マーチャント・バンカーズ、26年10月期大幅増収増益予想、成長投資と不動産売却が寄与

 マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連事業を展開し、今後の投資としては27年10月期末を目標に、全体の投資金額の3分の1程度ずつを融資、エクイティ、不動産に投資するポートフォリオ構築を目指すとしている。なお12月12日付で自己株式取得を発表した。また12月19日付で「過去の適時開示の開示遅延についての再発防止策の実施・運用状況に関するお知らせ」をリリースした。25年10月期は不動産の売却が計画を下回ったことに加え、営業外費用での株主優待費用や特別損失での投資有価証券評価損の計上により最終赤字だった。ただし26年10月期は大幅増収、大幅営業増益(経常・最終利益は黒字転換)予想としている。所有する不動産物件の売却に加え、収益性の高い投資案件やM&Aへの取り組みを強化する。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は年初来安値圏で軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■マーチャント・バンキング事業を展開

 マーチャント・バンキング事業として国内外における不動産・企業投資関連事業を展開している。グループは同社および連結子会社5社の合計6社(24年10月期末時点)で構成されている。

 同社は国内不動産投資、国内企業投資、海外企業投資を展開し、連結子会社のMBKプロパティ(東京都)は不動産管理運営業務、エストニアン・ジャパン・トレーディング・カンパニー・ホールディングス(東京都)はエストニア共和国での事業展開に関する統括業務、Estonian Japan Trading Company AS(エストニア)はエストニア共和国での事業展開に関する統括業務、エストニアン・ジャパン・トレーディング・カンパニー日本(東京都)は国内および海外への不動産投資、O’Pen Eesti OU(エストニア)は海外展開に関するコンサルティング業務を展開している。また25年10月に、特定卸供給事業者(アグリケーター)のライセンスを持つエネルギーポイント社の株式20%を取得し、持分法適用関連会社化した。

 不動産投資関連は、主にネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションを中心に、安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、保有物件売却による売上利益の積み上げも推進している。

 企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。

 23年3月にはセキュリティチップ開発・製造のEnova Technology社(台湾)に資本参加した。23年12月にはプラスチック循環再生事業を手掛ける循環資源ホールディングスと資本業務提携(5.77%出資)した。24年10月にはアジア市場中心にゲームソフト販売等を展開するGCL Global Limited(GCL社)が発行した転換社債200千米ドルを取得した。この転換社債の権利行使を行う際はGCL社のグループ会社であるGCL Global Holdings(GCLGH社)が発行する株式を取得することになる。

 24年11月には、ColorsJapan社と、貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)による資金を活用し、地方創生型のM&Aに取り組むと発表した。第1号案件として伊香保温泉「明野屋」など、ColorsJapan社のホテル・旅館プロジェクトのクラウドファンディングに着手した。

 25年9月にはビットコインによる不動産売買決済サービスを開始した。またビットコインによる不動産売買決済サービスについて、暗号資産交換所「Coin Estate」を運営するFINX JCrypto社と協業した。さらに、長期化する円安やインフレに対する資産保全策も兼ねて3億円分のビットコインを購入した。

■今後の投資方針

 25年5月に今後の投資方針を公表した。27年10月期末を目標に、全体の投資金額の3分の1程度ずつを融資、エクイティ、不動産に投資するポートフォリオの構築を目指すとしている。

 具体的施策として、融資では上場株式担保融資(25年1月に株式担保融資事業の取組開始をリリース)を中心に、売掛金や不動産などを担保とした融資事業に取り組む。25年4月には株式担保融資事業で財全GROUP社と業務提携した。エクイティのM&Aでは、24年6月に業務提携したColorsJapan社をはじめとする協力先からの紹介・提案案件活用する。企業・案件への投資では、業務提携等も活用しながら再生エネルギーや系統系電池などの分野への投資を継続する。また不動産では、これまで注力してきた投資用マンション等の物件に加え、仲介事業にも注力して収益性を強化する。

