【ドクター箱崎幸也の健康増進実践法】膵がんの危険因子、特に糖尿病との関連

ドクター箱崎幸也 健康増進実践法

わが国の膵癌の年間死亡数は年々増加し、最近では3万人に達しようとしています。膵癌と診断され5年生存する率は5%以下と極めて低く、癌対策の中でも「膵癌の早期発見」は緊要な課題です。

現在、膵癌の日常生活の中での危険因子を明らかにし、少しでも膵癌に罹る人を少なくする研究がなされています。遺伝性膵癌症候群や遣伝性膵炎などの家族歴,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と診断された方は、高率で膵癌になりやすいと言われています。IPMN以外の人は非常に少なく、臨床現場で遺伝性の方に遭遇することは極めて稀です。私の経験でも、遺伝性は各々1家族だけです。

IPMNは膵嚢胞が特徴的で、この嚢胞を有する人の癌リスクが高いことが注目されています。しかし、IPMNではない単純性膵嚢胞も含めると、膵嚢胞は腹部超音波検査などの精査で約15%の人で指摘され、膵癌進行は10万人に17人と推定されています。膵嚢胞の人が膵癌になるリスクは極めて低いのですが、膵嚢胞が指摘された方は年1~2回超音波検査などでの経過観察が勧められています。5年間大きさに変化がなければ、癌リスクは殆どないと考えられています。膵嚢胞があるかどうか、一度超音波検査などで評価されて下さい。

生活習慣と膵癌との関連では、糖尿病,肥満,喫煙の方が膵癌になりやすいと考えられています。この対象者が多く、日常臨床で有用な指標になり得ていません。糖尿病患者さんが急に血糖コントロールが悪化した時、膵癌が原因のこともあります。糖尿病と診断された方は血糖チェックとともに最低でも年1回腹部超音波検査などを定期的に受けて下さい。

現時点では、私自身が膵癌であれば一度は膵癌に戦いを挑む(手術や抗がん剤)と考えていますが、進行膵癌では早々と戦いを放棄する方が良いとも思っています。(元気会横浜病院々長・元自衛隊中央病院消化器内科部長)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■国際特許分類や元素リストを用いて多様な解決策を自動生成  AGC<5201>(東証プライム)は1…
  2. ■Newton・GR00T・Cosmosを軸にロボット研究を高速化  NVIDIA(NASDAQ:…
  3. ■700億パラメータ規模の自社LLMを金融仕様に強化、オンプレ環境で利用可能  リコー<7752>…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■鶏卵高騰・クマ被害・米政策転換、市場が注視する「3素材」  2025年11月、師走相場入りを前に…
  2. ■AI株からバリュー株へ資金移動、巨大テックの勢い一服  「AIの次はバリュー株」と合唱が起こって…
  3. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  4. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…
  5. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  6. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る