マーチャント・バンカーズは積極的な事業展開で収益拡大基調

マーチャント・バンカーズ<3121>(東2)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連を展開し、成長ドライバーとしてNFT(非代替可能性トークン)などブロックチェーン・テック関連ビジネスの拡大に注力している。22年3月期(6月28日に上方修正)はマーチャント・バンキング事業が牽引して大幅増収増益予想としている。さらに再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸した11月の年初来高値圏から急反落して乱高下の形となったが、目先的な売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開

マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。21年3月期の営業利益構成比(調整前)はマーチャント・バンキング事業が127%、オペレーション事業が▲27%だった。オペレーション事業は新型コロナウイルスの影響を受けた。

■不動産・企業投資関連

マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。

不動産投資関連は、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有(21年3月期末時点で全国に25棟の不動産賃貸ビルを保有)し、年間約7億円の賃料収入を安定的に確保している。さらに年間賃料収入10億円を目標に掲げて、大都市部の居住用不動産取得を強化している。また、賃貸用不動産取得・入替によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保にも取り組む方針だ。

20年8月には柏舟投資(香港の柏舟国際諮詢の子会社)と日本での不動産開発や不動産投資に関して業務提携、20年10月には香港の中港日有効發展有限公司と日本における中国・香港・ベトナムの富裕層向け投資用分譲マンションの開発・販売で業務提携、20年12月には特別目的会社MBK医療投資を設立、21年4月には香港証券取引所上場会社のL&A社と業務提携した。

21年10月には、不動産ファンド組成・運営に取り組むととともに、案件ごとに共同事業者とSPC(特別目的会社)を組成する取り組みを開始すると発表した。第三者の資金を活用して規模の大きい案件も積極的に手掛ける方針としている。また金融機関と連携して不動産バイアウト&リース事業を開始すると発表した。

企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。

■成長ドライバーとしてブロックチェーン・テック関連を強化

成長ドライバーとして子会社MBKブロックチェーンのブロックチェーン・テック関連の拡大に注力している。STO(Security Token Offering)によって決済・送金等の金融サービス、不動産流動化、資金調達などを展開する。不動産などの資産に裏付けされたMBKトークンによって安心・安全・透明な取引が可能になる。

具体的には、エストニア暗号資産交換所のANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)プラットフォーム関連を強化する。

19年5月エストニアで仮想通貨交換所CRYPTOFEXを運営会社するCR社を買収、19年7月仮想通貨交換所のブランド名をANGOO FinTechに変更、20年2月ANGOO FinTechサービス開始、20年5月MBKブロックチェーンがANGOO FinTech運営業務を受託した。20年10月にはバルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH社)にANGOO FinTech運営を移管してエストニアでの事業統括会社と位置付けた。

21年3月にはMBKブロックチェーンがブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」をリリースした。また香港の子会社MBK ASIA LIMITEDにおいてトークン「MBK COIN」を発行するとともに、不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」の海外投資家専用不動産取引プラットフォームを構築した。21年4月にはMBKブロックチェーンが、お宝グッズのNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」運営を開始した。

21年5月には暗号資産ハッキングに対するセキュリティ技術を手掛けるStudioMakyuと業務提携、

21年8月にはエストニアの子会社EJTC社と連携し、エストニアの企業に対して、日本企業を対象とした投資やM&Aに関するアドバイザリーを開始した。第1号案件として、遠隔医療システム開発のVIVEO Health社の日本市場進出ための日本企業との資本提携に取り組む。また第2号案件として、医療関連アプリ開発のCognuse社の日本企業への投資に取り組む。

21年9月には不動産バイアウト&リースの開始を発表した。幅広い物件を対象に金融機関と協力し、取得する物件は安全で比較的小さいロットの投資案件として不動産テックを通じて紹介していく。また不動産NFTに本格的に取り組むため、NFTプラットフォーム開発の世界と業務提携した。第1号案件として山中湖山荘をNFT化する。

21年11月には、エストニアの子会社EJTC社がNasdaq Baltic上場会社(21年3月上場)としての信用力を活かして日本の金融機関の協力体制を確保したため、不動産事業として日本国内のマンション取得を進めると発表した。第1号案件として21年10月に兵庫県神戸市内のマンションを購入した。さらに12月13日にはEJTC社がエストニアの不動産ファンドと提携し、エストニアでの不動産事業を本格的に展開すると発表した。

また21年11月にはMBKブロックチェーンが「NFTバンカーズ」をリニューアルオープンした。世界的に人気のあるジャパニーズキャラクターを取り揃えるなどコンテンツを強化して、世界マーケットに向けた展開を本格化させる。コンテンツ強化の一環として、京都の伝統工芸品などの制作販売を行う(株)くろちくと業務提携した。なお子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」内のNFTコーナー(21年7月オープン)も「NFT LaFan」としてリニューアルオープンした。

