ネオジャパンは売られ過ぎ感、24年1月期減益予想だが、株主還元は連続増配と自己株式取得

ネオジャパン<3921>(東証プライム)は、自社開発グループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービスを主力として、製品ラインアップ拡充による市場シェア拡大戦略、アライアンス戦略、東南アジア市場開拓戦略を推進している。3月29日にはdesknet‘s NEO最新バージョンの提供を開始した。24年1月期はクラウドサービスが牽引して増収だが、広告宣伝費や人件費の増加で減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。なお株主還元では株主優待制度を廃止するが、配当は株主優待制度のコスト見合い1円50銭に1円50銭を加えて前期比合計3円増配予想(連続増配予想)としている。さらに自己株式取得(上限10万株・1億円)も発表している。株価は24年1月期減益予想や株主優待制度廃止を嫌気し、地合い悪化も影響して昨年来安値を更新したが、売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡し、増配や自己株式取得を評価して出直りを期待したい。

■自社開発グループウェアのクラウドサービスが主力

ビジネス・ITコミュニケーションツール開発企業である。自社開発グループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービス(月額課金収入)を主力として、大企業向け中心のプロダクト(パッケージソフト販売のライセンス収入およびサポートサービス収入)も展開している。

19年8月にはシステム開発のPro-Spireを子会社化した。22年10月には、現代ビジネスパーソンのコミュニケーション実態を把握・研究すべくNEOビズコミ研究所を新設した。また23年2月にはIR室を新設して齋藤晶議代表取締役社長が管掌すると発表した。これまで以上にIRへの取り組みを推進する方針だ。

海外展開は19年6月米国子会社DELCUIを設立、19年12月マレーシアに合弁会社NEOREKA ASIAを設立、21年2月タイに子会社Neo Thai Asiaを設立した。当面は投資が先行するが、ASEAN全域においてグループウェアdesknet‘s NEOブランドの確立を目指す。

23年1月期(調整前)の売上高構成比は、グループウェアを中心とするビジネスICTツールのソフトウェア事業が70%(クラウドサービスが45%、プロダクトが24%、技術開発が1%)、子会社Pro-Spireのシステム開発サービス事業が30%、海外事業が0%、利益構成比(調整前営業利益)はソフトウェア事業が99%、システム開発サービス事業が8%、海外事業が▲7%だった。ソフトウェア事業のストック型売上比率は77%(22年1月期は73%)だった。そして23年1月期第4四半期のARRは前年比10.3%増加の33億51百万円となった。なお収益面では下期の構成比が高い傾向がある。

22年4月にはバスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)の東京羽田ヴィッキーズとスポンサーシップ契約を締結した。22年11月にはクラウドサービス情報開示認定機関ASPISより、クラウドサービスにおける信頼・安全性の推進に多大なる貢献をしたサービス・事業者として最優秀・資格継続賞を受賞した。08年7月に7番目の事業会社として情報開示認定企業に認定されて以来、この資格を14年維持している。23年3月には経済産業省と日本健康会議が推進する健康経営優良法人認定制度「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に4年連続で認定された。

■グループウェアdesknet‘s NEOは使いやすさが強み

グループウェアdesknet‘s NEOは、ローカライゼーション(日本語、日本の商習慣やビジネス習慣など)に対応した27の基本機能を備え、多機能・使いやすさ・高品質・低価格を強みとしている。3月29日にはdesknet‘s NEO最新バージョン7.5の提供を開始した。利用ユーザーの声を受けて15機能・50項目以上の機能改善を行った。

グループウェアdesknet‘s NEOの累計ユーザー数(クラウド版契約ユーザー数とパッケージ版販売ユーザー数の合計)は、23年1月期末時点で前期末比21万ユーザー増加の484万ユーザーとなった。業種・業態・規模を問わず幅広く企業・官公庁・自治体に採用され、自治体・政府機関1100以上(都道府県庁18含む)に導入されている。中長期的には累計ユーザー数1000万ユーザーを目指すとしている。なお23年1月期末時点のdesknet‘s NEOクラウドのユーザー数は前期末比3.1万人増加の48.3万人となった。解約率は概ね0.2%~0.4%程度で推移している。

