アスカネットは調整一巡、24年4月期減益予想だが25年4月期回復期待

 アスカネット<2438>(東証グロース)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業を主力に、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業の拡大も推進している。また環境問題への取り組み事例として3月18日には、工場のエアコンの稼働を自動制御して節電するスマート省エネシステムにより、23年5月~24年2月の実績として約3400kgのCO2排出量カットにつながったと発表している。24年4月第3四半期累計(第3四半期から連結決算に移行)は前年同期の非連結業績との単純比較で減益だった。フォトブック事業の需要回復遅れやフューネラル事業における人件費増加などが影響した。そして通期も23年4月期の非連結業績との単純比較で減益予想としている。積極的な事業展開で25年4月期の収益回復を期待したい。株価は決算発表を機に急反発する場面があったが買いが続かずモミ合い展開だ。ただし徐々に下値を切り上げている。調整一巡して出直りを期待したい。

■写真加工関連を主力として、空中ディスプレイも推進

 遺影写真加工と写真集制作を主力に、空中ディスプレイ(空中結像ASKA3Dプレート)の拡大も推進している。セグメント区分は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業としている。

 23年4月期のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)構成比はフューネラル事業52.1%、フォトブック事業45.2%、空中ディスプレイ事業2.7%、営業利益構成比はフューネラル事業128.4%、フォトブック事業131.9%、空中ディスプレイ事業▲51.4%、調整額▲108.9%だった。フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。

 23年12月にはBETの全株式を取得して子会社化した。BETはバーチャルライバー(Vライバー)(バーチャルキャラクターにて各種アプリサービスを利用し、ライブを行う配信者)事務所Razzプロダクションの運営を行うスタートアップ企業で、所属Vライバーが550名を超える最大手のVライバー事務所である。バーチャルライバー事業を通じてXR領域への事業展開を強化する。

 また新規事業も視野に入れて、人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。22年1月にはベンチャーファンド「XVC1号投資事業有限責任組合」へ出資した。

 なお23年7月には女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を更新し、目標として女性管理職比率13%以上、正規雇用労働者の男女賃金差異78%以上、有給休暇取得率85%以上維持を掲げた。またCSR活動の一環として、23年8月には同社初の試みとなる本社近隣の小学生を対象に会社見学会・体験会を開催、23年12月には広島県グリーンボンドへの投資を実行した。さらに地元・広島のスポーツチームへの応援として「広島カープ」の広島市民球場、および「サンフレッチェ広島」のエディオンスタジアムとエディオンピースウイング広島に看板を掲げている。また環境問題への取り組み事例として3月18日には、工場のエアコンの稼働を自動制御して節電するスマート省エネシステムにより、23年5月~24年2月の実績として約3400kgのCO2排出量カットにつながったと発表している。

■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Techも推進

 フューネラル事業は、専門オペレーターによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器売上などである。

 1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。23年4月期末時点のハード設置件数は22年4月期末比126ヶ所増加の2820ヶ所、23年4月期の遺影写真加工枚数(新規加工枚数)は22年4月期比9.9%増の44万3312枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため推定市場シェアは約3割~4割(1位)となる。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)、ASKA3Dプレートを使用した焼香台、動画やサイネージによる新たな演出ツールの提供など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500ヶ所を突破し、全国の葬儀場約9200ヶ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透している。

 アライアンス戦略では、22年5月にMARKSと業務提携した。ソリューション拡充に向けて「tsunagoo」とMARKSの「成仏不動産」のサービス連携を開始した。また、AGE technologiesと業務提携した。ソリューション拡充に向けて「tsunagoo」とAGE technologiesの「そうぞくドットコム」のサービス連携を開始した。今後もサービス機能充実に向けて開発やアライアンス強化を推進する方針だ。

