ティムコは戻り試す、積極的な事業展開で25年11月期収益回復期待

 ティムコ<7501>(東証スタンダード)はフィッシング用品およびアウトドア用品の企画・開発・販売を展開している。フィッシング用品分野ではフライフィッシングのパイオニアであり、アウトドア用品分野ではオリジナル衣料ブランドFoxfireを主力としている。収益力向上に向けた基本戦略として顧客接点の強化、EC分野の拡大、海外への展開を推進している。24年11月期は減益予想としている。上期の販売伸び悩みに加え、円安に伴う売上原価率上昇、EC分野および海外展開の強化に向けた費用増加も影響する見込みだ。ただし積極的な事業展開で25年11月期の収益回復を期待したい。株価はやや小動きだが、8月の安値圏から切り返して反発の動きを強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。なお10月10日に24年11月期第3四半期決算発表を予定している。

■フィッシング用品およびアウトドア用品の企画・販売

 フィッシング用品(ルアーフィッシング用品、フライフィッシング用品)およびアウトドア用品(アウトドア衣料・用品)の企画・開発・販売事業を展開している。

 フィッシング用品の分野では、日本では歴史の浅いフライフィッシングのパイオニアであり、竿から衣料品に至るまで全てのフライ用品を取り扱う唯一の企業であることなどを特徴・強みとしている。アウトドア用品の分野では、自社オリジナルブランドのアウトドア衣料ブランドFoxfireを主力としている。

 23年11月期のセグメント別売上高はフィッシング事業が9億03百万円、アウトドア事業が24億79百万円、その他(不動産賃貸収入)が20百万円、セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)はフィッシング事業が1億16百万円、アウトドア事業が1億85百万円、その他が9百万円、全社費用等調整額が▲1億94百万円だった。

 全社ベースの売上高の新製品比率は59.7%、自社企画品比率は93.4%、国内自社通販売上高はFoxfire会員制度本格稼働の効果により前期比19.3%増の1億12百万円、輸出売上(フライ用品が中心)比率は3.7%、仕入の輸入比率は15.2%だった。

■顧客接点の強化、EC分野の拡大、海外展開を推進

 中期的な目標値としては、26年11月期売上高41億79百万円、営業利益2億79百万円、営業利益率6.7%、1株当たり利益(EPS)67円80銭、株主資本利益率(ROE)3.4%を掲げている。

 重点課題として、BRAND(ブランド力を高めるための戦略強化)、NET(インターネット活用を前提とする仕組の強化)、GLOBAL(世界に通用することを目指す商品・仕組の構築)を掲げ、基本戦略として顧客接点の強化、EC分野の拡大、海外への展開を推進している。

 顧客接点の強化では、SNSやHPなどによる情報発信の強化、会員制度の拡充、イベントやスクールなどの充実などの施策により、現在(23年11月期)約4万人の会員数を3年後に約7万人、5年後に約10万人へ拡大することを目指す。

 EC分野の拡大では、TIMCOホームページのリニューアル、全アイテムの自社ECスタート、グローバルECの展開などの施策により、現在(同)約7.6%のEC比率(自社+自社管理取引)を3年後に12.8%へ、さらに将来的には25%へ引き上げることを目指す。

 海外への展開では、フライ用品のグローバルブランド化、ルアー用品の欧米市場向け拡大、フライ用品・ルアー用品のアジア圏への展開、Foxfireのグローバル展開などの施策により、現在(同)3.7%の輸出比率を3年後に7.5%へ、さらに将来的には20%へ引き上げることを目指す。

■スノーピークとの共同事業も推進

 19年4月に資本業務提携して第1位株主となったスノーピーク<7816>との共同事業も推進している。21年11月には同社、スノーピーク、アイビック、アイビック食品の4社共同で新会社キャンパーズアンドアングラーズ(札幌市、以下C&A)を設立した。新たなアウトドアカルチャーの価値創造を目的として、キャンプ・フィッシング・食を融合した体験型施設などを展開する。23年9月にはC&Aが体験型アウトドアショップ第1号店「C&A北広島店」(北海道北広島市)をオープンした。さらに24年4月には「C&A北広島店」が、ジェラート&ピザの人気店であるレストラン「アルトラーチェ北広島店」とともにグランドオープンした。

 また23年4月には、複合リゾート「エンゼルフォレスト白河高原」内に、初となるフィッシングエリア併設直営店Foxfire白河高原を開業した。スノーピークの直営店スノーピーク白河高原とのコラボショップである。23年7月開業のスノーピーク直営キャンプフィールド「スノーピーク白河高原キャンプフィールド」において、新たなアウトドアスタイル「CAMP FISHING」を提案し、イベント共同開催なども計画している。

 24年4月には群馬県上野村、上野村漁業協同組合、スノーピークおよび同社の4者が、上野村の地域循環共生圏の実現に向けた包括連携協定を締結した。関東でも屈指の清流として知られる神流川など、河川環境や自然環境といった村のフィールドを活かした体験イベントなどを企画していく予定としている。

■スタンダード市場上場維持基準適合に向けた計画書

 なお22年11月末時点の流通株式時価総額がスタンダード市場における上場維持基準に適合しない状況となったため、23年2月24日に上場維持基準適合に向けた計画書を公表した。企業価値の向上(時価総額の増大)に向けて業績の向上を図るため、以下の施策によって収益性の強化に取り組む。