 25年7月にはHTソーラー社並びにREIT社と、Non-Fit太陽光発電所(電力会社による固定買い取り制度を適用しない太陽光発電所)開発事業への投資に共同で取り組むことを目的に業務提携基本合意書を締結した。25年8月には第1弾のプロジェクトとして、耕作放棄地や遊休地20件をNon-Fit太陽光発電所に転用する事業に着手した。またREIT社と系統用蓄電池開発事業に関して業務提携した。

 25年9月には台湾EUKA Power社と、九州を中心とした日本国内における系統用蓄電池開発プロジェクトを協業して取り組むことについて、正式契約締結に向けての協議を行う旨の基本合意書を締結した。最初のプロジェクトは日本最大級の蓄電容量の大規模蓄電発電所であり、25年10月に第1号案件の建設地が熊本県内に決定した。25年12月着工予定で、26年6月~8月に系統連系・発電開始を予定している。同社は特別目的会社のアセットマネージャーとして毎年、投資金額の一定割合の管理報酬を安定的に受領する。さらに本プロジェクトに対する海外投資家のニーズに応じ、暗号資産をベースにした管理運営を採用すると発表した。なお25年11月には本プロジェクトにおいて出資者(2社)の決定を発表した。

 また25年10月には、特定卸供給事業者(アグリゲーター)のライセンスを持つエネルギーポイント社の普通株式20%を取得して持分法適用関連会社化するとともに、資本業務提携して系統用蓄電池事業への本格的な投資を開始した。

 12月15日には、廃棄衣類のリサイクル事業などを通じて循環型社会の実現を目指すLife Innovation Holdingsとの資本業務提携(Life Innovationの株式15%程度を取得予定)に関する基本合意書締結を発表した。クレサヴァ社の協力関係のもと、衣料や木材等の資源からコークスを抽出する再生コークス事業と、京都府南丹市と連携した地域再生・リゾート事業に取り組む。

■26年10月期大幅営業増益予想

 25年10月期の連結業績は売上高が前期比23.9%減の33億83百万円、営業利益が12.6%減の2億85百万円、経常利益が31百万円の損失(前期は99百万円)、そして親会社株主帰属当期純利益が85百万円の損失(同1億82百万円)だった。配当は前期と同額の2円(期末一括)とした。

 計画(24年12月13日付の期初公表値、売上高46億円、営業利益6億円、経常利益2億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億円)に対して、不動産の売却が計画を下回ったため減収・営業減益となった。不動産売却は、計画の8物件に対して実績は6物件だった。また営業外費用での株主優待費用45百万円と第三者割当増資費用38百万円の計上、特別損失での投資有価証券(未上場株式2銘柄)評価損50百万円の計上により経常・最終赤字だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億75百万円で営業利益が40百万円、第2四半期は売上高が10億52百万円で営業利益が64百万円、第3四半期は売上高が6億75百万円で営業利益が1億26百万円、第4四半期は売上高が10億81百万円で営業利益が55百万円だった。

 26年10月期の連結業績予想については、売上高が前期比33.0%増の45億円、営業利益が103.3%増の5億80百万円、経常利益が3億円(前期は31百万円の損失)、親会社株主帰属当期純利益が2億40百万円(同85百万円の損失)としている。配当予想は前期と同額の2円(期末一括)としている。

 昨今の不動産価格と金利の上昇傾向を踏まえ、保有する不動産物件の売却を積極的に行う。また売上利益とキャッシュ・フローの確保を行いながら、貸金や再生可能エネルギー案件など不動産投資より収益性の高い投資案件やM&Aへの取り組みを強化する。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 25年12月12日付で自己株式取得を発表した。上限250万株または5億円、取得期間26年1月30日~26年12月11日としている。

 株価は年初来安値圏で軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。12月19日の終値は213円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円12銭で算出)は約26倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS149円67銭で算出)は約1.4倍、そして時価総額は約68億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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