12月6日には「NFTバンカーズ」および「NFT LaFan」において、個人が保有する「お宝ビンテージカー」のNFT化に取り組むと発表した。

■オペレーション事業は活性化を推進

オペレーション事業は岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。ホテル運営は撤退した。

連結子会社のケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化している。持分法適用関連会社のアビスジャパンはLED照明・節水装置の製造・販売・設置工事を主力として、空き家対策事業、電力小売事業、非接触式AI検温システムの販売も展開している。

20年7月には人工知能分野のiFLYTEKの日本法人AISと日本市場でのマーケティングで業務提携、20年11月にはアスミ建設と業務提携、21年3月には反社会的勢力データベース「minuku」のセナードと業務提携して企業のリスクマネジメントやコンプライアンスをサポートするシステムの企画・販売を開始、21年5月には邦徳建設(千葉県松戸市)と業務提携した。

■新中期経営計画で24年3月期営業利益10億円目標

新中期経営計画「Develop the New Market」では、最終年度24年3月期の目標値(21年8月に売上高を上方修正)として、売上高30億円(マーチャント・バンキング事業の不動産関連15億円、海外投資・エストニア関連6億50百万円、ネット販売関連1億50百万円、オペレーション事業7億円)、営業利益10億円、経常利益9億円、当期純利益5億80百万円、EPS20円80銭、1株当たり配当金7円、配当性向33.7%を掲げている。

不動産関連およびオペレーション事業で得られる安定収益をベースとして、企業投資関連やブロックチェーン・テック関連(不動産テックプラットフォーム、メディテックプラットフォーム、NFTプラットフォーム)の拡大に注力する方針だ。

■22年3月期大幅増益予想、さらに再上振れの可能性

22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響なし、6月28日に上方修正)は、売上高が21年3月期比62.0%増の26億50百万円、営業利益が2.0倍の4億50百万円、経常利益が2.6倍の3億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億30百万円(21年3月期は44百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の2円(期末一括)である。

第2四半期累計は売上高が前年同期比3.0倍の19億84百万円、営業利益が3億29百万円の黒字(前年同期は35百万円の赤字)、経常利益が2億87百万円の黒字(同81百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が2億12百万円の黒字(同2億17百万円の赤字)だった。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引して大幅増収となり、各利益は大幅黒字を計上した。

マーチャント・バンキング事業は売上高が4.4倍の16億61百万円で営業利益(調整前)が3.8倍増の4億76百万円だった。賃貸不動産収益の安定的推移に加えて、売却による投資収益(営業投資有価証券として保有するCN Innovations Holdings Limited、北海道函館市の福祉施設、大阪市天王寺区の収益用マンション)を計上して大幅増収増益だった。

オペレーション事業は売上高が16.8%増の3億38百万円で、営業利益が30百万円の赤字(前年同期は73百万円の赤字)だった。コロナ禍の影響が徐々に和らいで収益回復傾向である。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が12億28百万円で営業利益が3億01百万円、第2四半期は売上高が7億56百万円で営業利益が28百万円だった。

通期はマーチャント・バンキング事業の成長が牽引して大幅増収増益予想としている。なおANGOO FinTech関連の米ドル連動型ステーブルコインの売上計上は業績予想に織り込まず、現金化の都度、売上計上する予定としている。

マーチャント・バンキング事業では、回収した資金によって収益不動産の取得や連結貢献できる企業M&Aを積極推進する。ブロックチェーン・テック関連では、NFT売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」をリニューアルオープンし、世界マーケットに向けた展開を本格化させる。オペレーション事業はコロナ禍の影響が和らいで収益改善が見込まれる。

第2四半期累計の進捗率は売上高が74.9%、営業利益が73.1%、経常利益が82.0%、親会社株主帰属当期純利益が92.2%と高水準であり、通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は戻り試す

なお17年9月発行の第15回新株予約権については21年9月14日に行使期間の再延長と資金使途に係る支出時期の変更を発表している。また21年11月30日付で自己株式12万7666株を消却した。

22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でスタンダード市場適合を確認し、21年10月19日開催の取締役会でスタンダード市場選択を決議した。所定の申請スケジュールに従って手続を進める。

株価は急伸した11月の年初来高値圏から急反落して乱高下の形となったが、目先的な売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。12月17日の終値は404円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円24銭で算出)は約49倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS123円80銭で算出)は約3.3倍、そして時価総額は約112億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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