自動車産業では12人に1人が自動車に関連していた。今は、自動車不振で失業も増えているが、ハイブリット車を武器に回復し、世界市場で力を発揮するようになれば日本の経済にとっても大いに期待が持てる。まずは、ガソリン・電気併用のハイブリット車から、さらに、先行きは高性能電池による電気自動車やタンクに水を積んで、電気分解による水素燃料などの走行も期待される。ガソリンスタンドに代わって、充電スタンドなど関連需要は非常に大きい。自動車を核として、いろいろな産業と技術が組み合わさった「日本型の複合・組み合わせ産業」が花開く時代を迎えようとしていると言っても過言ではないだろう。

自動車大手3社の株価診断

■トヨタ自動車は十分許容できる調整範囲、半値押し水準の3330円程度を下値のメド

 【週足チャート診断】 トヨタ自動車<7203>は、14日(木)の株価は3480円と4月2日以来、1ヶ月半ぶりに3500円を割った。去る5月7日につけた高値4080円から約15%の下げ。調整としては十分許容できる範囲。むしろ、26週線との乖離率が警戒水準の30%まで拡大していたので、ここでの調整は歓迎できる。
 26週線の3100円を割り込むような下げはないと見ていい。昨年12月の安値2585円からの上げ幅に対する半値押し水準の3330円程度を下値のメドと見ておけばよいだろう。今後、新型ハイブリット車プリウスの販売好調が具体的な数字として表面化、株価への買い材料となってくるだろう。

■ホンダは上値の壁に向って挑戦するも、値固め必要、下値のメドは2400円前後

 【週足チャート診断】 ホンダ<7267>は、14日(木)の株価は前日比115円安の2710円と下げた。去る5月7日の高値3070円から約12%の下げ。同社は安値が昨年12月の1643円だが、本格上昇に転じたのは1月の2000円どころから。
 同社株も26週線乖離が30%程度まで拡大し過熱感が出ていた。それだけに、ここでの調整は歓迎。特に、3000円から上、4000円にかけては上値の壁がある。この壁に向って挑戦するためにもしばらくは値を固める必要がある。
 ハイブリットカーのインサイトへの人気、引き合いとも出足快調。今後、業績面への寄与が具体化してくれば再上昇へ移るだろう。26週線は現在2270円程度にある。このため、下値のメドとしては2400円前後に置いておけば十分だろう。

■日産自動車は手がけやすさの低位株、下値のメドは350円前後

 【週足チャート診断】 日産自動車<7201>は、13日(水)に急伸し570円と年初来高値をつけた。14日は34円安の508円と急反落。トヨタ自動車、ホンダに対する出遅れ感から急伸したが、『出遅れ銘柄は深追いするな』、と言われるように長くは続かなかった。
 同社株も26週線乖離は40%と拡大し、過熱感が目立つ。トヨタ自動車、ホンダに比べて株価が低い分、手がけやすさはある。その分、短期売買の対象となりやすく、動きは荒くなる。
 また、同社の場合にはハイブリット車がないため、テーマ性に欠ける。経営トップが外国人ということで、従来の欧米型の自動車経営に傾斜、トヨタ、ホンダの日本式経営とは異なる点を指摘する向きもある。下値のメドとしては350円前後に置いておきたい。

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