2009年03月30日
中国関連銘柄特集:中国向け需要急増で日本株に脚光!
豊富な企業群がマーケットの主役に!
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中国の大規模景気対策:世界経済の下支え効果に期待

中国景気対策 中国は昨年11月、雇用確保に必要な成長率とされる8%成長の維持を目指して、2010年末までに総投資額4兆元(約57兆円)を投じる大規模な景気対策を発表した。総投資額4兆元というのは、中国の07年の国内総生産(GDP)の16%に相当する大規模な景気対策である。輸出の回復が期待できない状況で、内需拡大に全力を挙げる構えであり、世界経済の下支え効果としても期待されている。特に、今年に入って春節(旧正月)以降、大型景気対策の効果が徐々に出始めている模様で、再び注目度を高めている。

 中国が昨年発表した総投資額4兆元の景気対策の内訳は、

 (1)安価な住宅の建設
 (2)農村のインフラ整備
 (3)鉄道や道路など重要なインフラの整備
 (4)医療・衛生と文化・教育事業の発展
 (5)環境対策
 (6)技術革新と構造調整
 (7)震災被災地の復興
 (8)食料買い入れ価格の引き上げや社会保障の拡充
 (9)増値税(付加価値税)改革による企業減税
 (10)銀行貸し出しの拡大


 以上の10項目で、中国政府がこれまで打ち出してきた重要な政策を加速、拡充させるものと予想されている。

中国向け「インフラ整備と家電製品素材」の需要が増加

 そして今年2月12日、中国人民銀行(中央銀行)が発表した09年1月の金融機関融資の増加額は1兆2000億元(約15兆7000億円)となり、単月では過去最高となった。政府が景気対策の一環として金融機関に融資拡大を促していることが背景にあり、融資の多くは景気対策の一部である社会インフラ整備に向かっているとの見方がある。
 こうした大型景気対策が09年に入って本格的に始動しているため、社会インフラ整備や家電製品向けに素材の需要が増加するなど、その効果が出始めている模様だ。そして、日本の素材メーカーの中国向け輸出も年明け以降、急速に伸びているため、設備稼働率が上昇に転じている。東ソー<4042>では年明け以降、中国向けを中心に塩化ビニル樹脂の需要が上向いている。銅地金価格の上昇に見られるように、製品市況の安定や上昇につながっていることも、素材メーカーにとってプラス要因となる。さらに、コマツ<6301>では、年明け以降の中国での販売が想定を上回るなど、建設機械などにも需要増加が波及している。

■中国景気対策本格的始動で公共投資が急増

 中国国家統計局が3月11日に発表した1〜2月の都市部の固定資産投資(設備投資と建設投資の合計)は、前年同期比26・5%増加の1兆276億元だった。固定資産投資の2〜3割を占める不動産開発投資は、同1・0%増加にとどまり、依然として住宅価格下落の影響で低調な模様だ。しかし、鉄道運輸関連が同3・1倍に増加するなど公共投資が急増し、景気対策が本格的に動き出したことを示している。
 中国鉄道省は昨年11月、2009年の鉄道インフラ建設に、08年の約2倍に当たる6000億元(約8兆4000億円)を投じる計画を発表している。さらに2010年には、09年以上の投資規模を確保する模様であり、建設工事で約600万人の雇用を確保する方針だ。関連する建設資材としては鋼材2000万トン、セメント1億2000万トンなどが必要とされ、中国では鉄道用レールの特需も発生している模様だ。日本メーカーでは東洋電機製造<6505>が、広州・武漢間の長距離高速鉄道関連で、駆動装置を大量に受注している。

■アジア地域市況の引き締め効果で日本の企業業績はプラス

 こうした大型景気対策は、基本的には社会インフラ整備が中心になるため、日本企業の関連セクターとしてはセメント、鋼材、塩ビなどの建設・農業資材関連に加えて、建設機械関連、農業機械関連、電力設備関連、水処理設備関連、鉄道設備関連、総合商社などが注目される。また、中国市場における需要増加という直接的な効果だけでなく、アジア地域における市況引き締めという間接的な効果も、日本の企業業績にとってはプラス要因として期待できるだろう。

