【小倉正男の経済コラム】持つか、持たざるか――「国立」「都立」は要らない

■「国立」「都立」という発想

 都知事選で、ある候補者が発した言葉・・・。
 「僕は都立保育園をつくりたいのだ」
 善意なのだろうが、勉強していないことが露呈。――これだから惨敗するのである。

 「国立」だ、「都立」だ、と持つ(=所有)ことにこだわる。
 これは社会主義につながる。税金を営々と食うことになる。

 石原慎太郎都知事の時代も「新銀行東京」という「都立石原銀行」をつくり、破綻している。膨大な税を食った。これも社会主義である。

 尖閣諸島も、「都が買う」とか、モメにモメて結果は「国有化」になった。これは火をつけた本人が、自宅を売り払って個人のおカネで買うべきだったのではないか。

■「国立」「都立」はもう要らない

 「国立」、あるいは「都立」ということになれば、いくら赤字をタレ流しても、誰かが責任を取ったという話はきかない。
 「国立競技場」といったものは、つまりはそういうことではないか。

 持つか、持たざるか――。国も都も、持たざるところに立つべきではないか。

 「国有化」「都有化」すれば、それは社会主義だから、税金を食い続ける存在になる。財政赤字を膨大なものにするし、ひいては増税の原因になる。

 安くつくって、民間(外資を含む)に高く払い下げるのなら、財政を潤して、減税につながるかもしれない。そうしたことを考えるべきである。

■税は安易に使われるのがトレンド

 「税を食う人たち」が支配層となっているのだから、税はどんどん増えることになりかねない。税とは、他人のおカネだから、使う側はどうしても安易になるのがトレンドになる。

 「税」とは、太古に「稲」で収めたことから「税」になったといわれている。つまり、働いて稲をつくった人々が、稲をつくっていない支配層に収めていた。

 「一億総活躍」――、多くの人々が働けて収入を得れば、税も増えて、経済を成長させられる。これはよいことであるのは間違いない。

 だが、「国有化」「都有化」ということで税が増えるばかりでは、稲も枯れることになりかねない。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、下手をするとその分岐点になるのではないか。

(東洋経済新報社編集局で金融証券部長、企業部長などを歴任して現職。「トヨタとイトウヨーカ堂」「M&A資本主義」(東洋経済新報社刊)、「倒れない経営――クライシスマネジメントとは何か」「日本の時短革命」(PHP研究所刊)など著書多数)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■9割超が対策を実施も、「WBGT」の認知は依然として低調  帝国データバンクの調査により、「熱中…
  2. ■「変身と成長」掲げ1300億円の積極投資、収益構造の転換図る  吉野家ホールディングス<9861…
  3. ■人手不足を補いながら顧客満足度の向上に貢献  シャープ<6753>(東証プライム)は5月20日、…
2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

ピックアップ記事

  1. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  2. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…
  3. ■イスラエル・イラン衝突でリスク回避売りが優勢に  イスラエルのイラン攻撃を受け、13日の日経平均…
  4. ■ホルムズ海峡封鎖なら「油の一滴は血の一滴」、日本経済は瀬戸際へ  コメ価格が高騰する「食料安全保…
  5. ■トランプリスク回避へ、大谷・藤井・大の里株が浮上  『おーいお茶』を展開する伊藤園<2593>は…
  6. ■昭和の象徴、長嶋茂雄さん死去  またまた「昭和は遠くなりにけり」である。プロ野球のスパースター選…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る