大規模導入事例として、21年7月にはカー用品専門店チェーンのイエローハット<9882>に、グループが運営する全国740店舗の従業員・スタッフをつなぐ情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO大規模パッケージ版(3000ライセンス)が採用された。22年7月には、神奈川県横浜市が整備する最大6万人が利用する市区局共通グループウェアとして、desknet‘s NEOが全面的に採用(東芝デジタルソリューションズが市区局共通グループウェア構築事業を受託)された。

■製品ラインアップ拡充

成長戦略として国内累計販売ユーザー数1000万ユーザー、グループウェア国内トップシェア、売上高100億円を目指し、グループウェアdesknet‘s NEOを核とするエンタープライズ向け製品ラインアップ拡充戦略、市場シェア拡大戦略、シナジーが見込めるアライアンスへの戦略投資、マレーシアの合弁会社を拠点とするクラウドサービスの東南アジア市場開拓戦略などを推進している。

製品ラインアップ拡充戦略としては、ノーコードアプリ作成ツールAppSuite、新しいコミュニケーションツールとしてのビジネスチャットChatLuckを提供し、グループウェアdesknet‘s NEOとの連携も強化している。

22年9月には、経済産業省の「IT補助金2022」においてIT導入支援事業者として採択され、グループウェアdesknet‘s NEO、ノーコードアプリ作成ツールAppSuite、ビジネスチャットChatLuckが補助金の対象ツールとして認定された。

23年1月には、国や地方自治体、民間企業などが一体となって、日本全国あらゆる人のスキルをアップデートする“リスキング”に取り組む新たな試みである「日本リスキングコンソーシアムに、リスキングパートナーとしてトレーニングプログラムの提供を開始すると発表した。ノーコードツールAppSuiteを使いこなすためのメニューからスタートし、順次追加していく予定としている。

23年1月には、アイティクラウドのIT製品比較・レビューサイト「ITreview」の「ITreview Grid Awaed 2023 Winter」において、主力3製品が8つの部門で受賞した。

23年2月には、法人向けIT製品・サービス比較サイトITトレンドが選出する「2022年下半期Good Productバッジ」において、グループウェアdesknet‘s NEOがグループウェア部門を受賞した。

23年3月には、スマートキャンプ社が表彰する「BOXIL SaaS AWARD Spring 2023」において、グループウェアdesknet‘s NEOおよびノーコードアプリ作成ツールAppSuiteが、それぞれ3部門で10の賞を受賞した。

■アライアンスも活用

21年3月には、横浜商工会議所が開設したデジタル化相談窓口に協力会社として参加した。デジタル化支援コンソーシアム協力事業者として中小企業のDX推進をサポートする。21年6月には、アイネット<9600>が提供する教育現場でのDX推進のための学校保護者間あんしん連絡サービスChatLuck SCを開発提供した。ビジネスチャットChatLuckをベースとして開発した。2社の共同事業として全国の国公立小中学校に販売する。

21年12月には、茨城県つくば市のワクチン配送におけるDX化実現のために、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成したアプリケーション「つくば市新型コロナワクチン配送システム」および「ワクチン数量管理表」を開発して提供した。また22年1月には、つくば市で導入されたワクチン配送システムのテンプレートを、同じ課題を持つ自治体に向けて無償提供開始すると発表している。

22年3月には、東京都多摩市が実施した「令和3年度多摩市民間提案制度」において、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成した「ワクチン接種記録等の効率化と工数削減に向けた管理向上」事業が採用候補に認定された。ワクチン関連の行政の業務効率化において採用された事例としては、茨城県つくば市「つくば市新型コロナワクチン配送システム」に続く2例目となる。

22年5月には、中小企業のDXを支援するAppSuiteアプリ集「ネコの手アプリ」シリーズを提供するシステムアプローチ(愛知県名古屋市)と、AppSuiteアプリの開発・販売活動で連携した。

22年11月には、横浜市が募集した民間企業のデジタル技術を活用して行政サービスのDX化を進めるプロジェクト「YOKOHAMA Hack!」の第1回実証実験事業者に選定され、横浜市と共同で「要配慮施設利用者の安全を守る避難確保計画の取組強化」の実証実験を開始した。AppSuiteとdesknet‘s NEOを活用する。

22年12月には神奈川県鎌倉市の市区局共通の情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO、ビジネスチャットChatLuck、業務アプリ作成ツールAppSuiteの3製品が実証実験を終えて採用決定した。