■フォトブック事業は写真集製作サービス

 フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などを強みとしている。

 全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け(BtoB)の「アスカブック」と、一般消費者向け(BtoC)の「マイブック」を主力として、NTTドコモのフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を供給するOEMも拡大している。23年4月期末時点のBtoB契約件数は22年4月期比1193件増加の1万5989件、稼働件数は389件増加の5588件、マイブック会員数は9.8%増の33万9918人となった。

 BtoBではスタジオ写真向けや建築写真向け製品などの拡販、BtoCでは子どもの成長記録やカレンダー・卒業アルバムなど季節製品の拡販、等身大アルバム付き出張撮影サービスなどを推進している。

 22年1月には「マイブック」が、ワールドスポーツコミュニティ(愛知県名古屋市)が提供するSDGs認定の世界初のスポーツ×教育プログラム「kidss」に参画した。22年12月には、結婚式相談カウンターDXサービス「トキハナ」を中心に結婚式サポート事業を展開するリクシィと資本業務提携(第三者割当増資引受)した。23年10月には新商品「Photo Note」の販売を開始した。手作りグッズの1つとして注目されている「推しノート」に最適なアイテムで、スマホで簡単に作成できる。

■ソーシャルVR向けサービス「かえでラボ」

 22年8月には、仮想空間で活動するメタバースユーザーの「おもい」を表現していくソーシャルVR向けサービスとして「かえでラボ」を設立し、仮想空間上で撮影された写真を現実空間でカタチにするテストマーケティングを開始した。

 23年9月には、「ハロー!パソコン教室」を展開するイー・トラックスとの共同プロジェクトとして、法人・自治体向けのメタバース体験&基礎研修を開始した。23年11月には、ソーシャルVRやメタバースで撮影した思い出の写真をフォトアイテムにできる新商品「スクボ」「ラミカ」の販売を開始した。

 今後は子会社化したBETと連携し、Vライバーとの商品企画・開発・制作、リアル×バーチャルのコミュニケーション企画、メディミックスなどバーチャルライバー事業を通じてXR領域への事業展開を強化する。

■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレート

 空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一して、量産化(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を推進している。プレートだけで空中に映像を浮かばせる空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色としており、サイネージ分野の他、非接触ニーズも背景として車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートについては従来よりも大きいサイズの開発により、操作パネルとしての用途拡大を推進している。

 生産面では、外注によって月産3000枚~1万枚程度の生産能力を有しているほか、20年6月に技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立し、ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を推進している。営業面では海外販売体制拡充に向けて、20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。

 22年1月には大和ハウス工業およびパナソニックと、ASKA3Dプレートを活用した「空中タッチインターホン」共同実証実験を開始した。22年2月には、セブンーイレブン・ジャパンがセブンーイレブン店舗(東京都内6店舗)において、ASKA3Dプレートを使用した世界初の非接触・空中ディスプレイPOSレジ「デジPOS」実証実験を開始した。

 22年3月には、NTTドコモのリモート接客システム「TimeRep」とASKA3Dプレートを組み合わせた「完全非接触型リモート接客システム」が、NTTドコモ中国支社から広島県庁に導入された。22年6月には、ASKA3Dプレートを搭載した非接触ホログラフィックエレベータ操作端末が、米国クリーブランド・ホプキンス国際空港に設置された。ASKA3Dプレートの販売代理店である中国のYesar Electronics Technology(Shanghai)がCSA認定を取得し、エレベータメーカーの製品テストをクリアした。

 22年9月には、ASKA3Dプレートの北米地域におけるパートナー企業であるHolo Industriesが、ASKA3Dプレートを使用した「Holographic Touch」と、Mastercard社のタッチレス決済機能を組み合わせた非接触クレジットカード決済システムを共同開発中と発表した。

 23年5月には、広島市並びに広島サミット県民会議の依頼を受け、ASKA3Dを使用した空中ディスプレイインフォーメーションを、G7広島サミット国際メディアセンター内の広島情報センターに展示・実演した。