 社会インフラ関連銘柄としては、東レ<3402>旭化成<3407>住友化学<4005>東ソー<4042>トクヤマ<4043>信越化学工業<4063>三井化学<4183>三菱ケミカルホールディングス<4188>積水化学工業<4204>住友大阪セメント<5232>太平洋セメント<5233>三菱マテリアル<5711>コマツ<6301>日立建機<6305>井関農機<6310>クボタ<6326>日立製作所<6501>東洋電機製造<6505>三菱重工業<7011>川崎重工業<7012>伊藤忠商事<8001>丸紅<8002>三井物産<8031>住友商事<8053>三菱商事<8058>などがあげられるだろう。

■新たな景気刺激策も示唆

 3月13日に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代)では、2009年の経済成長率の目標を8%程度とする政府活動報告が承認された。総投資額4兆元の景気対策の着実な実施と、医療衛生改革(8500億元)、低所得者向け住宅建設(750万戸)、政府支出の大幅な増加と地方債発行(2000億元)、企業と住民の税負担軽減(5000億元)、新規の銀行貸し出し額5兆元以上なども盛り込まれた。景気対策の軸足を消費に移しながら、政策を総動員して8%成長の達成を目指す方針だ。また温家宝首相は「我々は十分な弾薬を備えており、新たな景気刺激策をいつでも打ち出せる」と述べ、追加景気対策の可能性も表明している。
 中国国家統計局が3月12日に発表した09年1〜2月の工業生産は、前年同期比3・8%の増加だった。調査の公表を始めた99年以降で最も低い伸び率にとどまったが、総投資額4兆元の景気対策が本格的な実施段階に入り、セメントが同17・0%増加するなど、公共事業関連の生産が急増している。また自動車の生産も2月に同22・9%増加している。こうした状況から、1月の春節(旧正月)以降、一部の業種では在庫調整がほぼ完了し、生産が回復し始めたとの見方も出ている。

■家電製品の需要は堅調で日本の液晶部材メーカーは増産へ

 中国では内需を刺激するために、農村部を対象として薄型テレビ、冷蔵庫、洗濯機、携帯電話などの家電製品を購入する際に、政府が購入額の13%を補助する「家電下郷(家電を農村に)」制度を導入している。山東、河南、四川の三省で先行導入した後、08年12月には14市・省・自治区に拡大した。そして09年2月からは、対象地域を全国に広げている。このため家電製品の需要は堅調で、特に昨年12月以降、中国のテレビメーカーは台湾から液晶パネルを大量に購入している模様だ。そして、東洋インキ製造<4634>では液晶用レジストインキの生産が昨年12月を底にして上向くなど、日本の液晶部材メーカーの生産は年明け以降、総じて上向いている。

 日本企業では最終製品メーカーよりも、素材・部品メーカーへの波及効果が大きいと期待される。関連銘柄としては特に液晶素材関連で、クラレ<3405>住友化学<4005>三井化学<4183>JSR<4185>三菱ケミカルホールディングス<4188>ダイセル化学工業<4202>日本ゼオン<4205>宇部興産<4208>日立化成工業<4217>東洋インキ製造<4634>富士フイルムホールディングス<4901>旭硝子<5201>日本電気硝子<5214>日東電工<6988>凸版印刷<7911>大日本印刷<7912>リンテック<7966>などがあげられるだろう。

■中国の新車販売台数は2ヶ月連続で世界首位

 中国の2月の新車販売台数は約83万台となり、前年同月比25%増加した。4ヶ月ぶりに増加に転じ、2ヶ月連続で世界首位となった。政府が消費刺激策として、1月下旬に導入した小型車減税(小型車の取得税率を5%に半減)の効果などが背景にあるようだ。さらに3月からは農村を対象に、自動車への買い替え時に購入代金の10%を補助する「汽車下郷(自動車を農村に)」制度を導入した。今後、自動車ローンの利用条件も緩和される見通しだ。こうした消費刺激策の効果で、中国の自動車販売台数が通年でも米国市場を抜いて世界首位になる可能性も高まっている。
 さらに中国では、地方政府が独自に、旅行や商品購入を補助する消費券を発行する動きが相次いでいる。また全国共通の国家消費券構想も浮上するなど、政策を総動員して内需を拡大させる方針だ。家電製品や自動車を中心とする内需拡大策では、中国国内の地場企業の製品が購入可能品目に指定される例が多いため、外資企業への恩恵は小さいとみられている。しかし、約5年間で合計9200億元(約12兆円)の消費創出効果を生むと試算されている。