■23年1月期小幅減益着地、24年1月期減益予想だが配当は連続増配予想

23年1月期連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微、22年9月14日付で下方修正)は、売上高が22年1月期比1.5%増の60億07百万円、営業利益が0.5%減の12億41百万円、経常利益が1.9%減の13億35百万円、親会社株主帰属当期純利益が6.2%減の8億12百万円だった。配当(22年6月10日付で期末3円上方修正、22年12月13日付で期末創立30周年記念配当1円上方修正)は、22年1月期比6円増配の20円(期末一括=普通配当19円+記念配当1円)とした。配当性向は36.7%となる。

前期比ではクラウドサービスが牽引して増収だが、認知度向上に向けた広告宣伝費増加など先行投資の影響により小幅減益だった。ただし前回予想(売上高59億89百万円、営業利益10億94百万円、経常利益11億82百万円、親会社株主帰属当期純利益7億82百万円)に対しては、売上高、利益とも上回って着地した。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高は4百万円増加、売上原価は1百万円減少、営業利益、経常利益および税金等調整前四半期純利益はそれぞれ5百万円増加している。

ソフトウェア事業は売上高が7.3%増の42億12百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が5.5%増の12億29百万円だった。売上面はクラウドサービスの利用ユーザー数が順調に増加し、利益面は研究開発費が増加したが増収効果で吸収した。

クラウドサービスの売上高は12.1%増の27億02百万円だった。グループウェアdesknet‘s NEOクラウドが11.7%増の22億36百万円、ノーコード業務アプリ作成ツールAppSuiteクラウドが45.8%増の1億34百万円、ビジネスチャットChatLuckクラウドが6.8%増の66百万円、その他月額売上が1.0%増の1億97百万円、その他役務作業等が13.0%増の67百万円と順調に拡大した。

プロダクトの売上高は0.8%減の14億35百万円だった。サポートサービスが12.0%増の8億01百万円、その他役務作業等が17.5%増の2億28百万円と順調だったが、ライセンス売上合計が9.9%減の3億33百万円、カスタマイズが56.7%減の73百万円と減少した。技術開発の売上高は従来からの継続案件が堅調に推移して9.5%増の73百万円だった。

システム開発サービス事業(子会社Pro-SPIRE)は、主要顧客の体制縮小の影響で売上高が10.3%減の18億15百万円となり、販管費の増加も影響してセグメント利益が25.8%減の94百万円だった。海外事業はコロナ禍による営業活動制約などで売上高が61.0%減の9百万円、セグメント利益が82百万円の赤字(22年1月期は45百万円の赤字)だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が14億96百万円で営業利益が3億09百万円、第2四半期は売上高が14億40百万円で営業利益が3億01百万円、第3四半期は売上高が15億26百万円で営業利益が3億50百万円、第4四半期は売上高が15億45百万円で営業利益が2億81百万円だった。

24年1月期の連結業績予想は、売上高が23年1月期比5.9%増の63億59百万円、営業利益が24.4%減の9億37百万円、経常利益が28.8%減の9億51百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が22.6%減の6億29百万円としている。

クラウドサービスが牽引し、子会社のシステム開発事業も回復傾向となって増収予想だが、利益面は認知度向上に向けてTVCMなどの広告宣伝投資を継続するため広告宣伝費が増加し、従来以上の賃上げに伴う人件費増加なども影響して減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れの可能性がありそうだ。

配当予想は23年1月期比3円増配の23円(期末一括)としている。23年1月末対象をもって株主優待制度を廃止するが、配当については株主優待制度のコスト見合い1円50銭に1円50銭を加えて合計3円増配としている。23年1月期の20円には創立30周年記念配当1円が含まれているため、普通配当ベースでは4円増配となる。8期連続増配予想で予想配当性向は54.5%となる。

また、広告宣伝費については26年1月期まで24年1月期と同水準の投資を継続するが、業績面は24年1月期をボトムとして、認知度向上効果などで26年1月期の売上高78億75百万円、営業利益16億95百万円を中期業績目標として計画している。配当は年間31円(配当性向約40%)を目標としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

23年3月13日付で自己株式取得を発表した。上限10万株・1億円で取得期間は23年3月14日~23年5月31日としている。

株価は24年1月期減益予想や株主優待制度廃止を嫌気し、地合い悪化も影響して昨年来安値を更新したが、売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡し、増配や自己株式取得を評価して出直りを期待したい。3月29日の終値は885円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS42円20銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS383円36銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約132億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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