【アナリスト水田雅展の銘柄分析】新日本建物は9月安値から反発して調整一巡、16年3月期収益改善基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

新日本建物<8893>(JQS)は首都圏地盤の不動産デベロッパーである。事業再生計画を前倒しで達成して新規事業用地の積極的な仕入も進めている。株価は9月の年初来安値から反発して調整が一巡したようだ。16年3月期収益改善基調を見直して切り返し展開だろう。なお10月1日付で1株を5株に併合した。

■首都圏地盤の不動産デベロッパー、事業再生計画を前倒しで終結

首都圏地盤の不動産デベロッパーで、流動化事業(他デベロッパー向けマンション用地販売)、マンション販売事業(自社開発物件の分譲、新築マンションの買取再販)、戸建販売事業(戸建住宅・宅地分譲)、その他事業(不動産賃貸や建築工事請負)を展開している。

10年11月に提出した事業再生計画に基づいて事業の選択と集中を行い、マンション販売事業の買取再販、流動化事業の専有卸、戸建住宅販売事業を主力として経営再建に取り組んだ。

そして15年3月期には事業再生計画決定後4期連続の最終黒字を達成し、15年5月15日に事業再生計画の終結を発表した。18年3月末返済予定の事業再生ADR債務を、計画より2年度繰り上げて15年5月14日付で完済した。

■四半期業績は物件引き渡しで変動

15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)11億38百万円、第2四半期(7月~9月)20億33百万円、第3四半期(10月~12月)14億51百万円、第4四半期(1月~3月)46億08百万円、営業利益は第1四半期1億07百万円の赤字、第2四半期21百万円の赤字、第3四半期87百万円の赤字、第4四半期8億96百万円の黒字だった。四半期業績は物件引き渡しによって変動しやすい収益構造だ。

なお15年3月期に実施した仕入は合計16件(流動化事業3件、マンション販売事業4件、戸建販売事業9件)・売上想定額71億円だった。堅調な需要が見込まれる首都圏において事業規模・事業効率等を勘案し、優良な新規事業用地を選別取得している。

また15年3月期の自己資本比率は44.6%で14年3月期比17.1ポイント改善した。有利子負債は14年3月期末比23億41百万円圧縮した。

■16年3月期増収増益予想

今期(16年3月期)の非連結業績予想(5月15日公表)は、売上高が前期比14.8%増の106億円、営業利益が同4.3%増の7億10百万円、経常利益が同3.5%増の5億65百万円、純利益が同6.3%増の5億60百万円としている。配当予想は無配継続としている。

新規供給予定のマンション2物件の売上を計画し、相続税対策向けの需要取り込みも寄与して増収増益見込みだ。15年5月に販売開始した新築分譲マンション「ルネサンス大宮土呂」(さいたま市、総戸数28戸、3LDK+W)は8月に完売した。

なお16年3月期の新規事業用地取得については、8月31日に「西川口プロジェクト(仮称)」(埼玉県川口市、総戸数40戸、ワンルーム)」、9月7日に「蒲田プロジェクト(仮称)」(東京都大田区、総戸数26戸、ワンルーム)、9月28日に「錦糸町プロジェクト(仮称)」(東京都墨田区、総戸数30戸、1R~1LDK)、そして10月5日に「上北沢プロジェクト(仮称)」(東京都杉並区、総戸数74戸、1R~1LDK)を発表している。

第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比2.2倍の25億47百万円、営業利益が1億78百万円(前年同期は1億07百万円の赤字)、経常利益が1億55百万円(同1億59百万円の赤字)、純利益が1億54百万円(同1億60百万円の赤字)だった。

流動化事業は他デベロッパー向けマンション用地販売2件(前年同期0件)で売上高8億31百万円、営業利益(全社費用等調整前)1億59百万円、マンション販売事業は販売戸数31戸(同15戸)で売上高が2.1倍の11億57百万円、営業利益が1億44百万円(同23百万円の赤字)、戸建販売事業は販売棟数13棟(同12棟)で売上高が3.7%減の5億52百万円、営業利益が15百万円の赤字(同16百万円の利益)、その他は売上高5百万円、営業利益3百万円だった。

通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が24.0%、営業利益が25.1%、経常利益が27.4%、純利益が27.5%である。四半期業績は物件引き渡しによって変動しやすい収益構造だが、収益改善基調であり、通期ベースでも好業績が期待される。

■株価は9月安値から反発して調整一巡、10月1日付で株式併合

なお発行済株式総数の適正化を図るため15年10月1日付で5株を1株に併合した。理論的には株式併合比率に見合う株価の上昇が見込まれるため、株価変動率が改善される可能性があり、株式市場において一層適正に評価されることが期待される。また投資単位の水準変更によって株主総数が若干減少し、今後の株主数の増加も抑制される可能性があるため、株式関連事務コストを年間数百万円程度削減できる効果も見込まれる。

株価の動き(15年10月1日付で1株を5株に併合)を見ると、悪地合いも影響して9月30日に年初来安値となる157円まで調整する場面があったが、その後は反発して下値を切り上げている。調整が一巡したようだ。

10月16日の終値178円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想に株式併合を考慮したEPS28円10銭で算出)は6~7倍近辺、そして前期実績PBR(前期実績に株式併合を考慮したBPS106円40銭で算出)は1.7倍近辺である。なお時価総額は約35億円である。

週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。16年3月期収益改善基調を見直して切り返し展開だろう。

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