2013年06月04日
決算情報メディアアイアール 日本インタビュ新聞社

うかい:前13年3月期の自己資本比率は33.7%と前年より2ポイント改善


■一時的に削減していた人件費を震災以前に戻したため増収ながら大幅減益

 高級和食・洋食レストランを多店舗展開するうかい<7621>(JQS)は、11年3月11日に発生した東日本大震災の影響により、11年3月期はそれまで順調に推移していた業績が急転直下の勢いで一変し、減収大幅減益という結果となった。そのため、12年3月期は、コスト削減を徹底すると共に、人件費も削減し、全社一丸となって業績の回復を目指したところ、意外にも客足の戻りが早かったことからV字回復を果たした。

 前13年3月期は、業績が急回復したため、一時的に削減していた人件費を震災以前に戻したため、売上高116億87百万円(前年同期比0.6%増)、営業利益3億79百万円(同33.7%減)、経常利益2億12百万円(同54.8%減)、純利益1億71百万円(同45.3%減)と増収ながら大幅減益となった。

 大幅減益となったが、有利子負債は54億53百万円(同14.3%減)と減少したことで、売上高有利子負債率も54.7%から46.7%までに縮小している。自己資本比率も33.7%と前年より2ポイント改善するなど財務面の健全化は大幅に進んでいる。一時、売上高有利子負債率は100%を超えた時期もあり、その当時と比較すると現在の財務体質ははるかに強固なものといえる。

■足元の4月、5月の飲食事業の売上は前年を上回る状況で推移

 そのような状況の中で、13年3月期の決算説明会が行われた。

 アベノミクス効果が問われる現在、同社の売上は、個人が7割、法人が3割の比率である。個人の中で株式を持っている人も多く、12月以降の株高もあり、日経平均が上がれば、顧客の来店回数も増えるという相関関係が出ている。法人は年度予算であるため、年度が変わらないと予算がつかないということで、前期の数値に変化は出ていない。訪日来客数に関しては、為替の影響と思われるが、以前は月60万人から70万人で推移していたが、4月には100万人程に増えている。同社の「芝とうふ屋うかい亭」の利用者のうち、約10%が外人客と外国人の比率が高いことから、今後どのような動きになるのか注目している状況。月毎の売上は、足元の4月、5月は前年を上回る状況で推移している。特に5月は30日時点で前年同月比8.0%増と好調である。

 今後の戦略として重要視しているのが、人口動態である。総務省の国勢調査による、1950年から2060年の幅での過去の数値と現在の出生率と死亡率が一定であるとして算出された今後の老齢人口、生産年齢人口、年少人口の予想数値を見ると、2010年の1億2800万人が人口のピークとなり、以後減少が始まっている。1950年にはほとんどいなかった老齢人口が、2060年には5人に2人になると見ている。生産年齢人口が現時点で8100万人であるが、50年後には4400万人と約半分になると予測されている。うかいにとっても、生産年齢人口が半分になるということは、従業員が半分になり、来客数も半分になることを意味する。経営上の危機であり、そのような人口動態の推移を予測してどのような経営を目指していくのかが今後の課題といえる。

 同社では、そのための対策として、シェアの拡大、市場の拡大、生産性の向上を実現することで、売上の拡大を目指す方針。

■リファイナンスリスクを全く無くしてしまったことで、財務上リスクを一掃

 前期のトピックスとしては、昨年4月に圏央道高尾山インターチェンジの本格稼働、5月「海外戦略室」の設置、11月菓子工房「アトリエうかい」オープン、3月デット・リストラクチャリング実施等が挙げられた。

 圏央道高尾山インターチェンジの本格稼働により、商圏が拡大したことで旗艦店の鳥山、竹亭の2店舗共に増収となっている。更に、来年の3月には、圏央道が海老名ジャンクションにつながることで、東名高速道路ともつながり、神奈川県、静岡県まで商圏は広がるため一層の売上拡大が予想されている。

 「海外戦略室」は、新橋にオフィスを構え、今年5月に中国籍4名、韓国籍1名を採用し、総勢7名の体制となっている。情報の受発信、文化交流の場と位置付け、海外でブランディング活動を行い、海外からの訪問客をより多く迎えるための役割を担っている。

