【アナリスト水田雅展の銘柄分析】川崎近海汽船は1月高値後の自律調整一巡、15年3月期利益増額の可能性で上値追い

銘柄分析

川崎近海汽船<9179>(東2)の第3四半期累計(4月~12月)業績は増収増益で、通期見通しに対する利益進捗率は高水準だった。株価は原油価格下落を好感した1月8日高値440円後の自律調整が一巡して再動意のタイミングだ。依然として指標面の割安感が強く、今期(15年3月期)利益増額の可能性を評価して上値追いの展開だろう。海洋資源関連などのテーマ性も注目点であり、07年12月以来の500円台が視野に入る。

石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門、その他事業を展開している。

14年4月に発表した中期経営計画では、目標値として17年3月期売上高490億円(近海部門180億円、内航部門310億円)、営業利益37億50百万円(近海部門4億円の赤字、内航部門41億50百万円の利益)、経常利益37億円、純利益24億円、新造船建造等に対する3年間合計投資額135億円を掲げている。

中期成長に向けた新規分野として、13年10月オフショア・オペレーションと均等出資で合弁会社オフショア・ジャパンを設立した。オフショア支援船は16年2月竣工予定で、日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出する。

1月30日発表の今期(15年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は売上高が前年同期比3.3%増の354億61百万円、営業利益が同4.0%増の17億63百万円、経常利益が同9.9%増の18億40百万円、純利益が同20.5%増の13億02百万円だった。

近海部門の日本向け石炭輸送、内航部門の石灰石・石炭の各専用船などが高稼働だった。セグメント別売上動向は、近海部門が円安も寄与して同6.0%増収、内航部門が2.0%増収だった。

通期の連結業績見通しは前回予想(10月31日に売上高を減額修正)を据え置いて、売上高が前期比3.2%増の471億円、営業利益が同5.2%増の21億円、経常利益が同0.4%増の20億円、純利益が同2.4倍の13億円としている。配当予想(4月30日公表)は同1円増配の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。

近海部門は市況低迷が長期化しているが、日本向け石炭輸送などが好調に推移する。内航部門は石灰石・石炭の各専用船が好調に推移する。コスト面では船舶量適正化や運航コスト削減の効果、原油価格下落メリットに加えて、14年8月に就航した最新型省エネ船の新造RORO船「北王丸」も寄与する。純利益については前期計上した船舶売却損失や保有船舶減損損失といった特別損失の一巡も寄与する。想定為替レートは1米ドル=105円としている。

通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.3%、営業利益が84.0%、経常利益が92.0%、純利益が100.2%と高水準である。そして四半期別営業利益を見ると、所有船のドック入りが集中した第1四半期(4月~6月)が56百万円の赤字だったのに対して、第2四半期(7月~9月)は8億59百万円、第3四半期(10月~12月)は9億60百万円と大幅改善している。

第4四半期(1月~3月)以降における季節波動や近海航路での市況低迷などを勘案して通期会社見通しを据え置いているが、原油価格下落メリットの本格化や円安の進行も追い風であり、通期利益は増額の可能性が高いだろう。

陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目されていることに加えて、日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務も寄与して、中期的に収益拡大基調が期待される。

株価の動きを見ると、14年秋の340円近辺でのモミ合いから上放れ、原油価格下落を好感する形で水準を切り上げ、1月8日の440円まで上値を伸ばした。08年7月以来の高値水準だ。その後は上げ一服の形だが、410円~420円近辺で堅調に推移している。

2月10日の終値412円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円28銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.4%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS759円73銭で算出)は0.5倍近辺である。

週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近してきた。自律調整が一巡して再動意のタイミングのようだ。依然として指標面の割安感が強く、今期利益増額の可能性を評価して上値追いの展開だろう。07年12月以来の500円台が視野に入る。

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