■多種多様な業種への特需に期待

 2010年5月1日から開催される、上海万博ではインフラ整備を含めた投資額は、4兆円ともいわれる。早くもホテル不足が指摘され、宿泊施設の整備、北京−上海新幹線の建設、電力供給整備、パビリオン建設などを考えると経済波及効果は非常に大きい。日本の万博でも地方から多くの人が訪れ、日本の経済発展を実感し、個人生活レベルでの豊かさを求めるようになった。中国でも同じような動きが起きるのは間違いない。北京オリンピックに続いて、膨大な中国市場の規模を考えれば、多種多様な業種への特需が期待される。

 【その他中国関連銘柄】 中国調査会社=インテージ<4326>。「銀聯」の決済開始=SBIベリトランス<3749>。中国検索大手「百度」と提携=アクロディア<3823>。空調・自動車塗装設備工事=大気社<1979>。中国向け事業拡大=日清オイリオグループ<2602>、セブン&アイ・ホールディングス<3382>、王子製紙<3861>、旭有機材工業<4216>、関西ペイント<4613>、イーピーエス<4282>、ツムラ<4540>、日本ペイント<4612>、関西ペイント<4613>、資生堂<4911>、星光PMC<4963>、ナブテスコ<6268>、SMC<6273>、ダイキン工業<6367>、日新電機<6641>、ファナック<6954>、日立造船<7004>、三菱重工業<7011>、IHI<7013>、ピジョン<7956>、阪和興業<8078>、ユニ・チャーム<8113>、日本通運<9062>、日立物流<9086>、ヤマダ電機<9831>、ファーストリテイリング<9983>。

【注目の中国関連銘柄の株価診断】

■東レ<3402>

 合繊の最大手メーカーで、高機能フィルム、生分解性樹脂、PAN系炭素繊維など先端材料分野を積極展開し、ろ過膜や逆浸透膜などの水処理事業も中期的な重点分野と位置付けている。中国では膜法による下廃水処理や海水淡水化などの需要が増加しているため、水処理合弁会社を設立して10年4月の稼働を目指している。株価の動きを見ると、やや上値が重く調整局面だが、市場全体の地合い悪化の影響も考えられる。また当面の下値は固めた感が強く、材料性が見直される可能性も高い。上値抵抗となっている26週移動平均線の突破がポイントだろう。

■トクヤマ<4043>

 カセイソーダ、塩ビ管、セメント、乾式シリカ(建材の添加剤)、半導体用多結晶シリコンなどを展開する化学メーカーである。社会インフラ整備で塩ビ管やセメントなどの需要増加、市況改善効果が期待される。また多結晶シリコンは太陽電池用での需要拡大が期待される。樹脂サッシの耐火偽装問題で200億円の特別損失を計上するが、10年3月期には一巡する見込みだ。株価の動きを見ると、昨年10月の安値を割り込まずに反転している。耐火偽装問題の影響は限定的だったようだ。大勢として600円を挟むモミ合い展開だが、26週移動平均線を突破すれば下値を切り上げる展開も想定される。

■積水化学工業<4204>

 住宅事業、環境・ライフライン事業、高機能プラスチックス事業を展開し、塩ビ管や建材の大手メーカーである。事業領域は建築、自動車、エレクトロニクスと多岐にわたる。景気対策では環境・ライフライン事業へのメリットが期待される。また老朽化した下水道管を再生する事業を、アジア地域で本格的に展開する方針だ。株価の動きを見ると、市場全体の地合い悪化も影響して400円台を割り込んだ。ただし昨年10月の安値を割り込まずに反転し、当面の底打ち感を強める展開だ。上値抵抗の13週移動平均線、26週移動平均線の突破がポイントだろう。

