【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エム・ディ・エム15年3月期純利益減額を嫌気したが、営業利益増額を見直し

銘柄分析

 医療機器商社の日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は、4月17日に15年3月期業績見通しの修正を発表した。株価は純利益減額を嫌気して急落したが売られ過ぎ感を強めている。営業利益増額を見直して切り返し展開だろう。16年3月期は増収増益基調が期待される。なお4月30日に15年3月期決算発表を予定している。

 人工関節製品、脊椎固定器具、骨接合材料など整形外科分野を主力とする医療機器商社である。ジョンソン・エンド・ジョンソンとの販売契約が13年3月期に終了したが、米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販、自社製品比率上昇による売上原価率改善効果で収益改善基調だ。米ODEV社製の人工膝関節製品は中国でも薬事承認を取得している。高齢化社会到来を背景として中期的に収益拡大が期待される。

 自社製新製品の動向としては、米国で14年1月に米ODEV社製の人工膝関節製品「BKS-Momentum」と「E-Vitalize」を販売開始した。日本では14年5月に人工膝関節製品「BKSオフセットティビアルトレイ」を販売開始し、14年9月に米ODEV社製の人工股関節大腿骨ステム「OVATION Tributeヒップシステム」と、ステムヘッド「ODEV BIOLOX deltaセラミックヘッド」を販売開始した。また米ODEV社は人口膝関節製品「KASM」の米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得して販売開始している。

 15年2月には米ODEV社製の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の薬事承認取得を発表した。15年5月から順次販売開始する予定で16年3月期業績に寄与する。より深い膝関節の屈曲を可能としたHigh-Flexタイプの人工膝関節で、現在販売中の「バランスド・ニー・システム」シリーズにHigh-Flexタイプの製品が加わることで人工膝関節製品の販売拡大が期待できるとしている。

 4月17日に前期(15年3月期)連結業績見通しの修正を発表した。前回予想(10月30日に増額修正)に対して、売上高は8億55百万円増額して前々期比25.3%増の118億55百万円、営業利益は95百万円増額して同95.9%%増の12億95百万円、そして経常利益は86百万円増額して同2.3倍の10億86百万円とした。日本および米国における米ODEV社製人工関節製品の販売が想定以上に伸長したようだ。

 純利益は9億41百万円減額して3億91百万円の赤字(前々期は2億86百万円の利益)とした。15年度税制改正(法人実効税率引き下げおよび欠損金控除限度額縮小)および直近の円安環境等を考慮した結果、繰延税金資産の取り崩し等によって法人税等が9億76百万円増加する見通しとなった。配当予想は前回予想(4月30日公表)を据え置いて前期と同額の年間5円(期末一括)としている。

 なお15年3月期の第3四半期累計を四半期別に見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億32百万円、第2四半期(7月~9月)26億87百万円、第3四半期(10月~12月)31億59百万円、営業利益は第1四半期2億39百万円、第2四半期2億53百万円、第3四半期5億38百万円と拡大基調である。

 今期(16年3月期)については繰延税金資産取り崩し等の影響が一巡して増収増益基調だろう。米ODEV社製の人工股間接製品「オベーションヒップシステム」や脊椎固定器具「Pagodaスパイナルシステム」、当社と米ODEV社が共同開発した骨接合材料製品「MODE」シリーズなど主力製品の販売が引き続き好調に推移し、15年5月販売開始の米ODEV社製人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の寄与も期待される。自社製品比率上昇による売上原価率改善効果も寄与するだろう。

 株価の動きを見ると戻り高値圏650円近辺から反落し、17日発表の15年3月期純利益減額修正も嫌気する形で水準を切り下げ、20日には522円まで急落した。ただし21日は終値で533円と反発している。

 4月21日の終値533円を指標面で見ると、前期推定配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は0.9%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS417円65銭で算出)は1.3倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。15年3月期営業利益は増額修正であり、16年3月期も増収増益基調が期待される。目先的な売りが一巡して切り返し展開だろう。

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