 昨年は、菓子工房「アトリエうかい」を立ち上げ、作ったお菓子をうかいの各洋食レストランで販売したところ、即日完売の状態が続いている。好調であることから、店舗として「アトリエうかい」を7月にオープンするため、今期の売上高は7000万円を見込んでいる。4月の売上高は、前月比210%増と益々好調に推移している。

 デット・リストラクチャリング実施に関しては、有利子負債の返済は順調に進んでいて、1年以内の長期借入金も圧倒的に減っている。そのため、借入金の全部を巻き込んだ大規模なデット・リストラクチャリングを実施して、1年以内に返済を予定している長期借入金をフリーキャッシュフローの範囲内に抑え込んだ。この結果、リファイナンスリスクを全く無くしてしまったことで、財務上のリスクは一掃された。

■今期はこれからの50年のスタート地点、この1年で今後の成長戦略をしっかりと固める

 前期の決算概要に続き、今期の方針について、代表取締役社長大工原正伸氏が説明した。

 全社員が基本理念である「利は人の喜びの陰にあり」をしっかり理解し、すべての社員がお客様を大切にお迎えすることで、成功がある。この考えを基本としたうえでの今後の基本方針は、前期までを足元を固めた時期とすると、今期は今後成長するための計画策定の年として位置づけ、15年3月期より新たな成長ステージへ進む。

 大工原社長が就任して4年間は、従来型の出店による成長戦略を見直すと共に、全てを見直すことで、財務面の強化、既存店の強化に注力してきた。その結果、一定の成果を出したことで、今期は、しっかりとした計画を策定し、来期に向かって実施していく。来期は創業50周年を迎えるが、店舗理念である100年続く店づくりの折り返し地点であると同時に、これからの50年のスタート地点でもあるため、この1年で今後の成長戦略をしっかりと固める。

 「しっかりと既存店を強化し、そして新しい魅力を作る。そしてそれを多くの方々に発信していく。特に、既存店の強化では、人にやさしい店づくりのために、店舗の一部のバリアフリー化を進めています。また、ホタル狩りなどの催事やフェアの魅力を深めます。更に、人を大切にするうかいの心を伝承し、将来を担う人材育成を行います。これらのことを実施したうえで、新商品の開発を行います。例えば、前期よりスタートしているアトリエうかいの多面展開などが挙げられます。更に、誰に、ということで海外に日本の食文化の代表として、情報を発信していき、そして、海外企業との提携を行い、海外の企業とも多く接します。また、新規市場の開拓を行うために、新業態の出店を行います。このように、明確に、何を、誰に、ということで、事業を広げていきたいと思っています。」と語った。

■有利子負債の削減は進み、財務体質は大幅に改善、わずか4年で課題を解決

 新しい話題としては、昨年11月に菓子工房「アトリエうかい」をたまプラーザに開設し、好評を博しているが、今期は、7月3日に同じたまプラーザビル1階に店舗として「アトリエうかい」をオープンする計画。また、5月29日に発表しているように、2016年12月台湾高雄市に海外1号店を出店する。これは、御盟晶英酒店股?有限公司(ホテル業、本社:台湾高雄市)が建設予定のFIHリージェントグループ傘下の「高雄晶英酒店」でのレストラン運営に同社が協力する、という形態での出店で、この業務提携を前提に御盟晶英酒店股?有限公司とコンサルティング契約を締結する。同社が海外でブランディング戦略を行っている成果が早くも表れている。

 今期14年3月期業績予想は、売上高118億9百万円(前期比1.0%増)、営業利益4億1百万円(同5.6%増)、経常利益3億42百万円(同60.8%増)、純利益2億76百万円(同61.2%増)と増収大幅増益を見込んでいる。

 大工原氏が社長に就任したのは09年6月、当時の有利子負債は89億49百万円、売上高有利子負債比率67.8%。課題は有利子負債の削減が一向に進まなかったことである。そのため、大工原社長が行った最初の決断は、既に決定されていた日本橋店の出店を違約金を払ってでも取りやめ、従来の新規出店による成長戦略を見直したことである。以後、東日本の大震災というアクシデントもあったが、有利子負債の削減は進み、財務体質は大幅に改善された。わずか4年で課題を解決したことから、今後の事業展望は明るいものと予想される。

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