■東洋インキ製造<4634>

 印刷用インキ、高分子関連材料、化成品・メディア関連事業などを展開し、液晶カラーフィルター用レジストインキや、レジスト用高機能顔料など液晶関連製品が収益の柱に成長している。液晶関連製品については、中国での特需などが寄与し、昨年12月を底にして、今年1月、2月には生産が上向いている模様だ。株価の動きを見ると、モミ合いから下放れる形で急落し、一時は200円台を割り込んだが、反発して底打ち感を強めている。低PBRや高配当利回りなど指標面の割安感見直しに加えて、液晶関連製品の需要回復を材料視する可能性が考えられる。

■日本電気硝子<5214>

 液晶テレビやプラズマテレビなど、FPD(フラットパネルディスプレイ)用の基板ガラスが連結売上高の約8割を占め、収益の柱である。FPD用以外では、電子部品用や、自動車向け機能樹脂強化用ガラスを展開し、建築用ガラスの比率は小さい。株価の動きを見ると、昨年12月末の年初来安値圏から反転した後は、徐々に上値下値を切り上げる展開となった。さらに13週移動平均線、26週移動平均線も突破して、上昇トレンドへ転換した可能性も考えられる。中国における液晶テレビ特需などでガラス基板の需要が回復に向かえば、収益面のメリットは大きく材料視される可能性も高い。

■太平洋セメント<5233>

 国内市場シェア3割強と最大手のセメントメーカーである。特に最大市場の首都圏では4割強の高シェアを誇る。国内市場が公共投資減少などで縮小傾向のため、米国、中国、ベトナムなど海外市場に積極展開している。したがって中国の景気対策で需要が増加すればメリットは大きいだろう。株価の動きを見ると、景気対策期待で昨年10月の安値圏から反発したが、200円手前でやや上値が重くなり、その後は150円近辺でのモミ合い展開となっている。だが景気対策関連の主力銘柄という材料性に加えて、指標面でも低PBRが見直される可能性も考えられる。

■コマツ<6301>

 油圧ショベル、ホイールローダー、大型鉱山機械などを手掛ける世界第2位の建設機械メーカーである。アジア地域での市場シェアはトップだ。社会インフラ整備が中心と予想される中国の景気対策は、強い追い風となる。年明け以降の中国での販売は、想定を上回っている模様だ。株価の動きを見ると、中国の景気対策関連などを材料視して昨年来安値圏からは反発した水準だが、上値も重く1000円台でのモミ合い展開となっている。ただ予想PERや配当利回りなどの指標面には引き続き割安感が強く、26週移動平均線を明確に突破すれば出直りも期待できそうだ。

■クボタ<6326>

 農業機械、建設機械、鋳鉄管、塩ビ管、水処理・ごみ処理施設など、社会インフラ整備関連の事業を多彩に展開し、景気対策のメリットが大きい。中国、タイ、インド、ベトナムなどアジアの新興国での生産拠点拡充や拡販も積極的に推進している。株価の動きを見ると、市場全体の地合い悪化も影響して戻り高値圏から反落したが、昨年10月の安値を割り込まずに反転している。景気対策の公共投資関連、農業関連、環境関連など切り口は豊富である。予想PERや実績PBRなどの指標面にも割高感はなく、26週移動平均線を明確に回復すれば、トレンド転換の可能性も考えられる。

■東洋電機製造<6505>

 電車用駆動装置、補助電源装置、パンタグラフ(集電装置)、モーター・制御装置の大手メーカーである。パンタグラフに関しては、国内市場でほぼ全量を供給している。中国では、広州と武漢の約1000キロメートルを結ぶ長距離高速鉄道向けに駆動装置を大量に受注し、中国の鉄道整備投資拡大の恩恵を受けている。株価の動きを見ると、昨年12月、日本電産<6594>が買収提案の撤回を発表して急落したが、年初から急反発して、一気に26週移動平均線も回復している。指標面の割安感は薄れたが、中国をはじめとする世界的な鉄道投資拡大を材料視して、上値を試す可能性も考えられる。

 【その他中国関連銘柄】 設備保守事業=弘電社<1948>。携帯内臓データ保持機器=サン電子<6736>。NTTグループと合弁会社設立=NTTデータイントラマート<3850>。中国向け事業拡大=グローリー<6457>、寺崎電気産業<6637>、カーメイト<7297>、リックス<7525>、島津製作所<7701>、日本興亜損害保険<8754>、蝶理<8014>、家族亭<9931>。

>>中国の景気対策関連銘柄特集 2008.12