2013年05月28日
決算情報メディアアイアール 日本インタビュ新聞社

星光PMC:前13年3月期連結業績は厳しい環境の中で、減収ながら、増益を達成


■高収益製品への販売構成のシフト等の収益の改善策、合理化の成果により増益となる

 12年度の国内の紙、板紙の生産量は前年比3.0%減、国内インキ生産量も前年比2.7%減少と事業環境が厳しい中で、製紙用薬品・樹脂事業の星光PMC<4963>(東1)の前13年3月期決算説明会が行われた。

 前13年3月期連結業績は、売上高211億22百万円(前年同期比7.0%減)、営業利益11億39百万円(同7.6%増)、経常利益12億15百万円(同9.8%増)、純利益7億27百万円(同108.0%増)と厳しい環境の中で、減収ながら、増益を達成した。

 増益を達成した要因は、高収益製品への販売構成のシフト等の収益の改善策、合理化の成果による。最終利益に関しては、前年に海外事業の特別損失を2億93百万円計上した影響で大幅増益となった。

 バランスシートを見ると、負債合計68億30百万円(同3億円減)、利益剰余金163億12百万円(同3億18百万円)で、実質無借金経営。自己資本比率は74.4%と前年度比1.4ポイント改善し、財務内容は健全である。

■海外事業の黒字転換もあり、今期は増収増益を見込む

 今期は、決算期を3月から12月に変更することに伴い、4月から12月までの9か月間の変則決算となる。そのため、前期も4月から12月までの9か月間の業績で比較すると、売上高179億70百万円(前期比11.8%増)、営業利益9億円(同2.3%増)、経常利益9億60百万円(同3.2%増)、純利益5億90百万円(同3.1%増)と増収増益を見込む。

 好業績の要因の一つに海外事業の黒字転換が挙げられる。海外事業の売上高21億82百万円(1月から12月まで)、営業利益25百万円を見込んでいる。前期の営業利益は△88百万円であったことから、1億円以上の利益の改善が見込まれている。

 説明会の出席者からの中国事業の黒字化を見込む理由についての質問に対して、代表取締役社長乗越厚生氏は、以下のように答えた。

 「今まで中国国内における営業責任者は日本人にしておりましたが、中国事業をこれまで6年間行ってきまして、販売に関しては、(やはり現地をよく知っている)中国人が、人脈等の面で力を発揮するという考えを持ちました。よって、本年2月から、営業の責任者として中国人を採用しました。採用するために、マネジメント能力、信用、技術的な能力、中国製紙業界における人脈の広さを持っているかどうかを基準として、ほぼ一年半かけてこのような能力を持つ人を探しました。今回、2月に私自身も現地に赴き面接を行い、採用致しました。それ以降の彼の活動の状況を見ていますと、まずまず期待に沿った動きが見られます。新しい責任者は、中国の製紙関連の大学の出身者であり、製紙会社での勤務や製紙用薬品販売も経験していることで、人脈も豊富に持っています。6月からは彼が営業の責任者となりますが、黒字化に向けて大いに期待しております。」

■主要事業である製紙用薬品事業では製紙工場の操業性の向上、紙品質安定化、原価低減のための省資源に向けたソリューションを提供

 同社の主要事業である製紙用薬品事業の今後の取組としては、成熟した国内市場で、顧客のニーズを的確に捉えるソリューションの提供を軸に事業基盤を強化し、培った技術を持って海外展開を加速させる計画。

 そのために、製紙工場の操業性の向上、紙品質安定化、原価低減のための省資源に向けたソリューションを提供する。操業性の向上については、既に板紙アルカリ抄紙システムを推進することで成果を上げている。また、紙、板紙の軽量化、高灰分化に適したシステムの開発も行う。更に、紙力剤、サイズ剤等各種の基盤となる薬品の高性能化を進める。一方、ロジンサイズ剤からASAサイジングシステムへの置換の推進も継続的に実施することで対応していく方針。

 海外事業については、中国で拡販する一方で、タイ、ベトナム等の東南アジアでの市場開拓も視野に入れている。既に昨年6月には中国本部と、製紙用薬品・樹脂事業本部内の「海外担当」を統合し、海外事業本部を設立している。

 樹脂事業については、水性化、VOC(揮発性有機化合物)低減に資する環境にやさしい高付加価値製品の投入などにより、製品ポートフォリオの組み替えを行っていく計画。

■補助金を活用し竜ヶ崎工場にパイロットプラントを設置し、2014年度よりセルロースナノファイバーのサンプル供給を開始

 従来の事業に加え、今後の事業戦略として大いに期待され、注目を浴びているのが独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称「NEDO」)・グリーンサスティナブルケミカルプロセス基盤技術で開発したセルロースナノファイバーの事業である。既にNEDOのプロジェクトは終了し、同社では、経済産業省イノベーション拠点立地推進事業「先端技術実証・評価設備整備費等補助金」に応募し、今年2月に採択されたことで、補助金を活用し竜ヶ崎工場にパイロットプラントを設置し、2014年度よりセルロースナノファイバーのサンプル供給を開始する予定。

 セルロースナノファイバーの特徴は、鋼鉄の5分の1の軽さで、5倍の強度を持ち、ガラスの5分の1の低熱膨張性を持つことから、自動車用樹脂の強度・寸法安定性向上のため、鋼板部材の置換として、また軽量化実現のために注目されている。自動車業界では、軽量化による燃費の向上を目指していることから、車1台で20kgの軽量化が実現するセルロースナノファイバーの採用は間違いないものと思われる。

 もう一つの新規事業が、銀ナノワイヤである。銀ナノワイヤは、直径がナノサイズで、長さはミクロンサイズの繊維状の材料。タッチパネルに使用される電極材、発熱材料、電波吸収等への応用が期待されている。現在タッチパネル等の透明電力にはインジウムというレアアースを原料とするITOが使用されているが、インジウムは供給に不安があることからITOに代わる材料が求められている。そのため、ITOに代わる透明材料として注目を浴びている。すでにマーケティングを開始すると共に、サンプル出荷を開始している。

 2014年度の新規事業の売上目標を11億20万円としている。ともに、同社の技術力を背景にした画期的商材で、他社にはまねのできない製品であることから、今後の売上拡大が予想される。

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