■24年4月期(3Qより連結決算移行)減益予想、25年4月期回復期待

 24年4月期第3四半期累計の連結業績(23年12月4日付でBETを子会社化したことに伴い第3四半期より連結決算に移行)は、売上高が52億01百万円、営業利益が3億36百万円、経常利益が3億56百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億32百万円だった。前年同期(23年4月期第3四半期累計)の非連結業績との単純比較で見ると売上高は0%増収、営業利益は30%減益、経常利益は28%減益、親会社株主帰属四半期純利益は34%減益となる。フォトブック事業の需要回復が遅れていることに加え、フューネラル事業における人件費増加などが影響した。

 セグメント別(内部売上・全社費用等調整前)に見ると、葬儀関連のフューネラル事業は売上高が24億05百万円で営業利益が5億32百万円(前年同期は売上高が23億43百万円で営業利益が5億75百万円)だった。売上面は、葬儀施行件数に前期の反動減が見られたものの、自社営業強化による新規顧客獲得により画像処理収入などが堅調だった。利益面は、人員不足となっていた画像加工部門のオペレーターを積極的に採用(新卒)したことに加えて、前期末にベースアップを実施したため人件費が増加して減益だった。

 写真集関連のフォトブック事業は売上高が26億87百万円で営業利益が5億15百万円(同、売上高が27億33百万円で営業利益が5億83百万円)だった。売上面は、プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」が前期にコロナ禍待機の解消でウエディング関連が増加していた反動で苦戦したことに加え、一般消費者向け「マイブック」とOEMが海外旅行回復遅れや撮影写真アウトプット減少の影響で厳しい状況が継続した。利益面は、コスト削減を推進したものの、稼働率の低下、固定費の負担増加、原材料価格の上昇などの影響を受けた。

 空中結像プレートASKA3Dの空中ディスプレイ事業は、売上高が1億13百万円で営業利益が2億34百万円の損失(同、売上高が1億28百万円で営業利益が2億24百万円の損失)だった。国内はサイネージや空中操作案件を中心に堅調だったが、海外の案件の進捗遅れが継続した。利益面は、仕損じの減少や採算の良い案件の増加で粗利率が上昇したが、人件費、研究開発費、特許関連費用の増加などが影響した。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期(非連結)は売上高が16億09百万円で営業利益が28百万円、第2四半期(非連結)は売上高が16億42百万円で営業利益が62百万円、第3四半期(連結)は売上高が19億50百万円で営業利益が2億46百万円だった。下期の構成比が高い季節特性がある。

 通期の連結業績予想(3月11日付で公表)は売上高が70億90百万円、営業利益が4億44百万円、経常利益が4億69百万円、親会社株主帰属当期純利益が3億10百万円としている。配当予想は23年4月期比2円減配の7円(期末一括)としている。予想配当性向は37.2%となる。

 23年4月期の非連結業績との単純比較で見ると、売上高は2%増収、営業利益は24%減益、経常利益は24%減益、親会社株主帰属当期純利益は36%減益の形となる。BETの新規連結(PLは3ヶ月分を連結)が貢献するが、人件費などの増加に加え、M&A関連費用なども影響する見込みだ。

 第3四半期累計の進捗率は売上高73%、営業利益76%、経常利益76%、親会社株主帰属当期純利益75%となる。下期偏重の季節要因があり、フューネラル事業において新卒オペレーターが戦力化することなども勘案すれば、通期会社予想の達成は可能だろうと考えられる。さらに積極的な事業展開で25年4月期の収益回復を期待したい。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。

■株価は調整一巡

 株価は決算発表を機に急反発する場面があったが買いが続かずモミ合い展開だ。ただし徐々に下値を切り上げている。調整一巡して出直りを期待したい。3月18日の終値は683円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円81銭で算出)は約36倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約1.0%、前期実績PBR(前期実績の非連結BPS373円19銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は約119億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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