【アナリスト水田雅展の銘柄診断】チムニーは調整一巡、15年12月期業績に対する期待感で14年12月の戻り高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 大手居酒屋チェーンのチムニー<3178>(東1)は、2月10日に前期(14年12月期)の業績発表を予定している。株価は14年12月の戻り高値2390円から配当権利落ちも影響して反落したが、1月7日と8日の直近安値2135円から切り返しの動きを強めている。調整が一巡し、今期(15年12月期)業績に対する期待感で戻り高値を目指す展開だろう。

 売上高が業界5位規模の大手居酒屋チェーンで、直営とFCの飲食事業の他に、受託食堂のコントラクト事業も展開している。漁業などの一次産業、食材加工などの二次産業、店舗で商品を提供する三次産業まで一括管理する「飲食業の六次産業化」に向けた取り組みを強化している。仕入面では子会社の魚鮮水産が愛媛県で漁業権を保有し、13年には新たに2つの買参権を取得している。

 飲食事業は居酒屋業態を直営とFCで展開し、主力の「はなの舞」「さかなや道場」に加えて、軍鶏(しゃも)をメインとする「龍馬軍鶏農場」や、新鮮な肉と魚の両方を浜焼きスタイルで楽しむ「豊丸水産」の新規出店に加えて、既存店活性化に向けた業態転換も積極推進している。13年7月には新業態を推進する子会社「めっちゃ魚が好き」を設立した。今後の新規出店は、競合店が少なく高ROI(投資収益率)が見込める山陰・山陽エリア、四国エリア、東北エリアへの出店を強化する方針だ。

 コントラクト事業は、居酒屋事業で培った店舗運営ノウハウを活用して、官公庁の施設内を中心に受託食堂を展開している。14年4月には船橋中央病院(千葉県船橋市)の食堂事業を新規受託し、さらに16年度の新規受託の準備も進めている。

 前期(14年12月期)連結業績見通し(2月7日公表)は売上高が464億24百万円、営業利益が32億60百万円、経常利益が33億07百万円、純利益が15億87百万円としている。前々期の非連結との比較で5.4%増収、5.2%営業増益、3.1%経常増益、10.9%最終増益となる。配当予想は前々期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 月次売上動向(直営店全業態、前年比)を見ると、14年12月は既存店が101.3%、全店が101.0%だった。既存店売上高は2ヶ月ぶりに前年比プラスに転じ、客単価は5ヶ月連続の前年比プラスだった。なお14年1月~12月累計では既存店が99.4%、全店が100.3%となった。

 また14年12月の出店状況は、新規出店が0店舗、退店が3店舗(直営1店舗、FC2店舗)で、14年12月末の店舗数は直営407店舗(うちコントラクトが100店舗)とFC300店舗の合計707店舗となった。なお子会社の紅フーズコーポレーションの「新橋やきとん」は15店舗、めっちゃ魚が好きの「豊丸」「鶴金」は12店舗である。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.5%、営業利益が72.9%、経常利益が73.0%、純利益が77.6%と順調な水準だった。既存店売上高が想定(前々期比98.0%)を上回る水準で推移していることも考慮すれば、通期ベースでも好業績が期待される。

 新規出店効果に加えて、業態転換による既存店活性化、商品ロス低減、調理技術力向上、買参権活用による仕入効率化、仕入価格見直しやメニュー改定による原価低減などの効果で売上総利益率も上昇している。今期(15年12月期)も好業績が期待され、さらに親会社のやまや<9994>および第2位株主のアサヒビールとの連携強化の効果で中期的に収益拡大基調だろう。

 なお株主優待制度については、毎年6月末および12月末時点の株主を対象として実施している。100株~499株所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×10枚」または当社オリジナル商品、500株以上所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×30枚」または当社オリジナル商品を贈呈(詳細は会社ホームページを参照)している。

 株価の動きを見ると、14年12月の戻り高値2390円から配当・株主優待権利落ちなども影響して反落したが、1月7日と8日の直近安値2135円から切り返しの動きを強めている。調整が一巡して好業績見通しを評価する動きだろう。

 1月23日の終値2206円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS84円38銭で算出)は26倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は0.9%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の非連結ベースのBPS601円58銭で算出)は3.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を一旦割り込んだが、26週移動平均線がサポートラインとなって下げ渋る動きだ。調整が一巡し、今期業績に対する期待感で14年12月の戻り高値2390円を目指す展開だろう。

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