【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アドアーズは調整一巡して急反発、介護事業休止で減損計上だが営業損益改善

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アドアーズ<4712>(JQS)はアミューズメント事業や不動産事業を展開している。株価は安値圏で軟調だったが28日に急伸した。前日比13円(15.48%)高の97円まで急伸する場面があった。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。16年3月期は減損損失計上で最終赤字だが、介護事業休止による営業損益改善も評価して反発展開だろう。

■Jトラストグループでアミューズメント事業が主力

 13年2月に、親会社Jトラスト<8508>グループで戸建て住宅分譲や商業建築など展開するキーノート、アミューズメント施設向け景品製作・販売など展開するブレイクを子会社化し、Jトラストグループ内で建築・不動産事業とアミューズメント事業の中核を担う位置付けとなった。

 アミューズメント事業では利益率の高いメダルゲームジャンルを注力分野として収益改善を目指している。新業態開発やゲーム景品製造も強化し、当社独自のアミューズメント機器の開発も視野に入れている。不動産事業では一戸建分譲事業のエリア拡大や不動産アセット部門の強化を推進している。

 14年9月には韓国JBアミューズメント(JBA)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す方針だ。

 15年4月には、フォーサイドエンタテイメントが運営するスマートフォン向けソーシャルコミュニケーションアプリ「Eyeland」による「地域コミュニケーション起点の店舗送客O2Oマーケティング」サービスの提供を開始すると発表した。当社が運営する店舗情報を「Eyeland」内の地図上に表示させ、当社のリアル店舗への送客を目指すとしている。

■介護事業は休止

 14年11月に通所介護事業の日本介護福祉グループを連結子会社化して介護事業に参入したが、8月11日に同社株式の譲渡と介護事業の休止を発表した。

 同社は競争激化などで通所介護事業の低迷が続き、デューディリジェンスで想定していた金額を超えて大幅な債務超過となった。このため同社に対して追加出資を行って債務超過を解消したが、業績改善の兆しが見込めないため、同社の創業者である藤田英明氏に全株式を譲渡して介護事業を休止することとした。

■16年3月期は介護事業休止に伴う減損損失計上だが営業損益改善

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)56億85百万円、第2四半期(7月~9月)60億97百万円、第3四半期(10月~12月)61億04百万円、第4四半期(1月~3月)55億13百万円、営業利益は第1四半期3億60百万円、第2四半期3億52百万円、第3四半期1億10百万円、第4四半期1億58百万円の赤字だった。

 また15年3月期の配当性向は60.4%だった。ROEは14年3月期比4.8ポイント低下して4.1%、自己資本比率は同5.4ポイント低下して47.8%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績については、日本介護福祉グループの株式譲渡と特別損失計上に伴って8月11日に売上高と純利益を減額、営業利益と経常利益を増額修正し、売上高が前期比6.0%減の220億円、営業利益が同20.4%増の8億円、経常利益が同26.8%増の7億円、純利益が1億10百万円の赤字(前期は4億61百万円の黒字)としている。配当予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて、前期と同額の年間2円(期末一括)としている。

 介護事業休止に伴って売上高を減額したが、居宅支援事業所などの開設に係る先行費用が減少するため営業利益と経常利益を増額した。純利益については7月16日に発表した固定資産売却益2億円を計上するが、介護事業休止に伴う減損損失10億32百万円を計上するため減額した。

 なお第1四半期(4月~6月)は、売上高が前年同期比3.7%減の54億74百万円、営業利益が同96.9%減の11百万円、経常利益が24百万円の赤字(前年同期は3億31百万円の黒字)、そして純利益が9億35百万円の赤字(同2億50百万円の黒字)だった。特別損失に介護事業休止に伴う減損損失10億32百万円を計上した。

 アミューズメント施設の月次既存店売上高(前年比、速報値)の動向を見ると15年4月97.6%、5月99.5%、6月94.9%、7月99.1%で、8月は95.1%だった。8月はクレーンゲームジャンル以外がやや軟調だったようだ。

■中期経営計画で18年3月期ROE8%目標

 15年5月に発表した中期経営計画では、目標数値として最終年度の18年3月期売上高330億円(アミューズメント事業148億円、不動産事業・商業建築事業80億円、介護事業102億円)、営業利益17億円、経常利益14億円、純利益9億50百万円、ROE8%を掲げた。さらに20年3月期には売上高410億円、営業利益29億円、経常利益23億円、純利益14億円を目指すとしている。

 基本戦略として、アミューズメント事業ではアニメコンテンツなどの活用・開発による総合アミューズメント事業の確立、Jトラストの活動基盤を活かしたアミューズメント施設の海外展開、不動産事業・商業建築事業ではJトラストの事業基盤を活かした日本基準住宅などの東南アジア展開を推進する。なお日本介護福祉グループの株式譲渡による影響については精査中としているが、グループ連携強化も奏功して中期的に収益改善基調が期待される。

■株価は急反発して強基調に転換の可能性

 株価の動きを見ると、介護事業休止に伴う減損損失を嫌気し、さらに悪地合いも影響して8月25日の年初来安値71円まで急落した。その後は80円台でモミ合う展開だったが、28日は前日比13円(15.48%)高の97円まで急伸する場面があった。調整が一巡したようだ。

 9月28日の終値93円を指標面で見ると、今期予想配当利回り(会社予想の年間2円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS82円22銭)は1.1倍近辺である。なお時価総額は約130億円である。

 日足チャートで見ると一気に25日移動平均線を突破した。また週足チャートで見ると8月の急落場面で下ヒゲをつけ、28日の急伸で一気に13週移動平均線に接近した。これを突破すれば強基調に転換の形となる。16年3月期は減損損失計上で最終赤字だが、介護事業休止による営業損益改善も評価して反発展開だろう。

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