 フィッシング事業では、新製品を中心とした販売促進、販促イベントの実施、SNSプロモーションの強化、初心者向け商品の開発強化、釣り人口拡大に向けたフライフィッシングスクール&ツアーの実施などを推進する。プロモーション活動を強化するため22年12月より組織体制を変更し、開発およびプロモーションを担う部署と営業に特化した部署に切り分けた。体制を強化し、SNSや動画などさまざまなメディアを連携したプロモーション活動を行う。

 アウトドア事業では、Foxfire会員制度の本格稼働による国内自社オンライン販売の強化、セール品縮小による利益率の改善、店舗計画(新規出店、リニューアルなど)の推進、WEB・動画・SNS情報発信の強化、コラボレーションも活用したFoxfire認知度向上などを推進する。利益率改善については、コロナ禍による商品消化率低下を解消するため割引販売を増やして対応したが、22年秋冬以降は割引販売の実施を控えて利益率改善に努めている。またFoxfireのうち、釣りに関連するアイテムを強化し、釣具店等の新たな販売チャネルも拡大する。

 これらの施策に加えて、フィッシング事業とアウトドア事業の相互の有機的連携を強化し、全社的な収益力向上に取り組むとしている。さらにIR活動をいっそう強化して、投資家や株主とのコミュニケーションを高める方針だ。なお計画期間については、23年11月期の業績が確定し、その評価が株価にも反映される期間を踏まえて24年11月末としている。

■24年11月期減益予想、25年11月期収益回復期待

 24年11月期の非連結業績予想(7月9日付で下方修正)は売上高が23年11月期比横ばいの34億03百万円、営業利益が61.3%減の45百万円、経常利益が58.1%減の49百万円、当期純利益が81.5%減の20百万円としている。配当予想は据え置いて、第55期記念配当5円50銭を含めて23年11月期比5円50銭増配の17円50銭(期末一括、普通配当12円+記念配当5円50銭)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比6.2%減の17億01百万円、営業利益が85.8%減の17百万円、経常利益が83.5%減の20百万円、四半期純利益が97.0%減の2百万円だった。減収減益だった。フィッシング事業はコロナ禍における需要からの反動減で在庫調整が継続し、アウトドア事業は記録的な暖冬の影響を受けた。

 フィッシング事業は売上高が10.9%減の4億72百万円、営業利益(全社費用等調整前)が55.1%減の44百万円だった。ルアー用品のフィッシングロッド(釣竿)など一部商品の売上が増加したものの、コロナ禍におけるアクティビティとしての需要の反動減で販売店における在庫調整が継続し、ルアー用品、フライ用品とも全体として販売が苦戦した。円安による売上原価率上昇も影響した。

 アウトドア事業は売上高が4.2%減の12億20百万円、営業利益が43.6%減の66百万円だった。春夏物衣料はスコーロン(防虫衣料)などの販売が堅調に推移したが、記録的な暖冬の影響で第1四半期(12月~2月)の防寒衣料や防寒小物の販売が低迷し、円安による売上原価率上昇なども影響した。

 その他(主に不動産賃貸収入売上)は、賃貸面積の縮小により売上高が12.6%減の9百万円、営業利益が19.6%減の4百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億39百万円で営業利益が38百万円の損失、第2四半期は売上高が9億62百万円で営業利益が55百万円だった。第1四半期は記録的な暖冬の影響を受けたが、第2四半期は営業黒字転換した。

 通期は前回予想(24年4月10日付の公表値、売上高35億74百万円、営業利益1億33百万円、経常利益1億37百万円、当期純利益83百万円)に対して、売上高を1億71百万円、営業利益を88百万円、経常利益を88百万円、当期純利益を63百万円、それぞれ下方修正した。上期の販売伸び悩みに加え、円安に伴う売上原価率上昇、EC分野および海外展開の強化に向けた費用増加も影響する見込みだ。

 なお、修正後のセグメント別の売上高計画は、フィッシング事業が23年11月期比4.9%減の8億59百万円、アウトドア事業が1.8%増の25億24百万円、その他が4.1%減の19百万円としている。

 事業別の重点取り組みとして、フィッシング事業では、キャンプ地など他のアウトドア・アクテビティとの融合により釣り人口の拡大を促すとともに、動画配信・SNSプロモーションを活用した販売促進を強化して収益力向上を図る。アウトドア事業では、自社アウトドア衣料ブランド「フォックスファイヤー」の認知度向上と顧客数の増加を目指し、商品開発力の強化、直営店舗の事業効率化、販売チャネルの見直しなどにより収益力向上を図る。さらに、フィッシング事業とアウトドア事業の相互の有機的連携を強化して、総合力の向上を推進する方針だ。

 24年11月期は減益予想となったが、積極的な事業展開で25年11月期の収益回復を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年11月30日現在の株主を対象として、保有株式数に応じてFoxfire Store20%OFFお買物優待券を贈呈している。

■株価は戻り試す

 株価はやや小動きだが、8月の安値圏から切り返して反発の動きを強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。9月26日の終値は767円、今期予想PER(会社予想のEPS8円12銭で算出)は約94倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円50銭で算出)は約2.3%、前期実績PBR(前期実績のBPS1886円02銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約26億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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